2008年末はAtomプロセッサを搭載したPCで大いに遊んだこともあり少々食傷気味。その反動で速いPCが欲しくなり、新年早々ハイエンドマシンを1から組むことに決定。現時点でハイエンドはCore i7プロセッサとなるものの、CPU+マザーボード+メモリだけで約7万円となる。1から組むとどう考えても10万円を超えあまり財布に優しくない。 ●購入したパーツなどCore 2 Quadプロセッサ搭載PCを5万円で組むに当たってざっと予算の配分を考えてみる。動かしようのない部分はCPU。これだけで約1.8万円が必要だ。すると残りは3.2万円。筆者的にHDDは500GBで、ビデオカードはファンレス、メモリは2GB×2の4GB、この3ポイントを出来れば確保したい。メモリは約4千円(後にノーブランドなら2GBで1,000円を見つけ愕然とした)で、HDDは約5千円で、2つ合わせて約1万円だ。従って2.2万円でケースとマザーボード、ビデオカード、DVDドライブを見繕わなければならない。ケースは電源を入れて1万円と仮定した場合、1.2万円しか残らず微妙な雰囲気だ。 なお、今回はOS抜きの5万円であって、OSに関しては手持ちの以前使用していたPCのライセンスを使っている。別途Windowsを購入するとエディションにもよるが、DSP版で1.2万円~2万円台半ばとなる。ハードウェアの低価格化が進んでいることもあり、この金額はユーザーにとってかなり負担である。そろそろ見直して頂きたいと常々思っているのだが。
このパーツリスト、改めて見てみると突っ込みどころが若干ある。例えば冒頭で書いたようにメモリは探せばもっと安く買えるし、Atom 330プロセッサのPCを組んだ時に使った、DVDドライブ(LG GH22NS30B-B)やVIA NanoプロセッサのPCを組んだ時のビデオカード(GeForce 9400 GT/512MBファンレス)はさらに1,000円安い。これで4千円を抑えられる。マザーボードも探せばもっと安いものもあるだろう。これらのコストダウンに加え、HDDを妥協して320GBにすれば確実に5万円以内でCore 2 Quadプロセッサを使ったPCを組み立てられる。 いずれにしてもAtom 330プロセッサを搭載したIntel D945GCLF2にHDD 1TB、メモリ2GB搭載したPCがDVDドライブまで含めて計33,970円だったことを考えると、この54,460円は5万円をオーバーしたとは言え、激安なのがおわかり頂けると思う。 ●組み立ててみる Atomプロセッサ搭載マザーボードと比較して、大きな基板、多くのコネクタなど、一見難しそうにみえるが、やる事は全く同じ。基板をケースに固定し、メモリを取り付け、電源、USB、サウンドのコネクタを接続、HDDとDVDドライブをケースに固定しSATAで接続、パワースイッチ、リセットスイッチ、パワーLED、HDDアクセスLEDを配線する。1つ異なるのはCPUとCPUファンを取り付けるところだろう。とは言え、昔と違ってCPUの設置は簡単で、間違った方向には絶対入らないし、ピンが曲がることもない。力任せにヒートシンクを固定する必要もなく、約30分で作業は終わってしまった。もう20年以上もPCを触っている筆者としてはいささか物足りなく感じた。ともあれマザーボードに付属するマニュアルは良く出来ていてわかりやすい。ある初心者でも安心して組み立てられるだろう。 BIOSで変更した部分は3カ所。1つはSATAの動作モードをAHCIへ、2つ目はブートデバイスの順番、そして最後はHPET(高精度イベントタイマー)の作動モードを64bitへ変更した。このマザーボードはオーバークロック系の設定もかなり豊富だが、個人的には安定性が第一なので標準設定のまま使っている。 今回使ったケースAQTIS AC500-03Bには面白い点が2つある。1つは付属のファンが電源ONにすると青色に光ること。しかもかなり明るい。何も知らずに見た時は結構驚いてしまった。もう1つはHDDの固定方法だ。写真の通り、三角形のマウンタが付属し、フレームの外側からHDDのネジ穴にこれをセット、中央のツマミを90度ひねれば固定できる仕掛けになっているため、ネジは不要だ。ガッチリ固定されるので安心した。 後に伸びている2本のSATAケーブルはeSATA用。このマザーボードにはeSATA用のブラケットが付属するため、それをそのまま使用した。ICH9 #1にHDD、#2にDVDドライブ、#3/4にeSATAを割り当て、GIGABYTE SATA2の2チャンネルは現時点では空きとなっている。ドライブベイも余っているが、昔とは違い、1台のPCで多くのHDDを抱えるのではなく、NASへデータを保存しているため、今後ドライブが増えてもせいぜい1台程度だと思われる。 実際に組み上げて電源をONにしたところ、音に関しては設置場所によるが、問題はなかった。ケース付属のファン2つは結構低い音で、CPUファンもあまり煩くないし、電源部もそれなりだ。このサイズのケースなので、机の下に置けば気にならないレベルとなる。しかし、ディスプレイの横に置くと耳につく気がした。筆者の場合は机の下に置くためこのまま使っても問題無い。熱に関しては、後のファンから出る風はどちらかと言えば冷たく、ATI Radeon HD 4550のヒートシンクもほんのり暖かい程度だ。 ●OSは64bit版Windows Vista せっかく最大搭載メモリ容量が8GBあるので、ドライバの対応度やアプリケーションの互換性などが気になるものの、ここは64bit版のWindows Vistaを使いたい。インストール自体は問題なく、後から入れたドライバは、システム、ビデオ、サウンドのものだ。システムとサウンドのドライバはGIGABYTEのサイトから、ビデオはAMDのサイトから最新版をダウンロードした。