西川和久の不定期コラム

個人/小規模用のネットサーバーにPCはもう不要!?



 この5年間、筆者のブログと会社のWebサーバーは、デルの「PowerEdge 750」とCentOS 4+BlueQuartzという管理ソフトウェアを使って運用していた。ただどうも最近調子が悪く「そろそろ新しいサーバーに買い替えか……」と、思っていたところ、激安で良さそうなサービスを発見。最大2カ月間無料とあったので早速試すことにした。


●ServersMan@VPSとは

 ServersMan@VPSは、DTI(DREAM TRAIN INTERNET)が提供している仮想専用サーバーサービスだ。専用サーバーサービスは物理的なサーバーをユーザー1人に割当てるが、仮想専用サーバーサービスは、例えばPCにVMwareをインストール、そこへ何台もの仮想PCを作り、Linuxをインストールした環境と言えばイメージしやすいだろうか。そして仮想PC 1台ずつにグローバルIPアドレスを割り振り、ユーザーに貸し出す……といったな感じだ。もちろん実際は異なった仮想化技術によって構築されている。

 前者はハードウェアは当然のことながら、ラックの一部を占有、電源も1対1と全てのリソースが専用なのでコストがかかり、個人や小規模で簡単に導入できるものではない。対して後者は、1台のサーバーの中に何台もの仮想サーバーを置いているので、CPU、メモリ、HDD、電源など多くの部分が共有で比較的安価になる。欠点としてはリソースが共有なので、物理的に全てを占有できる専用サーバーよりパフォーマンスが劣ることだろう。

 また一般的なレンタルサーバーと仮想も含む専用サーバーの違いは、自由度の高さとなる。レンタルサーバーは予め用意されている(開放されているポートやサービスも含め)環境の中で利用しなければならないが、専用サーバーは言葉通り専用なので極端に言えば利用規約に触れない限り、何をするのも自由となる。ServersMan@VPSの場合は、ざっくり書くと、違法なものとアダルト系以外はOK。個人/法人の商用利用も問題無い。

 その仮想専用サーバーサービスServersMan@VPSの現在の仕様などは以下の通り。


Entryプラン Standardプラン Proプラン
メモリ 256MB 512MB 1GB
HDD 10GB 30GB 50GB
追加IPアドレス 無し 1つ 3つ
価格 490円/月 980円/月 1,980円/月

※全て初期費用0円、IPアドレスはIPv6にも対応

 まず驚くのがこの価格だ。10GB/256MBで490円、30GB/512MBで980円、50GB/1GBで1,980円。レンタルサーバーとして見ても、単にストレージサービスとして見てもかなり安い。IPv6にも対応しているのでIPv6の検証環境的な使い方もできる。

 初期設定時に「シンプルセット」、「ディスクセット」、「ホームページセット」、「エンジニアセット(ただしEntryプラン以外)」の環境が用意され、用途に応じて選択することができる。これらの違いはFTP、PHP、MySQLなどの有無となり、エンジニアセットは全部入り。今月10日より「DNS編集機能」も追加され、これによってAレコード及びPTRレコードも自由に設定可能となった。

 現在インストールされているOSはCentOS 5.4だ。そしてエンジニアセットは、全部入りに加え、独自ドメインで運用できるBlueOnyxによるサイト管理が可能になる。これは以前「新型Atomを使ってファンレスサーバーを作る」の記事で少し触れたが、CentOS 4.xにはBlueQuartzだったが、CentOS 5.xに対応しておらず、BlueOnyxが開発された経緯がある。いずれにしても筆者が昔から使っているシステムなので扱いやすい。

 仮想専用サーバーなので、仕掛け的にはUbuntu Linuxなど、他のOSも同社が環境を用意すれば動くのだが、現在はCentOSのみ。もちろんユーザーが自ら使いたいOSを外部からインストールすることはできない。

 これらに関してはシステムは違うものの一部レンタルサーバー上でも対応している場合もあるが、もう1つ最大の特徴としてSSHに加え「root権限も使える」ということだろう。つまり仮想PC上に構築された専用サーバーと言え、CentOS 5を自由に触ることができるのだ。パッケージ管理のyumはもちろん、Apacheのモジュール追加、各サービスの導入そしてON/OFFなど、好きに扱うことが可能。もはや事務所のEthernet上にある自前サーバーとの違いを見つける方が難しい。

 さらに現状、帯域制限、転送量制限、ポート制限など、全て開放状態なのも嬉しいポイントだ。ただし、全ポート開放と言うことは、セキュリティ面では無防備。root権限が使える=「セキュリティは自分でやってね! 」ということだろう。

