西川和久の不定期コラム

マウスコンピューター「MADOSMA Q601」

~Snapdragon 617とメモリ3GBを搭載したWindows 10 Mobileスマホ!

MADOSMA Q601

 株式会社マウスコンピューターは2月22日、Windows 10 Mobile第1弾の5型に続き、上位モデルを開発中とアナウンスをした。それから5カ月後となる7月21日の今日、「MADOSMA Q601」を正式発表。一足早く試作機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

Windows 10 Mobile搭載機としては現時点で最大スペック

 「MADOSMA Q601」が搭載しているSoCはSnapdragon 617。現在国内で流通している同クラスのWindows 10 Mobileスマートフォンと言えば、5型HD液晶/メモリ2GBの「NuAns NEO」と、5.5型フルHD液晶/メモリ3GBの「VAIO Phone Biz」。どちらもミドルレンジで個性的なデバイスだ。

 そこに割って入ったのが、今回ご紹介する「MADOSMA Q601」となる。同じフォーマットで表現すると、6型/フルHD/3GBと、これらの中では最大級のパネルを搭載したモデルだ。主な仕様は以下の通り。

仕様マウスコンピューター「MADOSMA Q601」
SoCQualcomm MSM8952(Snapdragon 617/最大1.5GHz、8コア)
メモリ3GB
ストレージ32GB/eMMC+microSD(最大128GB)
OSWindows 10 Mobile
ディスプレイ約6型(JDI製)1,080×1,920ドット、タッチ対応、Gorilla Glass 3
Wi-FiIEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0
モバイルネットワーク国内 3G WCDMA: BAND1/6/8/19、4G/LTE FDD-LTE: 1/3/8/19/28(B) TDD-LTE: 41海外 2G:Quad Band、4G/LTE FDD-LTE: 1/2/3/4/7/8/28(B) TDD-LTE: 38/40/41
SIMスロットMicro SIM×1 (Nano SIM アダプタ付属)、Nano SIM×1(microSDカードスロットと排他)
インターフェイスUSB Type-C(OTG対応/Quick Charge 2.0対応)、microSDカードスロット(SIM2スロットと排他)、マイク、イヤフォン出力、前面500万画素(F2.4)/背面1,300万画素(F2.0)カメラ、NFC(Type-A/B/F 読み取り)
センサーGPS(GPS/A-GPS/Glonass)/加速度センサー/近接センサー/光センサー/電子コンパス
サイズ/重量160×82.3×7.9mm(高さ×幅×厚み)/176g
バッテリ3,900mAh
その他液晶保護フィルム、ACアダプタ、USB Type-C/USBケーブル
価格49,800円(税込・送料込)

 SoCはQualcomm MSM8952。通称Snapdragon 617と呼ばれ、オクタコアでクロックは最大1.5GHz。Windows 10 Mobileに採用しているSnapdragonは、200系/400系/600系/800系とあり、SoCとしてはミドルレンジに相当する。

 メモリは3GBを搭載。これはパネルがフルHDで、Continuumに対応する時のシステム要件となる。余談になるが、先日発表のあった「SoftBank 503LV(Lenovo製)」は、5型HD解像度だが3GBのメモリを搭載している。HD解像度の場合、Continuumのシステム要件は2GBなのだが、余裕を持たせるために1GB多く搭載したものと思われる。

 ディスプレイは約6型のフルHD(1,080×1,920ドット)。JDI製のパネルを採用し、高品質が期待できる。また、現時点において(もうすぐ発売されるHP Elite x3も6型)このサイズはWindows 10 Mobileスマートフォンとしては最大サイズだ。

 インターフェイスは、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0、USB Type-C、microSDカードスロット(SIM2スロットと排他)、マイク、イヤフォンジャック、前面500万画素(F2.4)/背面1,300万画素(F2.0)カメラ、NFC。USB Type-CはOTG/Quick Charge 2.0に対応。NFCはVAIO Phone Bizにはなく、NuAns NEOとMADOSMA Q601のみが搭載される。

 センサーは、GPS(GPS/A-GPS/Glonass)/加速度センサー/近接センサー/光センサー/電子コンパスを搭載。

 SIMスロットはMicro SIM×1と、Nano SIM×1の2つあるが、後者はmicroSDカードスロットと排他だ。またNano SIMアダプタ付属が付属するので、前者でNano SIMを使うこともできる。ただしLTE/WCDMAはどちらか一方でのみ使用可能(もう一方はGSM)。

 ネットワーク周波数帯は国内と海外、それぞれ表の通り。特に海外の対応バンドが明示され、かつ対応バンドも多いため、海外へ行くことが多いユーザーにとっては嬉しい仕様だろう。

