Windows 10カウントダウン

Windows 10はすぐそこなれど五里霧中

 1月末にリリースされたbuild 9926以来、大きなアップデートがないWindows Technical Preview。インターネット上には次のbuildのスクリーンショットなどが流出しているようだが、未だ、正式なアナウンスがない状態が続いている。

Technical Previewの更新が止まっている理由

 3月9日、Windowsの公式ブログ Blogging Windowsのエントリが更新された。そこでは、頻繁に更新されるはずのWindows Technical Previewに、いっこうに、進捗が見られないことについての饒舌な釈明がGabe Aul氏(General Manager OSG Data and Fundamentals team)によって投稿されている。

 それによると、Windowsの新Buildは5段階のリングで構成され、日々のBuildを試すCanaryをチームが評価、それが良ければOperatiing Systems Groupに渡り、そのあとMicrosoft内部で数千人規模の社員によって評価された後に、Fast Insidersに公開され、さらにSlow Insiderに降りてくるそうだ。InsiderのFastとSlowは、Technical Previewの設定で、ユーザー自身が自分で更新のタイミングとして選ぶことができる。

5段階のリング

 Aul氏は、次のビルドの公開日時を予告してしまうと開発が萎縮してしまうことや、そして、最悪の場合、不具合の修正が進まず、その日時を守れなくなり、指折り数えて待っていてくれたテスターたちの大きな期待に添えなくなってしまいかねないなど、いろいろな言い訳が羅列されている。

 それでも3月中には新しいビルドを出すことが宣言されている。とは言うものの正確な日付は告知されていない。なんだかしどろもどろといった印象だ。スピード感という点では当初の予定がスローダウンしている。

 要するに締め切りを決めてしまうと、開発する側も評価する側もろくなことがないのは明らかなので、もうちょっと我慢して、バグ報告や要望などのレポートを送って欲しいということだ。いずれにしても、4月末の開発者向けカンファレンス「//build」まで延ばすのではなく、なんとか今月中の新ビルド公開を望みたいところだ。

 ちなみに3月第1週目にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile Wordl Congress」や、それとほぼ同時期開催の「GDC」(Game Developers Conference)では進捗がなかった。次のタイミングとしては、3月18日〜19日に中国・深センでハードウェア開発者向けの会議「WinHEC」が開催される。このイベントも日本人プレスは枠がないということだが、ハードウェア開発者のためのカンファレンスであるということもあり、USB 3.1やType-Cコネクタなどがどう扱われるようになるかも明らかになるだろう。新MacBookが実装端子をUSB 3.1だけにしたこともあり、重要な事実が明らかになるかもしれず、要チェックだろう。

 いずれにしても、米国における新入学シーズンは9月だ。いわゆるバック・トゥ・スクールに間に合うように、各社のPC新製品にWindows 10をプリインストールするには、6月2日〜6日のCOMPUTEX Taipeiあたりで完成したビルドをOEM各社に引き渡す必要がある。それを考えるともう時間がない。

 あるいは、時期が遅れて12月のホリデーシーズンをターゲットにするにしても8月がタイムリミットだろう。開発者向けのビルド、ベータビルド、そしてGAと、着実に進化を遂げなければ、これらのタイムラインを逃してしまうことになる。となれば、今年中の出荷開始は無理だ。もう、待ったなしといったところだが、さて、どうなることやら。

マルチスクリーン対応アプリとWindows 10

 先日のMWCでは、Windows 10の“マルチスクリーン”対応がフォーカスされていた。Microsoftブースの展示でも、大きなコーナーが設けられていたので、“マルチディスプレイ”環境に変化があったのかと勘違いしてしまったが、実際にはマルチディスプレイではなく、Windowsユニバーサルアプリによって、スマートフォンからタブレット、PC、ホワイトボード的デバイスといったあらゆるサイズのスクリーンに対応するということをアピールするデモンストレーションコーナーだった。

