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内田洋行とインテル、教育IoTで協業を発表

~「答えのない時代に育つ子供たちのために環境を作ることが大人たちの責務」

左からインテル株式会社 代表取締役社長 江田麻季子氏、株式会社内田洋行 代表取締役社長 大久保昇氏

 株式会社内田洋行とインテル株式会社は、「教育IoT(Internet of Things)」の実装/検証を目的とした協業について、覚書を締結したことを発表した。

 文部科学省では、情報創造力のほか、批判的思考力、問題解決力、コミュニケーション力、プロジェクト力、ICT活用力等で困難な曲面に対応できる「21世紀型スキル」の習得を目的として、学習指導要領の改訂や、大学入試改革を始めとする教育改革が検討されており、5月に政府が発表した「日本再興戦略 2016」では、人口減少の進む日本において、IoTや人工知能、ビッグデータによる生産性向上に向けた産業構造改革を進める上で、新たな産業創出を担う人材育成が重視されており、「アクティブラーニング(能動的学習)」の推進などの教育改革と共に、次世代の教育として、初等中等教育でプログラミング教育の必修化、高等教育で数理・情報教育の強化などが盛り込まれている。

 また、文部科学省では、IT活用による個々の子供に合わせた「習熟度別学習(アダプティブラーニング)」や、スマートスクール構想の推進、統合型校務支援システム普及推進など、教育のICT化を加速化することも検討されている。

内田洋行とインテルの協業

 内田洋行とインテルでは、21世紀型スキルの習得を本格化するには、アクティブラーニングの改善やアダプティブラーニングの実現をさまざまなデータを活用することで行なうことが求められるとして、教育分野におけるIoTの実装、データ活用、システム環境構築などの検証を目的とした協業を行なう。

 具体的な協業の内容は、ICTやIoTデータを活用した新しい教育プラットフォームの作成、教育IoTデータの活用による授業改善や新たな教育方法の実現、データ処理軽減やセキュリティといった教育IoTデータ活用システム環境の検討、教育IoTの実装と実証研究によるエビデンスの取りまとめ、という4点となる。

 新しい教育プラットフォームの構築については、授業・学習での有効性、システム利用のしやすさを、教員・学習者など利用者視点で実装と検証を進めるとしている。実装については、内田洋行新川本社に設置する「フューチャークラスルーム」で行なうほか、協働でモデル校作りを進めるという。

 授業改善・新たな教育方法の実現については、両社で選定したモデル校で、教育IoTのデータ選定、抽出方法、データ形式の標準化などについて検証する。実際の教育 IoTによるアクティブラーニングやアダプティブラーニングの学習環境改善では、膨大なデータのリアルタイム処理が必要となるため、インテルでは、これらのデータ分析に関する処理技術、最適化処理および、システムをセキュアに運用するための仕組みの構築に関して技術を提供。また、その抽出されたデータの教育活用については、有識者を交えて検討を行なうとしている。

 データ活用システム環境については、並列分散処理化などのデータ処理負荷軽減や高速化、セキュリティ対策を考慮した上で、さまざまな教育プラットフォームからのデータ抽出と、その解析やフィードバックといった、広範囲のシステムインテグレートが求められるため、両社はそれぞれのノウハウや技術、また他業種での実績などによる知見を用いて、協働で実装と検証を進め、広範囲なシステム要件かつ、学校の特有性を考慮したデータベースの構築、ネットワークセキュリティ、データ活用のためのシステム設計などの考え方の確立を目指す。

 エビデンスの取りまとめについては、各種研究会やイベントなどを通じて、発表に務めるとしている。

IoTスマートスクールの実現

 都内で開かれた報道関係者向けの発表会では、インテル株式会社 代表取締役社長の江田麻季子氏、株式会社内田洋行 代表取締役社長の大久保昇氏が登壇。今回の協業の背景などについて語った。

 江田氏は、数々の技術革新によってこの10年でインターネット利用者の数は一気に増加しており、その結果さまざまな公共、産業分野でデジタル化の波がやって来ていると述べ、教育分野も例外ではないと言及。

