■西川和久の不定期コラム■
その昔、単機能インクジェットプリンタが数万円していた時代もあったが、今やハイエンドの複合機でも4万円前後。これでも随分安くなったと言う印象を受けるが、今回ご紹介するのは、何と販売価格が9千円台のインクジェット複合機だ。ちょとした飲食代よりも安い複合機で何ができるのか、早速レポートをお届けする。
●PX-403Aの仕様
同社インクジェット複合機のラインアップは、染料系インクが主のEPシリーズと顔料系インクのPXシリーズと2種類に分かれている。現在PXシリーズは、PX-673F/PX603F/PX-503A/PX-501A、そして今回ご紹介するPX-403Aの5モデル。何と直販価格9,980円で、一番安価なモデルだ。前モデルに相当するPX-402Aとほとんど仕様は同じであるが、インクシステムが耐光性45年、耐オゾン性30年の「つよインク200X」へと改良されている。
なお、「エプソン、15年ぶりのモノクロインクジェットプリンタ」の記事によると「スキャンデータのPDF化」も機能強化点として挙げているが、PX-402AのPDFマニュアルをダウンロードして確認したところ、もともとPDF化には対応しているようだ(NPD4021_00.PDF/50ページ)。
【主な仕様】
・顔料独立4色インクシステム、MACH方式/5,760×1,440dpi
・主走査:600dpi/副走査:1,200dpi CISセンサー搭載
・後ろトレイ A4:最大100枚、ハガキ:最大50枚
・印刷スピード約144秒(L判・写真用紙<光沢>)
・USB×1
・434×327×185mm(幅×奥行き×高さ)/約4.6kg
・直販価格9,980円
インクカートリッジは4色独立。4色パック/IC4CL62、ブラック/ICBK62、シアン/ICC62、マゼンタ/ICM62、イエロー/ICY62となる。PX-402Aが4色パック/IC4CL46など、最後の数字が46系なので、この部分が最大の違いとなる。
後ろトレイは、A4で最大100枚、ハガキで最大50枚。写真からもわかるように、使わない時は折りたため、フタとなっているため、ホコリなどが溜まり難い。加えて給紙口カバーがあり、用紙をセットしている状態でも内部にものが入り難くなっている。排紙トレイは前面だ。
スキャナ基本部は、卓上型カラーイメージスキャナで、LED光源、主走査は600dpi、副走査は1,200dpiのCISセンサーを搭載している。
インターフェイスはUSBのみ。無線/有線LANは非搭載。またメディアスロット、操作用の液晶ディスプレイなども無く、操作ボタンもいたってシンプル。インクジェット複合機の基本中の基本的な仕様となっている。
なお、このPX-403Aと似たなボディにメディアスロット、デジカメなどに接続できるUSBポート、液晶ディスプレイが付いた、PX-501Aというモデルもあるが、こちらインクシステムが旧タイプの46系のままだ。
接続はUSBのみ、給紙カセットも無く、後ろトレイで、前面排出。初期のインクジェットプリンタにフラットベッドスキャナが乗っかったイメージと言うのが第一印象だ。パーソナル用途であれば十分なケースも多いだろう。
サイズ434×327×185mm(幅×奥行き×高さ)、重量約4.6kgのボディは、特別コンパクトではなく、ある程度の設置場所が必要になる。ただ、後ろトレイはあまり倒れず、直角に近いため、後方のスペースはそれほど必要としない。
カラーはホワイトで汚れが目立ちそうだが、光沢ブラックと違って、指紋あとが気になることはない。ただ外装やパネルなどが結構薄く、少し重めのものを落とすと割れそうな感じがするものの、価格が価格なので、割り切りも必要だ。
作動音は動画を参考にして欲しいが、結構騒音が出る。夜中の印刷は気になりそうな勢いだ。ただ、プリンタドライバ側に「静音作動モード」があり、これにチェックを入れるとそれなりに静かになる。ただし、単独使用時には効かないのが残念なところ。
●単独使用/コピーこのプリンタはデジカメなどを接続するUSBポートや、メディアスロットが無いため、単独でのプリント、スキャンには対応していない。単独での機能は、カラーコピーかモノクロコピーのみとなる。また、液晶ディスプレイも無いため、細かい指示などは出来ず、スキャンしたデータをカラーかモノクロで一部印刷するだけの、非常にシンプルなもとなっている。
速度はA4モノクロコピーでボタンを押してから約50秒、A4カラーコピーでボタンを押してから約1分45秒と、オフィス向けモデルほど高速ではないが、ホーム用途でたまに利用する程度でれば許容範囲か。
【動画1】A4モノクロコピー/ボタンを押してから約50秒 |
【動画2】A4カラーコピー/ボタンを押してから約1分45秒 |
●セットアップ
