■西川和久の不定期コラム■
エプソンダイレクトは12月6日、Core i7-3960X Extreme Editionを搭載するパワフルなタワーPC、「Endeavor Pro7500」を発表した。11月14日にIntelから発表されたばかりのこの新型プロセッサ、もちろん筆者も初対面だ。そのパワーはどのようなものなのか、楽しみながらの試用レポートをお届けする。
これまで同社はIntel Core i7-990X Extreme Editionを搭載した「Endeavor Pro7000」を販売していたが、IntelがCore i7-3960X Extreme Editionを発表・出荷したことにより「Endeavor Pro7500」に置き換えた。
Core i7-990X Extreme Editionは一世代前のNehalemアーキテクチャだったが、このCore i7-3960X Extreme Editionは、Sandy Bridgeコアを6つ載せた最上級のプロセッサだ。Sandy Bridge-Eと呼ばれ、チップセットもIntel X79 Expressへと変更された。
Endeavor ProシリーズはBTOに対応し、いろいろな組み合わせが可能であるが、今回編集部から届いたマシンの仕様は以下の通り。
エプソンダイレクト「Endeavor Pro7500」の仕様 | |
CPU | Intel Core i7-3960X Extreme Edition (6コア/12スレッド、3.3GHz/TB 3.9GHz、キャッシュ 15MB) |
チップセット | Intel X79 Express |
メモリ | 16GB(PC3-12800 DDR3 SDRAM)/4スロット空き0 |
SSD | RAID 0キット 240GB (SATA 6Gbps対応 120GBx2) |
光学ドライブ | Blu-ray Discドライブ(CPRM対応 再生ソフト付) |
OS | Windows 7 Professional SP1(64bit) |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GTX 580(1,536MB)、DVI-I出力×2、mini HDMI×1 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet |
拡張スロット | 4×PCI Express x16、1×PCI Express x1、1×PCI |
その他 | USB 3.0×4(前面2/背面2)、USB 2.0×6、音声入出力(前面/背面)、S/PDIF(光/Coaxial)出力(背面) |
サイズ/重量 | 209×490×498mm(幅×奥行き×高さ)/約13.2kg |
構成価格 | 445,620円(税込み、送料別) |
プロセッサは先に書いた通り、Intel Core i7-3960X Extreme Edition。6コア/12スレッドでクロックは3.30GHz。TurboBoost時3.90GHzまで上昇する。キャッシュは15MB(1コア当たり2.5MB)。もともとIntel Core i7-990X Extreme Editionは、3.46GHzだったので、ベースクロックは下がっているものの、TurboBoost時が3.73GHzから3.9GHzへ高くなっている。製造プロセスは32nm、TDPは130W。これに関しては変わっていない。またこれまでチップセット側にあった、PCI ExpressやメモリコントローラはCPUに内蔵している。
チップセットはIntel X79 Express。1チップ構成となり、CPUとは20GbpsのDMIで接続。USB 2.0×14、Gigabit Ethernet MAC、PCI Express x1×8、SATA 6Gbps×2、SATA 3Gbps×4、HDオーディオなどの機能を持つ。メモリはDDR3-1600に対応。Intel X58はDDR3-1066/トリプルチャネル(3枚1組)だったが、このチップセットではクアッドチャネル(4枚で1組)だ。クロックの向上とチャネル数が増えたことにより、パフォーマンスアップが期待できる。今回の試用機は4GB×4の計16GBを搭載済だ。OSは64bit版のWindows 7 Professional SP1。
ビデオカードは、NVIDIA GeForce GTX 580(1,536MB)。Fermiアーキテクチャを採用した最上位モデルとなる。CUDAコア数512、DirectX 11対応などの特徴を持つ。外部出力はDVI-I×2とmini HDMI。
ストレージはIntel 510 SSDSC2MH120A2(SATA 6Gbps対応120GB)を2つをRAID 0構成にした計240GB。容量が倍になるのはもちろん、SSDの高速性を更にストライピングで向上させている。光学ドライブはBlu-ray Discドライブを搭載。
拡張スロットは、4×PCI Express x16(うち2つはx8接続)、1×PCI Express x1、1×PCI。ただしGTX 580が2スロット占有するため、実際に拡張で使えるスロットは減っている。
その他のインターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 3.0×4(前面2/背面2)、USB 2.0×6、音声入出力(前面/背面)、S/PDIF(光/Coaxial)出力(背面)。eSATAは無いものの、USB 3.0が計4ポートあるのはポイントが高い。
価格は今回の構成で445,620円(税込み、送料別)。今時のPCとしてはかなり高価であるが、美しく扱いやすいタワーケース、後述するベンチマークテストの結果を見ると、それだけの価値があると言ったところか。
同社のEndeavorは、過去何回か扱ったものの、このケースは初めて。アルミニウム素材を使ったシャープで美しいデザインだ。フロントベゼルがメッシュになっており、内部に空気をより効率良く取り込むことができる。またフロントパネルの下には鍵でロックができる扉があり、中にはHDDを計4台収納可能。システムストレージ以外はホットスワップにも対応している。
