西川和久の不定期コラム

SpursEngine搭載オールインワンPC!
東芝「dynabook Qosmio DX/98M」



 同社のdynabookと言えばノートPCと言う認識だったが、7月中旬よりdynabookの冠が付いたオールインワンPCが発売となる。dynabookで培ったモバイル技術を取り入れAV機能を充実させたこのマシン、その仕上がりが気になるところだ。量産試作機が届いたのでレポートをお届けする。

●SpursEngine標準搭載

 ご存知のように、「daynabook」は基本的にノートPCのブランド名。実際同社のHPで調べると、「libretto」から上位の「daynabook Qosmio V65」まで、サイズは大小さまざまあるものの、全てノートPCだ。ところがQosmio V65の更に上位としてオールインワンPCの「Qosmio DX/98M」がいきなり並べられている。一見「あれ!? 」っと思ってしまうが、薄型のオールインワンPCとノートPCは、使用しているパーツなど共通点も多く、得意の技術を応用できると言う意味では同ジャンルになるのだろう。

 現在のところこの形をしたPCは、今回ご紹介するモデル1つだけ。今後、反響などで更に追加される可能性は十分考えられる。主な仕様は以下の通りだ。

Qosmio DX/98Mの仕様
OSWindows 7 Home Premium 32/64bit版(セレクタブル)
CPUIntel Core i5-450M(2.40GHz/TB時最大2.66GHz、3MB L3キャッシュ)
映像用プロセッサTOSHIBA Quad Core HD Processor〈SpursEngine〉
チップセットIntel HM55 Express
メモリ4GB(2GB×2使用/2スロット、空き0)、最大8GB
HDD1TB(7,200rpm)
液晶パネル21.5型ワイド(16:9) FHD TFTカラー Clear SuperView液晶、1,920×1,080ドット、HDMI入力、D4端子入力
グラフィックスIntel HD Graphics
オプティカルドライブBlu-ray Discドライブ
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n
インターフェイスUSB 2.0×6、地上デジタルTVチューナ、地上デジタルアンテナ端子(F型)×1、マイク入力/ヘッドフォン出力、同軸デジタルオーディオ出力端子、B-CASカードスロット、メモリカードリーダ、Webカメラ
その他ワイヤレス日本語キーボード、マウス、リモコン、オンキヨー製ステレオスピーカー内蔵、Office Home and Business 2010
サイズ/重量531×190×405mm(幅×奥行き×高さ)/重量約8.5kg

 CPUはIntel Core i5-450M。クロック2.40GHz、Turbo Boost時2.66GHz、3MB L3キャッシュを搭載している。チップセットは、Intel HM55 Express。メモリスロットが2つで2GB×2の計4GBを搭載済み。最大8GB。グラフィックスは内蔵のIntel HD Graphicsだ。

 OSは32bitと64bitのWindows 7 Home Premiumをセレクタブル。今回送られて来たマシンは32bit版が入っていた。アプリケーションの互換性は32bit版の方が有利であるが、4GB中、約1GBのメモリ空間が無駄になる。本機の用途を考慮すると64bit版で特に問題無いだろう。

 ドライブは7,200rpmの1TB HDD、そしてBlu-ray Disc(BD)ドライブを搭載している。動画を扱う場合、HDDの容量は大きければ大きいほど良いので、1TBあればそれなりに使える環境だ。ただし、eSATAやUSB 3.0のポートは無いので、これ以上の容量が必要になった場合は、USB 2.0で接続することになり、容量不足は解消するものの転送速度的に不利となる。

 液晶パネルは、21.5型ワイド。解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応となる。加えて他の機器からこのパネルが使えるよう、HDMIとD4端子入力を備えている。逆にHDMI出力など、他のモニタへ映す手段は無く、マルチディスプレイを構成したい時には、DisplayLinkなどUSB経由のディスプレイが必要となる。

 ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは搭載していない。インターフェイスは、USB 2.0×6。内左側面下側の1ポートは、電源がOFFでも電源供給できるため、例えばiPhoneなどを充電できる。そのほかに、地デジチューナ、Webカメラ、メディアリーダ、オーディオIN/OUT、同軸デジタルオーディオ出力端子、地上デジタルアンテナ端子(F型)などを備える。デジタルオーディオ出力が光ではなく、同軸なのがちょっと珍しいかも知れない。また、スピーカーはオンキヨー製ステレオスピーカーを内蔵。高音質が期待できる。

