西川和久の不定期コラム
Lenovo「ThinkPad X260」
~Skylake移行で安定した使い心地を見せる12.5型ノート
(2016/3/31 06:00)
2016年1月19日、レノボ・ジャパンは12.5型ノートの「ThinkPad X260」を発表した。ThinkPadの中でもX2系は昔から筆者が好きなモデルであり、昨年(2015年)に出たX250も試用している。編集部から実機が送られてきたので、X250との違いなども交えながら、試用レポートをお届けしたい。
Skylake世代になりNVMe SSD対応、ミニD-Sub15ピンがHDMIへ
ThinkPad X250とX260の大きな違いは3カ所。1つ目はプロセッサがBroadwellからSkylakeに変わったこと。2つ目はNVMe SSDに対応したことだ(ただし、現時点では日本販売モデルでNVMe SSDが選択肢にない)。NVMeはSATA接続タイプのSSDと比較して性能で有利となる。3つ目はミニD-Sub15ピンが廃止され、HDMIポートへと変更されたこと。これにより、外部ディスプレイ接続は、Mini DisplayPortとの2系統となる。
そのほか、メモリの最大容量や無線LAN、USBなども若干変わっている。主な仕様は以下の通り。
Lenovo「ThinkPad X260」の仕様 | |
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プロセッサ | Intel Core i7-6500U(2コア/4スレッド、2.5GHz~3.2GHz、キャッシュ4MB、TDP 15W) |
メモリ | DDR4-2133 SDRAM SODIMM 8GB |
ストレージ | 192GB SSD SATA |
OS | Windows 10 Pro |
ディスプレイ | IPS式12.5型(非光沢)、HD(1,366×768ドット)、タッチ非対応 |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 520 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.1 |
インターフェイス | USB 3.0×3(1基はPowered対応)、Mini DisplayPort、HDMI、マルチメディアカードリーダ、720p HDカメラ、指紋センサー、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | 最大約11.4時間(3セル前面+3セル背面リチウムイオンバッテリ) |
サイズ/重量 | 305.5×208.5×19.9~20.3mm(幅×奥行き×高さ)/約1.43kg |
直販価格 | 205,740円 |
プロセッサはIntel Core i7-6500U。2コア4スレッドでクロックは2.5GHzから最大3.2GHz。キャッシュは4MBでTDPは15W。量販店モデルでは、Core i7-6600U/i5-6300U/i3-6100U、カスタマイズモデルでは、Core i7-6500U/Core i5-6300U/Core i5-6200U/Core i3-6100Uなども選択可能だ。
ストレージは192GB SSD。少し半端な容量だが、256GB SSDよりは若干安価。128GB SSD/1TB HDD/SSHD(500GB+8GB)/256GB SSD(OPAL対応)/512GB SSDなども選べる。メモリは8GB/DDR4-2133 SDRAM SODIMM。1スロットで最大16GB。X250では最大8GBだった。OSはWindows 10 HomeかProの64bit版。
グラフィックスは、CPU内蔵のIntel HD Graphics 520。外部出力用としてHDMIとMini DisplayPortを備える。ディスプレイは非光沢のIPS式12.5型、解像度はHD(1,366×768ドット)、タッチ非対応。一部のモデルで12.5型IPS式フルHD(1,920×1,080ドット)も用意されている。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11ac/a/b/g/n。Bluetooth 4.1にも対応する。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×3(1基はPowered対応)、マルチメディアカードリーダ、720p HDカメラ、指紋センサー、音声入出力。USBポートが1基増えた。
バッテリはX250同様、内蔵で着脱不可の前面(3セル/23.2Wh)と、着脱可能で容量が選べる(3セル/23.2Wh、6セル/47Wh、6セル/72Wh)背面と2系統ある。バッテリ駆動時間は、前面3セル、背面3セルの組合せて最大約11.4時間。本体サイズは305.5×208.5×19.9~20.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量は3セルバッテリが2個内蔵で約1.43kg。
価格は今回手元に届いた構成だと、直販モデルのハイパフォーマンスパッケージをベースにして、OSをHomeからProへ、ストレージを256GB SSDから192GB SSDへ、そして3セル前面バッテリを追加した形で税込205,740円だ。
トップカバーなどを含めた筐体はマットブラックでThinkPad固有のサラサラとした手触りで、X250から変わっていない。この点は新型ながら一見旧型に見えてしまう弱点があるものの、そこはThinkPad。逆にその方が安心感がある。重量は実測で1,424gあるため、12.5型クラスのノートの割には若干重めだ。
トップカバーにはThinkPadのロゴがあり「i」の点の部分が赤く光るLEDが仕込まれている。裏は、背面バッテリの凹みと、ドッキングコネクタがあるだけで、メモリやストレージに簡単にアクセスできる小さいパネルなどはない。全てのネジを外せば内部にアクセスできそうだが今回は見送った。
