山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

ジャンプリストで超・お気に入りアプリ、サイト、フォルダ、ファイルにアクセス



 Windows 7のユーザーエクスペリエンス(UX)で、もっとも特徴的なものの1つがタスクバーボタンのジャンプリストだ。以前にもいくつかの機能を紹介したが、今回は、その挙動について、もう少し詳しく追いかけてみよう。

●起動済みと未起動の混在がポイント

 Windows 7になって、タスクバーは、起動しているアプリケーションをボタンとして表示するためのものではなくなった。未起動のアプリケーションであっても、それをピン留めしておくことで、常にボタンとして表示するようになったのだ。

 ピン留めするための方法は簡単だ。ピン留めしたいアプリケーションが起動しているときには、タスクバーにボタンとして表示されるので、それを右クリックして、ジャンプリストを表示させ「タスクバーにこのプログラムを表示する」をクリックすればいい。逆に、表示させたくない場合は、ボタンを右クリックして「タスクバーにこのプログラムを表示しない」をクリックする。

 こうして、タスクバーには、起動済み、未起動のアプリケーションボタンが混在している。ボタンを右クリックしたときに表示されるのがジャンプリストだ。

Windwos 7のタスクバーは、起動済み、未起動のアプリが混在して並んでいる

 ジャンプリストには、さまざまな項目を表示させることができる。アプリケーションの対応によって、独自の項目を用意することも可能だ。また、最近、ベータ版が公開されたIE9では、サイトそのものをピン留めすることができるようになり、サイトのソースに記述しておくことで、そのボタンのジャンプリストをコントロールできるようにもなっている。今後は、ブラウザのようには見えず、まるでローカルアプリのようにふるまうウェブアプリも増えていくのだろう。

iTunesのジャンプリスト。最近使ったプレイリストや曲が表示されている。また、タスク項目としてiTunesの機能が並ぶ

●「いつも表示」と「よく使うもの」の実体

 一般的なジャンプリスト、たとえば、エクスプローラーのジャンプリストでは、「いつも表示」と「よく使うもの」が項目として用意され、それぞれにフォルダーが一覧表示される。また、エディタやワープロなどでも同様に、過去に開いたファイルなどが一覧表示される。だから、昨日の続きを始めるのが、Windwos 7はとてもたやすい。

エクスプローラーのジャンプリスト。ほとんどの作業は、限られたフォルダーで行なわれる

 「よく使うもの」は、自動的に登録され、ジャンプリスト内でマウスポインタをホバーさせると右端にピンが表示されるので、それをクリックすることで「いつも表示」に昇格させることができる。フォルダーを「よく使うもの」から「いつも表示」にドラッグしてもいい。

 また、エクスプローラーなどのウィンドウから、フォルダーをエクスプローラーのボタンにドラッグすれば、「いつも表示」に追加される。「いつも表示」する必要がなくなったものについては、ジャンプリスト内で、そのフォルダーにマウスポインタをホバーさせたときに表示されるピンをクリックすることで、ピンがはずれ、リストから削除される。

 Internet Explorerの場合も同様だ。こちらは「いつも表示」と「よくアクセスするサイト」があり、エクスプローラーと同様の操作で、「いつも表示」をカスタマイズすることができる。

Internet Explorerのジャンプリスト。いつも表示するサイトを固定し、超・お気に入りとして使おう

 実際の挙動としては、「いつも表示」と「最近使ったもの」として、

%AppData%\Microsoft\Windows\Recent\AutomaticDestinations
%AppData%\Microsoft\Windows\Recent\CustomDestinations

という2つのフォルダーに、16進数のファイル名で表されたアプリケーションごとに登録されているようだ。%AppData%は環境変数で、ユーザーごとに異なるパスに展開される。コマンドプロンプトで、setコマンドを実行すればセットされた内容を確認できるし、エクスプローラーのアドレスバーに、上記のフルパスを貼り付ければ、そのフォルダーの内容を確認できる。ちなみに両フォルダー共に、シェルフォルダーの一種のようで、エクスプローラーでは表示されないが、コマンドプロンプトのdir表示では、通常のフォルダーとして存在している。

 これらのフォルダー内にあるファイルの内容はバイナリだが、強引にエディタなどで開いてみると、そこに含まれる文字列によって、どのアプリケーションのものかがわかる。

 困ったのは、IE9のベータで、サイトをIE9のボタンにドロップし、「いつも表示」のサイトとして登録できなくなってしまったことだ。タスクバーそのものにドロップして、ピン留めできるようになったことの副作用によるバグだと思われる。

 IE9では、お気に入りバーやステータスバーがデフォルトでは表示されなくなった。設定によって、以前のように表示することはできるのだが、画面の縦方向が広々と使えるので、そのまま使っている。

 通常のお気に入りバーが、ウィンドウを縦方向に使うため、常時表示すると邪魔に感じ、画面上で横方向にボタンが並ぶお気に入りバーは、いわば超・お気に入りとして便利に使っていたのだが、ジャンプリストに同じ内容を登録してしまうことで、お気に入りバーの代わりになる。右クリックの一回が余分に必要だが、まあガマンできる範囲だ。

Internet Explorer 9の新機能では、サイトをピン留めできる。そのジャンプリストもサイトのソースで制御できる。Twitterでは、各種のタスクがジャンプリストに並んでいる

 バグによって、その登録ができなくなってしまっているが、お気に入りフォルダーをエクスプローラーで開き、そこから直接お気に入りをドロップすることで「いつも表示」されるようになる。お気に入りバーにはフォルダーも登録できたので、重宝していたのだが、ちょっと不便になった。でも、しばらくはこれで様子を見ることにする。

●コンピューティングトレンドを追いかけるタスクバー

 「最近使ったもの」、「よくアクセスするサイト」等が、どのタイミングで更新されるのかは、どうにもよくわからない。ちなみに、その数は、タスクバーのプロパティを開き、スタートメニュータブで「カスタマイズ」ボタンをクリックすると、「ジャンプリストに表示する最近使った項目の数」で指定することができる。最高60まで指定できるようだ。

 PCを長い間使い続けていると、いつの間にか、多くのプログラムをインストールしてしまい、スタートメニューの中が複雑怪奇な構造になってしまうものだ。自分でもインストールしたことを忘れてしまったり、インストールしたソフトの名前を忘れてしまい探すはめになるようなこともある。

 だが、日常的な作業のほとんどは、タスクバーに登録されたアプリケーションと、そのジャンプリストだけで事足りる。結局のところ、PCでの作業のほとんどは、特定のフォルダーを開き、そこにあるファイルを開くか、新たにファイルを作るかのどちらかだ。特定のサイトを訪問するのも、そのサイトへのショートカットを開く作業に過ぎない。

 その一方で、ファイルの存在を意識せず、アプリケーションを開くだけの行為で作業を進めることも多くなってきた。Windows 7のタスクバーは、こうした時代のトレンドを絶妙なフィーリングでサポートするUIだといえる。