対応OSは、Windows 7/Vista/XP、32/64bit対応、Mac OS Xは10.4.11以降となっている。
PCへのセットアップはネットワーク関連が無く、USBのみでの接続なので非常に簡単だ。付属のCD-ROMからプログラムを起動し、「簡単インストール」か「選んでインストール」を選択する。
今回は「簡単インストール」でセットアップした。何度か使用許諾の「同意する」をクリックする必要はあるものの、基本的にインストール中の作業は不要だ。
全てのモジュールをインストールした後、接続先の設定となり、ここでUSBケーブルを接続(後でも接続可)、自動的に認識し、準備完了となる。一度リブートが必要だが、その前に「MyEPSON会員登録」を済ますのもいいだろう。
デスクトップには「EPSON Scan」、「EPSON PX-403Aユーザーズガイド」、「E-Photo」、「MyEPSON Connet」のショートカットが新たに追加される。
Epson Install Navi Ver.5 | ソフトウェア一覧(選んでインストール) | 簡単インストール |
インストール中 | 接続先設定 | 製品を認識 |
完了/リブートが必要 | MyEPSON会員登録 | デスクトップのショートカット |
●PCからの使い勝手
単独使用ではコピーしか使えないため、PCからの使い勝手が重要となる。とは言え、同社は以前から優秀なドライバやEPSON Scan、その他ユーティリティを持っているため、安心して利用できる。
インストール済みのソフトウェアは「Epson Scan」、「プリンタドライバ」、「電子マニュアル」、OCRの「読んde!!ココパーソナル」、スキャナビボタンの処理を設定する「Epson Event Manager」、写真管理/印刷ソフトの「E-Photo」、写真をいろいろなフレームで飾って印刷できる「PRINT Image Framer」、「MyEPSON Connet」。
「Epson Scan」は、スキャン用のソフトウェアだ。保存形式はJPEG/BITMAP/Multi-TIFF/PDF/PRINT Image Matching II(JPEG)/PRINT Image Matching II(TIFF)/TIFFに対応している。またモードは全自動モード/ホームモード/プロフェッショナルモードの3つあり、用途や原稿に応じて使い分けることができる。画面キャプチャはプロフェッショナルモードであるが、通常、ここまでのコントロールは必要無いので、全自動モードかホームモードで十分だろう。
プリンタドライバは随分昔からパネルデザインがほとんど変わらず、完成度が高いことが分かる。電子マニュアルはHTMLベースでWebブラウザを起動する。
Epson Event Managerは、本体操作パネルの[スキャン]ボタンを押した時のアクションを設定できる。標準ではスキャンしてPDFへ-A4/カラー/300dpi/PDF/Picturesに保存となっているが、アクションの詳細設定/アクションの管理などから自由に変更可能だ。
E-Photoは、写真の印刷枚数設定はもちろん、レイアウトやオートフォトファイン!EX、小顔補正や美肌補正のナチュラルフェイスなどを含む画像補正、さまざまな設定や加工が行なえる便利なツールだ。フレームにも対応。MyEPSONへログインし、新しいフレームをダウンロード、利用することもできる。
いずれのソフトウェアも上位機種で使われているものであり、安価な複合機だからと言って、(ハードウェア的な制限が無い限り)機能が劣ることはなく、非常に充実した内容になっている。日頃あまり印刷せず、スキャンやコピーもたまに……と言った使い方ならこのPX-403Aで十分だろう。
Epson Scan | デバイスとプリンタ/PX-403A | プリンタドライバ/詳細設定 |
電子マニュアル | 読んde!!ココパーソナル | Epson Event Manager |
E-Photo | E-Photo/フレームダウンロード | MyEPSON Connet |
【動画】E-PhotoからL判/フチなし写真の印刷。5分ほどかかるいため、途中をカットしている。もともとあまり速くないエンジンの上にフチなし印刷と言うこともあり少し遅い |
普通紙モノクロ/カラー、L判カラー。モノクロのグラデーションがにじまず美しい。L判のカラーは十分写真画質だ |
以上のようにPX-403Aは、非常にシンプルで単独使用時、出来ることは限られるが、プリント/コピー/スキャンの機能を持ち、「つよインク200X」となった全色顔料系インクカートリッジ、同社の強力なユーティリティなど、ツボを押さえた仕様でしかも販売価格が9千円台と破格。安価なインクジェット複合機を求めているユーザーにピッタリの1台と言えよう。