■西川和久の不定期コラム■
4月22日、パナソニックは「Let'snote」の2011年夏モデル、C1/J10/N10/S10/B10を発表した。全モデルで第2世代Core iプロセッサを搭載しアーキテクチャを一新。今回は、その中のコンバーチブル・タブレットPC、C1の量産試作機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。
●パワフルなコンバーチブル・タブレットPC
Let'snoteは、筆者がThinkPadを好きなのと同じように、「Let'snoteがいい!」と言う固定のファンが多く、円形ホイールパッドなど独特な雰囲気を持つノートPCだ。
C1を除く各モデルの大きな違いは液晶パネル。J10は10.1型、N10とS10は12.1型、B10は15.6型となる。S10/B10は2スピンドルのノートPC。第2世代Core iプロセッサを搭載したことにより、バッテリ駆動時間も伸びている。また、Windows 7は全てService Pack 1適用済み。さらにInternet Explorer 9.0までインストール済みの状態で出荷される。
そして今回ご紹介するC1は冒頭に書いたように、コンバーチブル・タブレットPCであり、12.1型の画面が回転し、マルチタッチやペン入力にも対応する特徴を持つ。主な仕様は以下の通り。
【表】Let'snote C1の仕様CPU | Intel Core i5-2520M vPro (2コア/4スレッド、2.5GHz/TB 3.2GHz、キャッシュ 3MB) |
チップセット | Intel QM67 Express |
メモリ | 4GB(1.5V/PC3-8500/DDR3 SDRAM)/2スロット空き1/最大8GB |
HDD | 320GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Professional(64bit)Service Pack 1 |
ディスプレイ | 12.1型液晶ディスプレイ(非光沢)/コンバーチブル・タッチパネル、 1,280×800ドット(WXGA) |
グラフィックス | Intel HD Graphics 3000(CPU内蔵)、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、WiMAX、Bluetooth 2.1+EDR |
その他 | USB 2.0×3、SDカードスロット(UHS-I対応)、Type2 PCカードスロット、 マイク入力/オーディオ出力、セキュリティチップ(TPM) |
サイズ/重量 | 299.2×226.5×30.6~44.3mm(幅×奥行き×高さ)/ 約1.46kg(シングルバッテリ時) |
バッテリ駆動時間 | 約7時間 |
店頭予想価格 | 20万円前後 |
プロセッサは、Core i5-2520M vPro。2コア4スレッド、クロックは2.5GHzでTurboBoost時3.2GHzまで上昇する。チップセットはIntel QM67 Express。ノートPCとしては一般的なIntel HM65 Expressではなく、Intel vProやIntel AMT 7.0、Intel RST+RAIDなどに対応した上位チップセットとなる。メモリは4GB×1。スロットは2つあるので、1スロット空きで、最大8GB搭載可能だ。
OSは64bit版のWindows 7 Professonal、そしてService Pack 1適応済。SP1はWindows Updateで導入可能であるが、セットアップに結構時間がかかるため、初めから入っているのはポイントが高い。
液晶パネルは、「トリプルヒンジ構造」に加え、静電式マルチタッチパネルと、ペン入力に対応した電磁誘導方式ペンセンサー(デジタイザ)にも対応。厚さ0.21mmのLCDガラス、0.7mmのタッチパネル、0.5mmのデジタイザ基板と、薄さにこだわった設計だ。ご覧のように一見、普通のノートPCと変わらない仕上げになっている。解像度は1,280×800ドット。ノングレア(非光沢)で映り込みが無く扱いやすい。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 3000。外部出力はミニD-Sub15ピンのみ。デジタル出力が無いのは少し気になる部分だ。
ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet。無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 2.1+EDR、そしてWiMAXも内蔵している。最近では随分対応エリアも広がったこともありWiMAX対応は嬉しい限りだ。
