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深層学習を取り入れた過去最大級のアップデートとなる「iOS 10」

~3倍絵文字や隠しメッセージなどメッセージアプリを大幅強化

iOS 10

 米Appleは、開発者向け会議「WWDC 2016」を6月13日~17日の日程で開催している。本稿では、基調講演で紹介された「iOS 10」の新機能について解説していく。

 基調講演では、iOS 10の“10”にかけて、10の新しい機能について説明された。

 1番目はリッチなユーザー体験である。まずiOS 10ではiPhoneを机から持ち上げるだけでスリープから復帰するようになった。また、ロック画面での通知UIも一新され、半透明の角が取れた枠で表示されるようになった。iPhone 6s以降に搭載された3D Touchを駆使して、強く押すとスケジュールの詳細を確認したり、その場でメッセージの返信を行なうといったことも可能。

 また、画面下からスワイプして起動できるコントロールセンターも見た目が一新され、左へのスワイプでミュージック専用のコントロールも呼び出せるようになった。ホーム画面の右スワイプで現れるSpotlightの表示も一新されている。

 さらに、ホーム画面でアプリのアイコンを3D Touchで強く押すと、通知の詳細を見たり、そこからさまざまなアクションを行なったりすることができるようになった。これらはサードパーティにもAPIが公開される。

 2番目はSiri APIの公開だ。これにより、サードパーティはSiriに自分たちのアプリの機能を組み込むことができる。解説では、Siriの音声認識でWeChat(中国製メッセージアプリ)特定の人にメッセージを送るといったことや、Siriでタクシーを呼ぶ、練習アプリと連携するといったことを挙げた。

 3番目はキーボードの改善で、ディープラーニング(深層学習)を取り入れることで、よりインテリジェントな入力候補提示ができるようになった。例えばメッセージアプリで特定分野の会話をしている場合、その分野の単語を中心に提示するほか、「Where are you?」と聞かれた場合、自動的に現在地の地図を添付する候補を提示するといったことができる。さらに、会話の複数のキーワードを抽出して、「いつ」、「どこで」、「誰と」、「何をする」というスケジュールを自動的に組むことができるようになっている。

 4番目は「写真」アプリの強化。これまでジオタグに基づいた撮影地の取得ができていたが、新しい写真では深層学習を利用して、写真に写っている人間やシーンを学習するようになった。これにより人名で写真を抽出したり、山なのか川なのかといったトピックごとに写真を抽出できるようになった。

 また、これまで写真を動画にするためにはiMovieといったアプリが別途必要であったが、iOS 10の写真ではテーマを決めて、自動的に音楽や長さを調節して動画のように見せることが可能になった。

 5番目は「マップ」の強化で、新たにレストランなどジャンル別に検索できるようになり、そのレストランの中でシーフード店だけを抽出といったことも可能になった。また、ナビ時には交差点近くに来ると自動的に地図をズーム、直線に戻ると自動的にズームアウトするといったダイナミックなビューが可能になっている。

 6番目は「ミュージック」アプリの強化で、UIが一新され、新たに「ダウンロードした音楽」の項目を追加したほか、歌詞も表示できるようになっている。

 7番目は「ニュース」アプリの実装で、2,000を超えるパブリッシャーからニュースの提供を受けるという。また、“トップストーリー”や“注目のストーリー”と言ったトピック別に整理されるようになった。

 8番目はスマートホームを実現する「HomeKit」で、新たにエアコンやカメラ、ドアベル、空気清浄機、そして加湿器と連動するようになり、新たに「Home」という名前に改めた。そして建築/不動産業界と提携し、Home対応済み住宅の開発に乗り込む。これによりiPhoneのコントロールセンターから家の照明やカーテンを操作したり、GPSを使い、車が家に近づくだけで車庫のドアを開けたりといったことが実現できる。

 そして9番目が電話アプリの強化で、これまで一部公衆電話や海外の電話は「Unknown」として発信元が分からなかったが、新たにサードパーティから提供されるデータベースと照合して身元を割り出すようになった。これによりスパムの電話などを特定できるようになっている。また、留守番電話のボイスメッセージもテキスト変換機能が加わった。

 VoIP(Voice over IP)アプリへの対応も強化され、APIを公開することで、連絡先とリンクし、着信時に共通の顔写真を表示したり、連絡先からVoIPアプリを使って掛けることが可能となった。また、Ciscoと協力し、企業向けに導入が始まっているCiscoのIP電話を個人のiPhoneに転送するといったことも可能になる。

