西川和久の不定期コラム
日本HP「Elite x2 1011 G1」
~11.6型でワコムデジタイザを搭載し、WiGigにも対応した2-in-1
(2015/8/17 06:00)
日本HPは、2-in-1の「HP Elite x2 1011 G1」と、タブレットの「HP ElitePad 1000 G2/HP Pro Tablet」を発売した。今回は前者の2-in-1とWiGigワイヤレスドックが編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。WiGigは初めてということもあり興味津々だ。
重装備の2-in-1だが……
日本HP「Elite x2 1011 G1」のラインナップは、同社のサイトを見ると基本4モデル。下位から順に、Core M-5Y10c/4GB/128GBで本体のみ、同じ構成でパワーキーボード付き、Core M-5Y51/4GB/128GBとCore M-5Y51/4GB/256GB。この2つはどちらもパワーキーボード付きだ。
加えて、LTE対応モデルも4パターンあり、Core M-5Y51/4GB/128GBの本体のみと、パワーキーボード付きで、for DOCOMOとfor auの2つがそれぞれ用意されている。
このほかのパネル、Wi-Fi、WiGig、Wacomデジタイザなど、主要部分は共通だ。カスタマイズは一応対応しているものの、プロセッサ、メモリ、ストレージは固定で変更できない。
さて、今回手元に届いたのは、Core M-5Y71/8GB/256GB……海外も含め何処を探しても同じスペックのモデルが見つからない。疑問に思い確認したところ、スペシャル版で、市販用としては存在しない構成とのことだった。ベンチマーク結果などが実際の製品とは異なるので、あらかじめご了承いただきたい。
本体のみの下位モデルが93,900円、Core M-5Y51/4GB/128GBでパワーキーボード付きが128,800円。仮にこの最強モデルが販売されたらいくらになるのだろうか(20万円前後?)。前置きが長くなってしまったが、このスペシャルモデル版の仕様は以下の通り。
【表】日本HP「Elite x2 1011 G1」の仕様 | |
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プロセッサ | Core M-5Y71(2コア4スレッド、クロック1.2GHz/2.6GHz、キャッシュ4MB、SDP 4.5W) |
メモリ | 8GB(LPDDR3)/オンボード |
ストレージ | M.2 SSD 256GB |
OS | Windows 8.1 Pro(64bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5300 |
ディスプレイ | 11.6型1,920×1,080ドット(光沢あり)、10点タッチ対応、Wacomデジタイザ内蔵 |
ネットワーク | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac(2x2)+WiGig Combo、Bluetooth 4.0+LE |
インターフェイス(本体) | システムコネクタ、音声入出力、200万画素フロント/500万画素リアカメラ、microSDカードスロット×1、ステレオスピーカー、Wacomデジタイザ(ペン付属) |
インターフェイス(パワーキーボード) | システムコネクタ、DisplayPort 1.2×1(最大3,840×2,160ドット)、USB 3.0ポート×2(内1つはPowered USB)、スマートカードリーダ×1、音声入出力、キーボードバックライト、指紋認証センサー |
サイズ/重量(本体) | 298×192.7×10.7mm(幅×奥行き×高さ)/約780g |
サイズ/重量(パワーキーボード込み) | 298×206.1×20.8mm(同)/約1.54kg |
バッテリ駆動時間(本体) | 約9時間/リチウムポリマーバッテリ(2セル、33WHr) |
バッテリ駆動時間(パワーキーボード込み) | 約14.3時間/+リチウムポリマーバッテリ(6セル、21WHr) |
価格(本体のみ) | 93,900円(税抜)から |
プロセッサはCore M-5Y71。2コア4スレッドでクロックは1.2GHzから最大2.6GHz。キャッシュ4MBでSDPはたった4.5Wだ。低SDPプロセッサとしてBraswellやCherry Trailもあるが、これらはローエンド向けで、Core MはCoreを冠していることからも分かるようにメインストリーム用となる。市販モデルはCore M-5Y10c(0.8/2GHz)、Core M-5Y51(1.1/2.6GHz)の2パターンだ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5300。ディスプレイは、光沢ありの11.6型1,920×1,080ドットで10点タッチ対応。Wacomデジタイザを搭載している。外部出力は本体側にないものの、パワーキーボード側にDisplayPort 1.2×1(最大3,840×2,160ドット)がある。
