西川和久の不定期コラム

日本HP「Pavilion dv4-3100」
~5万円を切る価格でディスクリートGPU搭載



 日本ヒューレット・パッカード株式会社は6月29日、Sandy Brdige搭載の個人向けノート夏モデルを発表した。今回はその中から14型液晶パネルを搭載した2スピンドルノートPCの試作機が届いたので試用レポートをお届けする。

●ディスクリートGPU搭載で安価な2スピンドルノートPC

 6月29日に発表があったモデルは、17.3型(ENVY17-2100/Pavilion dv7-6100)、15.6型(Pavilion dv6-6100/Pavilion g6-1100)、14型(Pavilion dv4-3100/Pavilion g4-1100)、11.6型(Pavilion dm1-3200)……と、いろいろなパネルサイズを採用したノートPCだ。中でも14型はユーザーのニーズに応えたもので、直販モデルが1つ、量販店モデルが1つラインナップされている。

 今回はその中から直販モデルの「Pavilion dv4-3100」をご紹介する。BTOでプロセッサやメモリ、HDD、光学ドライブなどを選択できるが、届いたマシンの構成は以下通り。

HP Pavilion dv4-3100の仕様
CPUIntel Core i5-2410M(2コア/4スレッド、2.3GHz/TB 2.9GHz、キャッシュ3MB)
チップセットIntel HM65 Express
メモリ4GB(4GB×1) PC3-10600 DDR3-SDRAM (最大8GB)/2スロット空1
HDD500GB(7,200rpm)
OSWindows 7 Home Premium(64bit)SP1
ディスプレイ14型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット
グラフィックス内蔵Intel HD Graphics 3000、AMD Radeon HD 6750M(1GB)、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0
光学ドライブBD-ROM/DVDコンボドライブ
その他USB 3.0×2、USB 2.0×1、2in1メディアスロット、ヘッドフォン/ライン出力×1、マイク入力/ヘッドフォン出力コンボ×1、Webカメラ
サイズ/重量340×238×28~40mm(幅×奥行き×高さ)/約2.28kg
バッテリ駆動時間約6時間(6セル)
価格49,980円(Pentium B940/2GB/250GB/DVDスーパーマルチドライブ時)から(HP Directplus)

 CPUはIntel Core i5-2410Mプロセッサ。2コア4スレッド、クロック 2.3GHzでTurboBoost時2.9GHzまで上昇する。キャッシュは3MB。BTOの構成上では最上位となる。

 チップセットはIntel HM65 Express。メモリは4GB×1でスロット1つが空き。最大8GBまで搭載できる。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。SP1が適応済みだ。HDDは7,200rpmの500GB。「HPプロテクトスマート・テクノロジー(HP 3D DriveGuard)」機能を搭載する。光学ドライブはBD-ROM/DVDコンボドライブ。

 ディスプレイは14型のグレア(光沢)タイプで、解像度は1,366×768ドット。出力は、HDMI出力、ミニD-Sub15ピンの2ポートを持つ。ここまでは一般的なSandy Brdigeの構成であるが、最大の特徴はCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000に加え、DirectX 11やOpenGL 4.1、UVD3.0に対応し、480SPのAMD Radeon HD 6750M(1GB)も搭載していること。PowerPlayによって、バッテリ駆動時は省電力のIntel HD Graphics 3000、電源駆動時はハイパワーのRadeon HD 6750Mへ自動的に切り替える機能も持っている。

 ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n、そしてBluetooth 3.0を搭載。その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×1、2in1メディアスロット、ヘッドフォン/ライン出力×1、マイク入力/ヘッドフォン出力コンボ×1、Webカメラ。安価なモデルにも関わらずGbEとBluetooth 3.0、USB 3.0に対応しているのはポイントが高い。

 サイズは340×238×28~40mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.28kg。6セルのバッテリを搭載し駆動時間は最大約6時間となっている。

 冒頭に書いたように、「Pavilion dv4-3100」はBTOに対応しており、プロセッサ Pentium B940(2コア、2GHz、キャッシュ2MB)/Core i3-2310M(2コア/4スレッド、2.1GHz、キャッシュ3MB)/Core i5-2410M(2コア/4スレッド、2.3GHz/TB 2.9GHz、キャッシュ3MB)、メモリ 2GB(2GB×1)/4GB(4GB×1)/8GB(4GB×2)、HDD 250GB/500GB/750GB(全て7,200rpm)、光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ/BDドライブ、Officeなし/Microsoft Office Personal 2010/Microsoft Office Home and Business 2010の組合せが可能だ。ディスクリートGPU搭載など他の仕様は同じ。カラーバリエーションは、エスプレッソブラックとルビーレッド2色。

