西川和久の不定期コラム

デル「Precision T1700」

~Haswell版XeonとQuadro K600を搭載したコンパクトワークステーション

 デル株式会社は6月4日、個人/法人向けのワークステーションを発表した。27型WQHD液晶一体型PCやミドルタワーPCなど、いろいろタイプがある中、今回はスモールフォームファクタの筐体に第4世代XeonとQuadro K600を搭載した「Precision T1700」の試用レポートをお届けしたい。

スモールフォームファクタの筐体に第四世代XeonとQuadro K600を搭載

 同社のサイトを見ると「Precision T1700」は、5モデル用意され、筐体がスモールフォームファクタが3モデル、ミニタワーが2モデルの構成になっている。プロセッサはすべて第4世代Core(Haswell)アーキテクチャで、Core i5からXeonまで。グラフィックスもプロセッサ内蔵かQuadro K600と、用途や予算に応じたチョイスが可能だ。

 今回届いたのは(スペックではなくページレイアウト上)真ん中のモデルに相当する。主な仕様は以下の通り。

デル「Precision T1700」の仕様
CPUXeon E3-1240 v3
(4コア/8スレッド、
クロック3.4GHz/TB 3.8GHz、
キャッシュ 8MB、TDP 80W)
チップセットIntel C226 Chipset
メモリ8GB/4GB×2(1,600MHz DDR3 Non-ECC)、
スロット4(空き2)
HDD1TB(7,200rpm)
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 7 Professional(64bit)
グラフィックスQuadro K600(1GB)/
DisplayPort×1、DVI-D×1
ネットワークGigabit Ethernet
その他USB 3.0×4
(フロント×2、リア×2)、
USB 2.0×6
(フロント×2、リア×4)、
PS/2×2、シリアル、
音声入出力
拡張スロットPCI Express Gen 3 x16×1、同x4×1
ストレージベイ内蔵3.5インチベイ×1
(3.5インチドライブ×1または
2.5インチドライブ×2をサポート)、
外付け薄型オプティカルベイ×1
サイズ92.6×312×290mm(幅×奥行き×高さ)
直販価格154,980円(7月19日現在)

 プロセッサはXeon E3-1240 v3。いわゆるHaswell版のXeonだ。4コア8スレッド、クロックは3.4GHz。Turbo Boost時3.8GHzまで上昇する。キャッシュは8MBでTDPは80Wとなる。メモリは4GB×2で計8GB。4スロットあり2スロットが空きだ。Non-ECCタイプとECCタイプが選べるが、今回の構成ではNon-ECCタイプとなっている。

 HDDは7,200rpmの1TB。光学ドライブとして、薄型のDVDスーパーマルチドライブを搭載している。OSは64bit版のWindows 7 Professonal。

 Haswell版Xeon向けチップセットは、Intel C222/C224/C226の3タイプあり、共通で備えるインターフェイスはPCI Express 2.0、6Gbps SATA、USB 2.0/3.0など。ローエンドのC222は、6Gbps SATAが2基、USB 2.0/3.0が計10基となる。Precision T1700に搭載しているのはC226。他の2つと一番の違いは、プロセッサ内蔵グラフィックスに対応していることだ。

 リアにあるDisplayPort×2と、ミニD-sub15ピンが正にそうなのだが、Xeon E3-1240 v3はグラフィックスを内蔵していない。別構成時のIntel Core i5-4670/i7-4770やXeon E3-1220 v3/E3-1225 v3と組合わせた時にのみ機能するため、今回の構成では使用できない。

 グラフィックスはQuadro K600(1GB)を搭載。Keplerアーキテクチャを採用したエントリーモデルに相当する。出力はDisplayPort×1、DVI-D×1となる。

 インターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 3.0×4(フロント×2、リア×2)、USB 2.0×6(フロント×2、リア×4)、PS/2×2、シリアル、音声入出力。小型の筐体であるが、これだけポートがあれば特に困る事はないだろう。

 拡張スロットは、PCI Express Gen 3 x16×1、同x4×1。x16はグラフィックスカードに使用しているため、x4のみ空きとなる。

 ドライブベイは、内蔵3.5インチベイ×1(3.5インチドライブ×1または2.5インチドライブ×2)、外付薄型オプティカルベイ×1。どちらも塞がっているため拡張はできない。

 サイズは92.6×312×290mm(幅×奥行き×高さ)。スモールフォームファクタで、同社のワークステーション用としては初採用だ。またミニタワー型(175×435×360mm)もラインナップされている。今回の構成で直販価格は154,980円となる。

 仕様上対応しているプロセッサ/OS/メモリ/グラフィックスは、プロセッサはXeon E3-1270 v3/E3-1245 v3/E3-1240 v3/E3-1225 v3/E3-1220 v3、Core i7-4770、Core i5-4670/4570。OSは64bit版のWindows 8 Pro、32/64bit版のWindows 7 Professional/Ultimateの各英語版と日本語版、Red Hat Linux Enterprise 6.4 英語版。

 メモリは2GB×2/4GB×2/2GB×4/8GB×2/4GB×4の1,600MHz DDR3 ECC UDIMMもしくは1,600MHz DDR3 Non-ECC。グラフィックスはAMD FirePro W5000/QuadroK4000/QuadroK2000/AMD FirePro V4900/Quadro K600(*)/AMD FirePro 2270(*)/Intel HD Graphics P4600/4600(*)/NVS 510(*)/NVS 310(*)となるが、スモールフォームファクタで使用できるのは*印のものに限られる。

