Windows 8カウントダウン

トレードオフがないのは本当か?



 5月21日に、都内のホテルで開催された「Windows Partner Executive Summit」では、日本国内のOEM各社の首脳陣が一堂に会し、Windows 8出荷に向けた団結と取り組みを再確認した。イベントにあわせて来日した米Microsoft本社CEOのスティーブ・バルマー氏は、2012年の後半にはプリインストールの状態のデバイスを出荷することができるだろうと、出荷時期についても明言した。6月にはRelease Previewの公開も予定されている。いよいよWindows 8に向けた本格的な直前カウントダウンが始まる。

●失うものは実はある

 Windows 8とは、Windows 7を基礎に、トレードオフがない新製品として位置付けられている。つまり、Windows 7を使っていたユーザーは、新しい機能と引き替えに失うものがないということが保証されているわけだ。

 とはいうものの、6月に公開されるRelease Previewを前に、さまざまな変更点も明らかになってきた。例えば、Vistaから採用され、Windows GUIの象徴ともいえる存在だったAero Glassは、その特徴的な透明感や陰影などの効果がなくなるという。その結果、どのような見かけになるのかはまだ公開されていないが、従来のWindows 7とは異なるものになるのは確かだ。個人的にはちょっと寂しいと思っている。

 さらに、Windows Media Centerは、Windows Anytime Upgradeからの別途有償提供のものとなる。また、各種コーデックは従来通りにサポートされるし、Windows Media Playerも同様に提供されるが、DVD再生のサポートがなくなってしまう。つまり、サードパーティ製のプレーヤーソフトがなければDVDやBDの再生はできなくなるということだ。

Windows Media CenterでDVDを再生しようとしてもできない
DVDをドライブにセットすると現段階ではメニューが表示され、プログラムを選択できる。

 その代わりというわけではないが、これまで独自にコーデックを用意してきた各種プレーヤーアプリケーションは、Windowsが標準装備するコーデックを利用して各種メディアを再生できるようになる。これまではプレーヤーソフトごとに個別にライセンス料を支払って再生を可能にしてきたが、その必要がなくなるということだ。

 つい先だって、ドルビーデジタルプラスがWindows 8に採用されるというニュースが流れたが、これは、各種のアプリケーションが、Windows 8のAPIを介してドルビーデジタルプラスによるサラウンド等のデコーダを使えるようになるということのようだ。

 ドルビージャパンに問い合わせてみたところ、Windows 7の時代にもドルビーデジタルプラスのデコードの機能は使われていたが、これらはMedia CenterやMedia Playerからしか使えなかったが、Windows 8からはすべてのアプリが使えるようになるとの説明を受けた。

 つまり、Windows 7までは、ドルビーのライセンス先はMicrosoftであり、あるいは各種プレーヤーソフトのベンダーであり、プレーヤーの数だけライセンス料が支払われていたことになる。だが、Windows 8からは、それをプリインストールするPCベンダーがマシンごとにライセンス料をドルビーに支払う。各PCベンダーがドルビーにライセンス料を支払い、そのマシンで稼働するアプリは自由に、ドルビーのデコーダを使えるようになるという形態に変わるのだそうだ。

 ユーザー的に何が変わるかというと、Windows 7でDVDを楽しんでいたユーザーが、Windows 8にアップグレードしたとたん、再生ができなくなってしまう可能性がある。これまでのWindowsの歴史の中で、初めての機能切り捨てとなるようだ。ドルビーでは、こうした変化に対応できるように、PCのOEMベンダー向けに、さらに幅広く同社のテクノロジーを利用できるような新たなライセンス体系を用意する予定だという。

●見当たらないスタートボタンは自分で用意

 Windows 7にあってWindows 8にないものというと、もう1つ思いつくのがスタートボタンだ。これがないばかりに、Windows 8は今の時点で使いにくいWindows 7でしかないといった陰口さえ叩かれている。

 どうしてもスタートメニューが欲しいなら、それを作ってしまえばいい。スタートメニューはWindows 7と同様に、

C:\Users\ユーザー名\AppData\Roaming\Microsoft\Windows\Start Menu

というフォルダの内容を反映したものだ。このフォルダをタスクバーにピン留めしてしまえばいい。

スタートメニューで参照していた項目をピン留めしておくと便利

 また、コンピューターやドキュメント、コントロールパネルなど、これまでスタートメニューから参照してきた要素の多くもピン留めすることができる。こうしておくことで、スタートメニューがないことの不便さの多くが解消されるはずだ。

 なお、スタートメニューフォルダは、ユーザーごとに異なるものに加え、すべてのユーザーが共有するAll Usersのものが合体していた。こちらは、

C:\ProgramData\Microsoft\Windows\Start Menu

に存在しているので、別途、追加しておこう。このあたりはWindows 7と違いはない。ちなみに、「C:\AppData」も「C:\ProgramData」も隠し属性のフォルダだ。なお、両方を同時に表示して参照したいなら、ライブラリを作り、そこに双方のフォルダを登録してしまうというのも1つの手だ。

「スタートメニュー」というライブラリを作り、個人用とAll Users用のスタートメニューを登録してみる
ライブラリに2つのスタートメニューフォルダを登録して一度に参照できるようにしてみた

●Windows 8 RPで全貌は明らかになるのか

 いずれにしても次のマイルストーンであるWindows 8 RP(Release Preview)の公開まで、あとわずかだ。今のConsumer Previewとは、まったく異なる見かけを持った新しいWindows 8が手に入るのは明らかで、ようやくこの新しいOSの全貌が見えてくるのではないかと思っている。いずれにしても、CPの状態では、細部を追っても仕方がないような気がする。

 例えば、Microsoft主催の各種イベントでは、このところ、電源がオフのところでも継続的にMetroアプリがネットワークに接続して更新情報を取得するConnected Standbyが積極的に紹介されている。Windows 8の目玉機能の1つではあるが、CPでは、今ひとつ、その詳細がわからない。

 こうしたことを含めて、RPは、いろいろなことがわかる重要なリリースになると思われる。2012年後半リリースという時期的なことを考えても、このタイミングでさまざまな要素が最終フィックスしないことには話にならないだろう。バルマー氏がOEMベンダー各社に忠誠を求めるのであれば、ここはひとつ、がんばって優れたビルドを提供してほしいものだ。