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東京電力、公衆充電サービス「espot」の実証実験を開始
~外出先でも電気を使える環境の実現に向けた第一歩
2016年8月24日 14:10
東京電力エナジーパートナーとソニービジネスソリューション、関電工は、8月23日から、東京都内の飲食店やコンビニエンスストアなど、36カ所において、認証型コンセントを利用した公衆電源サービス「espot(エスポット)サービス」の実証実験を開始する。2018年度中には実用化を目指すとしている。
espotは、誰でも「電気(energy)」を使える「場所(spot)」を組み合わせた造語であり、東京電力ホールディングスの登録商標としている。
事前に購入したプリペイド方式の「espotカード」を、専用の認証型コンセントにかざすと、一定時間、電源サービスを利用できる。ケーブルは持参する必要があるが、100Vのコンセント方式となっていることから、スマートフォンのほか、PCやタブレットの充電も可能になる。USBプラグの同時利用も可能だ。
東京電力エナジーパートナー 商品開発室開発企画グループマネージャーの冨山晶大氏は、「ケーブルを持っていないと使えないサービスであれば、USBプラグの利用ならUSB充電ケーブルを100円ショップなどで手軽に購入できるほか、これからはUSB充電ケーブルを常時持つという環境作りにも繋げたい。本体そのものは、シンプルな形で提供することにこだわった」とした。
認証型コンセントの本体サイズは、180×50×70mm(幅×奥行き×高さ)。
espotカードは、500円で5回の利用が可能。1回あたり100円で、20分間の充電利用ができる。espotカードはFeliCaを採用しており、追加の課金も可能。現時点ではespotサービスの専用カードとなっている。
また、支払いについては、QRコードをスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で読み取り、クレジット決済情報の入力および決済処理を行なって利用することが可能だ。
冨山氏は、「外出していても、電気に困らないという世界を作るための第一歩になる。店舗や公共スペースなどに設置することで、街中で気軽に電気を利用できるサービスであり、これにより、外出時におけるモバイル端末の充電ニーズに応えられる。また設置事業者にとっても、集客増加や顧客サービスの向上が見込める」としている。
マクドナルドやスターバックスなどでは電源が無料で使えるのに対して、今回の公衆電源サービスは有償提供となるが、その点については「無償サービスは店舗のサービスとして利用しているため、店舗の都合によって利用できない場合もある。espotサービスでは、契約関係の上で利用できるため安心して使える」などとした。
espotサービスの単価や利用時間は店舗ごとに設定が可能で、利用時間は1回あたり10分/20分/30分/60分/90分/120分の設定ができる。コンビニなどでは滞在時間を短く設定できるほか、長時間滞在を前提とした施設などの場合には、長時間の連続充電が可能な設定もできる。
実証実験では、東京電力エナジーパートナーは、事業化を想定した店舗開拓やオペレーションコストの検証、認証型コンセントの店舗での有効な活用方法の確認、各種プロモーション施策の実施、実運用による課金サービスの可能性やユーザーニーズの検証を行なう。
ソニービジネスソリューションでは、認証型コンセントのハードウェア開発・製造、コンセント利用の認証・課金を実行するための管理サーバーの構築・運用、関電工では、設置場所に応じた認証型コンセントの施工方法の検討と実際の設置施工を行なう。
実証実験の期間は、2016年8月23日~2017年1月9日まで。東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、江東区、目黒区などの36カ所に、150台の認証型コンセントを設置する。設置場所の内訳は、大戸屋の5店舗に41台、ローソンの25店舗に96台、東京テレポートセンター管理ビルには6カ所13台を設置する。
なお、ローソンではイートインコーナーに設置され、充電しているデバイスは自ら管理する必要がある。大戸屋では無料で使える形で実証実験を行なう。
「コンビニのイートインコーナーでは、10分~20分滞在するケースが多いという結果を得ている。将来的には数千、数万店舗での設置を予定しており、事業化時点では、それに合わせて料金体系やサービス体系などを変えていくことも考えている」という。
