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Microsoft、「従来の限界を超えた」リアルタイムホログラフィ技術。フルカラーでピントの調節も可能へ

実験装置から撮影されたホログラム。従来のイメージに反して非常に美しいものとなっている

 Microsoftは19日(米国時間)、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に応用可能な電子ホログラフィ技術を発表した。独自の方式により、フルカラーを実現。さらに、ピクセル単位のピント調節が可能で、近視や遠視のユーザーも裸眼で利用可能とすることが特徴となる。

 この技術はコヒーレント(可干渉)光であるレーザーを光源とし、空間光変調器や分光器を組み合わせてフルカラーのホログラムを得るというもので、フレネルホログラムの原理に基づく。ホログラムとはざっくり言ってしまえば光の干渉によってできる干渉縞であるため、干渉をコントロールする技術や手法がこうした研究の焦点となっている。

 従来の電子ホログラフィでは画質が荒さや、モノクロであったり、カラーであっても高いコントラスト比が得られないなどの問題があった。また、HMD共通の問題として、輻輳と調節(眼の焦点距離と眼球の回転角度の不一致)による違和感や、AR向けに用いる場合に現実の視野を損なわずに情報を表示することは現在でも課題となっている。

 ピントの調節機能も備え、目の焦点距離に合わせて出力のピントが可変となっている。これにより、輻輳と調節による違和感や、眼精疲労を理論上生じさせないことが可能となる。また、近視や遠視のユーザーであっても、出力を補正することでメガネやコンタクトレンズなしで利用できる。

試作されたARグラス。80度の広い表示域を持ち、高画質で投影できる
非点収差の補正機能。視線の先だけ補正することも可能で、表現の幅がひろがる

 また、ピントの調整機能とアイトラッキングを組み合わせることで、リアルタイムで目線の先にピントを合わせる処理も可能となった。肉眼の視界により近く、直感的な表示ができるということだ。さらに、視線の周辺のみ高画質で描画し、”ボケ”に含まれる部分を省力化することで高速化し、表示品質と高速化を両立させた。

 ホログラムの原理上、従来ではそうした処理は計算量の都合で困難であったが、前述のような工夫や、プログラムのGPU最適化を図ることで、最終的に、GTX980 Tiを利用して90〜260Hzでの出力が可能となり、リアルタイムで自然な表示が得られたという。

 これらの技術はあくまで研究段階のものであるが、モノクロとは言え、小型化にも成功しており、同様のデバイスが一般に向け発売される日もそう遠くないのかもしれない。

実験装置