瀬文茶のヒートシンクグラフィック

日本サーマルティク「Frio Extreme」
~冷却魂を受け継ぐ“極寒”のフラッグシップモデル



 2012年2月17日に発売されたばかりの日本サーマルティク製CPUクーラー「Frio Extreme」を紹介する。今回の購入金額は8,980円だった。

●ミッドシップレイアウト採用の4代目「Frio」

 スペイン語で「寒い・冷たい」を指す「Frio」の名は、TDP 220W対応を謳って2009年に発売された初代Frio「Frio 冷却魂」以降、日本サーマルティクブランドのCPUクーラーの中でも、特に冷却性能を重視したハイエンドモデルに与えられてきた。今回紹介する4代目の「Frio Extreme」もまた、TDP 250W対応を謳う冷却性能重視の製品である。

 それでは、ヒートシンクの構成を確認していこう。銅板にニッケルメッキと鏡面処理を施したベース面がCPUから熱を受け取り、ベースユニットを貫通して伸びる6本のヒートパイプによって、2ブロックの放熱部へと輸送する。放熱部は1ブロック56枚の放熱フィンで構成されている。放熱ブロックは、形状の異なるフィンを交互に配置することで、特徴的な外観の放熱ブロックを形成している。ヒートシンク全体としては、ファンを2つの放熱ブロックの中心に配置する、ミッドシップレイアウトを採用したサイドフロー型に分類される形状である。

 ファンは140mm径の大口径ファン2基を備える。この140mm径ファンはPWM制御対応に対応しており、回転数を1,200rpm~1,800rpmの範囲で制御可能だ。また、付属のファンコントローラを介してマザーボードに接続することにより、回転数の制御をファンコントローラのボリュームによる電圧制御とPWM制御を状況に応じて使い分けることが可能となる。ただし、ケーブル長の制約により、一般的なケースでファンコントローラを外に引き出して利用するのは困難である。

Frio Extremeパッケージ
Frio Extreme本体
ケースに収められたリテンションキット
140mm径25mm厚の付属ファン
VR制御とPWM制御を切り替え可能なファンコントローラ

 Frio Extremeが採用したミッドシップレイアウトは、近年ハイエンドCPUクーラーで採用されることの多くなったデザインであり、そのレイアウト自体は珍しいものでは無くなった感がある。従来のFrioシリーズにはプラスチック製の装飾パーツを備え、外観的に競合製品との差別化を図っていたが、Frio Extremeにはそのような装飾パーツは用意されていない。

 従来の日本サーマルティク製品のような見た目の派手さが無い一方で、ヒートシンク自体は、加工、組立とも大変丁寧に仕上げられている印象を受ける。特にヒートパイプを潰さず接触面積を最大限取りながら、仕上げのろう付けにより隙間を残さない、ベースユニットとヒートパイプの接続部などは素晴らしい出来である。


●“極寒”の名に違わぬ強力な冷却性能

 さて、冷却性能のテスト結果を紹介する。冷却性能テストについては、テスト機材や周辺環境は過去の記事と同じ条件でテストしている。なお、ファンの回転数については、付属ファンコントローラのVRモードを利用して、全開時と絞りきった状態の2パターンでテスト行なった。

 検証結果をみてみると、3.4GHz動作時はCPU付属クーラーの80℃に対し、ファン全開時で51℃、絞り切った状態で53℃と、27~29℃低い結果となった。また、CPUを4.4GHzにオーバークロックした条件でのCPU温度は59~61℃を記録した。これまで紹介してきたCPUクーラーに比べファンの回転数が高い点に注意が必要だが、Frio Extremeが記録したCPU温度は極めて優秀なものである。

 動作音については、140mm角ファンが1,800rpm近い回転数で動作する全開時は、風切り音も大きく、かなり耳障りな動作音を発する。ファンコントローラを用いて最少に絞った場合、全開時に比べれば数段静かになるものの、依然回転数は1,200rpmほどであり、その動作音は静音とは言い難い。冷却性能テストの結果から伺えるヒートシンクのポテンシャルからすれば、ファンの回転数をもう少し絞れてもよかったように思える。

 その他、大型サイドフロー型CPUクーラーの例に漏れず、Frio Extremeもメモリとのクリアランスが非常にシビアな点には注意が必要だろう。下掲の写真から、一般的な全高32mm程度のメモリとの組み合わせで既にファンを上方にずらして取り付けていることが確認できる。ヒートスプレッダ搭載メモリとの組み合わせには注意が必要だ。

 4代目のFrioとして登場したFrio Extremeは、フラッグシップモデルらしい洗練されたヒートシンクと、その名に違わぬ冷却性能を持った製品に仕上がっている。付属ファンがカバーする回転数域から静音志向のユーザーをカバーしきれていないのが残念ではあるが、常用オーバークロックを狙う冷却性能志向のユーザーにとって、魅力的な選択肢となりそうだ。

【表1】
日本サーマルティク「Frio Extreme」製品スペック
メーカー日本サーマルティク
フロータイプサイドフロー型
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン56枚+56枚
サイズ148.2×151×160mm(幅×奥行き×高さ)
重量1,230g
付属ファン140mm径ファン ×2
電源:4ピン(専用ファンコントローラ付属)
回転数:1,200rpm ~ 1,800rpm
風量:106.2CFM(最大)
ノイズ:39dBA(最大)
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1