■西川和久の不定期コラム■
レノボ「ThinkPad L412」
ThinkPad L412 |
レノボは4月下旬、もともとのメインストリームであるThinkPad RシリーズからこのLシリーズにモデルチェンジした。位置付け的にはEdgeシリーズとTシリーズの中間にあたる。14型ワイドのL412と、15.6型ワイドのL512の2タイプが同時に発表されたが、今回は前者が届いたので、早速レポートをお届けする。
●Rシリーズの後継機種
この新しいLシリーズ、特徴としてはキーボードは後述する6段、これはEdgeシリーズと同じ。そしてオプティカルドライブ搭載の2スピンドル、これはTシリーズと同じ。そしてデザイン的に従来のThinkPad的……と、確かに両ラインナップのちょうど中間と言うのはうなずける。
現在、同社のダイレクトショップでCore i3-330M(2.13GHz/L3 キャッシュ3MB/TB無し)か、Core i5-520M(2Core/2.4GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost時2.93GHz)かを選べるが、今回届いたのは以下の通り。
【表】ThinkPad L412(05535WJ)仕様CPU | Intel Core i5-520M(2Core/2.4GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost時2.93GHz) |
チップセット | Intel HM55 Express |
メモリ | 2GB/DDR3-SDRAM(1,066MHz)/2スロット空き1、最大8GB |
HDD | 250GB(5,400rpm) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 7 Professional(32bit) |
ディスプレイ | 非光沢14型ワイド液晶、1,366×768ドット |
GPU | Intel HD Graphics、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n(Intel Centrino Advanced-N 6200を使用/2.4GHzと5GHzのデュアルバンド)、Bluetooth(V2.1+EDR) |
その他 | USB 2.0×4(内1つはeSATAと兼用、内1つはPowered)、7in1メディアスロット、音声入出力、ExpressCard/34×1、指紋センサー |
サイズ/重量 | 344×233×32~36mm(幅×奥行き×高さ)/約2.37kg |
バッテリ駆動時間 | 約5.25時間(6セル) |
ダイレクト価格 | 124,950円 |
CPUは上位のCore i5-520M。2コア4スレッド、クロックは通常2.4GHzでTurboBoost時2.93GHzまで持ち上がる。L3キャッシュは3MBだ。チップセットはIntel HM55 Express、そしてGPUはCPU内蔵Intel HD Graphicsとなっている。今年のCore iプロセッサを搭載したノートPCの標準的な構成だ。ただセキュリティ面では、Intel HM55 ExpressのためIntelの管理機能「AMT」は非対応だが、TCG Ver.1.2準拠のTPMセキュリティチップを標準搭載している。
液晶パネルは非光沢の14型ワイドで解像度は、1,366×768ドット。Edgeシリーズの光沢パネルに対してLシリーズは非光沢のパネルを採用している。どちらかと言えばホビーより業務用の位置付けなのだろう。もう1つ同じ理由が考えられるものとして、デジタル出力がHDMIではなく、DisplayPortになっていること、そして指紋センサーも搭載していることがあげられる。
メモリは2スロットで標準は1スロット2GBのみ。1スロットが空きになっている。ネットワーク関連は、有線LANはGigabit Ethernet。無線LANは、Intel Centrino Advanced-N 6200を使用し、2.4GHzと5GHzのデュアルバンドだ。IEEE 802.11a/b/g/nの対応となっている。Bluetooth(V2.1+EDR)も搭載。
ポート類は、USB 2.0×4と7in1メディアスロット、そしてExpressCard/34にも対応。中でもUSB 2.0の4ポート中、1つはPowerd、そしてもう1つはeSATAとの併用となっているのは見逃せないポイントだろう。
現在、同社のダイレクトショップでは追加購入する周辺機器などを一緒に選べるだけで、基本的に仕様は固定になっている。Core i3-330Mを搭載した下位モデルと、Microsoft Office Personal 2007搭載モデルがあるだけだ。それぞれ102,900円、123,900円、124,950円、145,950円となる。スペックはCPU以外全て同じ。つまりCore i3-330MとCore i5-520Mで22,050円の差となる。発表時の資料にあった、CPU Core i5-540M、メモリ3GB、HDD 320GBの最上位「055344J」は、現在同社のダイレクトショップには無い。
下位モデルのEdgeシリーズや1ランク上位モデルのTシリーズで選べるWindows 7の64bit版は無く、32bit版のみの扱いになっている。メモリのデュアルチャンネル作動や最大メモリ8GBにも関わらず、この仕様になっているのは筆者的に不満点だ。
サイズは344×233×32~36mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.37kgは、EdgeシリーズやThinkPad X201iなどと比較するとかなり大きく重たい。2スピンドルそしてパネルサイズが14型なので仕方ない部分だ。ただ最近、このクラスのノートPCを持ち歩く人が意外と多いと言う話を聞いた。理由はプレゼン用だそうだ。確かに12型前後のパネルはプレゼン用としては小さいし、プロジェクタを接続しない場合は、14型が持ち歩ける範囲のおおよそ最大サイズなのだろう。