 サイズは82.3×160×7.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量176g。iPhone 6s Plusが77.9×158.2×7.3mm(同)/192gなので、(ザックリ)似たようなサイズ/重量感となる。

 バッテリは3,900mAh。NuAns NEOが3,350mAh、VAIO Phone Bizが2,800mAh。フットプリントが大きい分、最大容量となっている。手元にあるNuAns NEOが2日ほど持つので、同程度のバッテリの持ちが期待できそうだ(使い方によるので参考まで)。

 価格は税込・送料込49,800円。NuAns NEOが税別Coreのみ39,800円(+ケースで3千円程度必要/消費税込だと計約4.6万円)、VAIO Phone Bizが59,180円(税込・送料込/価格.com調べ)。

 パネルサイズ、メモリ、そのほかの内容など総合すると、この価格は結構頑張っていると言っていいだろう。筆者はNuAns NEOを所有しているが、もし発売の順序が逆(もしくは同時)だったら、こちらを選んでいた可能性が高い(価格もだが大画面が好み)。

前面。色はホワイト。パネル中央上に、左から500万画素カメラ、受話口、明るさセンサー。6型のパネルはJDI製。ナビゲーションバーはソフトウェア式
アルミ製の背面。上部にLEDライト、1,300万画素カメラ、小さい穴がマイク。下部のメッシュ部分がスピーカー
上/右側面。上側面にイヤフォンジャック。右側面にSIM/MicroSDトレイと電源ボタン
下/左側面。下側面にUSB Type-Cと送話口。左側面に音量±ボタン
SIMスロット周辺アップ。手前がSIM2(Nano SIM)もしくはmicroSD、奥側がSIM1(Micro SIM)
重量は実測で177g
付属品は、クイックスタートガイド、SIMリリースピン、ACアダプタ(5V/1.5A、Quick Charge 2.0非対応)、USB/USB Type-Cケーブル。製品版にはこれらに加え、簡易保護フィルムとNano SIM/Micro SIMアダプタが付属
iPhone 6 Plus(5.5型/左)とMADOSMA(5型/右)との比較。厚みはiPhone 6 Plusより若干ある。さすがに5型と比較すると大きいいものの、フチが狭いのでiPhone 6 Plusと比較しても極端に大きい感じはしない

 筐体はフロントがホワイトで、ほかはアルミニウム。ホワイトの部分の質感がiPhoneに少し似ており、全体の品質は高い。またパネルは6型と大きいものの、ベゼルが細くサイズはさほど大きく感じない。持った感触もiPhone 6(s) Plusよりは気持ち軽い。ただし、バックパネルは外すことができず、バッテリは着脱できない。

 前面は、パネル中央上に、左から500万画素カメラ、受話口、明るさセンサーが並ぶ。ナビゲーションバーはソフトウェア式だ。背面は、上部にLEDライト、1,300万画素カメラ、小さい穴がマイク、下部のメッシュ部分がスピーカー。上側面にイヤフォンジャック、右側面にSIM/microSDトレイと電源ボタン。下側面にUSB Type-Cと送話口、左側面に音量±ボタンを配置。オーソドックスなスタイルだ。

 SIMスロットはトレイ式で、手前がSIM2(Nano SIM)もしくはMicroSD、奥側がSIM1(Micro SIM)となる。

 6型のパネルはJDI製だ。明るさ、コントラスト、発色、視野角全て良好。ただ(好みもあるだろうが)個人的に黒が少し浮いているような気がしないでもない。逆に言えば、そのような部分が気になるほど品質が高い。画面の動きやタッチなどはスムーズで非常に気持ち良く操作できる。写真や動画は言うまでもなく大迫力。ネットなどをアクセスしても画面が広く見やすい。電話としては大きいが、タブレット的な用途が主で、たまに電話をするような使い方であれば、この6型は非常に魅力的だ。

 サウンドはスピーカーが後ろにあり、普通に机の上などに置くと、メッシュ部分が塞がってしまい、音がかなり(最大でも鳴ってる?程度)小さくなる。スタンドに立てたり、手で反射させるなど工夫すると大きな(煩いほど)音がする。もちろんカマボコレンジだが、鳴りっぷりは悪くない。

 イヤフォン出力は、手持ちのiPhone 6 Plusと比較すると、パワー、ダイナミックレンジなど、全ての面で1歩及ばずだが、このクラスとして平均的だろうか。5型のMADOSMAよりは癖もなく聴きやすい。また動画を連続再生するとそれなりに発熱する。ただ、これはiPhoneなども同様なので許容範囲だ。

 カメラについては別途記載したので参考にして欲しいが、総じて完成度は高く、Snapdragon 617搭載機としては後発だが、その分、よく作り込まれている感じがする。パネルサイズだけでなく、ほかの部分もハイスペックなので見出しを”最大スペック”とした次第。