 キーボード、マウス、リモコンは無線式となっている。従って必要最低限はACアダプタからのケーブルのみとなり、机の上はスッキリする。

 そして本機最大の特徴は、映像用プロセッサ「TOSHIBA Quad Core HD Processor〈SpursEngine〉」を搭載していることだ。動画のエンコードやアップコンバート、画像認識など、CPUに負荷をかけずに、CPUで処理する以上に超高速で処理可能となる。筆者は以前、外付けのユニットを試用したことがあり、驚くほどの処理速度だった。なかなか期待できそうだ。

フロント。右側下に電源ボタンや各LEDなどを配置。上中央にWebカメラリア。右側にメモリスロット。ネジ1本で簡単に外れるリア(コネクタ部/左)。D4端子入力とHDMI入力
リア(コネクタ部/右)。電源入力、同軸デジタルオーディオ出力、地上デジタルアンテナ端子(F型)、Ethernet、USB 2.0×4左側。メディアカードリーダ、ヘッドフォン出力、マイク入力、USB 2.0×2。下のUSBポートはPCの電源OFFでも電源を供給している右側。上側に明るさ、音量などを調整するボタン、下にBDドライブ
右側上部。ディスプレイOFF、入力切替、輝度+、輝度-、音量+、音量-B-CASカード設置場所。B-CASの文字が手前になるように差し込む付属のキーボード/マウス/リモコン/ACアダプタは全て無線式。シンプルなブラックベースだ。ACアダプタは長辺17cmある

 箱から取り出した印象は「意外とコンパクト!」だった。これは、液晶パネルのサイズが21.5型ということもあり、一般的な23型のオールインワンPCと比較して一回り小型のため。仕上げなどはキーボードやマウス、リモコンまで含めさすが国内メーカー。何も不満点は無く、シンプルの中に高級感が漂う雰囲気だ。十分AV機器の貫禄がある。

 21.5型のパネルは光沢タイプで、輝度を最大にすると非常に明るく必要十分以上。発色も良くコントラストは高い。掲載した写真でもその良さが分かるのではないだろうか。画面チルトは下向き約5度、上向き約20度の上下に25度動かせる。ただし左右は固定だ。

 振動やノイズ、熱に関しては、dynabookで培ったノウハウが要所要所で使われているのだろう。全く気にならないレベルとなっている。メモリは裏のパネルをネジ1本外すことでアクセスでき、メンテナンス性は高い。ただ既に2GB×2の計4GB搭載しているので、通常用途で増設する必要は無いと思われる。

 インターフェイスの多くはリアパネル側に配置されている。従ってケーブルが液晶ディスプレイの横からはみ出して見えるようなことは無い。左側にメディアカードリーダ、そしてUSB 2.0ポートが2つあるので、データの読み込みや接続はこちらを使えばOKだ。

 オンキヨー製ステレオスピーカーはサイズから重低音は望めないものの、抜け、バランスも良い上に、解像度も高く、十分コンテンツを楽しめる。音量もTVを観る距離まで離れても十分な出力だった。

 付属無線式キーボード、マウス、リモコンは、サイズ的にも調度良く扱い易い。ただキートップが完全にフラットなので、慣れないとちょっと違和感があるかも知れない。

 電源は内蔵ではなくACアダプタとなる。約170×40×80mm(幅×高さ×奥行き)と結構大きく、場合によっては邪魔になるのが残念なところ。

 以上のように、dynabook初のオールインワンPCとして、その冠に恥じないハードウェアに仕上がっているのは見事。まだまだ余力のありそうな雰囲気だ。

●強力な映像処理能力

 デスクトップの解像度は、フルHDの1,920×1,080ドットと十分広く、コンテンツはもちろん、文字中心の作業もゆったりこなせる。左側にはプリインストールされたアプリケーションのアイコンがいっぱい並び、右側にはウィジェットと、いかにも同社っぽい雰囲気だ。OSは32bit版のWindows 7 Home Premium。

