西川和久の不定期コラム

Apple「MacBook Air(Mid 2012)」
〜Ivy Bridgeな11.6インチMacBook Air



 6月12日、Ivy Bridge化されたMacBook ProとMacBook Airが一斉に発表された。中でもMacBook ProのRetinaディスプレイモデルに注目が集まっているが、今回はより実用的に使えるようになった11.6インチのMacBook Airをご紹介する。筆者も気になっている1台だ。


●Ivy Bridgeな11.6インチMacBook Air

 前モデルの11.6インチMacBook Airは、Sandy Bridgeアーキテクチャだ。BTOによりプロセッサ、メモリ、フラッシュストレージなどが変更可能だったが、フラッシュストレージは64GBか128GB、メモリは2GBか4GBと、用途によっては容量不足で使い辛い面があった。

 またThunderboltを搭載し、外部ストレージに対応しているものの、周辺機の数が少なく、加えて高価。と言ってもUSB2.0では転送速度が遅い……と、メモリやフラッシュストレージの件も含め個人的にイマイチ食指が動かない理由でもある。

 そんな中、6月12日に発表された新型は、Ivy Bridgeアーキテクチャとなり、先にあげた多くの不満点を解消したモデルとなって登場した。主な仕様は以下の通り。

【表】Apple MacBook Air(Mid 2012)の仕様
CPU Intel Core i7-3667U (2コア/4スレッド、2GHz/3.2GHz、キャッシュ 4MB)
チップセット Intel 7シリーズ
メモリ 8GB(または4GB)
フラッシュストレージ 256GB(64/128/256/512GB)
OS Mac OS X 10.7(Lion)
ディスプレイ 11.6インチ液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット
グラフィックス 内蔵Intel HD Graphics 4000、Mini DisplayPort出力(Thunderbolt)
ネットワーク IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
その他  USB 3.0×2、ヘッドフォン出力、マイク、720p FaceTime HDカメラ
サイズ/重量 300×192×3〜17mm(幅×奥行き×高さ)/約1.08kg
バッテリ駆動時間 最大5時間(スタンバイ最大30日間)
価格 84,800円から(今回の構成で142,800円)

 今回試用した構成はBTOによりプロセッサ、メモリ、フラッシュストレージがベースモデルからアップグレードしている。プロセッサは、Intel Core i7-3667U。2コア4スレッド、クロックは2GHzでTurbo Boost時3.2GHzまで上昇。キャッシュは4MB、TDPは17W。BTOで選べるプロセッサとしては最上位となる。メモリは標準の4GBから8GBへ、フラッシュストレージも標準の128GBから256GBへ増量した。

 プロセッサはともかくとして、メモリは標準4GB、最大で8GB。フラッシュストレージは標準64GB/128GB、256GBと512GBも選択可能は、前モデルと比較して用途の幅がかなり広がる。筆者の利用ケースで申し訳無いが、日頃使用しているソフトウェアは、多くがクラウド化しているとは言え、まだWindows版しか存在しないものが数本ある。このためWindows環境も必要なのだが、ストレージの容量が64GB/128GBかでは、Mac OS Xと共存するにはどう考えても容量不足。加えてメモリ2GBか4GBでは仮想PCはメモリ不足で実用的には使えず、再起動で面倒なBootCampしなければならない。しかし新型では最大8GBのメモリと256GBまたは512GBのフラッシュストレージを選択可能になり、一気にこの問題は解決された。

 グラフィックスは第3世代Coreプロセッサを搭載することにより、Intel HD Graphics 3000から4000へパワーアップ。出力はMini DisplayPort出力(Thunderbolt)と同じだ。液晶パネルは11.6インチ光沢タイプで解像度は1,366×768ドット。この点に付いても変更されていない。ただ最近ではIPSパネルを搭載したUltrabookも出てきているので、ちょっと残念な部分でもある。

