最新液晶ディスプレイ ピックアップ

NECディスプレイソリューションズ「MultiSync LCD-PA241W(BK)」



LCD-PA241W(BK)
液晶サイズ24.1型
パネル方式IPS方式
表示解像度1,920×1,200ドット
アスペクト比16:10
画素ピッチ0.270mm×0.270mm
表面処理ノングレア
バックライト方式冷陰極管
応答速度16ms、中間色 8ms
コントラスト比標準 1000:1
視野角水平178度/垂直178度
輝度360cd/㎡
表示色約4兆3,475億色中約10億7,374万色(DisplayPort 10bit入力時)
走査周波数水平:31.5kHz~93.8kHz、118.4KHz(アナログ)
31.5KHz~91.1KHz、118.4KHz(デジタル)
垂直:50Hz~85Hz(WUXGA:60Hz)
チルト角度下5度~上30度
高さ調節最大150mm
スイーベル90度
ピボット機能あり
入力端子ミニD-Sub15ピン×1
DisplayPort(HDCP対応)×1
DVI-D(HDCP対応)×2
USB 2.0×2
出力端子USB 2.0×3
スピーカ用電源コネクタ×1
スピーカーなし
VESAマウント対応
電源内蔵
消費電力標準95W
付属品DisplayPortケーブル
DVI-Dケーブル
ミニD-Sub15ピンケーブル
電源ケーブル
ユーティリティディスク
本体サイズ556.8×227.6×378.0~528.0mm(幅×奥行き×高さ)
重量約10.6kg(スタンド含む)・約7.4kg(スタンドなし)

 NECディスプレイソリューションズのプロフェッショナル向け液晶ディスプレイに、新シリーズとなる「PA」シリーズが登場。正確なカラーマネージメントが要求されるプロフェッショナル用途をターゲットとするハイグレードモデルで、優れた表示品質を誇る点が特徴となっている。ただし、今回試用した個体は開発中の試作機であり、製品版と一部仕様の異なる部分がある点はあらかじめご了承願いたい。

●本体デザイン

 本体デザインは、MultiSyncシリーズでおなじみの、直線的でシンプルなデザインが採用されている。今回試用したのはカラーがブラックのモデルだったが、ホワイトのモデルも用意されている。

 本体サイズは、556.8×227.6×378.0~528.0mm(幅×奥行き×高さ)。ベゼルは十分に狭く、正面から見たサイズは、それほど大きいとは思わない。冷陰極管の高性能バックライトを搭載していることもあり、液晶本体の厚みは比較的大きい。また、重量もスタンド込みで約10.6kg、スタンド抜きの液晶本体のみで約7.4kgと、24.1型ワイド液晶ディスプレイとしてはかなり重い部類に入る。

 ただ、従来モデル(LCD2490WUXi2)と比較して、スタンド部のフットプリントが38%小型化されているとともに、スタンド部の奥行きも78.4mm短くなった。これにより、設置時の占有スペースもかなり少なくなっている。

 液晶面のチルト角度は、下5度から上30度の範囲内で、高さは150mmの範囲内で調節可能。台座には90度のスイーベル機構と、90度回転させて縦画面で利用できるピボット機構を備える。チルト角度や高さ調節、ピボットなどの操作は比較的軽い力で行なえ、液晶画面のぐらつきもそれほど大きくない。高さ調節は一番低くなる位置で固定するレバーが用意されているため、移動時などに役立つ。

 電源ボタンや入力ソースの切り替え、OSD操作用のボタン類は、従来機種同様、画面右下のベゼルコーナー付近に配置されている。OSD操作用として、下ベゼル部分に左右、右ベゼル部分に上下の操作用ボタンが独立して配置されているため、OSD内のメニュー移動など直感的な操作が行なえる。また、電源ボタンの横には室内の明るさを検知するセンサーが取り付けられ、室内の明るさに応じてバックライト輝度を調節する機能も用意されている。

●液晶パネル

 1,920×1,200ドット表示対応の、24.1型ワイド液晶を搭載。パネルの方式はIPS方式で、DisplayPortの10bit入力をサポートする広色域パネルを採用。応答速度は16ms、中間色で8ms。視野角は、水平・垂直とも178度で、多少画面を見る角度が変化しても、色合いの変化は全くと言っていいほど感じられない。バックライト輝度は320cd/平方mで、中央部と周辺部の輝度ムラは一切感じられない。パネル表面は非光沢処理が施されている。

●接続端子

 映像入力端子は、ミニD-Sub15ピン×1系統、DisplayPort(HDCP対応)×1系統、DVI-D(HDCP対応)×2系統の全4系統が用意される。本体にスピーカは搭載されず、音声の入出力端子は用意されないが、オプションスピーカが取り付け可能となっているとともに、オプションスピーカ用の電源出力端子が用意されている。

