実録! 俺のバックアップ術

できるだけ何もしない、面倒くさくないバックアップ

~山田祥平編

大事なデータは4つのカテゴリ

 かけがえのないデータが万が一失われては困る。それは誰でも同じだ。でも、保存しているものが機械である以上、いつかは壊れる。壊れることを前提に壊れてもいいようにしておく。だからバックアップは重要だ……と、言うのは簡単だがバックアップほど面倒くさいことはない。なので、ぼくのバックアップポリシーは、できるだけ何もしないですむようにするという1点につきる。

 ぼくはフリーランスなので、仕事場は基本的に自宅だ。そこでは複数台のデスクトップPCと、ノートPCを併用している。それぞれのPCが搭載するストレージ容量はまちまちだ。もっとも大きなストレージを実装しているPCは、500GBのSSDをシステムドライブにしたもので、8TBのHDDと6TBのHDDを内蔵している。はっきり言って、こんなにたくさんのストレージはいらない。だから6TBのHDDはほぼ空の状態だ。

 一方、PCを使って仕事をするようになって四半世紀以上が経過しているが、手元にあるデータは、3つのカテゴリに分類できる。

  • (1) これまで書いてきた原稿類とその関連ファイル(約30GB)
  • (2) これまで撮りためてきた写真ファイル(約1.5TB)
  • (3) リッピングした音楽ファイル(約350GB)
  • (4) メール(約25GB)

 合計すると2TB程度だ。(1)が異様に少なく感じるが、これは仕事の結果のほとんどがテキストファイルだからだ。また、(3)については基本的にCDの実物を全て残してある。でも、3,000枚を超えるCDをもう一度リッピングするというのはカンベンだ。だから、(1)~(4)を守るということを考えることにしている。それ以上でも以下でもない。

機械のバックアップを機械に頼らない

 うちではNASは使っていない。NASは便利だが、そのNASのバックアップといったことを考えると尻込みしてしまう。それに、同じ家屋の中にバックアップがあるというのも意味がなさそうに思う。

 守るべき全ファイルで2TB程度だが、とりあえず全部のファイルが存在するのは常用していないPCに内蔵した8TBのHDDのみとなっている。ただしこれはマスターではない。いくつかのクラウドストレージサービスに分散してあるファイルが集約同期してコピーされているものだ。

 主に使っているクラウドストレージサービスは、Windows 10に統合されているMicrosoftの個人用OneDriveだ。個人用OneDriveは、2つのアカウントを維持し、片方のアカウントのフォルダを共有し、もう片方のアカウントから読み書きできるようにしてある。個人用のOffice 365サービスを2つ契約することで1TB×2のストレージを確保し、とりあえずはそこに全てのファイルを同期するように設定している。ノートPCを含めて、ストレージが2TBよりも少ないPCについては、同期するフォルダを限定している。具体的には、(1)のみを同期し、ほかのファイルは必要な時にWeb経由で参照する。

OneDriveを活用

 さらに、Office 365は、企業向けのものも契約しているので、こちらについても1TBストレージが提供される。個人用OneDriveとは異なるOneDrive for Buisinessだ。かつては多くの制限があったために使う気になれなかったのだが、現在はOneDriveと仕様的にも同等になっている。使い勝手はまったく同じと言ってもいいが、バージョン履歴などをサポートしている点ではOneDriveの方が安心だ。もちろん併用も可能だ。

 とりあえず、今は、個人用のものだけで事足りているので、OneDrive for Buisinessを最大限に活かしているとは言えないが、個人用OneDriveの容量が足りなくなってきたら(1)と(2)を引っ越そうと思っている。現時点では仕事関連の重要ファイルなどが置いてあるにすぎない。

 個人用のOneDriveとOneDrive for Businessは、どちらもローカルドライブとの自動同期ができるが、スマートフォンやタブレットの各種アプリからの参照を考えた時には、個人用OneDriveの方が使い勝手がいい。例えばAndroidにしてもiOSにしても、OneDriveアプリのカメラアップロードで写真を自動的にバックアップできるのは個人用OneDriveに対してだけだ。

iTunesライブラリは特別扱い

 さて、(3)の音楽ファイルだが、ぼくの音楽ファイルはiTunesで管理している。そのライブラリをミュージックフォルダに置き、ミュージックフォルダの位置を個人用OneDrive内に設定してあるので、新たにリッピングした音楽ファイルは自動的にOneDriveに同期される。

