■西川和久の不定期コラム■
エプソン「Endeavor NJ3300」
エプソンダイレクトとしては初の10キー付きで、15.6型液晶パネル、Intel Core i3-330Mのベーシックモデルが64,680円と安価な、NJ3300が4月末より受注開始となった。BTOでいろいろの組合せができる中、クラスとしてはミドルレンジに相当するCore i5-520M搭載機が届いたので、その使用感などをレポートしたい。
●多彩なBTOに安価なベーシックモデル
「Endeavor NJ3300」は、チップセットにIntel HM55 Expressを採用、CPUはCore i3-330M(2Core/2.13GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost無し)、Core i5-430M(2Core/2.26GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost時2.53GHz)、Core i5-520M(2Core/2.40GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost時2.93GHz)、そしてCore i7-620M(2Core/2.66GHz/キャッシュ4MB/Turbo Boost時3.33GHz)に対応。いずれも2コア/4スレッド、GPUのIntel HD Graphicsを内蔵している。同NJ3100シリーズはチップセットがGM45 Express、CPUにCore 2 DuoもしくはCeleronを搭載していたので、アーキテクチャが一新された。単なる安物ではなく、ちゃんと2010年仕様の製品だ。
メモリは2スロット最大4GB、ビデオ出力はアナログRGB及びHDMI、USB2.0を3ポート、有線LANはGigabit Ethernet(GbE)、BTOでIEEE 802.11n対応無線LANやBluetooh(USBタイプ)も選択できる。ちょっと珍しい点としては、eSATAが独立して1ポート(USBとコンボになっている事が多い)、そしてオーディオ出力が光デジタル出力にも対応していることだろうか。今回届いたマシンの構成は以下の通り。
Endeavor NJ3300仕様 | |
---|---|
CPU | Intel Core i5-520M(2Core/2.40GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost時2.93GHz) |
チップセット | Intel HM55 Express |
メモリ | 4GB/DDR3-SDRAM(1066MHz)/2スロット空き0、最大4GB |
HDD | 640GB(5400rpm) |
オプティカルドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 7 Ultimate(64bit) |
ディスプレイ | 15.6型 WXGA カラー液晶 、1,366×768ドット |
GPU | CPU内蔵 Intel HD Graphics、HDMI出力、アナログRGB出力 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T)、IEEE 802.11b/g/n |
その他 | USB2.0×3、eSATA×1、3in1メディアスロット、オーディオIN/OUT(光デジタル出力対応)、ExpressCard/34×1、テンキーあり |
サイズ/重量 | 378×253×37.5mm(幅×奥行き×高さ)/約2.6kg |
バッテリー駆動時間 | 約3.3時間 |
価格 | 117,180円(税込/送料別) |
特徴としては、BTOでかなり多くの組合せが可能になっていることだろう。Windowsは、Windows 7 Ultimate 32/64bit版、Professional 32/64bit版、Home Premium 32bit版、Windows Vista Business 32bit版、Windows XP Professional(Windows 7 Professionalからのダウングレード)。メモリは1GB~4GB、HDDは160GB~640GB(SATA 3Gbps 5,400rpm)、250GB、500GB(SATA 300MB/s 7,200rpm)、SSDは80GB(SATA 3Gbps MLC) Intel X25-Mから選択などとなっている。OSにWindows Vista Businessも含まれるのは企業市場を重視しているからだろうか。
最小構成例の直販価格は、Windows 7 Home Premium、Core i3-330M、HM55 Expressチップセット、1GBメモリ、160GB HDD、DVD-ROMドライブで、64,680円。もう少し現実レベルの組合せで、プラス「1GB×2の計2GB」、「11n対応無線LAN」で72,030円となる。ただし先のOS一覧からも分かるように、Windows 7 Home Premiumに限っては32bit版のみの対応だ。本体価格とは別に、送料が1,575円必要となる。
液晶パネルは、映り込みが少ない15.6型/WXGA(1,366×768ドット)ノングレア液晶(非光沢)が使われ、更に同社としては初の10キー付きモデルとなっている。いずれもビジネス用途を意識した仕様だと思われる。
ボディは基本的にブラックでまとめられているが、天板、パームレストの部分は光沢ブラック、その他の部分は非光沢のブラックになっている。この非光沢の部分は、ちょっとプラスチック感がある。逆に光沢部分はかなり指紋あとが目立つため、ビジネス用途であれば全て非光沢にするなど、もっと徹底した方がいいのではないだろうか。サイズは378×253×37.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.6kg。日頃カバンに入れ持って歩くノートPCではなく、室内で簡単に移動可能なデスクトップ替わりのイメージだ。