 映像入力端子は、液晶背面に下向きに取り付けられているが、ピボット機構を利用することで、設置後でもケーブルの着脱は容易に行なえる。また、スタンドのアーム後方にはケーブルを束ねる機構が用意されているが、カバーをスライドさせて上に引きあげられるようになったことで、ケーブルマネージメントが容易となっている。

 映像入力以外に、USB 2.0のアップストリームポートが2ポートと、ダウンストリームポートが3ポート用意されている。これは、USB Hubとして機能するのはもちろん、USB切り替え機としても機能し、キーボードやマウスなどの1組のUSB機器を2台のPCで共有させることが可能。また、入力端子ごとにアップストリームポートを指定できるため、入力切り替えに対応させてUSB機器の切り替えも行なえる。

●OSD

 OSDは、MultiSyncシリーズでおなじみのデザインのものと、より高度な設定が可能な「ADVANCED SETTING」メニューの2種類が用意されている。

 標準のOSDに用意されている設定項目は、従来モデルに用意されているものとほぼ同じと考えていい。もちろん、従来のプロフェッショナルモデルに用意されているOSDと同じように、RGBCMY6色について、色相、オフセット、彩度をそれぞれ127段階に調節できる機能や、1cd/平方m単位での輝度調節機能など、十分に充実している。そして、ADVANCED SETTINGメニューでは、RGBのxy色度調節をはじめ、より高度な設定が可能となっている。

 OSDの操作は、ベゼル右下に用意されているボタンを利用する。カーソル移動用のボタンは左右と上下が独立して用意されているため、直感的な操作が行なえる。また、OSD表示時に、ボタン横の液晶画面に操作のガイダンスも表示されるため、迷うことなく操作可能だ。加えて、ピボット機構により縦画面にした状態では、OSDの表示向きや上下および左右の操作ボタンの動作が自動的に切り替わるように配慮されている。

 なお、今回試用した個体のOSDメニューは製品版と異なる可能性がある。

●画質

 MultiSyncシリーズの中でも、プロフェッショナル用途、それもハイグレードモデルに位置付けられていることもあり、表示画質には文句の付け所がない。特に、DisplayPort接続時には、10bit入力に対応しており、約4兆3,475億色中約10億7,374万色という、圧倒的な表示能力を実現する。今回試用した試作機は開発途上の個体であったが、それでも実際に表示させた映像は、当然ながら階調潰れなどの発色の乱れが一切なく、非常に優れた描画クオリティを確認。さすがにプロ用途のハイグレードモデルに位置付けられている製品だという印象を強く受けた。

 また、搭載されている新開発の画像処理専用IC「SpactraViewエンジン」には、3次元ルックアップテーブルや独自の色変換アルゴリズムが搭載され、色再現性の精度が大幅に向上し、従来にも増して正確な色再現が可能になったとされている。さらに、ICCプロファイルのエミューレーションや、P/D/T型色覚エミュレーションなどを単体で実現できるようにもなっている。特にICCプロファイルのエミューレーション機能では、AdobeRGBやsRGBなどの業界標準プロファイルはもちろん、他社モニター用のプロファイル、印刷会社で製作されたプロファイルなどをも、エミュレーション機能によって反映できる。これによって、印刷物の出力イメージやユニバーサルカラーデザインのイメージ確認などを、容易に行なえるようになっている。

 ピクチャーモードの切り替えや各種エミュレーション機能は、2画面表示機能と組み合わせることも可能となっている。例えば、2画面表示モードで異なる入力の映像を同時に表示させるとともに、一方をsRGBモード、もう一方をAdobeRGBモードで表示するといったことや、2画面表示モードに同じ入力映像を表示させ、一方にのみエミュレーションを効かせて表示比較を行なうといったことが可能となっている。

 加えて、本体には高精度のフィードバックセンサーが内蔵されており、外部センサーを利用することなく、正確な色変換が行なえるようになっているとともに、電源投入後の輝度安定時間も大幅に短縮されている。

 こういった中で、唯一の弱点と思われるのが応答速度だ。応答速度は黒白黒が16ms、中間色が8msと、特に高速というわけではなく、動画や高速な画面描写のゲーム画像などを表示させると、わずかではあるが残像を感じる。とはいえ、シビアな動画再生能力はターゲットとしておらず、特に大きな問題とはならないはずだ。

 このように、画質面はもちろん、機能面でもプロ用途としてほとんど死角が見あたらず、現時点で最強に近い魅力を備えた製品と言える。しかも、プロ用途の液晶ディスプレイとしては、実売13万円前後と比較的安価に抑えられており、デジタル一眼レフカメラを利用した写真撮影や、デジタルグラフィックスなどを趣味としている個人にも、十分に購入の射程圏内となる。とにかく、画質最優先で液晶ディスプレイを選ぼうと考えている人には強くおすすめしたい。

バックナンバー

(2010年 1月 28日)

[Text by 平澤 寿康]