6型で標準サイズのタイルを横4つ並びも可能

 初期設定は、Windows 10 Mobile標準のままなので、今回特に画面キャプチャは掲載しなかった。

 スタート画面は約2画面分。最上部、左右に分かれて電話1と2、メッセージング1と2があるのが印象的だ。アプリフォルダには、「アラーム&クロック」、「電卓」、「Get Started」、「エクスプローラー」が並んでいる。クイックアクセスはTH2では並び替えができないので標準のままだ(Anniversary Updateで並び替えが可能になる)。

スタート画面(1/2)
スタート画面(2/2)
アプリフォルダ
クイックアクセスと通知エリア

 プリインストールのアプリケーションは追加は無く、「アラーム&クロック」、「ウォレット」、「エクスプローラー」、「カメラ」、「サポートに問い合わせる」、「ストア」、「ストレージ」、「ニュース」、「フォト」、「ボイスレコーダー」、「ポッドキャスト」、「メッセージング1/2」、「映画&テレビ」、「設定」、「天気」、「電卓」、「電話1/2」、「Continuum」、「Cortana」、「Excel」、「Facebook」、「FMラジオ」、「Get Started」、「Grooveミュージック」、「Microsoft Edge」、「OneDrive」、「OneNote」、「Outlookカレンダー」、「Outlookメール」、「People」、「PowerPoint」、「Skype」、「Skypeビデオ」、「Windowsフィードバック」、「Word」、「Xbox」。SIMが2スロットある関係で、電話とメッセージングが2つある。

アプリ画面(1/5)
アプリ画面(2/5)
アプリ画面(3/5)
アプリ画面(4/5)
アプリ画面(5/5)

 初期起動時のbuildは10586.164。これは結構初期のものだ。ストレージは29.1GB(3.54GB使用中)。ただし若干の画面キャプチャが含まれている。使い方にもよるが、写真や音楽、動画などはmicroSDカードへ逃がす方が無難だろう。

 また本機の特徴として、設定/スタート/タイル数を増やすをONにすると、スタート画面に標準サイズのタイルを横に4つ並べることができる(本機以外でも設定/ディスプレイ/解像度を150%にすれば可能であるが、画面を構成するパーツ全てが小さくなるので扱い難くなる)。ライブタイルの情報量が一気に増えるので、おすすめの設定だ。

 ナビゲーションバーはソフトウェア式で、バイブレーションフィードバックに対応。設定/EXTRAS/ナビゲーションバー バイブでオン/オフができる。技適マークもソフトウェア式。

 先に書いたようにbuildが古いので、最新の10586.494へ、また標準アプリもアップデートして以降の評価を行なっている。

初期起動直後はbuild 10586.164
ストレージは29.1GB(3.54GB使用中。ただし若干の画面キャプチャを含む)
携帯ネットワークとSIM。2つの設定が分かれている
NFCにも対応
スタート/タイル数を増やすをオンにすると標準タイルが横に4つ並ぶ
技適マーク
ナビゲーションバー バイブのオン/オフ
最新のbuild 10586.494をダウンロード
build 10586.494になった。標準アプリもUpdateして、この状態で評価している

1,300万画素の背面カメラ

 背面の1,300万画素カメラは、比率4:3出力時で4,160×3,120ドットとなる。F2.0と明るいレンズなので、低照度の時に有利だが、かと言って乱暴に扱うと、手ぶれ補正機能がないので、手ぶれする可能性が高く要注意。画角はExifにも情報が無く、何mmか不明。

 カメラアプリ自体はWindows 10 Mobile標準のもの。プロモードで色々マニュアル的な使い方ができ、シャッタースピードは0.3~1/6,000秒、ISO感度はISO50から最大ISO3200の設定が可能だ(この部分が機種によって違うので抜粋した)。

カメラ(プロモード)のシャッタースピード0.3~1/6000秒
カメラ(プロモード)のISO感度。最大ISO3200

 画質は、それぞれシチュエーションが異なるカットを6枚掲載したので参考にして欲しい。基本何も触らずオートで撮影している。発色は可もなく不可もなくまずまず、エッジはあまり強調していないようだ。オートホワイトバランスは大きく転ぶこともなく、比較的安定している。AEは夜景の写真だけ-0.7にしているが、ほかは触っていない。

作例 ※リンク先は高解像度画像
ISO50 , f/2, 1/118秒(Daylight固定)
ISO50 , f/2, 1/229秒
ISO50 , f/2, 1/2703秒(距離無限大に固定)
ISO392, f/2, 1/13秒(露出補正-0.7)
ISO50 , f/2. 1/167秒
ISO429, f/2, 1/34秒

