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東芝のPC事業、為替影響で黒字化の見込み

東芝の平田政善代表執行役専務

 東芝は、2016年度のPC事業の業績見通しが、為替影響により黒字化するとの見方を明らかにした。同社によると、PC事業の営業利益見通しは、通期で114億円のマイナスが見込まれるものの、為替影響で120億円のプラス効果があり、これにより年間黒字になる見通しを示した。

 東芝は、富士通やVAIOと、PC事業の統合を模索した時期もあったが、これが破談。自力での事業再生の道を選択した東芝は、子会社の東芝情報機器にPC事業を移管。開発拠点が設置されていた青梅工場の閉鎖や、欧米市場におけるBtoCビジネスからの撤退を始めとする大規模な構造改革によって、体質改善を進め、出荷規模も年間300万台にまで絞り込む計画を打ち出していた。

 2016年度第1四半期(2016年4~6月)のPC事業の売上高は前年同期比52%減の557億円と大幅に減少したが、営業利益は73億円改善して、2億円の黒字を達成。また、このほど発表した2016年度上期(2016年4月~9月)の決算では、PC事業の売上高は前年同期比59%減の996億円と、約4割の規模にまで一気に縮小。だが、営業利益は7億円の赤字となったものの、141億円改善した。

 東芝の平田政善代表執行役専務は、「PC事業は、欧米市場におけるBtoC事業の撤退により売上高が縮小している」としながらも、「国内PC市場が牽引して、営業損益が改善している。前年度の構造改革費用として、37億円を遅れて計上していることを考えると、上期は実質的には黒字と判断している」としたほか、「2015年度には、PCや映像、NAND以外のシステムLSI事業において、大規模な構造改革を進めた結果、東芝全体の建て直しの方向性は見えた」と発言。今回の決算が、PC事業が自立再建に向けて着実に歩みを進めていることを示す内容となった。

 だが、TVを軸とする映像事業の回復にはもう少し時間がかかりそうだ。映像事業の2016年度上期の売上高は、前年同期比42%減の279億円、営業利益は110億円改善したものの105億円の赤字となった。

 「海外ブランドライセンス化により、売上高が縮小したのに加えて、過去に発売した製品における品質対応引当などのマイナス影響があり、赤字となった」とする。液晶TVの不具合対応費用およびライセンス費支払いに関わる係争案件で、合計84億円の費用を計上していることも影響した。

 さらに、「映像事業では、2016年度下期に、海外拠点整理関連費用として100億円超を見込んでいる。さらなる構造改革を実施する必要がある」と述べた。

 映像事業の構造改革の内容については、「あらゆることを検討したい」と発言したものの、「具体的な内容については現在検討している。決定した事項は現時点ではない」と述べ、「年末商戦にしっかりと注力し、その結果、どこまで行けるかを見てから考えたい」とした。同社では、下期の構造改革費用として600億円を新たに計上している。

 なお、同社の2016年度上期連結業績は、売上高が前年同期比4.3%減の2兆5,789億円、営業利益は前年同期のマイナス891億円の赤字から、967億円の黒字へと転換。税引前利益は60.1%増の675億円、当期純利益は209.2%増の1,153億円となった。

 PCとTVの事業規模の縮小が減収に影響したものの、HDDの販売台数増などによる増収効果があったほか、メモリが当初の想定を上回る12%の営業利益率を達成したことがプラスに影響。当期純損益では、第1四半期に計上した家庭電器事業の売却益などが最終利益の大幅な黒字化に寄与した。

 メモリやHDDを含むストレージ&デバイスソリューションの売上高は前年同期比1%減の7,997億円、営業利益は417億円増の783億円。メモリは円高により減収減益となったが、旺盛な中華スマートフォンやSSDの需要増により、売価は想定よりも高く推移したことから、計画を上回る実績となった。

 「期初予想では、メモリの営業利益率は数%を想定していたが、これを大きく上回った。通期でも同等水準の営業利益率が見込まれる」と述べた。

 また、HDDは、PCおよびゲーム向け需要が引き続き堅調であるほか、構造改革効果も貢献して黒字化した。