西川和久の不定期コラム

レノボ・ジャパン「ThinkCentre X1」

~最薄部約11mmの23.8型オールインワン

ThinkCentre X1

薄型X1の一体型PC

 Lenovoで“X1”と言えば、「ThinkPad X1 Carbon」、「ThinkPad X1 Tablet」、「ThinkPad X1 Yoga」など、超薄型ブラック筐体で格好良いプレミアムモデルを思い出す。

 従来、全てのモバイルPCにその冠が使われてきた経緯があり、この流れは変わらないだろうと(勝手に)思っていたところへ、何とX1の名が付く最薄部約11mmの一体型PC「ThinkCentre X1」が登場した。主な仕様は以下の通り。

【表】レノボ・ジャパン「ThinkCentre X1」の仕様
プロセッサCore i7-6600U(2コア/4スレッド、クロック 2.6GHz~3.4GHz、キャッシュ4MB、TDP 15W)
メモリPC4-17000 DDR4 SDRAM SO-DIMM(1スロット最大16GB)
ストレージ256GB SSD
OSWindows 10 Pro
ディスプレイ23.8型IPS式非光沢液晶、フルHD(1,920×1,080ドット)、タッチ非対応
グラフィックスIntel HD Graphics 520
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.1+EDR
インターフェイスUSB 3.0×5(うち1つPowered)、DisplayPort入出力、200万画素Webカメラ、9in1メディアカードリーダ、音声入出力
サイズ/重量約570×240×451mm(幅×奥行き×高さ)/約5.41kg
税別直販価格239,000円

 プロセッサはIntel Core i7-6600U。2コア4スレッドでクロックは2.6GHzから最大3.4GHz。キャッシュは4MBでTDPは15W。メモリはPC4-17000 DDR4 SDRAM SO-DIMMの8GB。スロットは1つで最大16GBまで対応する。ストレージは256GBのSSD。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載。

 ディスプレイは23.8型IPS式非光沢液晶。解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。タッチには非対応だ。この非光沢パネルには、ミクロレベルでの微細加工で反射光を拡散、映り込みを抑える技術が使われている。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 520。珍しいのは搭載しているDisplayPortが入力/出力のコンボになっていること。マルチディスプレイ化はもちろん、別のPCのディスプレイにもなり、便利に使えてポイントが高い。

 ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n/ac。Bluetooth 4.1+EDRにも対応している。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×5(うち1つPowered)、200万画素Webカメラ、9in1メディアカードリーダ、音声入出力。USBは左側面に2つ、背面に3つ配置されているので扱いやすそうだ。

 筐体は8項目のMIL規格テストにも合格し、サイズは約570×240×451mm(幅×奥行き×高さ)、重量約5.41kg。税別直販価格は239,000円。内容から考えると少し高めか。

 なお、直販ではある程度のBTOにも対応し、OSは64bit版のWindows 10 Home/Pro、Windows 7 Professional、32bit版のWindows 7 Professional、ストレージはHDD/SSD/SSHDなどの構成も可能だ。また「ThinkCentre X1:エントリーパッケージ」として、Core i5-6200U/4GB/120GB(SSD)/Windows 10 Homeで182,520円のモデルなども用意されている。

前面。パネル中央上に200万画素Webカメラ、その上にカメラシャッター。パネル右下にPower LEDなど
背面。赤い部分がケーブルマネージメント、構造から分かるように高さは変更できない。オプションでVESAマウント対応
左側面。9in1メディアカードリーダ、USB 3.0×2(上がPowered)、音声入出力
右側面。内蔵マイクオン/オフボタン、ディスプレイ切替ボタン、電源ボタン
背面。USB 3.0×3、Gigabit Ethernet、DisplayPort、電源入力、ロックポート
斜め後ろから。スピーカーは正面にないが意外と普通に聴こえる。パネルの可動範囲は-5~45度
無線式のキーボードとマウス。前者が単四電池×2、後者が単三電池×2を使用
付属のACアダプタ。サイズは約12.5×5×3mm(幅×奥行き×高さ)、重量298g

 筐体は正にX1のイメージそのまま、薄くブラックでカッコいい。特に横から見た際の最薄部約11mmは圧巻だ。ここまでするのなら、ベゼルももっと狭くして欲しかったところ。重量は約5.4kgなので、軽々とは言えないものの、取り回しも苦ではない。

 前面のパネル中央上にWebカメラ、またそのすぐ上にシャッターがある。右下には電源LEDなどが並ぶ。左側面は、9in1メディアカードリーダ、USB 3.0×2、音声入出力。USBは上側がPoweredとなる。右側面に内蔵マイクオン/オフボタン、ディスプレイ切替ボタン、電源ボタンを配置。

 背面はスタンド固定部分の下にUSB 3.0×3、Ethernet、DisplayPort、電源入力、ロックポート。ThinkCentreのiの点の部分はACアダプタ通電時(本体の電源オン/オフとは無関係)に赤く光る。

 パネルの可動範囲は-5~45度。ただし構造からも分かるように高さは変更できず固定だ。スタンドにある赤いパーツがケーブルマネージメント。台の固定方法は単にネジ止めで、また台がスムーズに回転するような機構はなく、この点は残念。

 気になるのは高さが筆者にとっては少し高めということ。もちろん机や椅子の高さにもよるので一概には言えないが、何となく(標準的に身長が高い)USサイズが基準になっているような気がする。

