西川和久の不定期コラム

Core i5-430Mを搭載してハチキュッパ!
ASUS「K52F-SX005V」



K52F-SX005V

 今年に入ってビデオ機能内蔵のCore i5/i3を搭載したノートPCが数多く発表、出荷されたが、今回ご紹介するのは、2月20日に発売された15.6型の液晶パネルを搭載したCore i5のスタンダードノートPCだ。しかも価格は89,800円と安い。早速その使い勝手などをレポートしたい。


●隙のない仕様

 同社の15.6型の液晶パネル/Windows 7を搭載したモデルとして、去年11月に第一弾「K50IJ」が登場している。カテゴリ的には「多機能でありながらシンプルな魅力を備える」ベーシックノートと呼ばれ、CPUがCeleron T3000(デュアルコア/1.8GHz/キャッシュ1MB)、チップセットがIntel GL40 Expressと、心臓部分のスペックは違うものの、他の部分は2スピンドル、全部入りのネットワーク、10キー付きのキーボードなど、サイズ重量も含め良く似たノートPCだ。

 そして2月20日に発売となった「K52F」は、この心臓部をCore iプロセッサ、チップセットをIntel HM55 Expressへと変更、2010年版ノートPCとも言えるスペックに変身した。今さら説明するまでもないが、Celeron T3000を使ったシステムと比較して、CPUクロックは上がったほか、Hyper-Threading対応、Turbo Boost(Core i5のみ)対応、CPUにメモリコントローラとGPUの内蔵、HDMIへの対応など、アークテクチャ的にも大幅に変更されている。主な仕様は以下の通り。

□ASUS K52F-SX005V仕様
・CPU:Core i5-430M(デュアルコア/2.26GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost時2.53GHz)
・チップセット:Intel HM55 Express
・メモリ:4GB/DDR3-SDRAM(1,066MHz)/2スロット空き0
・HDD:500GB(5,400rpm)
・光学ドライブ:DVDスーパーマルチドライブ
・OS:Windows 7 Home Premium(64bit)
・ディスプレイ:15.6型ワイドTFTカラー液晶LEDバックライト、1,366×768ドット
・GPU:Intel HDグラフィックス、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン出力
・ネットワーク:Ethernet(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T)、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth(V2.1+EDR)
・その他:USB 2.0×3、30万画素Webカメラ、4in1メディアスロット、音声入出力、デジタルマイク、ALTEC LANSINGステレオスピーカ、テンキーあり
・サイズ/重量:380×255×34.5~35.7mm(幅×奥行き×高さ)/約2.6kg
・バッテリ駆動時間:最大3.5時間
・価格:89,800円

 CPUはIntel Core i5-430M。2コア/4スレッド、キャッシュ3MB、クロックは2.26GHzで、Turbo Boost時に2.53GHzまで持ち上がる。CPUパッケージにメモリコントローラとGPUを統合している新タイプだ。メモリは2スロットあり、2GB×2/4GBが搭載済みで空きは0となっている。またOSは、4GBのメモリ空間が無駄にならないよう、64bit版のWindows 7 Home Premiumがプリインストールされている。

 チップセットはIntel HM55 Express。モバイル用としては、上位としてQM57 Express、QS57 Express、HM57 Expressがあり、「Active Management Technology 6.0/Remote PC Assist Technology for Business」、「Rapid Storage Technology 9.5」などの機能を持つのだが、このHM55 Expressは、これらの機能を一切持たず、ラインナップの中では一番下位に位置付けられる。とは言え、これらのファンクションは特にパーソナル用途では、通常あまり使わないので、一般的にはHM55 Expressで十分だろう。

 グラフィックスは、CPUに内蔵されたIntel HDグラフィックスだ。スペック的には、720p/1080i/1080pといった全てのHDフォーマット、HDMI、そしてDisplayPortにも対応している。GMA X4500HDとの違いは、SP 10基か12基か、OpenGL 2.0か2.1か……など、細かい点で結構多い。少し前に、Intel HM55 Expressを搭載した他社のノートPCを評価した機会があったが、外部GPUを搭載していたため、Intel HDグラフィックスは、筆者にとって今回はじめて触ることになる。そのパフォーマンスなどが気になるところだ。この点については、後半にベンチマークテストなどを行ない検証したい。出力に関しては、HDMIとミニD-Sub15ピンを備えている。

 ネットワーク関連は、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth(V2.1+EDR)と、全部入りだ。特にHM55 Expressを使ったノートPCは、100BASE-TXまでのものもあるので、Gigabit Ethernet対応は嬉しいところ。