パネル中央上に720p HDカメラ。左側面は、電源入力、HDMI、Mini DisplayPort、USB 3.0×2。右側面はロックポート、Gigabit Ethernet、マルチメディアカードリーダ、USB 3.0、音声入出力を配置。こちら側のUSBがPoweredになる。
付属のACアダプタのサイズは92×39×29mm(同)、重量173g。3セル/23.2Whバッテリの重量は149g。6セルの場合は本体裏面のラインからはみ出る形となり、重くなるものの、その分、キーボードが傾き入力しやすくなる。
パネルはIPS式の12.5型で非光沢。映り込みが少なく目に優しい。発色はX250よりも前のモデルほど青くないものの、主にビジネス用途ということもあり、若干色温度は高めだ。ヒンジは180度まで傾けることができ、自由度が高い。明るさ、コントラスト、視野角は十分。ただし、バックライトを最小にするとかなり暗い。モデルによっては安価なTN液晶パネルも用意されている。
キーボードはアイソレーションタイプの6列配列の88キー。中央にトラックポイント、手前にタッチパッドがある。キーピッチは実測で約18mm。感触はX250などと変わらず相変わらずのThinkPadで安定した入力が行なえる。またオプションとなるが、バックライト付のキーボードも選択可能だ。
ノイズや振動は、試用した範囲では問題なし。サウンドはビジネス用としては出力が大き目で、レンジは広くないものの、音楽や動画もそれなりに楽しめるレベルにある。
このように、X250との外観的な違いは、ミニD-Sub15ピンがHDMIへ、USBポートを1基追加……と、左右の側面のレイアウトが異なる程度。(いい意味で)大きな変化は見られない。
2つの3セル/23.2WhバッテリでBBench 12時間越え
OSは64bit版のWindows 10 Pro。Homeも選択可能だ。初期起動してみると、デスクトップは壁紙が変更されているが、アプリのショートカットなどは追加されていない。壁紙はフリーハンドでトラックポイントとその周辺のキーボードを描いたものが使われており、これまでとは雰囲気が違う。
ストレージはSATA/SSDの「Samsung MZ7LF192HCGS」。容量が192GBと半端だ。Cドライブのみの1パーティションで約177.6GBが割り当てられ、空き容量は155GB。
Gigabit Ethernetは「Intel Ethernet Connection I219-V」、Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 8260」と、定番のチップが使われ、BluetoothもIntel製だ。見慣れないデバイスはデバイスマネージャにはない。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Lenovo Companion」、「Lenovo ID」、「Lenovo Settings」、「My Time Line」。この「Lenovo Companion」と「Lenovo Settings」は、以前と名前こそ同じであるが、UIは大幅に変更。Windows 10に合わせた形になっている。
デスクトップアプリは、「Dolby Audio」、「Lenovo Solution Center」、「Mouse Properties」、「マカフィーリブセーフ・インターネットセキュリティ」。
「Lenovo Solution Center」も先のWindowsストアアプリ同様、UIが大幅に変更となり、以前から指摘していた見づらい日本語フォントが改善されている。どちらもフラットUIを採用し、今時の見栄えになり、非常に落ち着いた雰囲気だ。どの程度違うのか興味のある方は、以前筆者がレビューした記事を参考にして欲しい。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア4スレッドと条件的に問題なし)。
winsat formalの結果は、総合 5.2。プロセッサ 7.5、メモリ 7.5、グラフィックス 5.2、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.1。メモリのバンド幅は16129.07976MB/secだった。
PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3180。CrystalMarkは、ALU 48374、FPU 51436、MEM 44838、HDD 29751、GDI 15876、D2D 6101、OGL n/a。
X250と比較すると(ただしストレージはHDD)、主にグラフィックス、PCMark 8 バージョン2のスコアが伸びている。BroadwellからSkylakeの正当進化と言えよう。
BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で45,408秒/12.6時間。
これに関してはX250より大幅に伸びている。外せないので実測していないが、前面バッテリ無しの3セル/23.2Wh×1だけで6時間近く行きそうだ。
以上のように、Lenovo「ThinkPad X260」は、Skylake世代へと刷新されたものの、一見したところでは旧X250と同じに見える。しかし、USB 3.0が3基へ、ミニD-Sub15ピンがHDMIへ変わるなど、細かい部分でパワーアップしている。今回試用した実機は前面と背面両方にバッテリを搭載している関係もあり、12.5型で約1.43kgは少し重たい感じもあるが、その分、BBenchで12時間越えのバッテリ駆動が可能になっている。
仕様の範囲内で気になる部分もなく、X2系の正当進化モデルとして、全てのThinkPadファンにお勧めできる逸品と言えよう。