やじうまミニレビュー

Nanotips「TAPS」

~どんな手袋でもiPhone/iPadのTouch IDが使えるようになるシール

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Nanotipsの「TAPS」のシール本体。素材はポリウレタン。色はブラックのみだが、KickstarterのFAQでは将来的に異なるカラーを製造する可能性が示唆されている

 Nanotipsの「TAPS」は、手持ちの手袋をiPhone/iPadのTouch ID対応に変身させるシールだ。昨年(2016年)暮れにクラウドファンディングサイトのKickstarterで資金を募集し、わずか3日で目標金額に到達。最終的に9倍もの額を集めることに成功。12月下旬に早くも出荷に至った製品だ。本誌でも記事化されていたので、ご記憶の方も多いだろう。

 製品は指先に貼り付ける小さなシールで、表面に微細なおうとつがプリントされており、これを指紋として登録することで、iPhoneの指紋認証システムであるTouch IDをパスできるという仕組みだ。市販のタッチ対応手袋はタッチの操作は行なえてもiPhoneのロックを解除することはできないが、これを用いればロック解除も問題なく行なえるようになる。4枚入りで11カナダドル+日本への配送料が3カナダドルの計14カナダドル(約1,236円)と、非常にリーズナブルな価格設定も特徴だ。

 年が明けて間もなく、前述のクラウドファンディングで購入した製品が筆者宅に到着したので、今回は本製品がどの程度の実用性があるのか、かつどのくらいの汎用性があるのかをチェックしていく。

Nanotips「TAPS」。12月9日で締め切られたあと月末には早くも出荷されるという、クラウドファンディング発の製品としては異例のスピードでリリースされた。筆者宅に到着したのは年明けだが、米国およびカナダには当初の予告通りクリスマスギフトとして配達されたようだ
1パッケージに4枚のシールが同梱されている。丸みを帯びた十字のような形状で、サイズは実測で幅32×高さ38mm
裏面は両面テープが貼られている。起毛タイプの手袋でなければ貼り直しも可能だ
表面には微細なおうとつがあり、これが指紋の役目を果たす。ちなみに4枚ともパターンは微妙に異なり、悪用を防ぐとされている

手袋に貼り付け、指紋の1つとしてTouch IDに登録

 使い方としては、まず手袋の指先に本製品を貼り付けた後、通常のTouch IDと同じく設定画面から指紋(に相当するパターン)を登録するという流れになる。通常の指紋に比べると読み取りのエラーが発生する頻度がわずかに多いように感じられるが、ストレスが溜まるレベルではまったくない。要するに指をもう1本追加登録するだけだ。

 本製品は1パッケージに4枚が同梱されているので、全てを使えば両手の親指と人差し指の計4本を登録できることになるが、まずは右手の親指あるいは人差し指など、どれか1本の指だけを登録し、残る3枚はひとまず残しておくことをお勧めする。理由については後述する。

 登録が完了したら、後は手袋の指先を当てることでiPhoneのロック解除ができるようになる。特に操作のコツめいたものはなく、まったく普段と同じ操作方法でロックの解除やアプリ購入時の認証が行なえる。ありきたりな表現だが、手袋をしていることを忘れるほどだ。iPhone SEの後でiPad mini 4でも試してみたが、どちらも特に問題はなかった。

 なお本製品に含まれる4枚のシールは、それぞれ異なるパターンが印刷されているため、別のシールでは解除できないとされている。今回試しに1枚目と2枚目のシールを、それ以外の3枚のシールで解除しようと試みたが、いずれもきちんとリジェクトされた。おそらく生産上は、パターンが印刷された大きな1枚のシートから型抜きをしていると考えられるので、ひたすら数を当たれば偶然一致する可能性はゼロではないだろうが、その可能性はかなり低そうだ。

今回は試しに厚手の手袋(導電性素材は織り込まれておらずタッチ操作には非対応)を使用する
まずは手袋の指先に貼り付ける。パッケージの注意書きに従い、十字の長い辺が指先側、短い辺が手の平側に来るように貼り付ける
貼り付け完了。シールは防水性があるが、あまりはがれやすい使い方はしない方が良いだろう
iPhoneで「設定」→「Touch IDとパスコード」を開き、「指紋を追加...」をタップ
指紋を登録するのと同じ要領でTouch IDにパターンを登録する
登録完了。ロックした状態で手袋のままホームボタンを押すと……
手袋をしたままロックが解除できた
もちろん手袋でなくても動作する。試しに事務用の指サックに貼り付けてみた
問題なくロック解除が可能
指先に直接貼り付けてみた。もちろんこちらもロック解除が可能

iPhone/iPad以外の指紋認証デバイスとは相性あり?