 係員の説明では、コードを一度書けば、Visual Studioのオプションにチェックマークをつけてビルドするだけで、各種のスクリーン用のコードが完成するという。これまでの説明と違いはなく、今の時点では同じバイナリが各プラットフォームで稼働するようになるといったことは表明されていない。iOSのように、1つのバイナリがユニバーサルアプリとして機能し、どのプラットフォームでも最適な状態で使えるというようにはなっていない。このあたりで何かしらの変化が表明されるとしたら、きっと//buildのタイミングだろう。

 今、あらゆるプラットフォームで同じように使えるアプリというと、OneNote、Outlookが思いつく。Androidスマートフォン版がまだ追いついていないが、WordやExcelなどのOfficeアプリケーションも、あらゆるデバイスで使えるようになっている。

 例えば、OneNoteなら、Windowsデスクトップ、Windowsモダン、Mac OS、iPhone、iPad、Android、Chrome、そしてもちろんWindows Phoneと、あらゆるデバイス用にアプリが提供されている。それぞれのプラットフォームごとに微妙な違いがあるが、概ね同じように使える。インタープラットフォームで、1つアプリを選ぶとしたらOneNoteがもっとも進んだものだと言ってもいいだろう。

OneNoteは各プラットフォームを網羅的にカバーするOfficeアプリ。Androidスマートフォン、Androidタブレット、Windowsデスクトップ、Windowsモダン、iPhone、iPadで同じメモを表示させてみると、それぞれで少しづつ異なることがわかる。今後、この違いがどのように収束させるかが重要だ。
Windowsデスクトップ版
Windowsストアアプリ版
iPad版
iPhone版
Androidタブレット版
Androidスマートフォン版

分からないことだらけのWindows 10

 その一方で、Outlookは、買収したAcompluやSunriseとの協業途上というイメージで、まだまだ未完成といった印象を否めない。これならまだ、各プラットフォームに提供されているアプリとしてOWA(Outlook Web Access)を使った方がマシというものだ。ただ、OWAはMicrosoftのメッセージング、予定表等管理システムのExchangeのためのクライアントアプリであり、汎用的なメール&カレンダーアプリとしては使えない。企業ならともかく、個人ユーザーにとってはそれでは困る。MicrosoftがOutlookアプリを汎用アプリとして提供したのはそのあたりの事情を自覚してのことだろう。今やGmailアプリでさえ汎用アプリになっているのだ。

 AcompluやSunriseとMicrosoft自身のエッセンスを統合し、マルチスクリーン環境化で、デスクトップ版のOutlookと同等、あるいはそれ以上の利便性を発揮できるようにするのが急務であるとも言える。

 さらに、先週は、Office for Mac 2016のプレビュー版が公開された。まるで、MacBookの発売に合わせたかのようなタイミングだ。

 Office for Mac 2016は、2015年後半に公式製品リリースされると表明されているが、プレビュー版は各ビルドの公開後60日間利用できるそうだ。これは確実に60日以内に次のビルドが提供されるというのと同義と考えていいだろう。Windows 10よりも、かなり具体的なスケジューリングであるということが分かる。

 Windows版のOfficeは、同様に2015年の公開に向けて開発が進んでいるが、こちらは、デスクトップ版とモダンアプリ版が提供され、モダンアプリ版は基本的に無償となると表明されている。

 PC用Windows 10とOffice 2016、Windows 10 for Phones and Tabletと、多くの製品が同時進行しているが、Windows 10 for Phones and Tabletが、Intelプロセッサ搭載のスマートフォンやタブレットでは、果たしてどんなカーネルで稼働するのか、小型ディスプレイタブレットは大型ディスプレイ2-in-1とはOSそのものが別になるのかなどなど、秋に発売されるという「Lumia」ブランドの新デバイスの素性などを含めて動向を気にしておかなければなるまい。仮に、Intelプロセッサ搭載でも、8型タブレットではデスクトップアプリが使えないということになれば、それは一種の退化になりかねないわけだが、それを退化ではなく進化として表明する可能性だってある。とにかく現時点では分からないことだらけだ。

 それでもこれだけ待ったのだ。次はアッと驚くBuildを期待したい。

(山田 祥平)