西川和久の不定期コラム

マウスコンピューター「LuvPad WN1100」

~AMD Z-60と11.6型IPSフルHD液晶を搭載したWindows 8タブレット

 マウスコンピューターは4月2日、AMD Z-60と11.6型IPSフルHD液晶を搭載したWindows 8タブレット「LuvPad WN1100」を発表、4月8日15時から発売した。AMDプロセッサを搭載したタブレットはあまり見掛けないので興味津々。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

タブレット向けAPU「AMD Z-60」搭載

 AMD APUのタブレット向けZシリーズは、2011年6月に発表された「Brazos」コア版「Z-01」がベースとなっている。この時点でTDPは9W。今回「LuvPad WN1100」に搭載している「Z-60」は、2012年10月に発表され、TDPを引き下げた「Hondo」コア版でTDPは半分の4.5Wとなっている。CPUは、クロックが最大1GHz、2コア、キャッシュは1MB。そしてGPUは、80SPでDirectX 11などをサポートする「Radeon HD 6250」を内蔵する。そのほか主な仕様は以下の通り。

マウスコンピューター「LuvPad WN1100」の仕様
APUAMD Z-60(2コア、1.0GHz、キャッシュ1MB、TDP 4.5W)
メモリ2GB(DDR3Lオンボード)
チップセットAMD A68M FCH
SSD128GB
OSWindows 8(64bit)
ディスプレイIPS式11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,920×1,080ドット、10点タッチ対応
グラフィックスプロセッサ内蔵Radeon HD 6250、Micro HDMI出力
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+LE
その他Micro USB×1、音声入出力、前面100万画素カメラ、モノラルマイク、ステレオスピーカー
センサー加速度センサー、照度センサー
サイズ/重量296.32×191.18×10.0mm(幅×奥行き×高さ)/約810g
バッテリー駆動時間最大約5.5時間
Web限定価格59,850円~

 チップセットはAMD A68M FCH。メモリは2GBのDDR3Lをオンボードで搭載する。ストレージはSSDで容量は128GB。OSは64bit版のWindows 8だ。カスタマイズでWindows 8 Proを選択することも可能となっている。

 ディスプレイは、光沢タイプのIPS式11.6型液晶ディスプレイで解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)。10点タッチに対応し、外部出力用としてMicro HDMIも装備する。

 インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+LE、Micro USB×1、音声入出力、前面100万画素カメラ、モノラルマイク、ステレオスピーカー。センサーは加速度センサー、照度センサーを搭載している。

 サイズは296.32×191.18×10.0mm(幅×奥行き×高さ)。重量約810g。バッテリ駆動時間は最大5.5時間。

 価格はWeb限定で59,850円。「Surface RT」はこれより約1万円安いが、ディスプレイ解像度はHD(720p)でSSDは32GB、そして従来のデスクトップアプリケーションは動かない。一方、Clover Trail搭載タブレットはもう少し高価だ。11.6型IPS式でフルHDの解像度を持ち、128GBのSSDを搭載したWindows 8タブレットがこの価格というのは、コストパフォーマンスが高いと言える。

 なおBluetooth接続のMicrosoft「Wedge Mobile Keyboard」と「Wedge Touch Mouse」がセットになった「LuvPad WN1100-WKM」も用意され、価格は69,930円となる。

前面。上部中央に前面カメラ、下中央にWindowsボタン
背面カメラは非搭載。内部にアクセスできる小さいパネルなどはない
左側面。Micro HDMI、音声入出力
右側面。音量調整、電源入力、Micro USB
上面。左端に電源ボタン
下面。特に何もない
重量は実測で808g
ACアダプタのサイズは75×55×33(最厚部)mm、重量は213g。Micro USB→USB変換アダプタも付属
iPadとの比較。9.7型4:3のパネルを搭載しているiPadは、奥行きはほぼ同じだが、幅が随分違う

 筐体はパネルのフチ以外は非光沢のブラックで覆われ、加えて背面は細かい模様が入っているので手に持った時など滑りにくくなっている。約800gと軽く、厚さも10mmとそこそこ薄い。11.6型の液晶パネルを搭載したWindows 8機としては(変な表現だが)今時のタブレットらしいタブレットだ。

 原色系の色が(良い意味で)濃く見えるのが印象的なパネルで、IPS式のため視野角は広く、明るさコントラストともに十分。クラス以上のパネルを搭載していると言っていい。10点タッチはスムーズにWindows 8を操作できる。

 前面上部中央に前面カメラ、下中央にWindowsボタン。背面カメラは非搭載。内部にアクセスできるパネルはない。左側面はMicro HDMI、音声入出力。右側面は音量調整、電源入力、Micro USB。上面に電源ボタンが搭載されている。USBとHDMIのコネクタがMicroタイプなのは惜しい部分であるが、Microとして標準タイプなので、困る事はないだろう。

 ACアダプタのサイズは75×55×33mm(同)で重量は213g。本体が薄いので並べると大きく見えるが、実際はコンパクトでカバンに入れる時も邪魔にならない。USB充電できないのは残念なところだ。