実証実験では、いつ、どこで、どんな端末が使用されたかといった利用実績をサーバー上で管理することで、事業化に向けた検証を行なう。
また、実証実験によって得られたマーケティング情報の活用や、ポイントカードやクーポン配信など、ほかのサービスとの連携も視野に入れ、新たなビジネスモデルの創出にも繋げるという。
「充電している時間は、その場所にそのユーザーがいるということを示すものでもあり、そのユーザー属性に合致した割引クーポンの配信や情報発信などもできる。近隣の映画館で好みの映画が上映されるといったように、ユーザー属性と場所、時間を関連させたマーケティングが可能になる」とした。
なお、実証実験の開始に合わせてモニターを募集し、抽選で500人に、espotサービスが5回使用できる500円分のカードを送付する。応募締め切りは9月11日。
「今回の取り組みは、昨年から3社で検討をしてきたものであり、これまでの電力会社のビジネスを変化させるものになる」とする。
また、「東京電力のビジネスモデルは、家やビル、工場などに電気を供給し、供給されたものを自由に使ってもらうというものであった。だが、電気製品が変化し、外に持ち出して使い始めるシーンが増えた。利用者の立場から見れば、家やオフィスの中では契約した電気を自由に利用できるが、外出した途端に、自分が契約して電気を得られる場所は1つもない。今回のサービスは、これまでなんの契約形態もなかった外において、どうやって電力を安心して利用できるかへの挑戦になる。最近では、Pokémon GOの影響もあり、外で充電したいというニーズも高まっている。公衆電源があれば、通電をしながら仕事ができる環境ができる。外で自由に電源が使えるようになれば、電気製品の使い方も変わってくる。家にある電気を使うから『家電』であり、外で使えるようになれば、その名前が変わるかもしれない」などとした。
さらに、「コンビニにはロッカー型の充電サービスもあるが、これはスマートフォン登場以前からあったサービス。フィーチャーフォンの場合には、電話を掛ける以外は価値がないのでロッカーに預けてもいいが、スマートフォンは常にコミュニケーションをしており、充電している時にも使いたいというニーズがある。espotサービスでは、そうしたニーズにも対応できる」とした。
一方、ソニーモバイルコミュニケーションズと、東京電力エナジーパートナーは、スマートホーム分野におけるIoTを活用したサービスに関して基本合意書を締結。業務提携の検討を開始した。
ソニーモバイルコミュニケーションズが持つ、双方向コミュニケーションを可能にする商品や、通信技術、分かりやすいユーザーインターフェイスのデザイン、サービス・ソリューション構築のノウハウを活用。東京電力エナジーパートナーは、顧客基盤およびHEMSを含む、電気使用に関する技術やノウハウを活用し、利用者のライフスタイルに合わせたサービスの企画、開発を行ない、フィールドトライアルなどの検証、業務提携の契約締結を通じて、2017年以降にもIoTを活用したサービスの開始を目指す。
東京電力エナジーパートナー 商品開発室インキュベーションラボグループマネージャーの竹村和純氏は、「電力会社は電気を安定的に届けることが仕事であるが、利用者は電気そのものが欲しいのではなく、電気によって動くものを活用して、生活を豊かにするために電気が求められている。1つの家電がセンサーを持って動作するだけでなく、さまざまな家電に搭載されたセンサーを組み合わせることで、効能、効用を提供できる。電気製品を動かすだけでなく、IoTの世界を最適化して届けることが、電力会社としての顧客満足度を高めることに繋がると考えた。スマートホーム、スマートハウスをより簡単に、快適にできる環境を提供。これが我々が目指す、未来型インフラ企業としてのあり方になる。ソニーモバイルとの提携によって、2,000万の契約者に対して新たな価値を提供できるようになる。高齢者、子供、ペットを対象にした見守りサービスなどの可能性もあるが、それに留まらず、IoTを活用することで、見守りサービスそのものを不要とするような環境を作ることにも取り組んでいきたい。総合エネルギーサービス企業として、IoTなどを活用しながら、快適で安心な暮らしやビジネスを支える商品、サービスを提供する」とした。
具体的な内容については、「現時点では、業務提携の検討を開始する基本合意書を締結した段階であり、今後議論をしていくことになる」とした。