メモリは8GB/LPDDR3。市販モデルは全て4GBなので、この差は結構大きい。ストレージはM.2接続のSSDで256GBを搭載。OSは64bit版のWindows 8.1 Pro。2-in-1でWacomデジタイザもあるだけに、Windows 10で使いたいところか。なおこのデジタイザペンはバッテリ不要のタイプが使われている。
ネットワークは、本体側にIEEE 802.11a/b/g/n/ac(2x2)+WiGig Combo、Bluetooth 4.0+LE。パワーキーボード側には何もなく、後半に掲載したWiGigワイヤレスドックがUSB 3.0接続のGigabit Ethernetに対応している。
そのほかのインターフェイスは、本体側に、システムコネクタ、音声入出力、200万画素前面/500万画素背面カメラ、microSDカードスロット×1、ステレオスピーカー、Wacomデジタイザペンなどを備える。
パワーキーボード側に、システムコネクタ、USB 3.0ポート×2(内1つはPowered USB)、スマートカードリーダ×1、音声入出力、キーボードバックライト、指紋認証センサーを装備している。
バッテリ駆動時間は、本体に2セル/33WHrリチウムポリマーバッテリを内蔵し約9時間。パワーキーボード側に6セル/21WHrリチウムポリマーバッテリを搭載、本体と合わせて約14.3時間ものバッテリ駆動が可能になる。実際のところは、ベンチマークテストで検証したい。
本体のサイズは298×192.7×10.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約780g。パワーキーボード込みで298×206.1×20.8mm(同)、重量約1.54kgとなる。
またオプションとして、Surface 3/3 Proのタイプカバーに背もたれが付いたような薄型の「トラベルキーボード」も用意されている。
筐体は、いわゆるUltrabookの高級モデルそのもの。言い方を変えるとMacBookっぽい雰囲気だ。質感も非常によく満足度は高い。ただ「米軍調達基準(MIL-STD-810G)」をクリアしている関係からか、頑丈過ぎて持った時の印象はズッシリ重いのは痛し痒しか。
本体は、正面中央上に200万画素Webカメラ、中央下にWindowsボタン。裏、左上側に電源ボタン、その下にmicroSDカードスロット。中央上に500万画素Webカメラと横にLEDフラッシュ。両サイドにスピーカー。右上に回転ロックボタンと音量±ボタン。microSDカードスロットはカバーの下にあるが、これが少し外しにくい。
下側面にペン収納スペース、ドッキングコネクタ、音声入出力、ドッキング用の凹みがある。上/左右側面には何もない。
パワーキーボードは、左側面にドッキングコネクタ、USB 3.0、音声入出力、スマートカードリーダ。右側面に電源入力、DisplayPort、USB 3.0を配置。こちら側のUSBはPowered USBだ。付属のACアダプタはサイズ90×40×25mm(同)、重量184gと割と小型。
充電方法は2種類あり、パワーキーボードとドッキングしている時はパワーキーボード側の電源入力で本体もパワーキーボードも充電できる。もう1つは、電源アダプタをドッキングコネクタへ変換するアダプタが付属しているので、これを使って本体だけを充電することも可能だ。加えてドッキングコネクタをUSB変換するアダプタも付属する。
ディスプレイは光沢ありの11.6型フルHD。明るさ、コントラスト、発色も良好。IPS式とは明記されていないが、視野角も広めだ。10点タッチも良好。
内蔵しているWacomデジタイザは、とても自然に描くことができ、ペン入力が苦手な筆者でさえも(笑)、普通にペンを使っているのと同じ感覚で扱える。これには正直驚いた。またペン側もバッテリ非搭載タイプなので軽く、(重くて)書き疲れることもない。Windows 10搭載のEdge/Webノートで是非使ってみたいところ。
パワーキーボードは、オフ/中/大の3段階のバックライトを搭載し、キー自体のクオリティも高く申し分ない。タッチパッドはボタンのない1枚プレートタイプで、面積も十分。滑りもよく扱いやすい。
ノイズや振動は皆無。発熱は使用した範囲では問題にならないレベルだった。加えてパワーキーボード装着時、キーボードはバッテリとインターフェイスしか内蔵していないので、もともと暖かく感じるほど熱を出す要素がない。サウンドは抜けやクオリティはよいものの、若干低音とパワー不足だった。