右側面。横置き用のゴム足が4つある。スリットは無い
フロント。上部ロゴの左横に電源ボタン。マイク/ヘッドフォン、USB 3.0×2、USB 2.0×2
左側面。左上にあるレバーを引くとパネルが外れる仕掛けになっている。こちらもスリットは無い
背面。PS/2×2、DisplayPort×2(未使用)、ミニD-sub15ピン(未使用)、シリアル、USB 3.0×2、USB 2.0×4、Ethernet、音声入出力。QuadroK600のパネルにDVI-DとDisplayPort
内部(引き)。各ユニットがネジを使わずワンタッチで外れる様になっている。ファンはフロントとプロセッサ、電源の計3つ
内部(CPU周辺)。少し分かりにくいが、プロセッサの右側、ドライブベイの下にメモリスロットが4つある
Quadro K600。ロープロファイルでコンパクトだ
255Wの電源ユニットが使われている
付属品は、USB接続のキーボードとマウス、DisplayPort→DVI変換アダプタ、DVI→ミニD-sub15ピン変換アダプタなど

 筐体はスモールフォームファクタなので非常にスリム。建付けや質感なども良く、さすがメーカー製のワークステーションだけある。

 パネルはもちろん、メンテナンスなどで外すユニットにネジは使われておらず、全てワンタッチで着脱できる仕掛けになっているのも魅力的だ。縦置きにも横置きにも対応できるよう、2つの側面にゴム足が付けられている。

 フロントパネルには、電源ボタン、マイク/ヘッドフォン、USB 3.0×2、USB 2.0×2。リアパネルにPS/2×2、DisplayPort×2、ミニD-Sub15ピン、シリアル、USB 3.0×2、USB 2.0×4、Gigabit Ethernet、音声入出力を装備。ただし、DisplayPort×2、ミニD-Sub15ピンに関しては未使用で、Quadro K600のパネル側にあるDVI-DとDisplayPortを使用する。

 電源ユニットは255W。一般的に拡張性を考えると不足気味になるが、既にドライブベイは埋まっており、グラフィックスに関してはロープロファイルなので選択肢は狭く、拡張するとすればメモリ程度。この範囲内なら大丈夫だ。

 TDP80WのXeonなので、少し熱くノイズもあるだろうと、電源オンにしたところ、起動時に一瞬ファンの音が煩くなるものの、落ち着いてしまえば、静音とまではいかないが、とても静かで拍子抜けするほど。これなら個人の自宅で深夜に使っても全く問題にならないレベルと思われる。ただ背面から排出される熱はそれなりにある。

高いパフォーマンスのプロセッサとOGL

 OSは64bit版のWindows 7 Professional。メモリを8GB搭載しているので、通常用途であれば十分だろう。起動時のデスクトップは、ショートカットが2つ追加されただけとシンプルだ。

 HDDは1TB/7,200rpm/SATA 6Gbps/64MBの「WDC WD10EZEX」。C:ドライブのみの1パーティションで約918GB割り当てられ、初期起動時の空きは884GBとなる。

 DVDスーパーマルチドライブは「HL-DT-ST DVD+-RW GT80N」が使われていた。Gigabit EthernetはIntel製だ。USBポートの数は多いものの、チップセットで対応していることもあり、特殊なデバイスなどは無い。

起動時のデスクトップ。ショートカットが2つ追加されただけとシンプルなデスクトップ
デバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは1TB/7,200rpm/SATA 6Gbps/64MBの「WDC WD10EZEX」。DVDスーパーマルチドライブは「HL-DT-ST DVD+-RW GT80N」。Gigabit EthernetはIntel製
C:ドライブのみの1パーティションで約918GB割当てられている

 プリインストール済みのソフトウェアは、アプリケーション的なものは無く、「DELL Audio」、「DELLバックアップおよびリカバリーマネージャ」、「DELL Client System Update」、「DELL Protected Workspace」、「Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー」など、ツール系となっている。

NVIDIAコントロールパネル
DELL Audio
DELLバックアップおよびリカバリーマネージャ
DELL Client System Update
DELL Protected Workspace Setup
Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7の結果を見たい。CrystalMarkの結果も掲載した(4コア8スレッドなので条件的に問題があり参考まで)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.7。プロセッサ 7.7、メモリ 7.8、グラフィックス 5.7、ゲーム用グラフィックス 6.8、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は3281 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 85390、FPU 70262、MEM 88820、HDD 18663、GDI 24279、D2D 16216、OGL 102864。

 Windows 7のWindows エクスペリエンス インデックスは最高値が7.9。プロセッサとメモリが近い値にある。逆にグラフィックスとプライマリハードディスクは月並みだ。ただ、CrystalMarkのOGLは102864と桁違いに速い。この点は、Quadro K600のパワー炸裂と言ったところか。PCMarksは通常ストレージが遅いとスコアは低めになるのだが、それでもこの値とは、他の部分が速い証拠でもある。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 5.7。プロセッサ 7.7、メモリ 7.8、グラフィックス 5.7、ゲーム用グラフィックス 6.8、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 7は3281 PCMarks
CrystalMarkはALU 85390、FPU 70262、MEM 88820、HDD 18663、GDI 24279、D2D 16216、OGL 102864

 以上のようにPrecision T1700は、スモールフォームファクタながらも、Haswell版XeonとQuadroK 600を搭載したパワフルなワークステーションだ。インターフェイスも各種揃っており不足は無く、ノイズに関しても個人レベルの使用で問題無いレベルに収まっている。

 個人/法人に関わらず、コンパクトでパワフルなワークステーションを求めているユーザーの候補になりえる1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/