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産総研、コンピュータの待機電力“ゼロ化”に向けたTMR素子を開発

~PCの超省電力化に期待

今回開発したTMR素子断面の電子顕微鏡写真

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)のスピントロニクス研究センターは20日、単結晶酸化ガリウム(Ga2O3)の半導体をトンネル障壁層とした単結晶だけからなるトンネル磁気抵抗(TMR)素子を開発したと発表した。

 コンピュータの省電力化には待機電力の削減が不可欠だが、電源オフ時に情報が消えてしまう現在主流の揮発性メモリでは大幅な削減は難しい。そのため、電源を落としても情報が失われない不揮発性のFET(電界効果トランジスタ)が求められており、電子スピンを利用して記憶を行なう「スピンFET」が有力視され、世界的に研究が行なわれている。

 産総研が開発したTMR素子は、独自開発の単結晶酸化ガリウム(Ga2O3)の成膜プロセスを用いて作られており、通常は室温でほぼゼロになってしまう磁気抵抗変化率(MR比)が、92%と極めて高いのが特徴。縦型のスピンFETを基本構造としており、待機電力ゼロの「ノーマリー・オフ・コンピュータ」への貢献が期待されるとする。

 今後はさらにMR比の向上を図るとともに、単結晶酸化ガリウム膜に電界をかけて出力電流を制御するためのゲート構造の設計と動作実証を行ない、5年後を目途に実用的な性能の縦型スピンFETを開発するとしている。

今回開発した単結晶Ga2O3膜作製方法
半導体障壁層のTMR素子の室温でのMR比の比較