Windows 10カウントダウン

Windows 10世代のアプリケーション

 Windows 10世代では、アプリケーションの在り方も変わるだろう。没入型を強引と言ってもいいほどに推していたWindows 8世代とは異なり、従来のデスクトップアプリケーションと、いわゆるストアアプリのゆるやかな共存を目指そうとしているようにも見える。これは、タッチとマウス/キーボードの共存であるといってもいい。今回は、新しい電卓と、Windows 10用に公開されたMicrosoft Officeを見ながら、新しい世代のアプリケーションについて考えてみよう。

標準電卓が変わった

 Windows 10 Technical Previewを使っていて、Windows標準の電卓アプリが変わったことに気がついた。もう何十年も同じままだった電卓がモダンなものになったのだ。

 PCを使っていて、ちょっとした計算が必要になった時に、電卓アプリは結構重宝する。アプリが起動したら他のアプリが使えないMS-DOS時代ならともかく、今はさすがに本物の電卓は使わないからだ。Windows標準の電卓アプリには履歴編集もあるので、数値の入力を間違った時に修正も容易だ。それに、電卓アプリはウインドウサイズがコンパクトなので、他のアプリと並べて使うにはもってこいだ。でも、ちょっと複雑な計算ならやはりExcelのような表計算アプリを使った方がいい。

 デジタルネイティブなスマートフォン世代は、計算が必要な時には、やはりスマートフォンを電卓代わりに使うのだろうか? 何十年も前に、初めてMultiplanやLotus 1-2-3を使って、これこそコンピュータだと感動したことを覚えているが、スマートフォン世代は、ちょっと複雑な計算には、Excelを使うと便利だということを知っているのだろうか? そして、今は、スマートフォンでもExcleが使えてそれができる。

 さて、Windows 10用の新しい標準電卓は単に四則演算ができるというだけではなく、単位の変換のためのコンバーターとしても使える。たとえば1インチが2.54cmということが分かると同時に、0.08フィートであるとか、0.72ペーパークリップだといったことが分かる機能を備えている。

 コンバーターで変換できる単位としては、ボリューム、長さ、重み、温度、エネルギー、領域、速度、時間、パワー、データ、圧力、角度が用意されている。このうち「領域」は、「面積」とか「広さ」だろうと思うのだが、さて、この先どうなることか。

新しい標準電卓。キーがかなり大きくタッチしやすい
モードもいろいろ用意されている
コンバータモードで長さを選ぶと「次にほぼ等しい」が表示される
「領域」は「広さ」「面積」とするべきか
全画面表示ではこうなるが意味があるかどうか
プログラマーモード
指数モード

 これまでの電卓は、マウスで操作したり、キーボードのテンキーで入力するにはちょうどいいウインドウサイズだったが、タッチ操作で使うにはちょっと小さかった。新しい電卓は、キーボードでもタッチでも使いやすいサイズになっているので、利用機会も増えるんじゃないだろうか。

 昔はPCを前にしてリアルな電卓を使うことが笑い話にもなったのだが、PCを前にスマートフォンの電卓を使うユーザーも少なくないことを考えると、これではまずいと電卓に手を入れたWindows 10チームの気持ちも理解できるというものだ。

 いずれにしても、タッチでも使いやすく、マウス/キーボードでも使いやすいというのは、これからのアプリケーションの条件ともいえそうだ。

Windows 10専用、タッチ対応Officeアプリが公開

 新しい電卓では、両方に対応しようとしているが、Microsoft Officeは、それぞれ別のアプリを用意するというアプローチを選ぶようだ。

 Windows 10用のMicrosoft Officeは、現時点で、タッチ対応を謳ったWord、Excel、PowerPointがPreviewとして公開されている。それとは別に、Office 2016相当のデスクトップアプリが開発途上にあるという。