ミュージックフォルダをOneDriveのフォルダに置いている

 それとは別に、バックアップと出先でのオフライン参照ができるようにするために、iTunesライブラリ全体を、新しいCDをリッピングするたびにSDメモリカードに保存するようにしている。これについては手作業だ。具体的には、コマンドプロンプトで標準コマンドの「robocopy」を使ってコピーする。コマンドラインは次のようなイメージだ。

robocopy c:\Users\syohei\OneDrive\Music\iTunes x:\music\itunes /mir

 これによって、ミュージックフォルダ内のiTunesフォルダとSDメモリカード内のiTunesフォルダの内容がミラーリングされる。変更された部分だけが反映されるので作業は短時間で終わる。/mir はミラーリングを意味し、コピー元のファイルが削除されていれば、コピー先のファイルも削除することを指示している。つまり、フォルダ内容は同一になる。

 こうして作ったSDメモリカードを、出張時などにノートPCに装着して持ち出し、そのPCのiTunesから参照することで出張先でも自分の全ライブラリ内容をオフラインで楽しめる。iPhoneの最大ストレージ容量は256GBなので、全部をコピーしておくのは無理なので、二重のバックアップも兼ねてというわけだ。

 デジカメに装着したSDメモリカードが破損したような場合も、このカードがあればフォーマットして代用できる。バックアップのバックアップだから、一時的に別の用途に使っても、うちに戻った時に上記のコマンドを実行すれば勝手に元通りになる。

コマンドプロンプトで「robocopy」を活用

メールはコミュニケーションのバックアップ

 メールについては一般法人向けのOffice 365に付加されているExchangeサービスを利用している。このサービスではユーザーのメールボックスは50GBなので、現時点で35GBある過去メールについては全て置いたままにしておける。とりあえず、もっとも古いメールは1995年のものだったから、ここ20年間に送受信したほぼ全てのメールをいつでも参照できる。ぼくの契約しているOffice 365 E4では、メールボックスの50GBのほかに、アーカイブメールボックスとして無制限のストレージが付加されている。メールボックスが満タンになったら、一部のメールをそちらに移動すればいい。

 ストレージに余裕のあるPCについては、過去のメールを全てローカルにも同期しているので、オフラインでの参照が可能だ。個人的に、さまざま情報がメールベースなので、過去のメールを検索することはとても多い。過去にもらった名刺を探し出すのは至難の業だが、メールについてはすぐに見付かる。

 コミュニケーション履歴のバックアップとしてのメールは、久しぶりに受けた仕事の担当者との過去の仕事の経緯を知るなど、いろいろなところで役にたつ。10年前に打ち合わせをした喫茶店の名前や住所まで分かると、やはり、何かと重宝するのだ。

 Exchangeサービスのデータには、予定表データも含まれる。また、PC用のOutlook.exeからはメモデータなども参照できるので、35GBという容量はノートPCにはちょっと荷が重いのだが欠かすことのできない存在だ。

クラウドストレージとISP

 こうした体制で、手元のデータは、とにかく全てストレージサービスとしてのOneDriveに預けることで各サービスの管理者が勝手にバックアップして守っていてくれる。ぼく自身がやるのは、新たにファイルを作ることだけだ。バックアップしておこうと自主的な防衛を考えることはない。

 もしストレージサービスが何らかの理由でサービスを廃業するようなことになれば、その時はその時で考えることにしよう。願わくば、その時点の最大容量HDD全部が収まるくらい、今なら10TB程度はリーズナブルな価格で1つのアカウントのストレージサービスでまかなえるようにして欲しいものだ。

 目下の悩みは、長期取材から戻り、写真のデータなどの大量のファイルを同期する時に、プロバイダーの上り方向容量制限にひっかかってしまうことだ。過去に一度、警告のメールを受け取ってからは、注意するようにしているが、こればかりは何とかならないものかと思う。ぼくの使っているIIJmioサービスでは、24時間あたり15GB程度で警告されるのだが、これを忠実に守るとすると、1カ月かけても約500GBしかアップロードできない。10年以上前に施行された対策なので、そろそろ見直しが必要なのではないだろうか。過去に警告を受けた時には7日間で約700GBをアップロードしていたそうなので、値が厳密なものではないにせよ、サービスを停止されることもあるかと思うと不安になる。

 ちなみにOCNでは今年(2016年)の春から、『「OCN」における品質向上のための取り組みについて』として、混雑時の帯域制限を行なう代わりに、「クラウドなどの普及により利用実態と合わなくなったため」という理由で、それまで24時間あたり30GBだった制限が廃止されている。プロバイダー各社はこうした見直しに随時積極的に取り組んで欲しいものだ。