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月を生んだ天体衝突の衝撃で、地球は真横近くにまで傾いた

~月の“異様”な軌道を説明する新理論

従来の学説では、天体衝突後、地球の地軸は23.5度傾き、月の軌道は滑らかに現在のものに移行したとされていた

 地球と月の関係には特異な点があり、他の惑星とその衛星と比べ、月は地球からの位置がかなり離れており、またその軌道は、地球の公転面に対して5度という大きな傾きを持っている。その原因には諸説あるが、このたびメリーランド大学カレッジパーク校の研究者が、月が生まれた時の状況を見直すことで、現状を合理的に説明できると発表した。

 月の誕生にも諸説あるが、大きな天体が地球と衝突し、元々の天体の破片とえぐられた地球の一部の破片が飛び散り、やがて凝縮し月になったという見方が強い。現在、地球の地軸が太陽に対して約23.5度傾いているのはそのためだとされている。

 しかし、メリーランド大学の研究者によると、衝突時に地球が23.5度傾いたのでは、今の月の状態をうまく説明できないという。彼らは、天体衝突時、地球の自転速度は現在のモデルが予測する当時の速度の2倍にまで加速され、地軸は今の2~3倍となる60~80度にまで傾いたと推定している。つまり、地球はほぼ真横にまで倒された事になる。

新説では、衝突で地球はほぼ真横にまで倒され、月の軌道面は大きく揺さぶられながら今の位置へ収束したと考えられている

 加速を受けながら60度以上にまで傾くことで、誕生直後、月の軌道面は、大きな揺れ幅を持って激しく変化した。また、月は地球との潮汐力により、次第に地球から離れていくが、当初の月の軌道は非常に地球に近かったと同チームは推定する。数十億年かけ、月の軌道が当初から15倍にまで地球から離れることで、月に対する太陽の重力の影響が大きくなり、黄道に対して5度という傾きに収束した。

 メリーランド大学の研究者は、この説が月の軌道の謎の全てをうまく説明するものではないが、謎に対する回答の骨格を形作る理論になるとしている。

 この研究結果は、10月31日発行のNatureアドバンスオンライン版に掲載された。