もちろんマザーボードにドライバなどが入ったCD-ROMが付属するので、それを使ってセットアップするのもいいだろう。筆者が付属のCD-ROMにあるドライバをあまり使わないのは、多くのケースでバージョンが最新でないことがあったため、二度手間を避けるためネットから最新版をダウンロードしている。全てが動くことを確認した上でWindows Updateを実行したところ、計44ファイル、約200MBのアップデートがかかった。 さてこのCore 2 Quadプロセッサがどれほど速いのか、実践的な数値を見てみたい。筆者はゲームを全くしないので、CPUのパフォーマンスが直結する作業と言えば、デジタルカメラのRAW現像となる。この現像時間をAtom 330プロセッサを搭載したPCと比較するのが1番わかりやすいだろう。デジカメWatchで連載しているフォトジェニックウィークエンドの関係で、貸出機が届くごとに付属のCD-ROMからアプリケーションをインストールしているため、各社のRAW現像ソフトは日頃使っているメインマシンに入っている。しかし返却後、手元に各社のCD-ROMが無く、ネットからダウンロードしようとしたところ、困ったことに多くの現像ソフトはアップデータしか載っておらず新規インストールできないのだ。もともとこの手のソフトはRAWデータを持ってないと使い道が無いため、各カメラメーカーはアップデータだけでなく、アプリケーション丸ごとネットに掲載して欲しいと思う。 閑話休題。ならばと汎用の現像ソフトウェア、Adobe Lightroom2の体験版でテストすることにした。前回組み上げたAtom 330プロセッサ搭載マシンは32bit版Vista、Lightroom2も32bit版、今回のCore 2 Quadプロセッサ搭載マシンは64bit版VistaでLightroom2も64bit版となる。RAWデータはご覧のように1,510万画素のCanon EOS 50Dで撮った先月号の未公開カットを使用した。テストは、現像パラメータを初期化してどちらも同じ値に合わせ、JPEGへの書き出しが何秒で終わるかを計った。すると驚愕の結果になった。Atom 330プロセッサは18秒、Core 2 Quadプロセッサは3秒強。まさかこれ程までに差が出るとは思ってもいなかった。他のカメラでのRAWデータも数種類試したところ、ほぼ同じような結果になった。やはりAtomプロセッサを搭載したネットブックやネットトップは、あくまでも視聴のためのマシンであり、クリエイトするマシンでは無いと言うのがこの実験ではっきりした。 もう1つ筆者としては試したいものがある。それはVMware Server 2だ。これまでメインマシンはメモリが最大2GBと言う環境だったので、Linuxなどを軽くテストする範囲でしか使わず、もう少し本格的なテストは他のPCでリアルな環境を構築し、Webアプリケーションなどをチェックしていた。しかし、Core 2 Quadでメモリ最大8GBとなると話は別。わざわざマシンを別ける必要もなくなる。またリアルなテストサーバーと違い、いろいろなバーチャルマシンをファイルとして保存できるため、種類の違うOSやバージョンの異なったOSなどを瞬時に切り替えできるため非常に便利だ。早速、セットアップしCentOSを動かしてみた。 結果は上々。以前はCeleron 215(1.33GHz/2次キャッシュ512KB)を搭載したIntel D201GLYLをテストマシンにしていたが、それよりもバーチャルマシンの方が速い。ご覧のように、CentOSの起動後、yum updateしている最中でもCPUはほとんど遊んでいる状態だ。フォアグランドで先のAdobe Lightroom2を動かしても、JPEGへの書き出し時には瞬間CPUの使用率が90%程度になるものの、通常の操作だと10~30%行ったり来たりとびくともしない。改めてCore 2 Quadのパワーを見せつけられた気分である。ただしQ8200(Q8300も同様)は仮想化技術「Intel Virtualization Technology 」をサポートしていない。本格的にVMware Server 2を使うのならVTに対応しているQ6600にした方がいいだろう。価格差も既に千円未満となっている(Q9xx0シリーズは対応しているもののまだ高価)。
最後の実験はCore 2 Quadプロセッサと直接関係無いものの、SSDとHDDとの速度差をチェックしてみた。編集部からSSDをお借りしてその速度を測ってみた。結果はご覧の通りである。Atomプロセッサに32bit版Vistaと64bit版Vistaをインストールした時、64bit版の方が明らかに速度が向上していたが、今回も同じデバイスを使っているにも関わらずCrystalDiskMarkの結果がさらに上がった。書込み速度的に不利なMLCタイプのSSDでさえもほぼ全ての項目でHDDを上回っているのは驚きに値する。 ●総論 年末、Atom 330プロセッサ+メモリ2GB+1TB HDDのPCが3万円ちょっとで組め、驚きの安さだとさんざんおだてた。今回、Core 2 Quadでメモリ4GB+500GB HDDと少し構成が違うものを組んだが、その価格差はたった2万円。既に高速なPCを持っているユーザーがAtom搭載マシンで遊ぶ以外は、どう考えてもCore 2 Quadプロセッサの方が圧倒的にコストパフォーマンスは上だ。ケースやビデオカードなど使い回しのできるパーツを持っているのなら、さらにその差は縮む。Core i7をリリースしたばかりのIntelには申しわけないが、明らかにCore 2 Quadプロセッサはお買い得と言えるだろう。(完)
□関連記事 (2009年1月7日) [Reported by 西川和久]
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