インターネット利用者の増加
膨大なデータを活用する社会に
デジタル化の波
IoTによる革新

 これからの教育には、IoTや人工知能、少子高齢化社会におけるキャリアやソーシャルテクノロジ、新しいメディアの理解や活用、多様化する社会への適応といった、グローバルかつ複雑に変化する社会と進化を続ける技術に適応し、それらを活用できる人材の育成が求められるとした。

 インテルでは、ICT教育環境の推進や21世紀型スキル育成、プログラミング/STEM教育の推進、大学など高等教育機関との研究開発/講座提供といった取り組みを世界で行なっており、高度技術の人材育成に年間1億ドルを出資しているという。

変化する社会と技術に適応できる人材の育成
年間1億ドルの教育支援

 IoTを活用した学習環境では、電力や空調の管理、監視カメラや登下校管理、防災/災害対応などのセキュリティ、ウェアラブルデバイスを利用した学生の体調/健康管理、飼育菜園管理、プログラミング教育のための機器など、「IoTスマートスクール」という構想を持っており、学習環境だけでなく、学習活動についても、生徒個別に最適化された学習の提供などをIoTを用いて実現できるとした。

最適な学習環境
IoTスマートスクール

IoT教育の効果

 次いで登壇した大久保氏は、内田洋行は教育事業に1925年から関わってきており、現在も教育ICT事業を手がけていると説明。

内田洋行と教育事業
教育ICT

 インテルとの協業は今回が初ではなく、2008年にも「児童1人1台PCを活用する学習の効果検証」として共同実証実験を行なっており、その流れも汲んだものであるとした。

 今回の協業の背景には、前述の通り国の教育改革方針があり、産業界の人材育成への期待から、2020年から4年をかけて、小中高の学習指導要領改訂、大学入試の改革が行なわれる。

2008年にもインテルと共同で実証実験を実施
産業界の人材育成への期待
教育改革

 従来は何を学ぶかが議論の対象だったが、新たな学習指導要領では、何ができるようなるのかという点が議論されており、学習評価も「学習結果がどこまで学べているか」ではなく「考える力がどう付いたのか」といった側面から行なうよう見直されているという。

 また重視されているのが「どのように学ぶか」で、一方的な学習ではなく、資質や能力を育むための課題の発見/解決に向けた、主体的、協働的な学び(アクティブラーニング)が主眼に置かれているという。

次期学習指導要領の方向性
新たな学習評価
アクティブラーニング
学習・指導方法と評価方法の改善

 大久保氏は、今回の協業は、民間企業として国に先駆けた取り組みを行なうものと説明。

 前述した、ICTやIoTデータを活用した新しい教育プラットフォームの作成、教育IoTデータの活用による授業改善や新たな教育方法の実現、データ処理軽減やセキュリティといった教育IoTデータ活用システム環境の検討、教育IoTの実装と実証研究によるエビデンスの取りまとめという4つの取り組みを行なっていくとした。

 教育プラットフォームの作成では、タブレットを利用した画像への書き込みや、実物大の動物の映像を投影しての学習などを例としてデモ。

先駆的取り組み
タブレットで書き込み
実物大のサメを表示
IoT百葉箱
構成。Intelの小型コンピュータ「Edison」を搭載する
全国7カ所に実際に設置
地域による気象データの違い

 教育IoTデータ活用による授業改善や新たな教育方法の実現では、実際に教員を対象に模擬授業を行ない、電子黒板の板書情報、マイクの音声、生徒役のタブレットの操作情報などを収集。それらをサーバーで解析し、可視化・分析を行なう実験を実施したという。その結果、そういった生徒の今の活動状況を把握し、授業を「見える化」することで、アクティブラーニングの改善が可能となるとした。

実験
構成
教員の活動情報
生徒の活動情報
データを統合
今の活動状況の把握
アクティブラーニングに活用
教育IoTシステムインテグレーションの品質と信頼性を確立
エビデンスの取りまとめ

 大久保氏は、内田洋行とインテルの2社だけでは全国の学校へ導入を実現することはできないが、2社が取り組みを始めることで、教育界に最初の“うねり”を起こしたいと述べ、答えのない時代に育つ子供たちのために、環境を作ることが大人たちの責務であるとして発表会を締め括った。

子供の能力開発、成長のための教育IoT