このように、ハードウェアとしての完成度はかなり高く、久々に物欲を刺激するマシンとなった。Windows 10に入れ替えて、また貸し出して欲しいほどだ。
パワーキーボード付きで15時間越えのバッテリ駆動時間
OSは64bit版のWindows 8.1 Pro。初期起動時のスタート画面は2面。1面目は標準の状態に加え、HP Pagelift、Windows 8入門、HPに登録の3つのストアアプリが配置されている。2面目はHP Touchpoint Manager以降がプリインストール。後ろ4つはデスクトップアプリとなる。デスクトップは壁紙の変更とHP Touchpoint Manager、Intel Dock Manager、ForcePad Tutorial、ForcePadの設定のショートカットを配置している。
Core M-5Y71、メモリ8GBでM.2接続のSSDということもあり、ストレスなく快適に操作可能だ。低SDPでクロック数がほぼ同じのBraswellなPentium N3700(4コア、1.6/2.4GHz)と比較てもやはり瞬発力的な動きに違いがあり、流石にCoreの冠なだけのことはある。
ストレージは256GB/M.2接続の「SAMSUNG MZNTE256HMHP」。スペック上はリード540MB/sec、ライト265MB/secとなっている。ユーザーが使用できるのは実質C:ドライブのみの1パーティション。約224GBが割り当てられ、空きは198GB。
Wi-Fi、Bluetooh、WiGig含めてIntel Tri Band Wireless-AC 17265 802.11a/b/g/n/ac+Bluetooth 4.0+WiGig Combo。その他、TPM 2.0や方向センサーなども搭載している。powercfg/aで確認したところ、InstantGo対応だった。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリが、「HP Pagelift」、「HP Touchpoint Manager」、「HPに登録」、「Windows 8入門」など。
ちょっと面白いのはHP Pageliftだ。掲載した例は極端(もともと斜めに撮っている)だが、例えば書類をスマートフォンで撮影すると、曲がらず正確な長方形に撮ることなどまずできない。その写真を入力として使い、このソフトウェアで処理すると綺麗な長方形になった書類の写真が得られる。ちょっとしたことだが、ビジネス用途などで重宝するだろう。
デスクトップアプリは、「ForcePadの設定」、「HP SoftPaq Download Manager」、「HP Documentation」、「HP Software Setup」、「HP Support Assistant」、「HP support information」、「HP Wireless HotSpot」、「HP Client Security」、「Theft Recovery」、「Intel Management and Security」、「Intel Dock Manager」、「インテル ラピッド・ストレージ・テクノロジー」、「CyberLink PowerDVD 12」、「Foxit PhantomPDF」など。ほとんどが同社の管理もしくはツール系のアプリだ。
ForcePadの設定の設定は、通常コントロールパネル/マウスのタブにある部分が、外部に出た形だ。HP SoftPaq Download Managerは、インストール可能なソフトウェア一覧。HP Support Assistantは以前からインストールされている管理系のツールとなる。なおIntel Dock Managerは、後述する「オプションのWiGigワイヤレスドック」で解説する。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMark(2コア4スレッドで条件的には問題ない)と、CrystalDiskMarkのスコアも掲載した。
winsat formalの結果は、総合 4.6。プロセッサ 6.8、メモリ 7.4、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 4.8、プライマリハードディスク 8。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)2367。