 HDDは7,200rpmのHDS721010が、BDドライブはUJ240ESを搭載。ドライブのパーティションはC:ドライブとD:ドライブの2つあるものの、容量から実質C:ドライブでの運用となる。そしてデバイスマネージャにはTOSHIBA Quad Core HD Processorの名前が見える。

デスクトップ。いろいろなアプリケーションのアイコンが所狭しと並んでいる。画面右上のウィジェットはTOSHIBA Quad Core HD Processor用のパフォーマンスモニタデバイスマネージャ/主要デバイス。HDDはHDS721010。BDドライブはUJ240ES。リストにTOSHIBA Quad Core HD Processorが見えるドライブ構成。C:ドライブとD:ドライブの2パーティション。C:ドライブに約864GB割当てられている

 プリインストールのアプリケーションは山盛りだ。ATOK 2010 for Windows(60日間無償試用版)for TOSHIBA、BroadNewsStreet、マカフィー サイトアドバイザプラス(30日期間限定版)、i-フィルター 5.0(90日版)、駅探エクスプレス(90日版)、乗換案内 VER.5、筆ぐるめ Ver.17 for TOSHIBA、デジタル全国地図いつもNAVI(90日版)、TOSHIBA Bulletin Board、TOSHIBA ReelTime、FlipViewer、ebi.BookReader3Jなど、期間限定版が多く入っている。

 マルチメディア系は、ホームネットワークプレイヤー(CyberLink SoftDMA for TOSHIBA)、TOSHIBA Media Controller、TOSHIBA Media Control Plug-in、テレビNavi ガジェット、TOSHIBA Net Movie Player、Corel Digital Studio for TOSHIBA、Super LoiloScope 30日体験版、CyberLink MediaShow 5 for TOSHIBA、おまかせフォトムービー、TOSHIBA DVD PLAYER、WinDVD BD for TOSHIBA、TOSHIBA SD VIDEO PLAYER、TOSHIBA Disc Creator、TOSHIBA Recovery Media Creator、LaLaVoice、Dolby Advanced Audio、MaxxAudio、Qosmio AV Center(地デジ持ち出し機能対応)。Blu-rayビデオの再生はもちろん、書き込み、動画の編集、DNLAプレーヤー、コンバータなど、これだけあると全部使いこなせるユーザーは少ないのではと逆に心配になるほどの数だ。

 そのほかユーティリティーなどは、ウイルスバスター 2010 90日無料版、PC引越ナビ、東芝ファイルレスキュー、ハードディスクデータ消去機能、SmoothView、ぱらちゃんVersion 2、ConfigFree、無線LANらくらく設定、東芝指紋認証ユーティリティ、TOSHIBA Face Recognition、PC診断ツール、東芝スリープユーティリティ(東芝スリープアンドミュージック/東芝USBスリープアンドチャージ対応)、TOSHIBA ecoユーティリティ、東芝PCヘルスモニタ、東芝HDD/SSDアラーター……など。

TOSHIBA ReelTime。最近使ったドキュメント、写真、動画などのデータを時系列で表示するTOSHIBA ecoユーティリティ。OFFからONにしたところ10Wほど消費電力が低下したホームネットワークプレイヤー。DLNAプレイヤー。事務所内のDNLAサーバーを認識した

 そして本機固有のSpursEngine対応アプリケーションとして、超解像技術〈レゾリューションプラス〉(SpursEngine 対応)、顔deナビ、ハンドジェスチャリモコン、東芝グラフィカルビデオライブラリ、TOSHIBA Upconvert Plug-inがある。

 まず1番効果が分かりやすいのは、DVDビデオとYouTubeの再生だ。例えばDVDビデオを最近の液晶TVなどで再生すると解像度が低く、アナログTVで観るより観辛いと思った人は多いと思う。YouTubeも最近こそ720pや1080pの動画に対応しているが、まだまだ480p程度のものもあり、フルサイズで再生すると解像度不足でモヤモヤして見える。

 これをSpursEngineのパワーを使い、リアルタイムでアップコンバートし、解像感を向上することができるのだ。DVDビデオに関しては著作権上、アップコンバートした画面を掲載できないのが残念であるが、例えば髪の毛など驚くほど細かく見える。余談になるが、以前筆者が撮影したグラビアアイドルのイメージビデオもほとんどがDVDビデオ。最新の環境では画質が悪くて見る気がしなかったのだが、これなら十分鑑賞に堪えうる。他のコンテンツもまだまだDVDクオリティのものが多く、非常に魅力的な再生環境だ。