 付属のACアダプタは、サイズが約125×50×30mm(同)、重量が298g。パネルの消費電力もあるので一般的なノートPCより大き目となる。

 23.8型IPS式非光沢液晶ディスプレイは、明るさ、発色、コントラスト、視野角全て十分確保され品質は高い。「ミクロレベルでの微細加工で反射光を拡散」とされている非光沢は、確かにこれまで見てきた多くの非光沢パネルと若干雰囲気が違う。薄いフィルムが被っている感じで、特に電源オフ時の見栄えや質感が普通の非光沢パネルとは異なる。もちろん電源オン時の見え方は自然だ。

 付属のキーボードとマウスは無線式。バッテリは前者が単4電池2本、後者が単3電池2本を使用する。USB式のモデルもあるが、これだけ本体の足元がスッキリしていると、できるだけケーブルはなくしたいところ。無線式がベストチョイスだろう。

 振動やノイズは皆無。発熱はパネル右の裏側が少し熱を持つ。サウンドは、スピーカーが正面にないので少しオフっぽい音になり、また中域中心とし音質だ。「Dolby」の設定を変えるだけでもずいぶん違う。出力はソースにもよるだろうが、あと一歩パワー感が欲しいところ。とは言え、基本的にビジネス用と考えれば妥当なところかもしれない。

 掲載した写真からも分かるように、前面、背面、左右、斜め前/後ろ……どこから眺めても非常にシンプルでかつ美しい出で立ち。X1のイメージそのものの一体型に仕上がっている。できれば書類などが散らかった机の上では使いたくないところか(笑)。

 1点要望があるとすれば電源ケーブルの取り回しだろう。スタンド内側にケーブルを通す感じで、目立たないようにすればよりベストだ。

性能はクラス相当

 OSは64bit版のWindows 10 Pro。メモリ8GB、SSDということもあり快適に操作できる。初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。Windows 10標準のタイルに加え、Lenovo Apps以降がプリインストールとなる。

 デスクトップは、壁紙の変更とLenovo Solution Centerへのショートカット。タスクバーにマカフィーリブセーフがピン止めされている程度でシンプルな構成だ。

 ストレージは256GB SSDの「SAMSUNG MZ7LN256HCHP」。実質C:ドライブのみの1パーティションで約237GBが割り当てられ空きは213GB。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはIntel製だ。デバイスマネージャにはTP1.2モジュールなども表示されているものの、一般的な構成となっている。

スタート画面(タブレットモード)。Lenovo Apps以降がプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更とLenovo Solution Centerへのショートカット。タスクバーにマカフィーリブセーフがピン止めされている
デバイスマネージャ/主要なデバイスストレージは256GB/SSDの「SAMSUNG MZ7LN256HCHP」。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはIntel製
SSDのパーティション。実質C:ドライブのみの1パーティションで約237GBが割り当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Lenovo Companion」、「Lenovo ID」、「Lenovo Settings」、「My Time Line」。

 いずれも同社お馴染みのツールだが、特に「Lenovo Companion」の最適化は、筆者もThinkPadで使っているかなりの優れもの。ワンタッチで“PCクリーンアップ”、”システム加速”、”重要な更新”が行なわれ、一時ファイルなどを消去した上で、起動プロセスの最適化なども行なわれ、実際、体感で分かるほど速くなる。ThinkPadユーザーとして使わない手はないだろう。

 デスクトップアプリは、Lenovoフォルダに「Lonovo Bluetooth Lock」、「Lenovo Solution Center」、「Power Manager」。「Dolby」、「Mouse Suite」、「Lenovo Ultraslim Plus Wireless Keybord & Mouse Driver」、「マカフィー リブセーフ」など。一部の除き主にデバイス系のツールとなる。

Lenovo Solution Center
Power Manager
Lenovo Companion
Lenovo Settings

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、SSDなのでCrystalDiskMarkの結果も見たい。また、CrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア4スレッドなので条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 4.9。プロセッサ 7.6、メモリ 7.6、グラフィックス 4.9、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.15。メモリのバンド幅は15122.31454MB/sec。PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3364。CrystalMarkは、ALU 507204、FPU 53609、MEM 46813、HDD 35470、GDI 14781、D2D n/a、OGL n/a。

 CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 553.4/Write 303.5、4K Q32T1 Read 284.9/Write 145.6、Seq Read 479.3/Write 304.5、4K Read 38.20/Write 107.8(MB/sec)。

 全体的にCore i7-6600U+SSDとしては一般的なスコアだ。PC性能に関しては特にプレミアム感はない。

「winsat formal」コマンド結果。総合 4.9。プロセッサ 7.6、メモリ 7.6、グラフィックス 4.9、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.15
PCMark 8 バージョン2/Home accelerated「3364」
PCMark 8 バージョン2/Home accelerated(詳細)。CPUクロックは600MHz辺りから最大の3.4GHzまで激しく上下している。温度は44℃から最高で72℃近辺まで上がる
CrystalDiskMark。Seq Q32T1 Read 553.4/Write 303.5、4K Q32T1 Read 284.9/Write 145.6、Seq Read 479.3/Write 304.5、4K Read 38.20/Write 107.8(MB/sec)
CrystalMark。ALU 507204、FPU 53609、MEM 46813、HDD 35470、GDI 14781、D2D n/a、OGL n/a

 ThinkCentre X1のルックスはご覧のように抜群。Core i7、メモリ8GB、SSD 256GBなので快適に運用できる。DisplayPortが入出力に対応しているのも嬉しいポイント。

 高さ調整できないのが残念な部分であるが、価格が少し高いほかは仕様上特に気になる部分もなく、お洒落で高性能な一体型PCを探しているユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/