その他のインターフェイスは、USB 2.0×3、UHS-I高速転送対応のSDカードスロット、Type2 PCカードスロット、マイク入力/オーディオ出力、セキュリティチップ(TPM)など。PCカードスロット搭載は主に業務用途によるものだろう。ただJ10とS10、N10には搭載しているUSB 3.0が、C1に無いのは残念な部分だ。
バッテリは独特の構造で、カートリッジ式で2スロット。ホットスワップにも対応している。1バッテリで駆動約7時間。2バッテリで約14.5時間。なかなかのタフネスぶりと言える。
サイズは299.2×226.5×30.6~44.3mm(幅×奥行き×高さ)。重さはシングルバッテリ時で約1.46kg、デュアルバッテリ時で約1.67kgだ。
特徴的なのは、軽さと堅牢性を併せ持つ「逆ボンネット構造」を採用。通勤ラッシュ時の混雑を想定した100kgf加圧振動試験や「落下」に対して一般的な机と同じ76cmの高さからの落下試験、30cmの高さからの自由落下試験(非動作時)を行ない強度のチェック。更にキーボードは全面防滴。加えて水をこぼしても、内部に水が入り込みににくく、外に流れ出るウォータースルー構造などを採用し、より安心して使えるボディに作られている。この点は、同社ならではのこだわりと言えよう。
店頭予想価格は20万円前後。Core i5-2520M vPro搭載機+コンバーチブル・タブレットPC+そのほかいろいろな工夫が盛りだくさんだと考えた場合、特別高価と言うわけでもない。
【動画】ノートPC、コンバーチブル、タブレットPCへ変身させているが、トリプルヒンジ構造は少し硬め |
届いた時、箱を持ち上げ「空かな!?」と思ったほど軽かった。スペック上は、シングルバッテリ時約1.46kgと、少し前にご紹介した「ThinkPad X220 4290RW4」(約1.46kg)と同じなのだが、箱から取り出し、本体だけ持ってみても軽い印象は変わらない。とにかく軽いというのが第一印象だ。
トップカバーは先に書いたように、逆ボンネット構造になっている。メタリックで、ギラギラ感は無く、落ち着いた雰囲気で好印象。指紋など全く目立たず使いやすい。
ノングレア(非光沢)の液晶パネルは、視野角は上下左右結構広く良好だ。明るさ、コントラスト、発色もなかなか良い。トリプルヒンジ構造は、しっかり動き、固定できるのが良い点であるが、掲載した動画からも分かるように、ストッパーがあるため少し硬く、スッと回転する雰囲気では無い。ただこの点は強度との兼ね合いもあるため、仕方ない部分だろう。
1枚板のプレートのみで構成したキーボードは「薄さと軽さが特徴」と、同社のホームページにはあるが、個人的には全体的にたわむのであまり好みではなかった。とは言え、キーピッチは19mm確保されているため、キー入力自体は快適に行なえる。
同社独特の円形ホイールパッドは、自然な位置に配置され、パッド部分もボタン部分も使いやすく、Let'snoteファンが多いのも頷ける。
音に関しては、モノラルスピーカーなので、もともとあまり重要視していないと思われる。最大出力にしても音質にしてもとりあえず音が出る範囲だ。
逆に良好だったのは、ノイズ、振動、そして熱。特にノイズと振動に関しては、衝撃保護用にHDDの周囲を衝撃緩衝材(ダンパー)で包んだり、ケース底面に低反発ダンパーをセットしている関係もあるだろうか。全く感じず、非常に快適だった。
●豊富なユーティティに支えられた使い易さ初期起動時は、左側にそれなりのショートカットが並び、WinZipやIntel Wireless Displayのセットアップがあるのが印象的だ。
HDDは、320GB/5,400rpm/キャッシュ8MBの「HTS543232A7A384」を搭載。C:ドライブ1パーティションで、約286GBが割当てられている。空き容量は261GB。WiMAXはIntel Centrino WiMAX 6250アダプタ。
起動時のデスクトップ。上のバーは[Fn]キーを押すと表示される。Windows 7はService Pack 1が導入済みだ | デバイスドライバ/主要なデバイス。Intel Centrino WiMAX 6250アダプタ搭載。HDDはHTS543232A7A384(320GB/5,400rpm/キャッシュ8MB) | C:ドライブ1パーティション。約286GBが割当てられている |
