ニュース

地球の酸素が豊富なのはあと10億年間

大気中酸素濃度の進化シナリオ(a)、富酸素大気の持続期間(b)

 東邦大学理学部生命圏環境科学科およびジョージア工科大学による研究チームは3月1日、酸素に富む地球環境の残りの持続期間が約10億年であることを明らかにしたと発表した。

 現在の地球は大気海洋中に豊富な酸素が含まれており、豊かな生態系が形成されている。現在と同等の酸素濃度は4億5千~4億3千万年前に実現したと考えられているが、この環境がいつまで継続するかはわかっていない。一方で、富酸素な環境がどの程度維持されるかは、太陽系外における“第2の地球”を探査する上でも重要な課題とされている。

 酸素はおもに藻類や陸上植物の光合成で生成されるが、地質学的な時間スケールにおける大気海洋中の酸素量は、有機物の分解や火山性還元ガスの流入などといった、光合成以外の生物地球化学的作用の影響を受ける。そこで研究チームでは、酸素量を決める地球表層圏の物質循環過程を包括的に考慮した数値モデルを構築し、40万通り以上の数値実験の結果から富酸素な地球環境の持続期間を統計的に推定した。

地球表層環境の進化シナリオ。(a)境界条件として与えた太陽光度(現在地を1とする)、(b)大気組成、(c)地表面平均気温、(d)全球の純一次生産の予測結果
地球のハビタブル期間を通じた地球環境変遷。(a)太陽定数、(b)生物生産の制限要因、(c)全球の純一次生産、(d)大気中二酸化炭素濃度、(e)大気中酸素濃度、(f)大気中メタン濃度

 その結果、太陽光度の増大による温暖化と大気中の二酸化炭素濃度が下がることで、生態系の一次生産が低下し、貧酸素化がじょじょに進んでいくことが示された。加えて、現在の10%以上の酸素濃度が維持される期間は残り10億5千万±1億6千万年で、その後急速に濃度が低下するとの予測が得られた。これ以降は、酸素呼吸を行なう多細胞生物の生存は困難になると考えられる。

 これにより、究極的には太陽進化が長期的な貧酸素化を引き起こすことが示された。加えて、地球表層と内部の間での物質循環による相互作用が急激な酸素濃度の低下に影響することもわかった。また、地球が生命生存に適した状態である期間(ハビタブル期間)は約74億年間と考えられている一方で、実験結果から現在の10%以上の酸素濃度が維持できる期間は約15億年間と見積もることができ、地球のような惑星でも貧酸素/無酸素状態がその歴史の大半を占めている可能性も示唆している。

 研究チームでは、富酸素な地球環境は永続的ではないことがはじめて定量的に示されたとした上で、地球以外の惑星での生命存否を調査するバイオシグネチャー探査において、酸素以外の指標で判断できるような手法を考える必要があるとしている。

 なお、50億年後には太陽が赤色巨星となり、地球を飲み込み、地球自体がなくなると推測されている。