 また、Amazon EC2との違いを複数の人から質問があったので(かなり)大雑把に説明すると、使えるOSの種類は違うが、どちらも仮想マシン言う意味では同じ。大きな違いは月額固定のServersMan@VPS、仮想マシンの規模やデータ転送量によって費用が変わる完全従量制のAmazon EC2、そしてスケーラビリティだ。ServersMan@VPSは現状上記の3パターン、Amazon EC2は、Small(メモリ1.7GB、ストレージ160GB、32ビット1仮想コアCPU)から最大Quadruple Extra Large(メモリ68.4GB、ストレージ1,690GB、64bit/26仮想コアCPU)までを起動時に選択できる。どちらが良いかは使い方にもよるので何とも言えない部分だが、Amazon EC2はSmall構成を見てもServersMan@VPSのProプランより仕様的には上。スケーラビリティなどを考えても個人や小規模用途より、もっと上をターゲットにしていると言える。

 さて、冒頭に書いたように、デルのPowerEdge 750(Pentium 4/3GHz、メモリ1GB、HDD 250GB×2/RAID1)で動かしていたのは、筆者のブログ(Perl)、会社のHP(WordPress+MySQL)の簡単な構成だったので(一時期は、ほかにもあったが閉じてしまった)、一般的なレンタルサーバーでも良かったのだが、それにしてもroot権限が使え512MB/30GBで980円は安いので、真ん中の「Standardプラン」を申し込んだ。

ServersMan@VPSトップページ 新規の手続き 終了後、メールが送られてくる

 手続き自体は簡単。メールアドレスや支払い方法など一通り入力、終了後IPアドレスやパスワード、その他の設定などが書かれたメールが送られてくる。約10分ほどホストサーバーにコンテナを展開する時間はかかるが、直ぐにメールにあるIPアドレスでSSHやFTP、BlueOnyxの管理画面にログインできる。一通りログインし、問題無いかをチェックした。サービス開始当初、初期設定はSSHを使いrootでログインできたらしいが、さすがに修正され、IDでログイン後、suでrootになるように変更されている。

 ここまで来れば、あとは日頃事務所内のローカール・サーバーで行なっている作業と同じとなる。まず本格的に引っ越し可能か、気になるパフォーマンスを見ることにした。

●驚きのパフォーマンス!

 パフォーマンスチェックと言っても、そのためベンチマークテストするのも面倒な上、今使っているサーバー自体が調子悪いので、まずWordPressで動いている会社のホームページをそのまま移すことに。WordPressはデータベースにMySQLを使ってページを動的に生成しているので、動かせばある程度の速度が分かる。

 この時ちょっと引っかかったのは、まずはシステム全体のアップデートと「yum update」を先に実行したことだ。アップデート自体は問題無かったのだが、WebからPHPが動かなくなってしまった。チェックすると/etc/httpd/conf/httpd.confの内容まで書き換わり、Apacheの動きが変わってしまったようだ。バックアップファイルがあったので復元してこの問題は解決。

 余談になるが、512MB/1GBメモリの時は問題無いが、Entryプラン/256MBの初期状態ではyum自体がメモリ不足でエラーになるそうだ。不要なサービスなどを止めて空きメモリを増やす必要がある。

 トラブったのはこの程度で、MySQLを設定し、WordPressのインストールスクリプトを実行、DBのバックアップや画像をリストアして、全く同じサイトが立ち上がった。この時驚いたのは、これまでWordPressを設定したことのある各レンタルサーバーはもちろん、今実際に使っているDELL PowerEdge 750と比較しても、動きが倍以上速いのだ。(少し大げさだが)DBが動いているとは思えないほどサクサク表示する。

 正直リソース共有タイプの仮想専用サーバーだったので、あまりパフォーマンスは期待していなかったものの、この速度、この価格なら引越ししない理由が見当たらない。上流も太いのか、転送速度も結構速い。

 一通り動きと画像やリンク切れなどを確認し、大丈夫だったので、BlueOnyxのサイト管理からサイトを2つ作り、筆者のブログもその日中に引越し、さっさとDNSを切り替えてしまった。

 BlueOnyxはBlueQuartzと比較すると大枠はそっくりだが、PHPやMySQLの設定など細かい部分が機能追加されより使い易くなっている。トラフィックレポートのWebalizerはデフォルトでOFFになっているので必要に応じてONにすればいい。筆者の場合はGoogle Analyticsを使っているのでOFFのままだ。

 普通のWebサーバーであれば、この管理画面で必要項目を設定、FTPなどでファイル転送すれば、SSHを使うまでもなく、安易に構築できる。なお、BlueOnyxの画面キャプチャは、あまり詳細に掲載すると、サーバーの設定が分かってしまうので、この3点程度でお許し頂きたい。

 また話は前後するが、仮想専用サーバーサービス自体の起動/停止、プランの変更/解約、各初期化、サービス追加や障害アナウンスなどの設定は、MyDTIのパネルで行なうことができる。

BlueOnyx/システムの設定→Hardware情報 BlueOnyx/Javaを使ったMindTerm(SSH) BlueOnyx/サイトの管理
MyDTI/アナウンスサービス MyDTI/サーバーの起動・停止など MyDTI/iptables、パスワード、サーバーの初期化