 「K52F」固有のトピックスとして「パームプルーフ・テクノロジー搭載」があげられる。これはタッチパッド使用時に、指先かそれ以外かを認識し、誤作動を無くす仕掛けだ。例えばキー入力中に手がタッチパッドを触れるなどして、マウスカーソルが動いてしまうことを防ぐことができる。

 このように「K52F-SX005V」は、スペック上のマイナス面が無く、非常にバランスの良い優等生タイプのノートPCに仕上がっている。メモリ4GBそしてHDD 500GBを搭載し、一定以上の水準を保ちながら89,800円と、なかなか頑張った価格設定だ。

 なお、下位モデルにあたるCore i3-350M(デュアルコア/2.26GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost無し)を搭載した「K52F-SX003V」は、HDDが320GB、メモリ2GB(1スロット空)になる以外は共通スペックで79,800円となっている。Core i3なのでTurbo Boostは無いものの、1万円安なので、予算や用途によっては、こちらをチョイスするのもありだろう。

天板。何とも表現しづらい色なのだが、落ち着いた色だ正面。左右斜め下に配置のスピーカ、中央にはアクセスLEDなどインジケータが並ぶ本体底面。大きなパネルを開けると、HDDやメモリなど簡単にアクセスできる。ただしパネルの端がボディに接着されているので、完全に外すと壊すことになる
左側面。ロックポート、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 2.0×2、音声入出力キーボード。“0”キーの下が“→”キーだったり、“2”キーの下が“0”キーだったり、フルキーとテンキーとの境界が標準的なレイアウトから外れている右側面。DVDスーパーマルチドライブ、USB 2.0×1、4in1メディアスロット、Gigabit Ethernet、電源入力
キーピッチ(主キー)は実測で約20mm。キータッチは軽めだテンキーのキーピッチは実測で約17mm6セルのバッテリ。ACアダプタはメガネタイプだ

 ボディカラーは、何と表現していいのか難しいのだが、「暗いゴールド」もしくは「光沢のある暗めの茶色」といった雰囲気だ。天板は光沢タイプで指紋跡が目立つ。また細かいドット調の模様が、天板及び、パームレストなどに施されている。液晶パネルの周囲は光沢ありの黒、そして、裏など他の部分は光沢無しの黒となる。全体的に派手な色は使われておらず、落ち着いた雰囲気のデザインだと言えよう。

 サイズ380×255×34.5~35.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.6kgなので普段持ち歩くタイプのノートPCではない。持った感じはそれなりの重さなのだがバランスも良く、室内での移動は楽だろう。また6セルのバッテリは、何処も飛び出る部分が無く、フラットにボディへ収まっている。

 LEDバックライト式の15.6型ワイドTFTカラー液晶は光沢タイプだ。映り込みがあり、加えて視野角もあまり広くない。例えば動画を再生すると、明るさとコントラストが調度いい角度はちょっと狭め。ジャスト±αの位置で観た場合は、彩度・明るさ/コントラストも良好だ。

 パームレストは先に書いたドット調の模様があり、触った感じがザラザラしている。タッチパッドも段差はあるが同じ質感だ。また通常使用において振動や熱などは特に感じられない。「パームプルーフ・テクノロジー搭載」の効果は高く、キー入力中にちょっと手がパッドに触れた程度ではマウスは全く反応せず、タッチパッドの存在を意識せずキー入力可能だ。加えてスクロールやページングといった指2本を使うジェスチャーなど、マルチタッチ機能にも対応し、スムーズに操作することもできる。ボタンはバー1本のシーソータイプだ。ストロークは浅いが、クリック感があり、指にも負担がかからない。

 キーボードはテンキーつきだ。主要部分のキーピッチは約20mm、テンキーなどは約17mmになっている。キーボード自体はアイソレーションタイプ、そしてキータッチは軽めだ。また、少し押すと全体的にたわむのが気になるところ。ただ個人的にもっと気になるのは、10キーの“1”の下に“0”が無いこと。“1”の下は右矢印キーとなっていて、“2”の下に“0”がある。慣れの問題もあるだろうが、事務機として使うには少し問題がありそうだ。

 ALTEC LANSINGステレオスピーカーは、本体正面左右に斜め下に向いて付いている。音量音質共十分。中域中心のカマボコレンジではあるが、しっかり芯のある音だ。動画を観ても、音楽を聴いても十分楽しめるだろう。

●Core i5で十分なパフォーマンス

 OSは、64bit版のWindows 7 Home Premium。従って4GBのメモリもフルに活用できる。HDDはST9500325AS。5,400rpm/8MBのタイプだ。Cドライブに116GB、Dドライブに334GBが割当てられている。また、Dドライブは未使用の状態だ。DVDスーパーマルチドライブはAD-7580Sが使われている。

