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データカンパニーを目指すIntel。半導体だけでなくAI分野やIoTなどに大きく注力
2017年3月2日 18:29
インテル株式会社は2日、同社の今後の事業戦略を説明するプレス向けセミナーを開催した。説明には同社代表取締役社長の江田麻季子氏らが登壇。主にIntelが取り組んでいる組み込み/IoT関連の事業と、次世代通信の5Gを利用したソリューションに焦点が当てられた。
Intelが取り組む3つの重点領域
江田氏は冒頭で“データ”の扱いがIntelの成長とイノベーションを牽引していくことになると説明。Intelはデータを作るデバイス、データ解析、クラウド、データセンターなど、データの全てに関わる“データカンパニー”であるとし、半導体の製造からネットワークに至るまで、全てを提供できるとアピールした。
Intelによれば、2020年までに平均的なネットユーザーが1日に扱うデータ量は1.5GB程度とのことだが、これが自動運転車になると4TB、スマート工場では1PB、そしてクラウドベースのビデオ配信業者では750PBにも上るとの調査結果が出ており、今後社会のIoT化が一層進む中で、データ量は膨大になっていくことがうかがえる。
Intelはデータを扱う上での重点領域を3つ設けており、「クラウド/AI/ネットワーク」、「メモリ/FPGA/5G」、「データリッチなモノと機器」の3つからなると説明。
AIに関しては特に注力しており、高度なアーキテクチャを必要とする分野ということで、先に述べたように半導体からネットワークまでの包括的なソリューションを提供できることが強みという。またNervana SystemsといったAI関連の最先端企業を統合するなど、AI活用の促進を図っているという。
また、後述する5G通信やIoTを通したソリューションにも力を入れており、ハードからソフト、ネットワークまで、データを扱うEnd to Endでのプラットフォームを展開していく構えだ。
Intelが小売業に提案する新プラットフォーム
インテル株式会社 IoTアジア・セールス IoTマーケット・デベロップメントダイレクターの佐藤有紀子氏は、同社の戦力の1つである小売業界に向けた新プラットフォームを紹介を行なった。
佐藤氏はインターネットを利用した買い物がしっかりと浸透した中で、現状では約73%の消費者がインターネットで商品情報を閲覧してから実店舗で商品を購入しているとの調査結果を伝え、消費者における小売業の存在価値の高さを説明。ただし、実店舗ではその利用者の90%が製品が見つからなかったり、店員に話を聞けなかった時にその場から立ち去ってしまうといった結果も出ており、改善すべきことも多い。
インターネットを利用した店舗では、顧客の購入履歴や訪問サイトなどがデータとして得られるため、その趣味嗜好を掴みやすく、実店舗よりも一段進んだ提案が行なえる。一方、実店舗では顧客への個別対応が難しいというエンゲージメントの問題、スタッフの配置をどう最適化するかといった人的資本の管理、そして仕入れで在庫を抱え過ぎてしまうといった発注精度の問題が挙がっている。
佐藤氏はこれらについてIoTを活用することで改善の余地があり、特に在庫問題に関しては現在世界で1兆ドルの適切な在庫管理がなされていないという結果が出ており、これは1店舗あたり7%の在庫が適切に処理できていないということだそうだ。つまりIoTを活用することで、7%の売上向上が見込めるのだという。
こうした問題を解決すべく、Intelが小売店に提案しているのが「インテル レスポンシブ・リテール・プラットフォーム(RRP)」で、店舗内に各種センサーなどを配置することで、人と物の動きをリアルタイムで監視し、店舗内で異なるシステムが使われていた場合でも同社のゲートウェイ端末を通してデータを吸収・集約することで、トレンドデータと履歴の知見から解析を試みる。RRPを導入することで、運用効率の向上、開発期間の短縮、安全性の確保も期待できるという。
5Gモデムの「Goldridge」とGigabit LTEモデム「XMM 7560」を投入
インテル株式会社 通信デバイス事業本部 グローバルワイヤレス営業本部 日本担当ディレクター工学博士の庄納崇氏は、Intelの5Gの取り組みについて説明。
4Gでは1Gbps程度の帯域とされていたものが、次世代の5Gでは20Gbpsへと大きく拡張され、IoTデバイスでの活用が広がるとしており、今後膨大な数のデバイスが登場してくる中で、その膨大なトラフィックをさばくために必須の規格であるとする。
Intelによれば、2020年までに世に多数のデバイスが生み出されていく中で、そのうちの47%は無線デバイスであり、その約半分は人を介在しないマシン to マシン(M2M)のコミュニケーションになっていくという。自動運転車など、現状は車自身がセンサーを使って周囲の状況を判断しているが、今後は車と車、車と信号、
車と道路、車と人など、V2X(Vehicle to everything)での接続が行なわれることになり、トラフィックの量はさらに膨大になる。
Intelはこういった状況を見据え、世界初という5G世代のモデム「Goldridge」を発表しており、Goldridgeでは28GHzのミリ波と6GHz以下の帯域をサポートしている。4GモデムのXMM 7360と組み合わせて4G/5Gのデュアル利用を行なえるなど、汎用性にも優れ、2017年第2四半期に登場予定という。
また、業界初とするGigabit LTEモデムの「XMM 7560」も発表しており、こちらは下り1Gbps、上り225Mbpsの転送速度に対応。5xのキャリアアグリゲーション、4x4 MIMO、256QAMのサポートなどを特徴とする。登場は2017年内を予定。
【お詫びと訂正】GoldridgeおよびXMM 7560に関して、間違った説明を載せており、XMM 7560を5G対応としていた部分などを修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。
Intelは5Gの取り組みとして、NokiaやEricssonとの協業なども行なっており、昨年(2016年)のMWCではIntelが開発した5G端末をIntelのモデムでしか接続できない状況だったが、今年は他社とも接続ができるようになっており、MWC 2017ではそのOTAのライブデモも行なわれている。
今後相互運用性のトライアルなどを行ない、12カ月以内にはモバイル・トライアル・プラットフォームを提供していくとしている。