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焦点距離の自動調節で視力に応じてピントを合わせるVR向け技術

 米スタンフォード大学は13日(現地時間)、VRヘッドセットに可変焦点レンズを応用した研究について発表した。これにより近視/遠視などに関わらず、ユーザーの視力に応じてピントを自動で合わせてくれるほか、現実の視界とVR映像の見え方の違いによって引き起こされる眼精疲労の低減や、より現実感のある体験が期待されている。

 なぜ立体映像を見ている時に目が疲れるのか?それは、視覚のメカニズムのためだ。人間の視覚には、眼を回転させ、三角測距と同様の原理で対象の距離を認知する機能(輻輳)と、見る対象に向けて適切に水晶体を変形させることでピントを合わせる機能(調節)がある。

 特にVRヘッドセットでは、ディスプレイそのものにピントが調節されるものの、知覚される像(輻輳)はより近くに感じてしまう。このギャップが眼精疲労の原因だと言われいる。脳は、水晶体や輻輳の状態も距離の情報として脳内で処理しているために、2つの矛盾する信号が脳に入力される結果、人により頭痛や吐き気、眼痛などの症状を引き起こすようだ。この現象は専門的には「輻輳と調節の矛盾(vergence-accomodation conflict)」と呼ばれる。

 一言で言ってしまえば、いくらVR空間内で認識している対象の距離が変わったとしても、単一焦点距離のレンズしかもたないためにピントは変わらないままだということだ。これは日常的な経験からも、通常起こり得ないということが感覚的にも理解できるだろう。

 この問題を解決するために、研究者らは焦点距離を変えることのできるレンズを搭載したVRヘッドセットを開発した。さらに、アイトラッキング技術を応用し、着用者がどこを見ようとしているのかを推定し、レンズは逐次適切な焦点距離に調整される。着用者が近視か遠視ということも分析できるため、コンタクトレンズやメガネのような視力矯正器具が不要になるという。

 リリースによれば、米国人口の約50%以上が近視、遠視、老眼のいずれかに該当するとのことで、そうした個人に適合する技術の重要性は高いという。