CrystalDiskMarkは、Seq/Read 483.7、Seq/Write 237.3、512K/Read 406.3、512K/Write 231.4、4K/Read 22.87、4K/Write 60.21、4K QD32/Read 363.5、4K QD32/Write 232.1(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 32676、FPU 26823、MEM 32514、HDD 38219、GDI 12000、D2D n/a、OGL 6112。
Core iクラスまでの性能は無く、正直あまり速くはない。とは言え、通常用途なら問題のないレベルだ。
BBenchは、本体単独で電源オプション:バランス、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残2%で34,446秒/9.6時間。いつもの残5%で33,515/9.3時間となった。パワーキーボード装着時は、バッテリの残2%で56,157秒/15.6時間。11.6型フルHD約1.5kgのノートPCとして見た場合、驚異的なバッテリ駆動時間と言えよう。
以上からCore Mは、バッテリ駆動時間が長く、爆速ではないが、パワーもほどほどといった特徴を持っているのが分かる。
オプションのWiGigワイヤレスドック「HP Advanced Wireless Docking Station」
本機最大の特徴は。WiGigに標準対応し、オプションのワイヤレスドックが用意されていることだ。WiGigは60GHzの帯域を利用して通信する方式で、最大7Gbpsでの通信が可能とされている。USB 3.0/3.1 Gen 1で5Gbps、USB 3.1 Gen 2で10Gbpsの転送速度なので、ちょうど間程度の性能を持っていると書けばイメージしやすいだろうか。
また一般的なWi-Fiの帯域は2GHzと5GHz。60GHzという周波数が桁違いに高いということも分かる。これによって高速なデータ通信が可能なわけだが、壁など障害物があるとNG。見通しのよい極めて近距離用となり、今回のようなワイヤレスドックが用途的にピッタリだろう。
このワイヤレスドック、正式名称は「HP Advanced Wireless Docking Station」。85×85×87mm(同)/0.42kgと小型の立方体に、USB 3.0×4(内1つはPowered USB)、Gigabit Ethernet、DisplayPort×2、ミニD-Sub15pin、音声入出力と豊富なインターフェイスを搭載している。
接続時のデバイスマネージャからも分かるように、パワーキーボード同様、内部的にはUSB 3.0で接続していると思われる。
実際の使用感だが、まず見た目がコロッとした立方体である意味可愛い。約88㎜四方と言うこともあり、机の上にあっても全く邪魔にならない。
また、無線接続でのディスプレイと聞くと、Miracastのように映るには映るものの、遅延が多く、メインとしては使いにくいイメージがある。このドックなら心配無用。試しにYouTubeのフルHD/60fps動画なども再生したところ、全く問題無く観ることができた。
接続自体は非常に簡単で、Intel Dock Managerが常駐し、ワイヤレスドックの電源を入れると、即接続される。距離的には見通しの良い室内であれば大丈夫のようだ(自宅の2部屋、6畳と6畳のほぼ端から端でも障害物が無ければ接続できた)。
定価は27,000円。増えるポートの種類や数、使いやすさを考えると然程高くない。有線で接続するSurface 3のドッキングステーションとほぼ同じレンジだ。
余談になるが、Snapdragon 810にはWiGig対応のMACが内蔵されており、このSoCを搭載したスマートフォンやタブレットでは容易にWiGigが利用できる予定になっている。
噂されている新型Lumia(Windows 10 Mobile)で搭載している可能性が高く、WiGigドッキングステーションに、キーボード/マウス、ディスプレイを接続すると、Windows 10のContinuumモードが使え、Office MobileなどUWPアプリがデスクトップ環境として使えるようになる。今から楽しみにしている今年(2015年)後半のデバイスだ。
以上のようにHP「Elite x2 1011 G1」は、Core Mプロセッサ、M.2 SSD、Wacomデジタイザ、そしてWiGigを搭載した11.6型フルHDの2-in-1だ。バッテリ駆動時間も異様に長い。質感やルックスも素晴らしく、非常に完成度の高いマシンに仕上がっている。
パワーキーボード付きで10万円超えと、価格は少し高めだが、Cherry Trail搭載機でさえも10万円近い価格になってしまうこの円安の中、これだけ機能満載で、この範囲に収まるのなら納得とも言える。カッコ良く最先端の2-in-1を求めているユーザーに、ワイヤレスドックも含め絶対お勧めの逸品だ。