 ネットワークは、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0。有線LANは無いが、オプションでThunderbolt→Gigabit Ethernetのアダプタ(2,800円)も今回発表された。必要であればこれを利用できポイントは高い。

 そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、ヘッドフォン出力、マイク、720p FaceTime HDカメラ。USBが2.0から3.0へ、FaceTimeカメラがHD解像度へ強化された。特にUSBが2.0か3.0かの違いは大きく、転送速度の関係から予備的にしか使えなかった外部HDDをメイン級の扱いで外部HDDを使用できる。

 サイズ300×192×3〜17mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.08kg。バッテリ駆動時間が最大5時間(スタンバイ最大30日間)はというのは以前のモデルも同じだ。

 価格はベーシックモデルのIntel Core i5(1.7GHz/2.6GHz、2コア/4スレッド)、メモリ4GB、64GBのストレージで84,800円。今回の構成だと142,800円となる。Windowsマシンとして考えた場合、別途OS(仮想PCを使うのであればParallels Desktopなど)の費用がかかるものの、それでも内容を考えると魅力的な価格と言えよう。

斜め後ろ。サイズもルックスも前モデルと同じ 正面からだと恐らく前モデルと見分けが付かない 底面まで非常に丁寧で綺麗な筐体だ
左側面。MagSafe、USB 3.0×1、ヘッドフォン出力、マイク キーボードはアイソレーションタイプ。前モデルと比較してタッチが少し軽くなったような気がしないでもない 右側面。Thunderboltポート、USB 3.0×1
キーピッチは実測で約19mm 付属品はACアダプタ、電源ケーブル、小冊子のみと相変わらずシンプル 重量は実測で1,071gの軽量級
キーボードバックライトは明るさは16段階調整可能。周囲が十分明るい時は自動的にOFFになる MagSafeは前モデルと比較して小型化された。充電中はオレンジ、充電完了時グリーンに点灯するインジケータ iPadとの比較。Ultrabookの原型とも言える薄さ。こうして積み上げるとiPadは更に小さいことを再確認できる

 トップカバーも含め筐体は前モデルと全く同じ。一見新型か旧型かを見分けるのは難しく、小型化したMagSafeコネクタで判断するしかなさそうだ。非常に美しく、そして細部まで拘っている仕上がり具合は、Ultrabookが近づいてきたとは言え、まだその上を行く。

 キーボードや16段階式のバックライトを装備。トラックパッドの質感はもちろん、操作性も類を見ないほど抜群だ。特にトラックパッドに関しては、ここまでスムーズに操作できるWindowsマシンは、(Windows 8の登場によって変わると思うが)まだこれまで見たことが無い。

 左サイドにはMagSafe、USB 3.0×1、ヘッドフォン出力、マイク。右サイドにはThunderboltポート、USB 3.0×1。ただし一般的にUSB 3.0のコネクタは一部ブルーなっているが、MacBook Air(Proも)は白いままになっている。

 振動やノイズなどは皆無。熱に関しては長時間使用すると筐体の裏後部が暖かくなる。サウンドは、クラスを考えると中域を中心として抜けが良く抜群だ。最大出力もそこそこあるため、迫力不足にはならない。

 唯一残念なのは、何も変わらなかった液晶ディスプレイだ(ただし気のせいかも知れないが、光沢とは言え若干映り込みが低減しているように思える)。もちろん同クラスと比較して、発色や明るさ、コントラストなどはトップクラスである事は間違い無いものの、IPSパネルでは無いため視野角は狭い。ちょうど前回、11.6インチでIPSパネルのZENBOOKを触っただけに、余計そう思ってしまう。

 HD解像度はこのパネルサイズで改めて見ると、この程度が丁度いいかも知れない。11.6インチでフルHD解像度のZENBOOKは、さすがに色々な部分が小さ過ぎる気がする。