 ノイズ、振動に関しては試した範囲では気にならないレベルに抑えられている。TDP 4.5Wの効果だろう。ただベンチマークテストなど負荷がかかる処理を行なうと、背面の右上が少し熱を持つ感じだ。

 サウンドは最大出力があまり大きくなく、本格的に音楽や動画を楽しむならBluetoothなどの外部スピーカーが欲しいところ。全体の完成度が高いだけに、唯一気になる部分だった。

性能はClover Trailとほぼ互角だが、もう一歩伸びて欲しいバッテリ駆動時間

 OSは64bit版のWindows 8。スペック的にIntelのClover Trail「Atom Z2760」と比較されそうだが、こちらは64bitに対応していない。

 初期起動時のスタート画面は2面+αあり、コンテンツ系のWindowsストアアプリで主に構成されている。デスクトップは同社のイメージカラーでまとめられ、左側に若干のショートカットが並ぶシンプルなものだ。

 SSDは、128GBの「Toshiba THNSNW128GMCP」。C:ドライブのみの1パーティションで約109GB割当てられている。初期起動時の空きは約90GB。

 Wi-FiモジュールはQualcomm製、グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon HD 6250となる。Bluetoothモジュールは内部でUSB接続されているようだ。

スタート画面1。Windows 8標準
スタート画面2。有料アプリのAUPEO! PERSONAL RADIOとStationTV Linkが入っている
スタート画面3。最後のムービーメーカーとフォトギャラリーはデスクトップアプリ
起動時のデスクトップ。左端に若干のショートカットが並ぶ。壁紙も含め同社のイメージカラーでまとめられている
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSDは、128GBの「Toshiba THNSNW128GMCP」、Wi-FiモジュールはQualcomm製、グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon HD 6250
SSDのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約109GB割当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリが、「Abilie」、「AUPEO! PERSONAL RADIO」、「Fresh Paint」、「Hulu」、「NAVITIME」、「Skype」、「StationTV Link for MouseComputer」、「SUUMO」、「Yahoo!オークション」、「クックパッド」、「じゃらん」、「日本経済新聞 電子版」、「ホットペッパー グルメ」、「ムビチケ」など、コンテンツ系が主になっている。

 個人的にStationTV Link for MouseComputerが入っているのはポイントが高い。DTCP-IPに対応したDLNAクライアントで、nasneで録画した地デジも再生可能だ。試したところ、音飛びやコマ遅れなども無く快適に再生できた(3倍モード)。ただどちらの問題か分からないが、同じタイトルが複数並ぶことがあった。

アプリ画面1
アプリ画面2
StationTV Link for MouseComputer
AUPEO! PERSONAL RADIO
Abilie
ムビチケ

 デスクトップアプリケーションは、「AMD VISION Engine Control Center」、「ATOK無償試用版」、「CyberLink YouCam 5」、「マカフィー インターネットセキュリティと」、割とあっさりめだ。

AMD VISION Engine Control Center
ATOK無償試用版のインストール
CyberLink YouCam 5

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題はない)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 2.7。プロセッサ 2.7、メモリ 4.9、グラフィックス 3.6、ゲーム用グラフィックス 5.4、プライマリハードディスク 7.4。参考までにClover Trail「Atom Z2760」(デル「Latitude 10」)は、プロセッサ 3.4、メモリ 4.7、グラフィックス 3.7、ゲーム用グラフィックス 3.3。各項目で一長一短だが、ゲーム用グラフィックスに関してはZ-60の方が1ランク性能が高そうだ。

 PCMark 7は1490 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 6559、FPU 6188、MEM 5487、HDD 26206、GDI 2672、D2D 1133、OGL 5517。PCMark 7やCrystalMarkの値はCore i5の4~6分の1程度となっている。

 BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で21,009秒/5.8時間。Clover Trailの8時間超えには届かなかったが、仕様上の最大5.5時間を上回った。とは言えもう少し伸びて欲しいところだ。

Windows エクスペリエンス インデックス(Windows 8から最大9.9へ変更)。総合 2.7。プロセッサ 2.7、メモリ 4.9、グラフィックス 3.6、ゲーム用グラフィックス 5.4、プライマリハードディスク 7.4
PCMark 7。1490 PCMarks
BBench。省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で21,009秒/5.8時間
CrystalMark。ALU 6559、FPU 6188、MEM 5487、HDD 26206、GDI 2672、D2D 1133、OGL 5517

 以上のようにマウスコンピューターLuvPad WN1100は、AMD Z-60と11.6型IPSフルHD液晶を搭載したWindows 8タブレットだ。重量も約800gと1kgを切り、持ち運びも苦にならない。Coreプロセッサ搭載機と比較すると、全体的に性能不足は仕方ないものの、Windowsストアアプリやちょっとしたデスクトップアプリなど、普段使いであれば特に問題ないレベルで作動する。

 逆にこれだけのスペックで6万円を切っているのは、コストパフォーマンスが高く、Windows 8搭載タブレットを探しているユーザーにお勧めの1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/