 日常的なスナップであれば十分な画質だが、問題はAF。室内の写真、ピントは手前の置物に合わせているが、これがなかなかピンが来ない(もしくは迷う)。決まってもAFの作動は秒単位とかなり遅い。同様に、例えば「今日の昼食!」的な、暗めの室内で比較的近距離の写真は、AFが一番苦手なシーンとなる。また青空の写真もAFを無限大に固定しないと迷って合わなかった。

 ただこれは、MADOSMA Q601だけに限った話ではなく、NuAns NEOやVAIO Phone Bizなど、エントリークラス、国内に流通するWindows 10 Mobileスマートフォンが同じ傾向だ(既に数が多く全機種試せないので触った範囲)。

 おそらくAndroid搭載スマートフォンやiPhoneユーザーが触るとビックリするだろう(遅いだけでなく、しばらく考えて合わない時はAFの作動を止めてしまう)。カメラユニットの問題なのか、ファームウェアの問題なのか、OSなのかアプリなのか原因は不明だが、今時のスマートフォン内蔵カメラとしてはここが一番ストレスになる。

 ただLumiaの上位モデルはこのような症状はなく(と言ってもiPhoneよりは遅い)、何らかの解決策はあるようなので、(ユニットの問題であれば仕方ないが)各社出来る範囲で調整して欲しいところだ。

MiracastによるContinuum対応

 Windows 10 Mobileの特徴の1つであるContinuumは、Snapdragon 617なのでMiracast/Wi-Fi接続で対応している。OTGも含め、以前掲載したNuAns NEOの記事に詳細を書いてあるので、興味のある方は参考にして欲しい。本製品でも、Screen Beam Mini2で試用したが安定作動していた。

 ただ筆者が一部誤解していた点がある。冒頭でフルHDのパネルの場合、メモリ3GBがシステム要件と書いたが、パネルフルHD+外部ディスプレイもフルHDをイメージしていた。Snapdragon 800系のUSB 3.0を使った有線接続であればこれで間違いないのだが、Miracastの場合、ディスプレイ側はHD(1,366×768ドット)解像度に限定されるようだ。

 実際、MADOSMA Q601での画面キャプチャは1,366×768ドット。VAIO Phone Bizはネットに載っている写真を見る限り同様だった。従ってSnapdragon 617の場合、3GB搭載してもスマートフォン側フルHD、ディスプレイ側HDとなる。

 この縦768ドットは、特にEdgeを使った場合、幅はともかくとして、下にタスクバー、上にタブと、結構実描画領域が狭くなるのでアプリ側で一工夫が欲しい。

Continuumアプリ
スタート画面
Edge
Google Octane 2.0は3,942

 以前指摘したMiracast接続でスクロール時に文字が滲む件は、Insider Preview版でほとんど目立たなくなった。またFacebookとIMEの相性も直っている(合わせてEdgeの速度も向上)。Anniversary Updateがリリースされると使い易くなりそうだ。

 なお、同社関係者のツイートによると、現時点でWDRT/IP共に申請済だがまだ公式対応が完了していないとのことだった。

 肝心のUWPアプリの対応が追いついていないのは相変わらずだが、Office、Edge、Outlookを使う業務的な用途であれば、それなりに使える環境だ。ただ競合OSがSplitViewやマルチウィンドウに対応し出したので、全画面のみと言うのは少し寂しい限り。本来のWindowsへ戻って欲しい。

 最後に簡単なベンチマークテストを行なった。まずバッテリ駆動時間は、明るさ50%、音量50%(相当)にして、YouTube/Wi-Fi接続(SIM無し)で連続再生したところ、約7時間で電源が落ちた。またこの時結構熱を持つが、iPhone 6 Plusでも同条件だと熱くなるので、特に問題は無いだろう。

 EdgeでのGoogle Octane 2.0のスコアは3,942。Atom Z3735Fを搭載したタブレットやスティックPCと同程度だ。以前Snapdragon 410を搭載したMADOSMAは3,063だったので、1ランク向上しているのが分かる。

 以上のようにマウスコンピューター「MADOSMA Q601」は、6型フルHD、Snapdragon 617、3GB/32GBを搭載したWindows 10 Mobileスマートフォンだ。ベゼルが狭いので、iPhone 6(s) Plusとあまり変わらないサイズは嬉しい限り。幅広いバンドでLTE国内外対応もポイントが高い。それでいて価格は49,800円と、高いコストパフォーマンスだ。

 カメラのAFのみ(ほかのWindows 10 Mobile搭載スマートフォンと同レベルとは言え)気になる部分ではあるが、この大画面と高機能にグッと来たユーザーにおすすめしたい逸品だ。