液晶パネルは非光沢なので映り込みが無く快適だ。またバックライトOFFでも十分見える。ただし、写真や動画などを観ると原色系の発色が弱くパンチの無い絵となる。この辺りは、業務用かホビー用かで意見が別れるところだろう。また、色温度は結構高くなっているので、用途によっては調整した方が良い。視野角はタイピングができる位置から見る限り特に問題は無い。
キーボードは10キー付きのオーソドックスなタイプで、キーピッチは主キーも10キーも19mmを確保しているため非常に入力しやすい。キーストロークも同社サイトによると2.5mmとなっている。また、10キーの[1]キーの下に[0]キーがあり、ビジネス用を意識した作りだ。ただ全体的にかなりたわむのと、主キーと10キーの間にスペースが無く、そのまま同じピッチで続いているので、慣れないとミスタッチしそうだ。
タッチパッドは、マルチタッチ(つまみズーム機能、回転機能)に対応している。パームレストと同じ素材で、段差があるタイプだ。滑りも良い。スイッチはバー1本のシーソー型となっている。タッチパッドを使わずマウスなどを接続する場合は、誤作動を防ぐよう、電源スイッチの左横にタッチパッドOFFのスイッチも用意されている。
振動やノイズ、熱などはボディが大きい分、十分吸収されているので全く気にならない。キーボードの上にある左右のスピーカーは音量は十分だ。ただ音のバランスが中・高域寄りでシャリシャリ感がある。ビジネス用途とすれば十分だろう。
●快適なパフォーマンス
CPUにCore i5-520M、OSは64bit版Windows 7 Ultimate、そしてメモリ4GBと言うこともあり、動作が非常に軽い。ビジネス用途としては十分なパワーだ。今回試していないが、この組合せならXP Modeも十分使え、アプリケーションの互換性で何か問題が発生した場合も対応できる。なおBIOSのメニューを見たところVTをON/OFFする項目は見当たらず、標準でVT/ONになっていた。
BTOでメモリ1GBからの選択ができるものの、Windows 7では容量不足、加えてシングルチャンネルとデュアルチャンネルでメモリやグラフィックスの速度が変わるので、少なくとも1GB×2の2GBのコンビネーションにした方が良い。
本機固有の設定として、左側の[Fn]キーと[Ctrl]キー、右側の[Alt]キーと[Win App]キーを入れ替える機能がある。これらに関しては電源ON時[DEL]キーを押すとBIOSが表示されるので[Advanced]メニューの中で設定可能だ。
起動時のデスクトップ。OSは64bit版のWindows 7 Ultimate。メモリ共有のGPUのため実際は3.8GB使用可能だ | デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはSAMSUNG HM641JI(640GB、5,400rpm、8MB cache) | HDDのパーテーションはCドライブワンパーティション。約593GBが割当てられている。BTOではパーティション変更サービスもある(有料) |
プリインストールされているアプリケーションとしては、同社お馴染みの「初期設定ツール」、「リカバリーツール」、「PCお役立ちナビ」などがあげられる。これらは以前「Endeavor MR6700」をレビューした時も同じだった。他社製としては「i-フィルター試用版(期限1カ月)」、「マカフィー・PCセキュリティセンター 90日期間限定版」が入っているが、BTOで「ウイルスバスター」、「ノートン インターネットセキュリティー」、「セキュリティー対策ソフトウェアなし」などの選択も可能だ。
その他BTOメニューには、「KINGSOFT Office2010 Standard」、「ATOK 2010」、「一太郎 2010」、デフラグツール、画像編集ソフトウェア、バックアップソフトウェアと言ったアプリケーションの項目も数多くある。従って用途に応じて工場出荷時からある程度のカスタマイズもできる。
初期設定ツール | リカバリーツール | PCお役立ちナビ |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見た。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は4.4。内訳は、プロセッサ6.8、メモリ5.9、グラフィックス4.4、ゲーム用グラフィックス5.2、プライマリハードディスク5.9。CPUにIntel Core i5-520M、チップセットにIntel HM55 Expressを使ったノートPCとしては標準的なスコア。CrystalMarkも同様だ。外部GPUを搭載しない限り、同じアーキテクチャのマシンとは大きくは変わらないと思われる。
BBenchは、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で12,105秒(3.4時間)だった。スペック上は3.3時間なので、ほぼそのままの値になっている。多くの場合、このテストはスペック上の1/2~2/3程度になるが、ここまで一致したのは初めてで、メーカーに対する信頼感が持てる。製品の性格を考えれば、これだけ持てば十分だろう。
YouTubeに関しては、GPU支援に対応していないFlash Player 10でも720p、1080p共コマ落ち無く再生可能だった。
たわみのあるキーボードのクオリティは少し気になるものの、キーピッチはしっかり19mmを確保。また10キーのレイアウトも「1」の下に「0」があり、ビジネス用途を意識したものとなっている。BTOでいろいろな組合せができ、一番安価なCore i3-330Mでも業務用途なら十分なパフォーマンス。加えて15.6型の非光沢液晶パネルの画面は広く見やすい。10キー付きの安価なノートPCを探している人にはピッタリの1台だ。