起動時のデスクトップ。Parallels Desktop 7 for Macを使いWindows 7をインストール済み このMacについて。チップセットはIntel 7シリーズ。BootCampすれば正式な型番が分かるのだが、今回BootCampは運用上必要無いので見送った
起動時のメモリ使用状況。起動直後8GB中約6.9GB空き。仮想PCを使うなら8GBにしたい(できれば16GB) 仮想PCへ2GBのメモリを割り当てWindows 7を起動。重い処理をしなければメモリ2GBでもそれなりに使える。3GB割り当て32bit版Windows 7を使った方が動きはいいかも知れない

 今回は初期起動直後から「Parallels Desktop 7 for Mac」をインストールし、同時にWindows 7の環境も構築した。Windowsの仮想PCへ64GBの仮想HDDを割り当て、この状態で250GB中200GB弱が空きとなる。Windows側のデータはMac側のストレージで共用すればよく、通常の用途ならこれだけ空きがあれば十分。二次用として大容量が必要であればUSB 3.0へ外部HDDを接続すれば事は足りる。

 また仮想PCへ2GBのメモリを割り当てた場合、メインメモリの残は約6.9GB。重い処理をしない限り問題になることは無いだろう。

 作動速度などベンチマークテストに関しては後半を参考にして欲しいが、フルスクリーンでWindowsを起動すると、もうそこにMac OS Xの面影は無い。まるでMacBook AirがWindowsマシンになったように振舞い、パフォーマンスも仮想PC上で動いているとは思えないほど普通に使える環境となる。もはや個人的にはBootCampは不要だ。

●前モデルと比較して確実にパフォーマンスアップ

 ベンチマークテストはMac OS Xのベンチマークテストで代表的なXbench 1.3と、そのままではWindowsユーザーに分かりにくいので、Parallels Desktop 7 for Macの仮想PC上でWindows 7のWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、そしてBBenchの結果も見たい。

 以前割当てるメモリサイズによってパフォーマンスが変わったこともあり、仮想PCへメモリ2GBと3GBを割当てた結果を掲載する。またXbench 1.3はLionで動かすと「Thread Test」の部分で止まってしまうため、この項目はテストから除外した。カッコ内は前モデルMacBook Air(MC968J/A)の値を参考までに掲載している。

 バッテリ駆動時間テストはOS X上での一般的なソフトウェアが無いため、仮想PC上のWindows 7でBBenchを使いテストした。少し妙な感じだが、MacBook Airで主にWindowsを使う場合のバッテリ駆動時間と言う意味ではあながち変なテストでもないだろう。OS X上の電源管理はスリープしないよう、全ての項目をOFF。またバックライトをOFFにすると完全に見えなくなるため+1にした。

 Xbench 1.3の結果を見る限り、前モデルと比較してプロセッサ、メモリ、グラフィックス、ストレージどれをとっても全体的にスコアが向上しているのが分かる。これだけ違えば体感的にもそれなにり差が出る。もちろん、数秒で起動、瞬時でスタンバイ/復帰は健在だ。とにかく多くのアプリケーションの起動が瞬時で気持ちいい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.6/4.6。プロセッサ 6.4/6.4、メモリ 5.5/5.9、グラフィックス 5.1/5.1、ゲーム用グラフィックス 4.6/4.6、プライマリハードディスク 7.7/7.7。ちょうどSandy Bridgeアーキテクチャへ戻った程度のオーバーヘッドで、実用上は全く問題無いだろう。割当てるメモリが2GBか3GBかもほとんど影響は見られない。参考までに筆者のMac miniで仮想PCへ2CPU/4GBを割当てた場合、6.5/7.6/5.1/5.0/6.4。

 CrystalMarkは、ALU 26016/24578、FPU 20372/18334、MEM 30812/28363、HDD 82142/95295、GDI 10315/10065、D2D 2705/2917、OGL 11927/10698。こちらは3GBにした方が若干値が下がる傾向にある。HDDはフラッシュストレージの上、仮想HDDなので爆速だ。あっと言う間にWindows 7が起動する。これを経験してしまうとBootCampには戻りたくない。

