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Windows 10アップグレード通知について自ら米国に改善を要請

~日本マイクロソフト平野拓也社長による経営方針記者会見

日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏

 日本マイクロソフト株式会社は5日、2017年度経営方針記者会見を開催。7月1日付けで取締役代表執行役社長から代表取締役社長へと肩書きが変わった平野拓也氏が、新年度の経営方針について説明。また、昨今のWindows 10アップグレードに関する騒動についても、自ら改善を要請したことなどを明かした。

 日本マイクロソフトは米国本社と同じく7月1日から新会計年度を迎え、毎年この時期に新年度の経営方針について報道向けに説明を行なう。2017年度のミッションについて平野氏は、基本的な考えは踏襲し、前年同様徹底した変革を推進しつつ、クラウドの活用促進にさらなるてこ入れを行なう考えを示した。

米Microsoftと日本マイクロソフトのミッション
「徹底した変革の推進」の中身

 PCから人へと核を移し、販売より利用価値を重視し、Windowsにとどまらないエコシステムを採用していく。実例としては、これまでにRed Hatとのハイブリッドクラウド構築、SQLサーバーのLinux対応、オープンソース連携など、一昔前のMicrosoftには想像できなかった改革や連携を図ってきている。

 一方、そこにとどまらないとしつつも、Windowsが同社にとって重要であることは変わらない。平野氏が社長に就任した2015年(2016年度)は、Windows 10が公開されるというマイルストーンだった。無償アップグレード期限まで1カ月を切った今も同社は旧OSからのアップグレードを呼びかけるが、平野氏は本会見で、「その情報発信が不十分であった」と顧みた。

 特にここ数カ月は、アップグレードの自動実行の通知ウインドウを閉じても予約がキャンセルされないのは分かりにくい、あるいは、意図しないアップグレードが開始されてしまったなどの意見、不満が多く寄せられたという。

 そういった声を受け止め同社ではコールセンターの人員を4倍に増強。平野氏自身も個人的に米国本社に掛け合い、分かりにくい通知ウインドウの表現を改善するよう要請を行なったという。そういったこともあり、7月1日より、通知ウインドウでの「アップグレードを辞退する」の選択肢の表記を大きくするなど改善を実施した。さらに、消費者庁とも連携し、日本マイクロソフトだけではリーチできないユーザーへも、アップグレードに関する注意点の告知活動を行なった。

 平野氏は、今後も政府機関とも連携しつつ、ユーザーの声を真摯に受け止め、喜んで使ってもらえるよう、迅速な対応・情報発信を心がけたいとした。

 2017年度の注力点は「コグニティブサービスによるイノベーション」。Microsoftでは、コグニティブサービスの中でも、「知識」、「言語」、「音声」、「視覚」、「検索」の5つの領域をカバーする。これらの情報を機械学習などを使い、解析、利用することで、コスト削減だけでなく、ビジネスの推進を狙う。

Microsoftのコグニティブサービスがカバーする領域

 すでにグローバルでは、これらの技術を使い、森林環境分析、交通渋滞予測、患者の再入院予測や配置最適化などの採用例があり、日本でも大手金融機関がMicrosoftの機械翻訳の技術の採用を検討しているという。

 平野氏によれば、Microsoftの画像認識技術は、誤認率が3.5%と、人間の5%を下回る成果を出しているという。このほか、多言語音声リアルタイム翻訳や、動画の認識・意味づけといった要素技術をAPIとしてユーザー・パートナーに提供していく。

 日本マイクロソフトでは、2017年度末までに売上の50%をクラウド関連にすることを目標として掲げている。直近の2016年度第4四半期では32%に達しており、これは2015年度の2倍に上る。

 もちろん50%にすること自体が目的ではない。平野氏は、「企業のデジタルトランスフォーメーションに貢献するにあたり、これまでの技術・サービスの提供の仕方では不十分。ビッグデータなどを活用したビジネスを行ない、コスト削減などを図るには、クラウドを利用するのがベストであり、その結果としての50%」と説明する。

 また「クラウドは売って終わりではなく、使ってもらって始めて意味が出る。それには、今まで以上にお客様の業務内容を理解する必要がある」とし、その実現のため、クラウドソリューションやセキュリティ関連の専任部門を設立し、ユーザー支援や、導入提案などを積極的に行なっていくとした。

 なお、日本マイクロソフトは2016年に設立30周年を迎えた。

2017年度における重点分野
記者会見後の懇親会に集まった役員と日本法人30周年記念の料理
お寿司
ケーキ