上記のような理由から、バッテリ駆動時間も気になるところだ。仕様上は6セルバッテリで最大約5.25時間。実際はどうなのかは後半で検証したい。
非光沢の液晶パネルは、発色に関してはX201iに良く似ている。原色系にパンチは無いものの、わりとニュートラルの発色だ。また、視野角は上下左右共、若干広めで、先のプレゼン用としてもまずまず。
キーボードはかなり強く中央を押すと若干たわむものの、十分ThinkPadクオリティ。キータッチなどもなかなか良い。そして特徴的なのが固有の7段ではなく、6段になっていることだ。更にEdgeシリーズには無い、左側にマイクミュート、ボリューム調整、スピーカーミュート、そして右側にパワーボタンとThinkVantageボタンが独立して配置されていること(加えて下には無線LAN、HDDなどのステータスLEDもある)。広いキーピッチを保ちつつ、14型ワイドのパネルのサイズに全体を合わせた場合、余った左右の空間をうまく活用した形で、操作的にもデザイン的にも違和感は無く、逆にこれはこれで使いやすい。
TrackPointやUltraNavはもちろんThinkPadそのもの。ただタッチパッドの表面には凹凸がある。パームレストやタッチパッドの面積は十分に確保され非常に快適に操作できる。
ノイズや振動に関しては、比較的ボディが大きい分、うまく処理されているのか、全く気にならないレベルだ。
液晶パネルの下に付いているステレオスピーカーのクオリティは、音量は十分、音質は中域から高域にかけては独特の透明感がありなかなか良い。ただその分、低域の迫力不足を逆に浮き出させてしまっているのが残念なところか。
以上のように、うまくRシリーズからLシリーズにバトンタッチしている雰囲気だ。ハードウェア的には特別これと言った不満点もなく、キーボードの変更点なども許容できる範囲内。十分ThinkPadとしての魅力を備えている。
●2GB 1枚のメモリがネックかOSは32bit版のWindows 7 Professionalを搭載している。これは現状、64bit版やWindows 7 Home Premiumへの変更はBTOではできない。250GBのHDDは、ユーザーが使えるパーティションとしては1つ。約221GBがCドライブに割当てられている。
ドライブはST9250315AS(5,400rpm。キャッシュ8MB)、そして無線LANユニットは、先にあげたようにIntel Centrino Advanced-N 6200が使われている。オプティカルドライブは、松下のDVD-RAM-UJ-850Sだ。メモリは2GBだが、GPUがメインメモリとメモリ共有する、Intel HD Graphicsのため、実質は1.86GBが使用可能となっている。
起動時のデスクトップ。いろいろショートカットが無く、スッキリしているのが特徴的だ | デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはST9250315AS(5,400rpm。キャッシュ8MB)、オプティカルドライブはMATSHITA DVD-RAM-UJ-850S | HDDのパーテーション。ユーザーが使えるパーテーションとしては1つ。約221GB |
プリインストールされているツールやアプリケーションは、ThinkPadでお馴染みの、Lenovo ThinkVantage Tools、Lenovo ThinkVantage Toolbox、Access Connections、省電力マネージャーなどなど。ただこれまで(筆者としては)ThinkPadでは見たことが無い、Corel DVD MovieWriter 7そしてWinDVDが入っていた。
これらの機能は、Windows 7標準である程度のことができる上に、基本的にLシリーズは業務用。なぜ入っているか、少し不思議な部分だったりする。
Lenovo ThinkVantage Tools | UltraNav | Corel DVD MovieWriter 7 |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は4.0。内訳は、プロセッサ6.5、メモリ5.5、グラフィックス4.0、ゲーム用グラフィックス5.1、プライマリハードディスク5.8。
CrystalMarkは、ALU 32,868(26,313)、FPU 32,859(26,216)、MEM 19,713(17,338/21,792)、HDD 8,578(7,857)、GDI 8,148(9,353)、D2D 1,739(1,288)、OGL 2,075(1,788)。カッコ内は筆者が所有するThinkPad X201i(Core i3-M330/2GB)の値だ(ただしOSは64bit版)。MEMだけ2Gと4GBの値を掲載したが、かなり差があるのが分かる。
また、先のWindows エクスペリエンス インデックスもX201i/4GBと比較してメモリが0.4、グラフィックスが0.6ポイント低い。メモリが1枚でシングルチャンネル作動になっているのが原因だろう。やはりデュアルチャンネルの方が速度的に有利になるため、できれば+2GB増設したいところ。ただその場合、32bit版のWindowsでは1GBが無駄になる。
BBenchは、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で13,949秒(3.8時間)だった。バックライトOFFでは表示がかなり暗く、実際はバックライトをONにするため、持ち運んでプレゼン用として使うにはギリギリの雰囲気だろうか。
以上のようにThinkPad L412は、キーボードなどがThinkPadクオリティで2スピンドル、価格は10万円程度で、ネットワーク関連は全部入り。非常によくまとまったノートPCになっている。
7段から6段に変わったキーボードは、往年のThinkPadユーザーから見ると複雑な心境ではあるものの、左右に分かれたキーやステイタスLEDなどは非常に扱いやすい。ただ現状細かいBTOに対応せず、32bit版のOSしか選べないのがネックだが、14型で無難にまとまったノートPCを探している人にお勧めだ。