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SIMロックフリーの「Moto Z」を皮切りに日本事業を本格化させるMotorola

Motorola Mobility会長兼社長 アイマール・ド・ランクザン氏

 Motorola Mobilityの会長兼社長であり、Lenovoグループのシニアバイスプレジデント、Lenovoモバイルビジネスグループ共同社長を兼務するAymar de Lencquesaing(アイマール・ド・ランクザン)氏が、都内で会見した。ランクザン会長兼社長は、「日本市場で戦っていく準備は万全である」とし、「グローバルでは、2020年には第3位になりたいと考えているが、日本については、まずは足場固めの段階であり、今後、市場環境を見て、日本において何年後に何位になるのかを決めていくことになる」などと発言した。

 Motorolaは、2016年7月に、SIMロックフリースマートフォン「Moto G4 Plus」を発売し、日本市場に再参入。さらに9月には、フラッグシップとなる「Moto Z」および「Moto Z Play」を発表し、Lenovo傘下のもと、日本におけるスマートフォン事業を本格化させようとしている。

 ランクザン会長兼社長は、PCメーカーのPackard BellのCEOや、Acerのスマートハンドヘルドビジネスグループのシニアバイスプレジデント兼社長などを歴任。2013年にLenovoに入社後は、EMEAや北米における社長を歴任。Lenovoの執行委員会のメンバーも務めている。

 今回の来日に合わせて、グローバルでの展開や、日本における戦略などについて説明。特に、PC業界での経験を踏まえたコメントが印象的だった。

 ランクザン会長兼社長は、「日本は、スマートフォンの販売金額では世界第3位のマーケットである。重要な市場であるのはどのスマートフォンメーカーにも共通したものである。Motorolaは日本においても人気があるブランドであると自負しており、このブランド認知度を活用し、日本に対する投資を復活させたい。リテールやeコマースの体制、サポート体制など、日本市場で戦っていく準備は万全であり、これからは他社に対して先手を打ちたい。日本人が対応するコールセンターも設置しており、修理も行える体制も長年に渡って維持している」などとした。

 日本ではサポート体制の構築で重要であることは、これまでのビジネス経験上理解しているとコメント。その点からも、日本において戦う体制が整っていることを強調する。

 また、「現在、Moto Zをはじめとして、アイコニックな製品を投入しているが、年間7,000万台の販売規模であり、まだまだ挑戦者の立場である。2020年には、世界市場で3位になりたいと考えている。そのためには謙虚な姿勢を持って、挑戦していきたい」としたほか、「日本については、まずは足場固めの段階であり、今後、市場環境を見て、いつに何位になるのかを決めていくことになる」とした。

 「LenovoのPCビジネスは、2005年にIBMのPC事業を買収した当時、世界におけるPC市場シェアは3~4%であった。誰もが、Lenovoは、先行する大手PCメーカーと戦うことはできないと考えていた。だが今では3年に渡って、各四半期ともにトップシェアを獲得している。利益率も悪くない。だからこそ、PC業界でナンバーワンになれた。スマートフォンに関して言えば、日本の市場は激化しており、世界市場でもトップ2社(Samsung、Apple)は巨人のような存在だ。しかし、我々にチャンスがないわけではない。今はスマートフォンの市場で5%のシェアしか持っていないが、見方を変えれば、あと95%もの市場拡大のチャンスがある。競争は素晴らしいと考えている。

 現在、3~6%のシェアを持つ8社の企業が3位グループとして、2位から大きく離れてしのぎを削っているが、まずは、この市場で勝つために全力を尽くす。既にブラジルでは22%の市場占有率を持ち、第2位である。インドでも高い評価が出ており、北米や西欧でもビジネスを開始した。一貫性とやる気、忍耐力を持つという強い決意があれば打ち勝てる。日本においてもその姿勢は同じであり、時間を経れば、一定の市場占有率を確保できると考えている。

 PC市場での厳しい経験から、さまざまな教訓を得ている。効率性をいかに上げていくかが大切であり、それを実現できているからこそ、PC市場でトップシェアになっている。スマートフォン市場においても、これから合理化が求められるなかで、我々の強みが発揮される。合理化ができない企業は生き残れない」などと語った。

 さらに、「知財を持っていることもMotorolaの強みになる」としたほか、「Motorolaが中国のブランドであるということは朗報。中国は競争が激しいが、その一方で素晴らしい人材がR&D部門にいる。この戦いは短距離層ではなく、マラソンである。問題は、長期に渡って力を維持できるかどうかである。自らの戦略を研ぎ澄ますことが大切であり、R&Dやイノベーション、効率化が鍵であり、長期に渡って投資する余力も必要である。

 1つの市場で勝つのではなく、どの市場においても平均以上のシェアを持たなくてはならない。我々は、まだまだイノベーションを起こすことができる。顧客の体験を大きく変えていくこともできる。Motorolaのブランドは、あくまでもバリューを提供するブランドにする考えであり、スマートフォンに関しては、我々には多くの勝機があると考えている」とも述べた。