 デバイスドライバを見る限り、特殊なものは特に無く標準的な構成になっている。Gigabit EthernetはJMicronのアダプタだ。タッチパッド・ドライバはElan Smart-Padが使われている。また先に特徴としてあげた「パームプルーフ・テクノロジー」の実態は、このElan Smart-Padのプロパティで測定及び感度調整などを行なって、指先かそれ以外かの判断をしている。

起動時のデスクトップ。いろいろなアイコンがデスクトップに並んでいる。CPUはデュアルコア/マルチスレッドなので4CPU相当デバイスドライバと主要なデバイス。HDDはST9500325AS(5,400rpm/8MB)、DVDスーパーマルチドライブはAD-7580SHDDのパーテーション。Cドライブ約116GB、Dドライブ約334GB。Dドライブは空になっている

 プリインストール・アプリケーションなどは、独自の省電力ソフト/ASUS Power4Gear Hybrid、Webストレージ/ASUS WebStorage 60日体験版、起動時間高速化ソフト/Fast Boot、サウンドコントロール/SRS Premium Sound、リカバリーDVD作成/ASUS AI Recovery、BIOS起動カスタマイズ/ASUS FancyStart、無線コントロールソフト/ASUS Wireless Console 3、Webカメラ活用/ASUS LifeFrame3、自動更新ソフト/ASUS Live Update、画質向上ソフト/ASUS Splendid、アカウント管理/ASUS SmartLogon、セキュリティ管理ソフト/ASUS Data Security Managerのほか、Adobe Reader 9、CyberLink Power2Go、i-フィルター5.0 30日間対応版、ウイルスバスター 2010 60日期間限定版/OEM版など、同社お馴染みのものが入っている。一部のユーティリティが日本語化されていないのが少し気になるところ。

ASUS Live UpdateIntelグラフィック/メディアコントロール・パネルElan Smart-Pad
ASUS SplendidASUS Fast BootASUS Power4Gear Hybrid

 ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を掲載する。まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は4.5。内訳は、プロセッサ6.6、メモリ5.9、グラフィックス4.5、ゲーム用グラフィックス5.1、プライマリハードディスク5.8。思いのほかメモリのスコアは伸びないが、ほかはCPUが少しバランス的に速いものの、無難な線にまとまっている。Intel HDグラフィックスに関しては、同じCore i5-430M+HM55 Express上で動くMobility Radeon HD 4330でも4.5/5.9なので、結構健闘している方だ。

 CrystalMarkは、ALUが31,068、FPUが30,542、MEMが24,070、HDDが9,132、GDIが10,386(10,707)、D2Dが1,505(2,693)、OGLが2,131(16,824)。カッコ内はMobility Radeon HD 4330の値だ。さすがにOGLでは桁違いの差が出ているのが分かる。先のWindows エクスペリエンス インデックスの値からも、Aeroだけなら大差ないものの、3D関連のアプリケーションを本格的に利用するには厳しいとわかる。

 試しにと、DXVAに対応していない普通のバージョンのFlash Playerを使用して、YouTubeの1080p動画を再生したところ、CPU使用率30%前後で、全くコマ落ちも無く、快適に観ることができた。Core i5のパワーもあるのだろうが、Intel HDグラフィックスの能力は、3D系のゲームなど重い処理をしない限り、十分なパフォーマンスと言えよう。

 BBenchは、 Power4Gear Hybridで「Battery Saving」モードへ切り替え、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON(BluetoothはOFF)、バックライトOFFでの結果だ。またこのモード時、AeroがOFFになったのが意外だった。Areo ONだとバッテリを余計に消費するのだろうか。バッテリの残5%で9,011秒(2.5時間)。スペック上、最大約3.5時間なので、妥当なところだ。いずれにしてもこのクラスのノートPCは、あまり持ち歩くものではなく、バッテリ駆動時間はあまり気にならない部分だ。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合で4.5。プロセッサ6.6、メモリ5.9、グラフィックス4.5、ゲーム用グラフィックス5.1、プライマリハードディスク5.8CrystalMark。外部GPUを使った場合と比較して、どうしてもD2DとOGLの値は劣ってしまうBBench。キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、バックライトOFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残5%で9,011秒(2.5時間)

 以上のように「ASUS K52F-SX005V」は、キーボードのクオリティやレイアウトに一部不満は残るものの、CPUにCore i5、メモリ4GB、HDD 500GB、15.6型WXGA液晶パネル、Gigabit Ethernetまで含む全部入りのネットワークなど、何かを我慢することもなく、これだけのパフォーマンスと品質のノートPCが9万円を切るとは、凄い時代になったものだ。3D系のヘビーな用途以外、ほとんどの人の用途に十分応えられるだろう。オールマイティに使えるノートPCとしてお勧めの一台だ。