ユーザー体験の改善
新しいロック画面。通知欄の角が取れて丸くなっている
3D Touchでスケジュールの詳細を確認
ロック画面から直接メッセージに返信
新しいコントロールセンター
ミュージックのためのパネルを追加
Spotlightも見た目を一新
ホーム画面
3D Touchでアイコンを強く押すと一部情報を確認できたり、アクションを起こしたりできる
SiriのAPIを開発者向けに開放
Siriを通してWeChatのメッセージを入力しているところ
さまざまメッセージでSiriが使えるようになるだけでなく……
タクシーを呼んだり……
トレーニングアプリと連携できる
SiriからVoIP経由での電話も可能に
キーボードは深層学習により、相手のメッセージを読み取って入力候補を提示する
キーボードの入力候補提示から現在地を挿入
会話の一連のキーワードを読み取り……
スケジュールを作成できる
このほか、「○○さんのメアドを教えて」といったメッセージに対しても自動的に連絡先からその人のアドレスを提示するといった機能も持つ
写真アプリの強化
ジオタグを使い、写真を撮影した場所を地図で表示
深層学習により、人物を認識するようになった
撮影日ごとの抽出も可能
人物の抽出も可能
山や水の上といったシーンも自動的に分類できる
新しい「写真」の表示法。場所と日付でまとめるようになった
従来のように全ての写真を表示することも可能
写真は全ての写真ではなく、ハイライトを表示するように
そのアルバムに関連する場所や人でまた再検索できる
場所やトピックごとに短い動画を自動的に生成してくれる
動画のテーマや長さを指定するだけで、自動的に動画を生成
マップでの検索機能の強化
レストランの中でシーフード店を抽出して再検索
ナビゲーション中、交差点が近づくと自動的にズームする
直線になるとズームアウトする
CarPlay対応車では、計器の付近に方向指示を出せるようになる
サードパーティへ地図のAPIを開放し、マップ上からレストランやホテルの予約もできるようになった
新しいミュージックアプリ
歌詞が表示できるようになった
ニュースの配布者は今や2,000を超える
トップストーリーへの集約
注目のストーリーへの集約
HomeKitはHomeとなり、新たにエアコンなどをサポート
不動産業界と提携し、スマートホームを実現
Homeアプリからライトの明るさなどを調節できる
コントロールセンターからも制御可能
GPSを利用し、車が近づくとガレージのドアが開くといったことも可能
ボイスメッセージのテキスト変換機能
これまでは非通知設定だった電話番号も
データベースと照合して、スパムの可能性があるかどうかを判断して表示
VoIPのAPIも公開し、連絡先と統合
Ciscoの企業向けIP電話と連携し、iPhoneで電話を受けることができる

最大のアップデートはメッセージアプリ

 最後に紹介されたのが、「メッセージ」アプリの進化だ。メッセージアプリはiOSの中で最も使われているアプリだというのだが、これまで大きなアップデートがされてこなかった。その間、Facebook MessengerやWeChat、LINEといったサードパーティのメッセージングサービスの方で機能面で大幅な強化が図られ、メッセージだけが純粋なテキストメッセージ+写真/動画を送信するためのツールとして“取り残された”感がある。

 iOS 10ではこのメッセージにテコ入れがされる。まず、URLのリンクを送信した場合、これまでは単純にURLのアドレスを表示するだけであったが、新しいメッセージではそのページの写真やタイトルなどを取得して表示できるようになり、相手が直感的にURLのページの内容を知ることができるようになった。

 「絵文字」はもはや日本のみならず、英語でもEmojiと言われる通り、世界でも定着した文化となったが、メッセージでは新たに3倍大きくなった絵文字表示ができるようになる。また、入力したテキストメッセージの単語の中に絵文字に変換できるものが存在した場合、それらが黄色でハイライトされるようになり、タップするだけで絵文字に置き換えられるようになった。

 吹き出し(Bubble)にもエフェクトがかけられるようになった。例えばドーンと置いて画面全体を揺らしたり、少しずつ文字が大きくなったり、最初はモザイクで隠され、指でなぞるとメッセージを見せるようにするなど、さまざまな効果を付与できる。こうした吹き出しのエフェクトは文字のみならず、写真にも適用できるという。

 さらに、筆跡を再現する手書き文字の送信や、画面全体を使ったエフェクト、そしてLINEですっかり定着したスタンプ機能なども使えるようになった。相手が送った写真やメッセージに対して「いいね」といったリアクションを付けたり、スタンプを付けたりすることも可能で、特にグループチャットの場合「誰のメッセージや写真に対しての反応なのか」分かりやすく表示できるようになっている。

 さらに、サードパーティのアプリにより、レストランの注文を直接メッセージの上で行なったりできるようになっている。

 最後に、これら上記の機能について、ユーザーのプライバシーを重視して開発されていることを強調した。例えばFaceTimeやメッセージ、Homeのデバイス間の通信は全てエンドツーエンドで暗号化がされており、傍受は不可能とされている。また、深層学習などは全てデバイス上で実現されており、Appleは一切ユーザーをプロファイリングしていないことなどを強調した。

リンクはURLのテキストではなく、画像やページタイトルを表示するものに
絵文字は3倍の大きさで打てるように
入力したテキストの中に絵文字に置き換えられるものがある場合、黄色でハイライトされ、タップすればすぐに置き換えられる
吹き出しのエフェクト
モザイクがかった隠しメッセージのエフェクトも
指でなぞれば表示できる
テキストだけでなく写真も
なぞって表示することが可能
手書き文字も送信可能。筆跡も再現される
フルスクリーンのエフェクトも用意
スタンプも実装された
メッセージアプリ上から注文ができる
このほか、Live Photosの編集機能も実装
iPadではSafariのスプリットビュー機能を追加
プライバシーについて強調された
デバイスで完結する深層学習
ユーザーをプロファイリングしない
Appleのプライバシーに対する姿勢を評価する第三者の言葉
良い機能とプライバシーを実現
パブリックベーターは7月
無料アップグレードはこの秋
対象デバイス。iPad 第3世代以前、およびiPhone 4s以前は対象から外された