■西川和久の不定期コラム■
ASUSTeK Computerは6月6日、デスクトップPCを日本向けに始めて投入する発表を行なった。数モデルある中から、R.O.G.ブランドのゲーミング向けのデスクトップPC、「CG8580」が編集部から送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
これまで同社はノートPC、All-in-Oneやネットトップなどは国内で扱っていたが、一般的なデスクトップPCに関しては販売していなかった。
6月6日に発表があったのは、コンパクトで低価格のエントリー機「CP3130」、メインストリーム向けの「CM1740」、GeForce GTシリーズを搭載したハイエンドデスクトップPC「CM6870 」、そして今回ご紹介するR.O.G.ブランドのゲーミング向けデスクトップPC「CG8580」の4モデルだ。
このCG8580は、独自のオーバークロック機能を搭載。本体の上部手前左にあるボタン1つでCore i7-3770Kの最大周波数を4.2GHz/4.4GHz/4.6GHzの3段階に切り替えることができる。昨今自作PCではオーバークロックは盛んだが、大手メーカー製のPCでオーバークロックを標準対応しているのは数が少ない。
もちろんオーバークロックだけでなく、ストレージやグラフィックなどにも高性能なデバイスを使い、トータルで非常に高速なマシンに仕上がっている。主な仕様は以下の通り。
CPU | Intel Core i7-3770K(4コア/8スレッド、クロック3.5GHz/Turbo Boost 3.9GHz、キャッシュ 8MB、TDP77W) |
チップセット | Intel Z77 Express |
メモリ | 16GB/DDR3(4スロット/空き0) |
HDD | 1TB(7,200rpm、SATA6Gbps) |
SSD | 128GB |
光学ドライブ | BDドライブ |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit SP1) |
グラフィックス | GeForce GTX 680(2GB)/DVI-D×2、HDMI出力、DisplayPort |
ネットワーク | Gigabit Ethernet |
その他 | USB 3.0×6(前面×2/背面×4)、USB 2.0×4(前面×2/背面×2)、マルチカードリーダ、PS/2×1、S/PDIF光出力、音声入出力、オリジナルゲーミングマウス「GX900」(4,000dpi) |
拡張スロット | PCI Express x16×2、同x1×2、PCI×2 |
サイズ・重量 | 270×600×500mm(幅×奥行き×高さ)/約20kg |
直販価格 | 239,800円 |
プロセッサはCore i7-3770K。4コア8スレッド。定格はクロック3.5GHzでTurbo Boost時3.9GHzまで上昇する。キャッシュは8MB、TDPは77W。末尾がK型番なので、オーバークロックに対応している。オーバークロックに関しては後半のベンチマークテストと合わせて説明したい。
チップセットはIntel Z77 Express。メモリスロットは4つあり、4GB×4の16GBが実装済だ。OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。ストレージは、SSDは128GB、HDDは7,200rpmでSATA6Gbpsの1TB。この構成からも分かるように、SSDはHDDのキャッシュでは無く、それぞれ独立したドライブとして機能する。光学ドライブはBDドライブを搭載。
グラフィックスは、GeForce GTX 680(2GB)。Kepler GPUアーキテクチャ、NVIDIA GPU Boost、NVIDIAアダプティブV-Sync対応の、デスクトップ用としては、GTX 690に次ぐハイエンドモデルだ。出力はDVI-D×2、HDMI出力、DisplayPortを装備する。
その他のインターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 3.0×6(前面×2/背面×4)、USB 2.0×4(前面×2/背面×2)、マルチカードリーダ、PS/2×1、S/PDIF光出力、音声入出力。そして4,000dpi解像度を持つオリジナルゲーミングマウス「GX900」も付属する。
拡張スロットは、PCI Express x16×2、同x1×2、PCI×2。GeForce GTX 680が2レーン分占有している。
サイズは270×600×500mm(幅×奥行き×高さ)、重量約20kg。価格は239,800円。
筐体はちょっと変わったデザインで、同社によると「潜水艦をモチーフ」にしているとのこと。2012年iFデザイン賞およびレッドドット・デザイン賞を受賞している。
上部にUSB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。左側にオーバークロックボタン、右側に電源ボタンがある。これらのポートを装備している内側が少しへこんでおり、そこへiPhoneなど、USB接続が必要な小型デバイスを置くことが可能だ。フロントパネルは押すと手前にせり出しながら下がり、メディアリーダ、BDドライブ、着脱式のHDDマウンタが現れる。
背面には、USB 3.0×2、PS/2ポート、USB 2.0×2、S/PDIF光出力、USB 3.0×2、Eternet、音声入出力、そしてGPU側にDVI-D×2、HDMI出力、DisplayPort。内部へのアクセスは、背面にあるネジ2本を外すだけでサイドパネルが外れるので簡単だ。
