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ブラザー、ブラック6倍/カラー2.5倍にインクが増量した大量印刷向けインクジェット複合機

DCP-J983N

 ブラザー工業株式会社は5日、家庭向けインクジェットプリンタ「PRIVIO」ブランドの新モデル「DCP-J983N」を発表した。価格はオープンプライスで、税別店頭予想価格は34,880円の見込み。発売は8月上旬を予定。

 従来機種の約2分の1の印刷コストを実現したという4色独立インクカートリッジを採用したスキャナ一体型のモデルで、ブラックのカートリッジは従来比約6倍、カラーは約2.5倍に増量されたのが特徴。1枚当たりの印刷コストはA4カラーで約4.6円、同モノクロ約1円、1回のインク交換で印刷可能な枚数はカラー約1,230枚、ブラック約2,340枚となった。

 プリント速度はカラーが1分当たり10枚、モノクロで1分あたり12枚。自動両面プリントに対応。インターフェイスは、Ethernet、IEEE 802.11n無線LAN、USB 2.0。また、スマートフォンなどと直接接続できるWi-Fi DirectやNFC(近距離無線通信)機能もサポート。

 対応用紙はA4/B5/A5/A6/2L判/L判/はがきなど。タッチ操作対応の2.7型液晶ディスプレイを前面に備える。プリント解像度は最大6,000×1,200dpi、カラーコピーの解像度は最大2,400×1,200dpi、スキャン読み取り解像度は1,200×2,400dpi(ソフトウェア補完で19,200×19,200dpi)

 本体サイズは420×341×172mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約8.7kg。

 なお、昨今の市場縮小や生産数の減少が影響し、9月1日よりインクジェットプリンタのカートリッジ61品目とレーザープリンタ用トナー・ドラム68品目の価格を改定。平均約5%の値上げになっている。

大量印刷を行なうユーザーをターゲットに

ブラザー販売株式会社 代表取締役社長の三島勉氏

 ブラザー工業は同日、「DCP-J983N」の新製品発表会を開催し、新モデルの訴求だけでなく、事業戦略についての説明も行なった。

 ブラザー販売株式会社で代表取締役社長を務める三島勉氏は、冒頭でインクジェット事業全体の見直しを図った新中期戦略の「CS B2018」について説明。2011年のピーク時より減少傾向にある国内インクジェットプリンタ市場において、転換が必要であるとの考えを示した。年賀状需要の減退やスマートフォン/タブレットの普及が大きく影響し、2011年から2015年までで実に430万台の落ち込みがあり、今年度(2016年)はさらに10%落ちるとの予測を立てている。

国内インクジェット複合機の台数推移
出荷台数低迷の原因として、年賀状需要の減少とスマートフォン/タブレットの普及が影響

 三島氏はそういった状況を鑑み、これまで機能を軸に分けていた同社ラインナップを見直し、今後は印刷枚数に合わせてラインナップの位置付けを行なうようにするという。ブラザーはインクジェットプリンタのラインナップを家庭向けのBASICシリーズ、ハイエンドのNEO、さらにその上のSOHO向けWORKSシリーズを展開してきており、これらシリーズは継続されるものの、それぞれのシリーズ内の並びが印刷可能枚数順になる。

 そして、今回投入する「DCP-J983N」は、BASICシリーズの中でももっとも大量に印刷できるモデルに位置付けられる。同製品はそのコンセプトの通り、たくさん印刷するユーザーに向けた製品であり、いかに安心して長く使ってもらえるかを考えたという。

 ブラザーの独自調査によれば、家庭用インクジェット複合機で1カ月あたり50枚から1,000枚以下まで印刷するユーザーは全体の約40%を占め、DCP-J983Nはこのボリュームゾーンを見据えた製品となる。三島氏は定量的に家庭で利用する高PVユーザーに好適なモデルであるとした。

ブラザーの調査による印刷枚数からのユーザー分布
1カ月当たり50枚以上印刷するユーザーは約40%いるとする。DCP-J983Nはこの部分を狙った製品となる

低ランニングコスト、手頃なサイズ、長期保証をウリに

 ブラザー販売のマーケティング推進部長である伊藤英男氏は、DCP-J983Nを使用するシチュエーションとして、在宅勤務、SOHOなどを挙げ、基本的には日常的にビジネスで印刷を行なうユーザーを想定する。

ラザー販売 マーケティング推進部長の伊藤英男氏
個人ビジネス用途
ホームオフィス
地域活動での利用

 こうしたユーザーがインクジェット複合機に要求するものとして、印刷コスト、小サイズ、保証サービスの長さを導入条件にしているとのことで、DCP-J983Nでは冒頭で述べた通り、大容量インクカートリッジを採用したことで、印刷枚数が大幅に増加しており、印刷コストを削減可能。従来機と比べて幅が2cm増えた程度のサイズに留め、保証については1年間のメーカー保証+2年間で1回使える修理サービスを付帯し、想定ユーザーを狙い撃ちする。

ランニングコストが低い
手頃な本体サイズ
長期保証
これら3つのポイントで訴求

 また、DCP-J983Nについては同社初の試みであるオンラインサービス「ハイプリ」を利用可能。前述の2年間で1回使える無償修理サービスがこれに含まれており、スマートフォンアプリからインクカートリッジの残量を確認できる機能などが提供される。印刷レポート機能といったコンテンツが順次追加されていく予定。ハイプリは「ハイプリントボリューム」や人が声を掛け合う「Hi」といった挨拶から作った造語で、ユーザーに末永く製品を使ってもらいたいという思いが込められているという。

大容量カートリッジを導入
オンラインサービスの「ハイプリ」を提供

 ブラザーは、DCP-J983Nを全国1,000店舗の量販店などで展開し、大型店舗には専用の説明員を用意するなど、同製品普及の施策を講じる構えだ。


DCP-J983N
左側面
右側面
背面
スキャン台
前面の液晶部はフラット化できる
インク搭載部
各種インターフェイスや給紙口など
左はDCP-J983N、右は従来モデルのDCP-J963N。DCP-J983Nは2cmだけ幅が増えている
DCP-J963N
ブラックインクカートリッジの比較。左がDCP-J983N
カラーカートリッジの比較。大きさは変わらないが左のDCP-J983Nは容量が増えている
設置イメージ