 最小構成は、Pentium B940/2GB/250GB/DVDスーパーマルチドライブで49,980円となる。無線LANはもちろんUSB 3.0、Bluetooth 3.0、AMD Radeon HD 6750Mありでこの価格はかなり安い。

 余談になるが、以前この連載でご紹介したAMD E-350搭載マザーボード、ASUS「E35M1-M PRO」に4GBのメモリが付いたまま放置していたのを思い出し、6千円程度のSFX電源付きMicroATXケースを購入し組み立てたものの、電源ユニットのファンが煩く、別途静かなものを購入するには少なくとも5千円程度の出費が必要。加えてOSとHDDと光学ドライブを揃えると総額5万円プラスα程度になってしまう。Pavilion dv4-3100の一番安価な構成(49,980円)に2GBのメモリを加えたのとほぼ同じ。どちらの方がパフォーマンスが高く扱い易いかは言うまでもないだろう。そう考えるとなかなか意欲的な価格設定だ。

 参考までに今回届いた構成での価格を調べようとしたところ、同社のサイトが「※ご好評につき、一時お取り扱い停止中」となっており、残念ながら分からなかった。

ルビーレッドのトップカバー。なかなか綺麗だ。模様が無ければ男性でも好む人がいるだろう正面。手前の側面はALTEC LANSINGステレオスピーカーのみ裏面。それぞれネジ2本外すとメモリ、HDDへ簡単にアクセスできる。メモリは4GB×1で1スロット空き
左側面。BDドライブ、USB 2.0×1、ヘッドフォン/ライン出力×1、マイク入力/ヘッドフォン出力コンボ×1キーボードは10キー無しのアイソレーションタイプ。電源ボタンの右にあるのはインターネットアクセスボタン右側面。電源入力、ミニD-Sub15ピン、Ethernet、HDMI、2in1メディアスロット、USB 3.0×2、電源/HDDアクセスLED、ロックポート
キーピッチは実測で約19mmACアダプタのコネクタはミッキータイプ。バッテリは6セルの薄型斜め後ろ。バッテリが薄型でボディの底に付いているため、背中側はスッキリしている

 ボディは「HP Imprint」テクノロジーによる光沢のある表面仕上げ。ルビーレッドはなかなか綺麗で花柄の模様が無ければ男性でも好みの人がいそうだ。最小構成で5万円を切るとは思えない雰囲気を醸し出している。

 14型で1,366×768ドットは、日頃から15.6型で1,366×768ドットはスカスカ感があると思っている筆者的に好印象。発色も正面の写真から分かるように、ハイコントラストでいい意味で派手。写真にしても動画にしてもメリハリのある映りとなる。視野角に関してはクラス並みであるが、発色に関してはワンランク上と言えよう。最大輝度は十分明るく、バックライトOFFにしてもそれなりに見える。

 キーボードはアイソレーションタイプで強く押すと若干たわむものの、通常使用では問題無く、約19mmのキーピッチが確保されていることもあり快適に操作できる。ボディに余裕がある分、特に変な配置やサイズのキーも無い。タッチパッドは段差があり、パームレストと違い少しザラザラした感じになっている。ボタンは物理的に2つ。軽いもののクリック感があり、指に負担がかからない。同社お馴染みのパッドの左上端をダブルタップするとタッチパッドがON/OFFする機能も持っている(OFFの時に上のLEDが点灯する)。

 スピーカーはALTEC LANSING製。ボディ正面の側面に埋め込まれている。小型なので低音は望めないが、中域から高域にかけての抜けが良く綺麗な鳴り方だ。後述する「DOLBY HOME THEATER V4」をON/OFFすると、OFFでは中央に音場が集まっているように感じられ、ONにすると一気にそれが広がる。イコライザで低域を補正できるものの、破綻しない範囲の調整だと、それでも物足らない。できればサブウーファーが欲しいところか。

 熱やノイズ、振動なども特に問題無し。総じて価格からは考えられないほどクオリティは高い。唯一気になったのは、HDDアクセスLEDがPower LEDと共に本体右側にあること。この位置は使用中、死角で全く見えない位置となる。さらに細かい点を言うとロックポートが、右の一番手前にあるのも気になる点だ。

●AMD Radeon HD 6750Mの効果あり

 OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。SP1が適応済みで、Internet Expolorerも9になっている。壁紙に新進気鋭の5人のアーティストによる個性豊かなものをプリインストールしているところがちょっとお洒落。初期起動時のデスクトップは左にショートカットが少し並んでいるだけのあっさりしたものだ。

