西川和久の不定期コラム

レノボ・ジャパン「IdeaPad Miix 10」

~ノートPC風にも使えるキーボードケースが付属するWindows 8タブレット

 レノボ・ジャパンは、10.1型のWindows 8タブレット「IdeaPad Miix 10」を7月下旬に発売する。当初詳細なスペックなどは不明だったが、同社のサイト上で公開され、同時に編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。

Clover Trailを搭載したタブレット

 同社サイトのタブレットのカテゴリを見ると、ThinkPadシリーズとしては、「ThinkPad Tablet 2」、「ThinkPad Helix」の2モデル。IdeaPadシリーズとしては「IdeaTab A」(Android)、「IdeaPad Miix 10」と、計4モデル並んでいる。うち1つはAndroid搭載機なので、Windows 8搭載機は3モデル。

 そしてIntel Atom Z2760(Clover Trail)搭載機は、「ThinkPad Tablet 2」と、今回ご紹介する「IdeaPad Miix 10」で、それぞれのブランドで1機種ずつラインナップしていることになる。主な仕様は以下の通り。

レノボ・ジャパン「IdeaPad Miix 10」の仕様
CPUAtom Z2760(2コア/4スレッド、1.8GHz、キャッシュ1MB、TDP 1.7W)
メモリ2GB(LPDDR2オンボード)
eMMC64GB
OSWindows 8(32bit)
ディスプレイIPS式10.1型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット、10点タッチ対応
グラフィックスプロセッサ内蔵(動作クロック533MHz)、Micro HDMI出力
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0
その他USB 2.0×1(Micro USB)、microSDカードリーダ、フロント130万画素Webカメラ、音声入出力、ステレオスピーカー、ドッキングコネクタ
センサー加速度センサー、光センサー、コンパスセンサー、ジャイロセンサー
サイズ/重量(タブレットのみ)265×173×10.1mm(幅×奥行き×高さ)/0.58kg
バッテリ駆動時間最大10時間
価格6~7万円程度(Microsoft Officeの有無あり)

 プロセッサは冒頭でも書いた通りAtom Z2760。2コア4スレッドで、クロックはシステムの負荷によって変動し最大1.8GHz。キャッシュは1MBでTDPは何と1.7Wだ。

 グラフィックスはもちろん、ビデオデコーダ/エンコーダ、サウスブリッジ的な機能も内蔵しており、SoC的なアーキテクチャとなっている。Atom型番と言うこともありパワーはそれなりだが、長時間のバッテリ駆動が期待できる。

 メモリはオンボードで2GB/LPDDR2。ストレージは64GBのeMMCを搭載している。OSは32bit版のWindows 8だ。

 ディスプレイは、光沢のあるIPS式10点タッチ対応の10.1型液晶パネルで、解像度は1,366×768ドット。外部出力用にMicro HDMIを装備している。

 ネットワークは、有線LANは無く、無線LANはIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth 4.0にも対応する。そのほかのインターフェイスは、USB 2.0×1(Micro USB)、microSDカードリーダー、フロント130万画素Webカメラ、音声入出力、ステレオスピーカー、ドッキングコネクタ。Micro USBからUSBへの変換ケーブルも付属する。

 センサーは、加速度センサー、光センサー、コンパスセンサー、ジャイロセンサーと、一通り搭載。

 本体のみのサイズは265×173×10.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量0.58kg。バッテリ駆動時間は最大10時間となる。

 そして最大の特徴は、キーボードフォリオケースが付属し、合体時ノートPC風に使うことが可能になる点だ。接続インターフェイスは、Bluetoothではなく、専用のドッキングコネクタを使用する。

 価格は6~7万円程度。販売形式にもよるが、Microsoft Office Home and Business 2013の有無によって5千円ほどの価格差があるようだ。

フロント。中央上にWebカメラ、中央下にWindowsボタン。キーボードフォリオケース装着時は、ノートPC風に使うことができる
リア。他社のこのタイプのキーボードケースは、持ち上げるとキーボードがぶら下がってしまうが、接続部に磁石を使い持ち上げてもキーボードの位置をキープする仕掛けなっている
左側面。電源入力、Micro HDMI出力、カバーの下にmicroSDカードスロット、音量±ボタン。液晶パネルの角度はこの位置で固定
右側面。右側面には何もない。キーボードフォリオケースは、しっかりした作りになっていることが分かる
上部。手前に音声入出力。奥側に電源ボタン
下部。上のスリット内にステレオスピーカー、下側にドッキングコネクタとMicro USBコネクタ。Micro USBからUSBへの変換ケーブルが付属する
重量(単独)。本体のみは571g
キーボードフォリオケース。中央の凹みにドッキングコネクタがある。加えて左右の凹みで本体を固定する。キーボードはAccuTypeを採用
重量(キーボードフォリオケース)。キーボードフォリオケースは478g
重量(合体時)。合体時は1,048g。1kgを少し越えるのが惜しい。サイズは282×188×21mm(幅×奥行き×高さ)と、1cmほど厚みが増す
キーピッチは実測で約19mm
ACアダプタ。サイズは70×40×25mm、重量120gと小型だ

 単独使用時は重量が約500gちょっとと非常に軽く、厚みも1cmほどで、バランスも良く持ち易い。フロントが光沢のあるブラック、リアはシルバーとデザインはシンプルながらも安っぽさは感じられず好印象だ。

 右側面は何も無く、左側面に電源入力、Micro HDMI出力、カバーの下にmicroSDカードスロット、音量±ボタン。上部側面に音声入出力と奥側に電源ボタン。下部側面にドッキングコネクタとMicro USBコネクタがある。ACアダプタは、サイズが70×40×25mm、重量120gと小型で邪魔にならない。