 YouTubeに関してはデモモードと言う画面左半分がオリジナル、右半分がアップコンバート後を表示できるモードがあり、その画面キャプチャを掲載した。「nVIDIA PureVideo」のロゴ右半分や下の文字列が明らかにクリアになっているのが分かる。

 ハンドジェスチャリモコンは、Webカメラから取り込んだ映像をリアルタイムで画像処理し、手を認識、そのジェスチャによって、リモコン代わりにできる機能だ。慣れは必要であるものの、かなりスムーズに手の動きを判別している。

 「顔deナビ」は、この機能が使えるほど地デジを録画できなかったので試していないが、録画した番組の出演者などの顔をインデックスとして一覧表示、見たいところをピンポイントで探し出し、再生することができる。

アップコンバートしながらDVDビデオ再生。アップコンバート後の画像をお見せできないのが残念だが、髪の毛などが驚くほど繊細に見える。パフォーマンスメーターは4つともフルだ超解像技術〈レゾリューションプラス〉の効果。左半分がオリジナル、右半分がレゾリューションプラスONハンドジェスチャリモコン。処理が軽いのかパフォーマンスメーターに少し余裕がある

 SpursEngine使用時の動画エンコード速度は、Windows 7におまけで入っている「野生動物.wmv」を使ってテストした。720pで30秒の素材だ。H.264/フルHDへの変換が20秒(SpursEngine OFFで40秒)、H.264/480pへの変換が9秒(SpursEngine OFFで14秒)。どちらも素材より短い時間で処理が終わり、SpursEngine OFFの時と比較して約1.5~2倍の差が出ている。30分から1時間の素材になるとこの差は決定的な違いとなるだろう。

 この処理能力を使い、HDビデオカメラ(AVCHD形式)で1時間撮影した映像を1時間以下でBDに保存、地デジ(TSモード/17Mbps)をXPモード(10Mbps)/SPモード(8Mbps)/LPモード(5.5Mbps)/EPモード(2.0Mbps)でリアルタイムに変換し録画、iPhone/iPod用に高速エンコードなど、用途はいろいろ考えられる。動画処理を中心にPCを使っているユーザーにとっては魅力的な機能だ。

Windows 7付属のサンプル動画をH.264/フルHDへ変換。変換時間は20秒Windows 7付属のサンプル動画をH.264/480pへ変換。変換時間は9秒

 ベンチマークはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、YouTube 1080p動画再生時のCPU使用率を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.3。内訳はプロセッサ6.5、メモリ5.5、グラフィックス4.3、ゲーム用グラフィックス5.3、プライマリハードディスク5.9。Intel Core i5-450M、HM55 Expressそして内蔵Intel HD Graphicsとしては標準的な値だ。

 CrystalMarkもWindows エクスペリエンス インデックスと同じ傾向となっている。HDDは7,200rpmなので1万超え。いずれにしても用途を考えれば十分。パワー不足になりそうなエンコードなどはSpursEngineが使えるので全く問題無い。

 GPUを使わないFlash Player 10でYouTube 1080pの動画を再生したところ、コマ落ちも無く非常にスムーズに再生された。この時、CPU使用率は30%前後。モニタがフルHDなので、ドットバイドットで見ることができる。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合4.3。プロセッサ6.5、メモリ5.5、グラフィックス4.3、ゲーム用グラフィックス5.3、プライマリハードディスク5.9CrystalMark。Intel Core i5-450Mと内蔵Intel HD Graphicsとしては平均的な値だ1080p再生時のCPU使用率。GPUを使わないFlash Player 10でもCPU使用率は30%前後


 以上のように、他社同クラスのオールインワンPCと比較して、最大の強みは何と言っても「SpursEngine」を搭載していることだろう。この画像エンジンを使うことによって、アップコンバートで映像が綺麗になったり、エンコードが劇的に速かったり、画像認識による効率アップなど、その効果は抜群。大量に動画を扱うユーザーにお勧めの1台だ。