■瀬文茶のヒートシンクグラフィック■
初めまして、AMD FX-8150を発売翌日に焼いたT使いこと瀬文茶(せぶんちゃ)と申します。本連載では、ペン立てとヒートシンクを愛してやまない筆者の独断と偏見で選んだ、美しくも高性能なヒートシンクを紹介していきます。
オーストリアのCPUクーラーメーカーNoctua(ノクチュア)のハイエンドCPUクーラー「NH-D14 SE-2011」を紹介する。今回の購入価格は8,980円だった。
●NH-D14をベースにしたLGA2011専用モデル「NH-D14 SE2011」は、Noctuaが2008年にリリースした「NH-D14」をベースに、Intelの最新ソケットLGA2011に対応した最新モデルだ。ソケット対応はLGA2011のみとなり、「NH-D14」がサポートしていたIntelの旧ソケットやAMD系のソケットには取り付けられない。ただ、ヒートシンク側のリテンション周りに変更はないため、既に所有しているのであれば「NH-D14」付属のリテンションは利用できる。
まずはヒートシンクの構成から見ていこう。表面にメッキ処理が施された銅製のベースユニットが受け取った熱は、ベースユニットに横一列で配置された6mm径ヒートパイプ6本を通じて、アルミニウム製放熱フィン42枚で構成された放熱フィンブロックへと伝わる。サイドフロー型に分類されるヒートシンクは、2ブロックの放熱フィンブロックの中心にファンを配置するミッドシップレイアウトだ。
標準構成の「NH-D14 SE2011」は、放熱部の中心に大口径の140mm径ファンを搭載し、その吸気側に120mmファンを搭載。フィンブロックのサイズより口径の大きい140mm径ファンを中心に配置することで、放熱フィンと合わせて周辺パーツの冷却も行なう狙いがある。140mm径ファンの吸気側に配置された120mm角ファンは、スムーズなエアフローの実現をサポートすることで放熱を促進する。また、サイズを120mm角に抑えたことで、ヒートシンク搭載メモリとのクリアランスも確保されている。
標準ファンは2基ともPWM制御に対応したNoctuaブランドの新型ファンを採用した。ベースとなった「NH-D14」は回転数の固定されたファンを採用していたが、PWM制御への対応によりCPU温度に応じたファン回転数の制御が可能となった。また、同梱の「Low-Noise Adaptor」と組み合わせることで回転数を最低で300rpmまで抑えられるようになり、静音動作も可能だ。
Noctua NH-D14 SE2011パッケージ |
Noctua NH-D14 SE2011本体 |
Intel LGA2011用リテンション |
PWM制御対応の140mm径ファン「NF-P14 PWM」 |
PWM制御対応の120mm角ファン「NF-P12 PWM」 |
ファン用のオプションケーブル |
「NH-D14 SE2011」の魅力は細部まで作り込まれたヒートシンクだ。6mm径ヒートパイプを横一列に配置するベースユニットは、ヒートパイプ形状に合わせた溝を彫って挟むことにより、ヒートパイプの変形による熱輸送能力の低下を防いでいる。また、ヒートパイプとベースユニット、放熱フィンの接続部にはろう付けが施されており、各接続部の熱伝導を高める工夫がなされている。表面に施されたニッケルめっき処理はムラなく美しい仕上げで、ハイエンドCPUクーラーらしい高級感のあるヒートシンクに仕上がっている。
放熱部にはファンの振動がヒートシンクに伝わることで発生するノイズを抑える目的で、ブロック状のシリコンが取り付けられている。ヒートシンクの完成度を高めることで冷却性能の向上を目指すだけではなく、高い冷却性能と静音動作という相反する要素を高いレベルで両立しようというNoctuaのこだわりが感じられる仕様といえよう。
●高い完成度を誇るCPUクーラー
冷却性能を測るため行なったテスト(グラフ1)では、「Intel Core i7-2600K」の純正CPUクーラーで高負荷時80℃だったのに対し、「NH-D14 SE2011」は付属ファンのフル回転時で54℃、抵抗ケーブル使用時で55℃に抑えている。さらに、4.4GHz動作時でも65~66℃となっており、オーバークロック時もリテールクーラーより14~15℃も低い温度に抑えた。「NH-D14」付属のリテンションを利用したLGA1155環境でのテストなので参考程度の結果ではあるが、「NH-D14 SE2011」の優れた冷却能力を示す結果と言えるだろう。
動作時の騒音については、Low-Noise Adapter無しのフル回転動作ではある程度風切り音が発生しており、静音というにはいささか大きな動作音を発している。一方で、Low-Noise Adapter使用時はファンの通常回転数が900rpm前後に下がっているため、かなり静かに動作する。ケースに収めればほぼ気にならないレベルと言える。なお、この動作音についての印象はPWM制御無効時のものだ。マザーボードがPWM制御に対応していれば動作音はより小さく抑えることができるだろう。
ヒートシンクの外観から見て取れる細部の作り込みは、冷却性能へ確かに反映されているようだ。ただ、8,980円という価格を考えると、TDP130WのLGA2011対応CPUとはいえ、定格で使うにはコスト的にも性能的にも少々過剰な投資と言える。低速ファンでも優れた冷却能力を発揮するこのヒートシンクは、LGA2011環境で常用オーバークロックを狙いたいユーザーの期待に応えてくれることだろう。
空冷CPUクーラーの中でも大型の部類に入る製品のため、導入するにあたりCPU周辺のヒートシンクやケースとの干渉に注意が必要だ。Noctuaは自社のサイトでマザーボードとの互換性リストを公開しているので、事前に手持ちのマザーボードで利用可能か確認可能だ。購入を検討する際には参考にすると良いだろう。
【グラフ1】温度測定結果 |
Noctua「NH-D14 SE2011」製品スペック | ||
メーカー | Noctua | |
フロータイプ | サイドフロー型 | |
ヒートパイプ | 6mm径×6本 | |
放熱フィン | 84枚(42枚×2ブロック、アルミニウム製) | |
サイズ | d158mm × w140mm × h160mm(ファン搭載時) | |
重量 | 1240g(ファン搭載時) | |
付属ファン | NF-P14 PWM (Φ140mm) 電源:4pin (PWM制御対応) 最大回転数:1200rpm(抵抗ケーブル利用時:900rpm) 最低回転数:300rpm ノイズ:19.6dBA (抵抗ケーブル利用時:13.2dBA) | |
NF-P12 PWM (120mm) 電源:4pin (PWM制御対応) 最大回転数:1300rpm(抵抗ケーブル利用時:900rpm) 最低回転数:300rpm ノイズ:19.8dBA (抵抗ケーブル利用時:12.6dBA) | ||
対応ソケット | Intel:LGA2011 |