 BBenchは、「省電力」モード、バックライト+1(0にすると真っ暗になるため)、キーボードバックライ/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFの結果だ。バッテリの残5%で9,428秒(約2.5時間)。おそらくBootCampした素のWindowsであれば3時間ちょっとは使えるはずなので(前モデルでは約3.5時間)、約1時間短いのは、Mac OS Xと仮想PCのオーバーヘッドによるものだと思われる。

【表2】Xbench 1.3
Results 302.44
CPU Test 263.18(187.55)
GCD Loop 334.78 17.65 Mops/sec
Floating Point Basic 232.42 5.52 Gflop/sec
vecLib FFT 171.11 5.64 Gflop/sec
Floating Point Library 484.22 84.32 Mops/sec
Memory Test 627.96(498.66)
System 696.49(500.63)
Allocate 2419.94 8.89 Malloc/sec
Fill 438.58 21324.91 MB/sec
Copy 619.58 12797.10 MB/sec
Stream 571.71(496.71)
Copy 557.93 11523.80 MB/sec
Scale 568.38 11742.58 MB/sec
Add 576.28 12276.01 MB/sec
Triad 584.94 12513.31 MB/sec
Quartz Graphics Test 401.47(315.05)
Line 385.03 25.63 Klines/sec [50% alpha]
Rectangle 528.24 157.71 Krects/sec [50% alpha]
Circle 389.49 31.75 Kcircles/sec [50% alpha]
Bezier 334.62 8.44 Kbeziers/sec [50% alpha]
Text 415.3 25.98 Kchars/sec
OpenGL Graphics Test 240.72(125.04)
Spinning Squares 240.72 305.37 frames/sec
User Interface Test 165.81(115.99)
Elements 165.81 760.98 refresh/sec
Disk Test 442.07(330.20)
Sequential 282.67
Uncached Write 698.67 428.97 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 474.16 268.28 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 111.6 32.66 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 606.25 304.70 MB/sec [256K blocks]
Random 1013.61
Uncached Write 893.71 94.61 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 771.64 247.03 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 2063.93 14.63 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 955.19 177.24 MB/sec [256K blocks]
Windows エクスペリエンス インデックス(2GB)は総合 4.6。プロセッサ 6.4、メモリ 5.5、グラフィックス 5.1、ゲーム用グラフィックス 4.6、プライマリハードディスク 7.7 Windowsエクスペリエンス インデックス(3GB)は総合 4.6。プロセッサ 6.4、メモリ 5.9、グラフィックス 5.1、ゲーム用グラフィックス 4.6、プライマリハードディスク 7.7
CrystalMark(2GB)はALU 26016、FPU 20372、MEM 30812、HDD 82142、GDI 10315、D2D 2705、OGL 11927 CrystalMark(3GB)はALU 24578、FPU 18334、MEM 28363、HDD 95295、GDI 10065、D2D 2917、OGL 10698 仮想PC上でのBBench。「省電力」モード、バックライト(+1)、キーボードバックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFのBBenchの結果。バッテリの残5%で9,428秒(約2.5時間)

 以上のようにMacBook Air(Mid 2012)は、前モデルのサイズ/重量/デザインはそのまま、Ivy Bridge化した新型だ。プロセッサやそれに伴うグラフィックスの強化はもちろんだが、メモリ最大8GB、フラッシュストレージ最大512GBになり、USB 3.0を2ポート搭載。より実用的に使える仕様となった。

 各社の第2世代Ultrabookと比較しても、IPSパネルで無いのは残念だが、それでもまだ細部の拘りはMacBook Airに軍配があがる。Macとして使うのもよし、+Windowsマシンとして使うのもよし。万人にお勧めできるマシンと言えよう。