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深層学習を取り入れた過去最大級のアップデートとなる「iOS 10」
~3倍絵文字や隠しメッセージなどメッセージアプリを大幅強化
2016年6月14日 07:25
米Appleは、開発者向け会議「WWDC 2016」を6月13日~17日の日程で開催している。本稿では、基調講演で紹介された「iOS 10」の新機能について解説していく。
基調講演では、iOS 10の“10”にかけて、10の新しい機能について説明された。
1番目はリッチなユーザー体験である。まずiOS 10ではiPhoneを机から持ち上げるだけでスリープから復帰するようになった。また、ロック画面での通知UIも一新され、半透明の角が取れた枠で表示されるようになった。iPhone 6s以降に搭載された3D Touchを駆使して、強く押すとスケジュールの詳細を確認したり、その場でメッセージの返信を行なうといったことも可能。
また、画面下からスワイプして起動できるコントロールセンターも見た目が一新され、左へのスワイプでミュージック専用のコントロールも呼び出せるようになった。ホーム画面の右スワイプで現れるSpotlightの表示も一新されている。
さらに、ホーム画面でアプリのアイコンを3D Touchで強く押すと、通知の詳細を見たり、そこからさまざまなアクションを行なったりすることができるようになった。これらはサードパーティにもAPIが公開される。
2番目はSiri APIの公開だ。これにより、サードパーティはSiriに自分たちのアプリの機能を組み込むことができる。解説では、Siriの音声認識でWeChat(中国製メッセージアプリ)特定の人にメッセージを送るといったことや、Siriでタクシーを呼ぶ、練習アプリと連携するといったことを挙げた。
3番目はキーボードの改善で、ディープラーニング(深層学習)を取り入れることで、よりインテリジェントな入力候補提示ができるようになった。例えばメッセージアプリで特定分野の会話をしている場合、その分野の単語を中心に提示するほか、「Where are you?」と聞かれた場合、自動的に現在地の地図を添付する候補を提示するといったことができる。さらに、会話の複数のキーワードを抽出して、「いつ」、「どこで」、「誰と」、「何をする」というスケジュールを自動的に組むことができるようになっている。
4番目は「写真」アプリの強化。これまでジオタグに基づいた撮影地の取得ができていたが、新しい写真では深層学習を利用して、写真に写っている人間やシーンを学習するようになった。これにより人名で写真を抽出したり、山なのか川なのかといったトピックごとに写真を抽出できるようになった。
また、これまで写真を動画にするためにはiMovieといったアプリが別途必要であったが、iOS 10の写真ではテーマを決めて、自動的に音楽や長さを調節して動画のように見せることが可能になった。
5番目は「マップ」の強化で、新たにレストランなどジャンル別に検索できるようになり、そのレストランの中でシーフード店だけを抽出といったことも可能になった。また、ナビ時には交差点近くに来ると自動的に地図をズーム、直線に戻ると自動的にズームアウトするといったダイナミックなビューが可能になっている。
6番目は「ミュージック」アプリの強化で、UIが一新され、新たに「ダウンロードした音楽」の項目を追加したほか、歌詞も表示できるようになっている。
7番目は「ニュース」アプリの実装で、2,000を超えるパブリッシャーからニュースの提供を受けるという。また、“トップストーリー”や“注目のストーリー”と言ったトピック別に整理されるようになった。
8番目はスマートホームを実現する「HomeKit」で、新たにエアコンやカメラ、ドアベル、空気清浄機、そして加湿器と連動するようになり、新たに「Home」という名前に改めた。そして建築/不動産業界と提携し、Home対応済み住宅の開発に乗り込む。これによりiPhoneのコントロールセンターから家の照明やカーテンを操作したり、GPSを使い、車が家に近づくだけで車庫のドアを開けたりといったことが実現できる。
そして9番目が電話アプリの強化で、これまで一部公衆電話や海外の電話は「Unknown」として発信元が分からなかったが、新たにサードパーティから提供されるデータベースと照合して身元を割り出すようになった。これによりスパムの電話などを特定できるようになっている。また、留守番電話のボイスメッセージもテキスト変換機能が加わった。
VoIP(Voice over IP)アプリへの対応も強化され、APIを公開することで、連絡先とリンクし、着信時に共通の顔写真を表示したり、連絡先からVoIPアプリを使って掛けることが可能となった。また、Ciscoと協力し、企業向けに導入が始まっているCiscoのIP電話を個人のiPhoneに転送するといったことも可能になる。
最大のアップデートはメッセージアプリ
最後に紹介されたのが、「メッセージ」アプリの進化だ。メッセージアプリはiOSの中で最も使われているアプリだというのだが、これまで大きなアップデートがされてこなかった。その間、Facebook MessengerやWeChat、LINEといったサードパーティのメッセージングサービスの方で機能面で大幅な強化が図られ、メッセージだけが純粋なテキストメッセージ+写真/動画を送信するためのツールとして“取り残された”感がある。
iOS 10ではこのメッセージにテコ入れがされる。まず、URLのリンクを送信した場合、これまでは単純にURLのアドレスを表示するだけであったが、新しいメッセージではそのページの写真やタイトルなどを取得して表示できるようになり、相手が直感的にURLのページの内容を知ることができるようになった。
「絵文字」はもはや日本のみならず、英語でもEmojiと言われる通り、世界でも定着した文化となったが、メッセージでは新たに3倍大きくなった絵文字表示ができるようになる。また、入力したテキストメッセージの単語の中に絵文字に変換できるものが存在した場合、それらが黄色でハイライトされるようになり、タップするだけで絵文字に置き換えられるようになった。
吹き出し(Bubble)にもエフェクトがかけられるようになった。例えばドーンと置いて画面全体を揺らしたり、少しずつ文字が大きくなったり、最初はモザイクで隠され、指でなぞるとメッセージを見せるようにするなど、さまざまな効果を付与できる。こうした吹き出しのエフェクトは文字のみならず、写真にも適用できるという。
さらに、筆跡を再現する手書き文字の送信や、画面全体を使ったエフェクト、そしてLINEですっかり定着したスタンプ機能なども使えるようになった。相手が送った写真やメッセージに対して「いいね」といったリアクションを付けたり、スタンプを付けたりすることも可能で、特にグループチャットの場合「誰のメッセージや写真に対しての反応なのか」分かりやすく表示できるようになっている。
さらに、サードパーティのアプリにより、レストランの注文を直接メッセージの上で行なったりできるようになっている。
最後に、これら上記の機能について、ユーザーのプライバシーを重視して開発されていることを強調した。例えばFaceTimeやメッセージ、Homeのデバイス間の通信は全てエンドツーエンドで暗号化がされており、傍受は不可能とされている。また、深層学習などは全てデバイス上で実現されており、Appleは一切ユーザーをプロファイリングしていないことなどを強調した。