 タスクトレイに常駐しているのは、「Synapticsポインティングデバイス」、「Intel HD Graphics」、「HP Connection Manager」、「AMD Catalyst Control Center」など。

 HDDは7,200rpmで500GBのWD5000BEKT。光学ドライブはBD-ROM BC-5541Hを搭載している。HDDのパーテーションは、C:ドライブのみ。約454GBが割当てられ、空き429GBとなっている。USB 3.0のコントローラはルネサス製だ。グラフィックスは、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000とAMD Radeon HD 6750Mの2つがデバイスドライバに並んで表示されている。ただし、今回試作機ということもあり、Wi-FiとBluetoothモジュールは非搭載だった。

起動時のデスクトップ。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。IEも9になっている。壁紙は新進気鋭の5人のアーティストによる個性豊かなものを12種類プリインストールデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはWD5000BEKT(500GB、3Gbps、7,200rpm、16MB)、ドライブはBD-ROM BC-5541H、USB 3.0のコントローラにはルネサス製が使われているHDDのパーテーション。細かいパーテーションがあるものの、実質ユーザーが使えるのはC:ドライブの約454GBの1つのみ

 プリインストールされているアプリケーションは、「Cyberlink PowerDVD 10」、「Cyberlink YouCam」、「ノートン・インターネットセキュリティ2011(60日間試用版)」、「Evernote for HP」、「DOLBY HOME THEATER V4」、そしてユーティリティ系と少なめだ。

 DOLBY HOME THEATER V4は、先に少し触れたが、サウンド入出力の音質などを調整できる。プロファイルに映画/音楽/ゲームと3通りあり(カスタマイズも可能)、さらにグラフィックEQ機能もあるため、好みの音色にすることが可能だ。この機能のONとOFFでは全く音質が変わるため、是非いろいろ試して欲しい。

PowerDVD 10Evernote for HPDOLBY HOME THEATER V4

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 6.5、プライマリハードディスク 5.9。他のノートPCのデータになるが、Intel HD Graphics 3000だと、グラフィックス 4.7、ゲーム用グラフィックス 6.1となるので、AMD Radeon HD 6750Mによりスコアが1.2/0.4上昇しているのが分かる。参考までにPentium B940のプロセッサスコアは5.9。Core i5-2410Mプロセッサと比較して-1.0とはなるものの、それでも全体的なバランスを考えた場合は悪くない。

 CrystalMarkは、ALU 39148、FPU 40348、MEM 24502、HDD 14240、GDI 13252、D2D 1665、OGL 1657。数値をご覧頂くと分かるように、D2DとOGLが腑に落ちない結果となった。以前掲載したAMD Radeon HD 6730M搭載のノートPCでは3229/23146となっていて、今回のスコアはIntel HD Graphics 3000の値と思われるからだ。PowerPlayの設定をいろいろ変えて何度も試したが結果は同じ。試作機と言うこともあり、ドライバ関連の調整ができていないのだろう。AMD Radeon HD 6750Mの性能なら、D2Dで数倍、OGLでは桁違いの値となるハズだ。

 BBenchは、HP Power Managerを「省電力」モード、GPUはIntel HD Graphics 3000、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、そして今回はWi-Fiモジュールが無いため、有線LANでのネットワーク接続の結果となっている。バッテリの残6%で17,753秒(4.9時間)。スペック上約6時間なので、BBenchとしてはほぼ定格通り。屋内の移動や使用であれば問題の無い駆動時間だ。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 5.9。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 6.5、プライマリハードディスク 5.9CrystalMarkは、ALU 39148、FPU 40348、MEM 24502、HDD 14240、GDI 13252、D2D 1665、OGL 1657BBench。HP Power Managerを「省電力」モード、GPUはIntel HD Graphics 3000、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、有線LAN接続でのBBenchの結果。バッテリの残6%で17753秒(4.9時間)

 以上のように「Pavilion dv4-3100」は、14型2スピンドルのノートPC、そしてAMD Radeon HD 6750M、USB 3.0、Bluetooth 3.0などを搭載しているにも関わらず49,980円からと非常に魅力的な価格だ。デザインやキーボード、音質など、日頃筆者の好みであれこれ書いている部分も特に問題無し。コストパフォーマンスとクオリティが見事にバランスしている逸品と言えよう。

 直販モデルのみと、店頭で触れないのは残念であるが、5万円前後のノートPCを探しているユーザーにお勧めの1台だ。