内部は奥側の下に80PLUS GOLDの電源ユニット、フロント側に5つの3.5インチシャドウベイがある。シャドウベイは一番上にSSD、3番目に1TBのHDDが収められている。マウンタはネジ止めなどは無く、内側に少しつまんで引っ張ると簡単に着脱できるタイプを使用。スペックだけ見ると内部はいろいろゴチャゴチャしてそうだったが、容積に余裕がある分、意外とシンプルだ。拡張性も高い。
イルミネーション関係は、標準の4.2GHz時、フロントのロゴと、下にあるメッシュが青く点灯、4.4GHzと4.6GHzの時は赤く点灯する。冷却ファンの数は、CPU周辺に2つ、電源に1つ、GPUに1つの計4つ。
ノイズや振動、発熱に関しては、さすがにこのクラスは一般的なデスクトップPCやノートPCとは異なり、特にベンチマークテストなどGPUをフルに動かすようなソフトウェアが作動中は、ファンの音がかなり煩い。とは言え、この手のマシンを使うユーザーは織り込み済みなのだろう。
●Windows エクスペリエンス インデックスほぼ満点のモンスターマシンOSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。初期起動時のデスクトップ左側にショートカットが多めに並んでいる。個人的にはこの手のマシンを使うユーザーにOffice系のアプリケーションを標準搭載する必要性があるのか若干疑問を感じた。
ストレージは、SSDが「SanDisk SSD U100 128GB」、HDDが1TB/SATA6Gbps/7,200rpm/キャッシュ32MBの「ST31000524AS」。それぞれC:ドライブ118GBと、D:ドライブ921GBに割当てられ、C:ドライブの空きは75.4GB。BDドライブは「BD B DH12B2SH」を搭載している。マルチカードリーダはUSB接続だ。
そのほかは、グラフィックスに「GeForce GTX 680」、Gigabit Ethernetに「Intel 82579V Gigabit Network Connection」。またデバイスマネージャーに表示は無いが、USB 3.0はIntelネイティブに加え、「ASM104xホストコントローラー」が使われている。特に変わったデバイスは無く、スタンダードな構成と言えよう。
プリインストール済みのソフトウェアは、アプリケーション系に、Kingsoft Office 2012、i-フィルター6.0、ウィルスバスター2012クラウド。
ツール系は、Fast Boot、ASUS Easy Update、ASUS Backup Wizard、AI Suite II、AI Manager、ASUS Instant On、ASUS WebStorage、KDriveなど、同社のPCではお馴染みのものが並ぶ。いずれにしても必要最小限+ツール系で玄人受けする構成だ。
ASUS AI Suite II/システム情報 | ASUS AI Manager | ASUS Instant On |
ベンチマークテストは4.2GHz/4.4GHz/4.6GHzそれぞれのWindows エクスペリエンス インデックスとPCMark 7、3D Mark 11、参考までにCrystalMarkの結果も掲載した。
CrystalMarkに関しては、今回8スレッドなので対応しておらず、絶対的な評価の指数としては参考値となるものの、各作動クロックでの相対的な比較としては意味があると思われる。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 7.5。プロセッサ 7.8、メモリ 7.8、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 7.5。意外にも全クロック数で同じ結果となった。プロセッサに関しては、8スレッド/4.6GHzでスコア7.8となると、何を使えば7.9となるのだろうか興味があるところ。
PCMark 7は順に4981、5102、5223 PCMarks。作動クロックの違いが確実に出ている。3DMark 11は、P9285、P9211、P9371 3DMarks。4.2GHzと4.4GHzの値が逆になってしまったが、このベンチマークテストはDirectX 11が対象なので、プロセッサの速度差はあまり結果に現れず、GPUそのものの性能と見ていいだろう。
CrystalMarkは、ALU 92734、94369、103452、FPU 78116、81104、85295、MEM 67247、68086、68090、HDD 26205、25294、25529、GDI 24329、25378、26259、D2D 28994、26786、27071、OGL 43354、44664、46642。
ALUとFPU、GDIに関してはクロック数がそのまま比例してスコアアップ、それ以外はスコアが前後しているものもあるが、各デバイス性能でほぼ変わらず、プロセッサの作動速度が影響する部分のみ変化しているのが分かる。
4.2GHz | 4.4GHz | 4.6GHz。本体左上にあるボタンを押すと作動クロック数が切り替り、全画面で表示される |
Windows エクスペリエンス インデックス(以下、左から4.2GHz、4.4GHz、4.6GHz) | ||
PCMark 7 | ||
3DMark 11 | ||
CrystalMark(参考) |
以上のようにCG8580は、Core i7-3770Kを搭載し、メーカーとして4.2GHz/4.4GHz/4.6GHzの3段階のオーバークロックに正式対応したゲーミングPCだ。
SSDとGeForce GTX 680の組合せでWindows エクスペリエンス インデックスは、ほぼ満点の爆速仕様。筐体のイルミネーションも美しい。239,800円と高価でフルパワー時冷却ファンが煩いものの、拡張性高いハイエンドゲーミングPCだ。