 といったわけで、iPhone/iPadについてはまったく問題がなく、セールスポイント通りに使えるわけだが、ではそのほかのOSおよびデバイスの指紋認証システムではどうだろうか。

 まず試してみたのはWindows 10の生体認証システムである「Windows Hello」だ。手持ちのWindows 10ノート「ThinkPad X1 Carbon」で試してみたのだが、結論から言うと正常に動作しなかった。Windows Helloに指紋として登録すること自体は可能なのだが、何度やってもサインインに失敗する。ハードウェアに起因する問題のように思えるが、試してみなければ分からないため、積極的にはおすすめしにくい。

お次はWindows 10ノート「ThinkPad X1 Carbon」で指紋登録および認証に挑戦
「設定」→「アカウント」→「サインイン オプション」で「Windows Hello」の「他の指紋を追加」をクリック
セットアップが起動するのでパターンを指紋として登録する
指紋リーダを何度か指でなぞって登録を行なう。このあたりの流れは通常の指紋を登録する際と変わらない
登録完了。ここまでは何ら問題はないのだが……
実際にサインインしようとすると認識されない

 そしてこれ以上にアウトだったのが、Androidスマートフォン「Nexus 6P」の指紋認証だ。同端末はセキュリティ機能「Nexus Imprint」を搭載しており、本体背面に搭載された指紋センサーを使ってパスワードやPINなしでログインできるのだが、こちらは認証うんぬん以前に、指紋としての登録そのものが行なえない。iPhoneでは何の問題もなく登録および認証が行なえたのが嘘のように、うんともすんとも言わない。

 Androidの指紋認証システムでは、セキュリティの向上を目的に本物(生体)の指なのかを判定する機能がセンサーに入っており、それゆえ指紋認証そのものがうまく働いていない可能性もあるが、いずれにしても本製品が利用できないことに変わりはない。純正の製品でない以上、ソフトウェアアップデートによる後日対応の可能性もまずなく、八方塞がりだ。

続いてAndroidスマートフォン「Nexus 6P」の指紋登録にチャレンジ。「設定」→「セキュリティ」→「Nexus Imprint」を選択
「指紋を追加」をタップして指紋の登録を開始する
手順に従って背面のセンサーをなぞる……が、まったくの無反応で敢えなく撃沈

 今回試したのはこの2製品だけだが、結果を見る限りはiOSのTouch IDに最適化されており、ほかのデバイスとの相性はあまり考慮されていないように思える。手袋で操作するケースがまずないWindowsノートはともかく、Androidについては、クラウドファンディングのFAQでは「動作する」と断言されていることもあり、首をひねってしまう。現状ではこちらもWindowsと同様、ハードによっては対応しているかもしれない、という表現にならざるをえない。

タッチ操作も行なうには組み合わせる手袋に注意

 以上のように、挙動を見る限りiPhone/iPadのTouch ID専用と言って差し支えないようだ。しばらくiPhone/iPadと組み合わせて使った上で、気になった点をまとめておこう。

 まず注意したいのは、本製品はTouch IDには対応するものの、タッチの操作が行なえるかどうかは手袋に依存するということだ。今回本製品を貼り付けた厚手の手袋では、iPhone/iPadのタッチスクリーンはまったく反応せず、一方でもともと導電性素材を指先に織り込んだスマートフォン対応手袋の指先に本製品を貼り付けた場合は、タッチも快適に動作した。

タッチ対応の手袋の指先に本製品を貼り付けた状態。この組み合わせであればTouch IDも解除でき、かつタッチも快適に操作できた

 つまり生地が厚く指先からの電気が通らなければ本製品を貼り付けていてもタッチスクリーンは反応しないし、生地が薄いか、もしくは導電性素材を用いていれば電気も通り、問題なく反応するということになる。もともと本製品を企画製造しているのは、手袋の指先に染み込ませることでタッチ対応に変身させる液体「Nanotips」を販売している同名のメーカーであり(参考リンク)、この分野ではノウハウもあるはずなのだが、このあたりの説明はやや不十分に感じられる。

 逆に言うと、もともとタッチの操作が可能な導電性素材による手袋に本製品を貼り付ければ、Touch IDの解除からタッチ操作まで全方位的に対応可能な、パーフェクトな仕様となる。今回試した中でもっとも快適な組み合わせがこれだったので、本製品をこれから入手される方には、この組み合わせを個人的にお勧めしたい。

左が導電性素材を織り込んだタッチ対応手袋、右が通常の手袋。左は指先の形状に合わせてシールの上下左右をハサミでカットしているが、問題なく動作した

 もう1つ、本製品を使う上では、Touch IDに登録できる指紋の数が最大5つまでというiOS側の制限を避けて通れない。仮にTouch IDに左右両方の親指と人差し指を登録していた場合、その時点で5つのうち4つが埋まっており、残りは1つだけとなる。ふだんは手袋がない状態で使うわけで、登録済みの指紋を全て削除して本製品だけを登録するという選択肢はない。となると、親指/人差し指のどちらか一方に絞るか、あるいは左手/右手のどちらかに絞る必要が出てくる。

 もちろん登録している指紋が1つだけという場合は何ら問題がないのだが、すでにある程度の本数が埋まっている場合は、まずは指を1本だけ決めて登録し、後は使い方に応じて、増やすかどうかを考えると良いだろう。枚数に余裕があるからといって最初に左右の手袋それぞれ2枚ずつ貼り付けてから登録しようとすると無駄になりかねないので、そこは注意して欲しい。指紋の登録は何度でもできるが、シールの貼り直しはできれば避けたいからだ。

手袋のままTouch IDを操作できる唯一無二の製品

 以上のように、iOS以外のデバイスとの相性はやや疑問符が残るものの、手袋のままiPhone/iPadのTouch IDを操作できる唯一無二の製品であり、また手袋のチョイスを間違わなければタッチ操作も合わせて行なえるため、実用性は高い。Kickstarterのキャンペーンはすでに終了しているが、現在はIndiegogoに場を移して引き続き同じ価格(配送料込14カナダドル)で販売されているようなので、今シーズンこの製品をぜひ使いたいというユーザーは、Indiegogoでの購入を検討してみてはいかがだろう。