 Windows 10 Technical Previewには、ストアとストア(ベータ)の2種類のストアアプリが用意されていて、このうちストア(ベータ)でのみ、これらのOfficeアプリを入手してインストールすることができる。つまり、Windows 10 Technical Previewの環境下でなければ、これらのアプリを入手できないわけだ。

 Microsoftによれば、小さな画面のタブレットにはこれらのアプリをプリインストール、その他のWindows PCも、無償で入手できるようにする計画のようだ。

 例えば、Excelを起動してみると、iPadやAndroidタブレット用のものよりも、各種のコントロールがさらに大きく表示されてタッチでの操作がしやすいように感じられる。もちろん、他のアプリと同様に、全画面でのウインドウ表示でも使える。

 新規のファイルを作ろうとすると、デフォルトではOneDriveへの作成となる。もちろんローカルストレージにファイルを作ることも可能だし、保存されている既存ファイルを開くこともできる。

Excel Preview。リボンとツールバーの中間的UIに注目
任意のサイズでウインドウ表示もできる

 また、PowerPointのスライドショーは、最大化してもタイトルバーとタスクバーが表示されたままとなる。Windows 10のタブレットモードを有効にすると、タイトルバーは消えるがタスクバーは表示されたままだ。この仕様はいくらなんでも変更されると思われる。

PowerPoint Previewもタッチファースト

 Wordも各種コントロールのサイズが大きくタッチがしやすいように設計されている。閲覧モードなどは現行のデスクトップ版Word 2013と同じように使える。ちょっと目新しいのはスクロールだけしかできなくなる編集ロックのためのボタンが用意されている点だ。このボタンをタップすると、カギのマークがついてスクロール以外の編集操作ができなくなる。これによって意図せぬ操作で文書を崩してしまうことがなくなる。スクロールしようとして文字列を選択してしまい、あげくの果てに、無関係な位置にドラッグ&ドロップしてしまうといったアクシデントがなくなるはずだ。

Wordは右下の編集ロックボタンでスクロール以外のことができなくなる

 各アプリともに、デスクトップ版の機能のすべてが使えるわけではない。機能はかなり限定されていると言ってもいいだろう。そういう意味ではiPad版やAndroidタブレット版と同様だ。それでも既存の文書を開いて表示、ちょっとした修正をする分に不便はない。互換性という点でやはり純正アプリは安心だ。機能としてはやはり、ゼロから文書を作るというよりも、修正を加えたり、内容を確認するなど、すでにある文書を消費するということを前提にしたものだと考えておいた方がよさそうだ。

タッチキーボードの改善

 PCで情報を生産するというためには文字入力のしやすさは重要だ。Windows 10での文字入力だが、タッチキーボードがほんの少しだけ使いやすくなっている。Windows 8までは、画面の半分近くをおおいつくす使いづらいものだったが、とりあえず、キーボードの表示位置をドラッグ操作で移動できるようになったのだ。

 これによって、フォームやWebアプリなどで文字を入力したいアプリの入力位置がキーボードの裏に隠れてしまい、にっちもさっちもいかないということは回避できそうだ。

 ただ、ストアアプリがウインドウ表示できるようになったことで、タッチキーボードとの位置関係はそれほど大きな問題ではなくなるという面もある。だからこそ、欲を言えば、キーボードのサイズも変えられるようにして欲しかったところだ。現行の仕様では、少なくとも、画面の横幅いっぱいを占有してしまうので、100型画面では巨大すぎるキーボードになってしまうというのはいただけない。多様な画面サイズへの対応は、Windows始まって以来の課題で、Windows 10の時代にもまだ納得できる解が見つかっていないようだ。Windowsは、この世には大きな画面と、中くらいの画面と、小さい画面しかないと思い込んでいる。マルチディスプレイ環境を含め、なんとか手を入れてほしい面ではある。

タッチキーボードは任意の位置に移動できるようになった
分割キーボードの場合は上下だけ移動できる。左右端は固定されている

(山田 祥平)