内部へのアクセスもリアのネジ1本を緩め、金具を引っ張ると、左右共サイドパネルが簡単に取り外せ、メンテナンス性は非常に高い。ケース単体で販売してもそれなりに人気が出そうな雰囲気だ。
電源ユニットは1,000W。今回、Intel Core i7-3960X Extreme EditionとGeForce GTX 580と言った、かなりパワーを必要とするユニットを搭載してもまだ供給には余裕がある。以前、筆者はGPUを乗せ換え、パワー不足からシステムが不安定になったのを経験しているので、初めからこのクラスの電源ユニットが乗っているのは安心感がある。
ビデオカードはZOTAC GeForce GTX 580。2スロットを占有するタイプだ。従って、上側のPCI Express x16とPCIe x1が干渉し、実際使えるバスは、2×PCIe x16、1×PCIとなる。
ファンは、リアにCPU用と電源用で2つ。CPUには大型のヒートシンクを装備し、リアへ風を送る。加えてGTX 580に1つの計3つ。さすがに静音とはならず、起動すると「フォーン」と言う音がする。人が行き来する事務所であればあまり気にならないかも知れないが、自宅ではちょっと躊躇するレベルの音量だ。発熱に関しては、うまく調整出来ているようで、全く気にならなかった。
●圧倒的なスピードに唖然OSは64bit版のWindows 7 Professional SP1。メモリを16GBも搭載し、仮想PCなどを多く起動しない限り、Windows 7が余裕を持って動く。プロセッサが6コア12スレッドなのでタスクマネージャ/パフォーマンスのCPU使用率の表示が圧巻だ。起動時のデスクトップは、同社御馴染みの「PCお役立ちナビ」や「初期設定ツール」などのショートカットがあるだけでいたってシンプル。
ストレージは先に書いた通り、Intel SSDSC2MH120A2(SATA 6Gbps対応120GB)を2つをRAID 0構成し計240GB。実際は、211.92GBの1パーティションで、初期起動時の空きは168GBとなる。システムそして、プログラムエリアとしては十分な容量だが、データドライブは別ドライブを用意し運用したいところか。BDドライブは「DH12B2SH」。GbEは「Intel 82579V」が使われている。USB 3.0のコントローラはルネサス製だ。
プロセッサのパフォーマンスはもちろん、メモリ16GB、GeForce GTX 580、そしてSSDをRAID 0構成と、現在考えられる最上級の組合せの環境は、何をしても別次元のスピード。普段仕事で使っているMac miniがオモチャにみえてしまうほどの差がある(笑)。
プリインストールされているソフトウェアは非常に少なく、主なアプリケーションは「CyberLink PowerDVD 10」と「Nero 10」のみ。他は、「Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー・エンタープライズ」、「USB 3.0ホストコントローラ情報」、「NVIDIAコントロールパネル」など、各インターフェイスのコントロールパネル系となる。
唯一、本機固有のものは「ホットキー設定ユーティリティ」。付属するキーボードの上部中央にある[U1]、[U2]、[U3]キーなどに機能をアサインすることが出来る。
Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー・エンタープライズ | USB 3.0ホストコントローラ情報 | NVIDIAコントロールパネル |
ホットキー設定ユーティリティ | CyberLink PowerDVD 10 | Nero 10/Nero BackItUp & Burn Essential |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、CrystalMarkの結果を見たい。また参考までにDirectX 9系の3DMark06と、DirectX 11系の3DMark11のスコアも掲載した。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 7.8。プロセッサ 7.8、メモリ 7.9、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 7.9。Windows 7になってからWindows エクスペリエンス インデックスの最大値は7.9となったので、ほぼ満点だ。プロセッサだけが7.8と惜しいところ(このプロセッサで7.8とは、何を使えば7.9になるのか?)。いずれにしてもかなり高いレベルでバランスが取れている。
CrystalMarkは、ALU 77456(65715)、FPU 68274(60804)、MEM 106278(53347)、HDD 43347(36333)、GDI 18788(16717)、D2D 22334(14638)、OGL 39806(39626)。カッコ内は2011年7月に掲載したHP「Pavilion Desktop PC h8-1090jp」の値だ。Intel Core i7-990X Extreme Edition/Intel X58 Express、NVIDIA GeForce GTX460/2GB、Intel SSDSA2M160G2×2/RAID 0なので、1世代前のアーキテクチャでほぼ同じレベルの構成となっている。ご覧のように全てのスコアで上回っており、たった数カ月とは言え、世代間の差が良く分かる。
いずれにしても初めてお目にかかる値の連打。Intelの説明によると「3960Xは、990Xと比較して、ビデオ編集で20%、メモリ性能で103%、3Dゲーム物理で34%。2600Kとの比較では、順に52%、114%、46%性能が向上している」と言うことだが、これらのスコアを見る限り納得だ。
以上のようにEPSON「Endeavor Pro 7500」は、Core i7-3960X Extreme Edition、NVIDIA GeForce GTX 580、そしてSSDのRAID 0による見事にバランスが取れた超高速マシンだ。加えて同社オリジナルのケースもカッコ良く、扱い易い。
今回の構成で445,620円と、今時のデスクトップPCとしてはかなり高価だが、それなりの価値はあるだろう。予算を気にせず最高性能のPCを求めている人にお勧めの1台だ。