 この仮想専用サーバーが速い1つの理由としては「システムの設定→Hardware情報」を見れば分かるように、CPUにIntelのXeon L5520を搭載していることだろう。クロック2.26GHz、4コア/8スレッド、キャッシュ8MB。内2つのCPU(スレッド)が割当てられている。Pentium 4とは世代も違いチップセットやメモリシステムも大幅に変わってクロック比以上の差になっている。今後利用ユーザーが大幅に増えても現状のパフォーマンスが維持できるのかは不安であるが、とりあえず現状では満足できる結果だ。

 全て引っ越した後、メモリに関しては512MB中約130MBが残り、30GBのHDDの使用率はたった29%だ。これなら当分(ずっと!?)ディスク容量に関しては気にしなくていい。

 セキュリティに関しては、SSHのポートを変更、FTPを停止し、替わりにSCPを使用、Apacheの細かい設定、メールは随分前にGoogle Apps for Your Domainへ移行済みなので、メールも含め使わないサービスを全てアンインストール、iptablesで軽くファイヤーウォール構築などを行ない、httpdなど必要最小限のポート以外は全て閉じている。

 ただiptablesは設定を失敗すると、SSHやBlueOnyxの管理画面に入れなくなる可能性があるため、例えば独自の拡張としてBlueOnyxにiptables(firewall)の項目を追加するなど、もう少しハードルを低くしてもいいような気がする。とは言え、もし設定を失敗して必要なポートが閉じられアクセスできなくなった場合は、MyDTI管理パネルからiptablesの設定を初期化できる。

 この他独自の機能としては、フリービットの「ServersMan」を標準搭載。クラウド上のストレージとしても利用できる。例えばiPhoneで撮影した写真を、直接保存するといった使い方もOK。更にWebDAVにも標準対応しているため、PCやMac上からオンラインストレージとして利用可能だ。必要に応じて使ってみようと思っている。

 この手のサービスで気になるシステム障害などは、同社のアナウンスによると、ちょこちょこ発生しているようだが、「こんな時に限って!」と言うのはよくある話。自分で復旧させる必要も無いので運用面では楽できる。

 さて、せっかくサーバーを引越しして、不必要なフォルダやデータを整理、スッキリしたので、前々から気になっていた、筆者のブログの上位階層、つまりhtp://www.iwh12.jp/をリニューアルすることにした。何となく「ブログの最近記事とフォトアルバムが合体したようなイメージ」を持っていたので、フリーのフォトアルバムを検索。

 ところがデータベースが必要だったり、ブログ以上に複雑なシステム構成、画像の登録だけでなくその画像の説明文を入れなければならないなど、面倒なものが多く、もっとシンプルで簡単、そしてカッコいいものは……と、たどり着いたのが「minishowcase」だった。

 もう随分前に開発が止まっているので、ご存知の人も多いと思うが、特徴としては、必要なのはPHP(4以上)のみでデータベースは不要、フォルダ名がそのままアルバム名(UTF-8にすれば漢字も使える)になり画像をアップロードするだけで表示OK。Ajaxを使いクールな表示と、面倒な登録作業などが無く、ずぼらな筆者にはピッタリでイメージ通り。アルバムの説明が必要であれば、同じフォルダ内に_info.txtを置けば表示される。更にアルバム毎にパスワードが設定できるので、例えばグループなどで使う共有フォトアルバムとしても利用可能だ。

 これをベースにして、ブログのRSSから最新5件を表示、過去掲載したフォトジェニック・ウィークエンドのタレント毎にアルバムを作成(現在21人分、ただし画像はサムネイルサイズ)、アルバムの説明替りにタレント名でAmazonを検索しDVDビデオのパッケージを並べるなど、少し手を入れて公開した。

ブログ最新5件と左にアルバム名 サムネイル表示画面 画像表示

 実のところサーバーの引越しより、これを調整しつつ遊んでいる方が、余程時間がかかっている。いくつになっても「あーでもない、こーでもない」とプログラムやスタイルシートなど触っている時が一番楽しいものだ(笑)

 CentOS 5+Ruby on Rails+MySQLで運営しているSNS(blue.jp)は、メモリ512MBではさすがに厳しいが、1GBにすれば何とか動きそうなので、暇を見て試そうと思っている。root権限が使えるため全く同じ環境が構築でき、毎月それなりにかかっている回線費も浮くことになる。メモリ2GBのプランがあれば確実なのだが……。


 以上のようにServersMan@VPSは、安価なコストで、ハイパフォーマンス、そしてroot権限が使えるなど、まるごとCentOS 5.4の仮想専用サーバーサービスだ。マシンを組んではサーバー化すると言ったハードウェア好きなユーザー以外、電気代や運用、熱やノイズなどを考えるともはや個人や小規模用途のネットサーバーは、このサービスを使った方が全ての面で有利かつ便利だ。

 セキュリティ管理も自分で全て行なう必要があるので少しハードルは高いものの、興味のある人はぜひ一度試して欲しい。