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東北大学、車の排熱など無駄な熱を電気エネルギーに換える熱電発電モジュールの実現が視野に
2016年12月2日 19:25
東北大学大学院工学研究科は1日、自動車エンジンや工場排熱など、300~700℃の未利用熱エネルギーを電力に変換するための熱電変換技術において、マンガンケイ化物系熱電変換材料を使用し、従来の約2倍に相当する2.4mW/平方Kmを実現したと発表した。
これまで300~700℃の中温域における熱電性能の高い材料は、鉛、テルル、アンチモン、セレン、タリウムといった毒性が高く稀少で低融点のものがほとんどであり、原料コストや空気中での使い方に工夫が必要だったため、広く利用されてこなかった。
熱電変換材料としては、地殻表面に豊富に存在し、熱的・化学的に安定性に優れる「マンガンケイ化物」が昔から注目されていたが、高温で溶かして凝固させる手法で試料を合成した際に、モノシリシアド相が析出し、導電性と機械的強度が悪化するという問題があった。また、結晶構造中のケイ素をゲルマニウムで1at%部分置換することで析出を抑えられるが、ケイ素とゲルマニウムが同族元素のため、電気伝導を担う電子または正孔の濃度を示すキャリア濃度を大幅に増加させられなかった。
東北大学は、マンガンケイ化物に対し、結晶構造中のマンガンをバナジウムで1.5~3.0at%部分置換することで、モノシリサイド相の析出を抑制するとともに、キャリア濃度を増大できることを発見。さらに、結晶構造中のマンガンをバナジウムに加えて、鉄で部分置換することで、約530℃において2.4mW/平方Kmというこれまで報告されているマンガンケイ化物材料の1.6~2倍に相当する極めて高い出力因子を見い出せたという。
今回開発した材料はp型物質であり、発電モジュールを試作するために、同等性能のn型物質の合成にも取り組んでいるとのこと。現在、運輸・産業・民生の分野において、一次エネルギーの半分以上が利用されずに排熱になっていると言われ、この成果により未利用の熱エネルギーを使った高出力熱電発電モジュールの実現が期待される。