プリインストール済みのソフトウェアは、「ネットセレクター2」、「ホイールパッドユーティリティ」、「手書きユーティリティ」、「Hotkey設定」、「画面回転ツール」、「透明ボード」、「ズームビューアー」、「PC情報ビューアー」、「PC情報ポップアップ」、「Dashboard for Panasonic PC」、「NumLockお知らせ」、「プロジェクターヘルパー」、「Wireless Manager mobile edition 5.5」、「クイックブートマネージャー」、「電源プラン拡張ユーティリティ」、「無線切り替えユーティリティ」、「セキュリティ設定ユーティリティ」、「バッテリ残量表示補正ユーティリティ」、「Fn Ctrl機能入れ換えユーティリティ」など、豊富なツール群を備える。画面キャプチャからも分かるように、あまりゴテゴテした雰囲気では無く、シンプルにまとめられ個人的には好きなパターンだ。
中でも「透明ボード」は、本機独特なアプリケーションと言える。表示しているWebページやいろいろなデータの上に、透明なシートがあるイメージで、それに対してタッチやペンでドローでき、画面ごと保存できる。これに関しては動画を掲載したので(うまく書けていないが)参考にして欲しい。
そのほか、「Internet Explorer 9.0」、「インテル PROSet/Wireless Software」、「インテル ワイヤレス・ディスプレイ・ソフトウェア」、「Infineon TPM Professional Package V3.7」、「Bluetooth Stack for WindowsR by TOSHIBA」、「WinZip 14.5 日本語版」、「ATOK for Windows 無償試用版」、「キングソフト辞書」、「i-フィルター 6.0(30日お試し版)」、「マカフィー・PCセキュリティセンター」、「Windows XP Mode」などがプリインストールされる。IE 9.0が導入済みなのが特徴的と言えよう。
ホイールパッドユーティリティ | 電源プラン拡張ユーティリティ | 無線切り替えユーティリティの環境設定 |
画面回転ツール | プロジェクターヘルパーの設定 | Dashbord for Panasonic PC |
【動画】透明ボード。撮影の都合上、ノートPCの形状でペン入力しているため少しぎこちないが、タブレット形状であればもっとスムーズに書ける |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.4。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 4.4、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 5.9。以前掲載した同じプロセッサを搭載する「ThinkPad X220」と比較して、ゲーム用グラフィックス 6.1以外は良い結果となっている。ただし対32bit版との比較なので、64bitか32bitかの違いが出ている可能性もある。
CrystalMarkは、ALU 43150、FPU 44751、MEM 21765、HDD 9849、GDI 13997、D2D 1885、OGL 2753。同じく「ThinkPad X220」と比較して、こちらはMEM、D2D、OGLが若干低い値となった。とは言え、Core i5-2520M vProと内蔵Intel HD Graphics 3000の組合せで大幅な違いがあるわけでは無い。
BBenchは、「電源プラン拡張ユーティリティ」を「パナソニックの電源管理(省電力)」に設定し、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果。バッテリの残5%で18,895秒(5.2時間)だった。
スペック上の約7時間とまでは届かなかったが、常にネットアクセスしていので、この環境下においては、他のPCも含め全体的にスペックより短いケースが多い。それでもバッテリ2パック搭載すれば倍の10時間越えとなり、1日中使用しても問題無いレベルとなる。
以上のように「Let's Note CF-C1」は、前モデルの特徴をそのまま引継ぎ、第2世代Core iプロセッサでグラフィックスと共にパワーアップ。メモリ倍増の4GB、そしてHDDも容量が増え、より魅力的なコンバーチブル・タブレットPCとなった。
主に業務用途だと思われるが、国産の品質やサポートを期待しつつ、Windows 7搭載機でコンバーチブルなタブレットPCを求めている企業にピッタリな1台と言えよう。