 「スマートフォン市場には優れたブランドがたくさんあるが、素晴らしいと思っていたはずのものがすぐに消えるということもある。PC市場でも同じ状況が起こってきた。その結末は統廃合ということになる。時間が経つにつれて、PC市場と同じように、スマートフォン市場の統廃合が進むだろう。1%以下の市場シェアで存在し続けることは難しい。ローカルで存在するブランドもあるが、それも最終的には消えていくということが起きている。生き残るには、5社で構成されるトップ集団の中にいることが大切である。ここにいれば存続の危機にはならないだろう。我々はチャレンジャーとして、まずは3位となることに力を注ぐ。そして次にはそれ以上を目指す」と語った。

 Motorolaのフラッグシップモデルである「Moto Z」は、薄さ5.2mmという世界最薄のスマートフォンであり、背面のコネクタを活用して、拡張モジュール群である「Moto Mods」で提供される各種機能を搭載して利用できるのが特徴だ。

Moto Zを掲げる同氏

 「Moto Zは、発表以来、日本市場でも高い注目を集めており、成功している製品である」と前置きしながら、「同時にMoto Modsも高い関心を集めている」と語る。

 Moto Modsでは、本体背面にモジュールを接続するだけでJBLステレオサウンドを堪能できる「JBL SoundBoost | Speaker」や、10倍光学ズームと、光量が少ない場所でも素晴らしい写真が撮れるキセノンフラッシュを搭載した「Hasselblad True Zoom」、最大70型までの大画面を投影できる「Moto Insta-Share Projector」、バッテリ駆動時間を最長22時間延長できる「Power Pack」などを用意。これによって、スマートフォンの性能や機能を拡張することができる。

 「このモジュラーデザインによって、リッチな体験を提供できる。これは業界の中で誇ることができるものであり、スマートフォンとしての機能に妥協することがなく、スマートフォンを超えた新たな体験を提供できる」とした。

 MotoModsは、APIを公開しており、開発キットも提供している。「今後、多くの開発者に参加して欲しい。100万ドルの賞金を用意して、ベストな製品にこれを授与する。エコステムを構築しており、全てのモジュールをMotorolaが開発するのではなく、共同開発やサードパーティーから独自に製品が出るといったこともある。Motorolaによる製品は半分強に留まる」とした。

 また、「日本におけるSIMフリーマーケットは成長過程にあり、ぜひこの流れに乗っていきたい」としたものの、SIMフリー以外の展開も視野に入れていることを示す。

 ランクザン会長兼社長は、「SIMフリー以外にも、リテール、オペレータを介してスマートフォンを提供していきたい。まもなくキャリアを通じた展開も発表できる。特に日本で焦点を当てる製品が、Moto Z、Moto X、Moto Gであり、主にプレミアム機種で展開し、ハイエンドの5モデルに絞り込んでいく。また、Moto Modsを活用することで、他社に比べて日本固有の機能をスピーディに搭載することができる。日本の市場に適した決済機能などもそのうちの1つ。そうしたことにも対応していきたい。さらに、新たなものを提供する際にも、Moto Modsに対応することで、本体に標準搭載するよりも、いち早く新機能を採用できるというメリットがある」としたほか、「日本の市場に特化したものであっても、需要があれば本体に搭載していく」との考えを示した。

 Motorolaでは、グローバルでは、日本で展開する3つのプロダクトに加えて、5つのプロダクトファミリーで展開していくという。「全てのセグメントをカバーするのではなく、5つのプロダクトプロダクトファミリーにおいて、10~12種類の製品数に留まる。そして、1年でリフレッシュしていく。またアクセサリは、Moto Mods対応では四半期に4~5製品、年間では20製品ほどを投入したい。また、それ以外にもコンテンツと連動しながらアクセサリ製品を投入していく」とした。

 Moto Modsでは、モジュラーを接続する端子の位置や形状などを固定することになる。これは将来の発展を阻害するものにならないのだろうか。

 ランクザン会長兼社長は、「今は、5.5型ディスプレイを搭載した製品が、持ち運びにも、ビデオの視聴にも適したサイズだと考えている。MotoModsの端子の配置はそれを活かすものであり、ホットスワップでの差し替えが可能になっている。伝送速度、スループットなども、Bluetoothを超えている。現在、Moto Modsのモジュールを利用する人は、2世代先のスマートフォンとの互換性まで保証されている。Moto Modsは、プレミアムライン向けのものであるが、今後市場での経験を積んだ上で方向性は考えていきたい」とした。

 また、Lenovoグループとしての展開についても言及。「LenovoとMotorolaは、市場によって異なるブランドを使うことになるが、同じ価値を共有できている。我々は、エンジニアで構成される企業体であり、自らR&D部門を持ち、PCやサーバーと同様に、スマートフォンの設計も全て自社で行なっている。サプライチェーンをコントロールできるポジションにあり、だからこそイノベーションを起こすことができ、価値を市場に提供できる。

 さらに、1つのデバイスでさまざまなことができ、デバイス同士が結びつけた利用提案も可能になるのが、LenovoおよびMotorolaの特徴である。Motorolaのスマートフォンは、PCをはじめとするデバイスとの連動や、データセンターグループのビジネスを通じたクラウドソリューシュンを活用するなど、スマートコネクティビティも実現できる。我々はワンカンパニーである」としたほか、「私はLenovoグループの執行委員会のメンバーでもあり、市場に向けては、Lenovo全体の1つのロードマップを共有している。2つのブランドの間には壁がない」などとした。