 IPS式の10.1型液晶パネルは、発色は自然でコントラストも高く、最大輝度は十分明るい。タッチもスムーズに追尾する。もちろんIPS式なので視野角も広い。

 振動、ノイズに関しては全くなく、熱に関しては、左側が若干暖かくなる程度。サウンドは十分な出力があり、抜けの良い音質だ。ただ最大出力時は若干歪む傾向にある。

 キーボードフォリオケース装着時の一体感や使用感は、これまでこの手のタイプを試用した中では一番完成度が高い。特に技ありと言えるのは、ドッキングコネクタの下部と、キーボード部の接触部分が磁石になっており、本体を持ち上げてもキーボード部が固定できることだ。かなりガッチリ固定され少々振る程度では外れない。

 合体時の重量は1,048g。サイズは282×188×21mm(幅×奥行き×高さ)と、幅と奥行きはあまり差がないものの、厚みは1cmほど増す。

 キーボードの作りも良く、AccuTypeそのもの。全く違和感なく快適に入力できる。ただしポインティングデバイスに相当する機構が無いのは惜しいところか。

 合体時、唯一の欠点はUSBポートがドッキングコネクタの並びにあるため使えなくなることだ。電源入力やMicro HDMIコネクタは左側面下側と、ケーブルを付けても目立たず、邪魔にならない位置にあるだけに非常に残念。右側面が空いているので、何とかならないのだろうか。

BBenchで12時間越えの長時間駆動が可能

 OSはメモリが2GBと言うこともあり、32bit版のWindows 8になっている。スタート画面は、2面目のLenovoアプリからがプリインストールのアプリケーション。3面目最後の2つはデスクトップアプリとなる。デスクトップは壁紙の変更、そしてKINGSOFT Officeなどのショートカットが並んでいる。

 1点、スペック上は10点タッチ対応なのだが、システムのプロパティでは5点タッチになっている。このサイズの液晶パネルでは5点でも10点でも使い勝手に差は無く、運用上は困らないが、どちらが正解なのか気になるところではある。

 ストレージはC:ドライブのみの1パーティションで約50GBが割当てられている。初期起動時の空きは約34.5GB。用途によっては容量不足になりそうだが、microSDカードも使えるので、うまく使い分ければいいだろう。

スタート画面1。Windows 8標準
スタート画面2。Lenovoアプリ以降がプリインストール
スタート画面3。最後の2つはデスクトップアプリだ
起動時のデスクトップ。システムのプロパティでは5点タッチになっている
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはeMMCのため「MMC Memory Card」。Wi-FiはSDIO接続
eMMCのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約50GBが割当てられている

 プリインストール済みのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Evernote」、「Kindle」、「Lenovo Companion」、「Live TV」、「McAfeeセキュリティアドバイザー」、「Skype」、「Lenovo Support」、「SUUMO」、「ヤフオク」、「Zinio Reader」、「じゃらん」など。最近試用したIdeaPadとほぼ同じ構成だ。

アプリ画面1
アプリ画面2
Lenovo Companion
Lenovo Support
McAfeeセキュリティアドバイザー
ヤフオク

 デスクトップアプリケーションは、「Baidu」、「KINGSOFT Office」、「Lenovo VeriFace」、「McAfee Internet Security」など。なお、デスクトップにショートカットがある「ユーザーガイド」は、クリックするとWindowsストアアプリが起動する。これまでスタート画面にデスクトップアプリのアイコンが並んでいるのはよくあるパターンだが、逆のパターンはあまり見かけない。

VeriFace
ユーザーガイド(デスクトップのショートカットからWindowsストアアプリを起動)
Baidu IME

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.3。プロセッサ 3.5、メモリ 4.6、グラフィックス 3.3、ゲーム用グラフィックス 3.3、プライマリハードディスク 6.1。PCMark 7は1440 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 11037、FPU 9415、MEM 8998、HDD 11141、GDI 1886、D2D 601、OGL 7669。

 Celeronと比較してもかなり遅いのが分かる。と言って使い物にならないほど遅い分けでも無く、絶妙なバランスを保っている。だたOGLに関しては、Intel HD Graphics 4000よりも速いスコアだ。

 BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残2%で44,702秒/12.4時間。通常の残5%でも43,569秒/12.1時間と、12時間を越えた。このバッテリ駆動時間こそClover Trail最大の魅力であり、先のパワー不足を十分カバーできる。

Windows エクスペリエンス インデックス(Windows 8から最大9.9へ変更)。総合 3.3。プロセッサ 3.5、メモリ 4.6、グラフィックス 3.3、ゲーム用グラフィックス 3.3、プライマリハードディスク 6.1
PCMark 7。1440 PCMarks
BBench。バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残2%で44,702秒/12.4時間
CrystalMark。ALU 11037、FPU 9415、MEM 8998、HDD 11141、GDI 1886、D2D 601、OGL 7669

 以上のようにレノボ・ジャパン「IdeaPad Miix 10」は、Clover Trailを搭載し、BBenchで12時間越えと、長時間バッテリ駆動できるのが魅力のタブレットだ。IPS式の10.1型液晶パネルは視野角も広く、写真はもちろん、ステレオスピーカーと組合わせ動画を十分に楽しむことができる。

 キーボードフォリオケースとの合体時は、他社も含め、同じタイプの仕掛けとしては、ルックスも含め抜群の完成度だ。USBポートが使えなくなるのは痛いものの、それ以上にノートPC風として操作する時、非常に便利で作業効率がアップする。

 Clover Trailなのでパワーはそこそこだが、長時間バッテリ駆動、そしてキーボード入力にも拘りたいユーザーにお勧めのタブレットと言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/