最新液晶ディスプレイ ピックアップ
EIZO「FlexScan EV2730Q」
~1,920×1,920ドット表示対応の正方形ディスプレイ
(2015/3/3 06:00)
FlexScan EV2730Q | |
---|---|
液晶サイズ | 26.5型 |
パネル方式 | IPS方式 |
表示解像度 | 1,920×1,920ドット |
アスペクト比 | 1:1 |
画素ピッチ | 0.2478×0.2478mm |
表面処理 | アンチグレア |
タッチパネル | なし |
バックライト方式 | LED |
応答速度 | 5ms(GTG) |
コントラスト比 | 1,000:1 |
視野角 | 水平178度/垂直178度 |
輝度 | 300cd/平方m |
表示色 | 約1,677万色 |
走査周波数 | 水平:31kHz~127kHz 垂直:59~61Hz |
チルト角度 | 下5度、上35度 |
高さ調節 | 101mm |
スイベル | 344度 |
ピボット機能 | なし |
入力端子 | DisplayPort×1 DVI-D(HDCP対応)×1 ステレオミニジャック×1 USB 2.0アップストリームポート |
出力端子 | ヘッドフォン出力 USB 2.0ダウンストリームポート×2 |
スピーカー | 1.0W+1.0W |
VESAマウント | 対応(100×100mm) |
電源 | 内蔵 |
消費電力 | 標準25W、最大64W |
付属品 | DVI-Dケーブル DisplayPortケーブル×1 電源ケーブル USB 2.0ケーブル オーディオケーブル ユーティリティCD-ROM |
本体サイズ | 497×245×512.5~613.5mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約5.68kg(パネル、スタンド、ケーブル込み) |
EIZOは、表示解像度が1,920×1,920ドットと、表示領域が正方形となっている液晶ディスプレイ「FlexScan EV2730Q」を発売した。一般的な長方形ディスプレイに比べて縦の表示領域が圧倒的に広く、DTPやCAD、プログラミングなど、多くの情報を一度に表示でき作業効率や快適度が大幅に高まると期待される。2015年1月30日より販売が開始され、実売価格は129,000円前後。
本体デザイン
「FlexScan EV2730Q」(以下、EV2730Q)は、アスペクト比1:1となる正方形の液晶パネルを採用していることもあり、一般的な液晶ディスプレイと見た目の印象が大きく異なっている。基本的なデザインコンセプトは、他のFlexScanシリーズほぼ同等。ただ、液晶パネル部の縦の長さがあるために、その存在感は他の液晶ディスプレイを圧倒する。本体カラーはブラック。ボディ部分は樹脂製で、高級感はあまり感じないものの、直線的で落ち着いた印象のため、オフィスでもしっくりくるだろう。
本体サイズは、497×245×512.5~613.5mm(幅×奥行き×高さ)。液晶部の高さがかなりあるため、見た目にかなり大きく感じるが、横幅はアスペクト比16:9の24型液晶ディスプレイよりも短く、設置スペースは逆に少なく済む。そのため、見た目に反して設置性はかなり優れると言える。
スタンド部は、中央付近が折れるような構造で液晶面のチルト角度の調節が可能な、独特な仕様となっている。また、機能性が高い点も特徴で、チルト角度調節は下5度から上35度、スイベルは344度と調節可能範囲が非常に広い。高さ調節は101mmの範囲内で調節可能。調節は適度な力で行なえ、ぐらつきもほとんどない。なお、ピボット機構は、液晶パネルが正方形のため搭載しない。
電源ボタンやOSD操作用のボタンは、下部ベゼル中央付近に横に配置されている。ボタンは全て物理ボタンで、目立たないようにベゼル部と同じカラーとなっている。ボタン自体はしっかり押せるが、横一列に並んでいるため、OSDの直感的な操作はやや難しく感じる。
液晶パネル
1,920×1,920ドット表示に対応する26.5型パネルを採用する。パネルの方式はIPS方式で、上下の視野角は水平、垂直とも178度と十分に広い。正方形のパネルのため、一般的なワイド液晶と比べて上下への視点移動が非常に多くなるが、上方から下方まで均一の明るさや色合いでしっかり視認できる。パネル表面はアンチグレア処理のため、外光の映り込みが気になる場面もほとんどなく、文字入力などの作業も快適に行なえる。なお、タッチパネルは非搭載だ。
バックライトはLEDで、輝度は300cd/平方mと非常に明るい。輝度を絞って使わないとまぶしすぎると感じるほどだ。バックライトはDC調光方式を採用しており、ちらつきを感じることは皆無。また、ブルーライトカット機能も備わっており、長時間の作業でも目に優しい仕様となっている。
コントラスト比は標準で1,000:1とIPS方式のパネルとして標準的。応答速度は中間色で5msと、IPSパネルとしてはまずまず高速。ウィンドウを高速に動かした場合などにはわずかに残像を感じる場面もあるが、動画再生時には残像はほとんど感じない。
接続端子
映像入力端子は、DisplayPort×1、DVI-D×1の2系統を用意。表示解像度が1,920×1,920ドットとなり、HDMI 1.4aではリフレッシュレート60Hzでの出力が不可能なこともあってか、HDMI端子は非搭載。なお、1,920×1,920ドット/リフレッシュレート60Hzでの映像信号を入力するには、DisplayPort 1.1出力またはDualLink DVI出力に対応するビデオカードが不可欠となる。
映像入出力端子以外としては、USB 2.0アップストリームポート×1、USB 2.0ダウンストリームポート×2と、ステレオサウンド入力端子、ヘッドフォン出力端子が備わる。USB 2.0アップストリームポートは、USB 2.0 Hub機能を実現するためのもので、左側面のUSB 2.0ダウンストリームポートにUSB機器を接続し活用できる。ヘッドフォン出力もUSB 2.0ダウンストリームポート同様左側面に用意される。ただし、液晶パネル側面部よりやや奥まった部分にあるため、USB機器やヘッドフォンの抜き差しはやや面倒だ。
OSD
OSDの構成は、他のFlexScanシリーズとほぼ同等だ。スタンダードモニタシリーズということもあり、設定できる内容は必要最小限といった感じで、上位の製品に比べるとやや物足りなく感じる。それでも、色合いや明るさなど、通常よく利用する項目は網羅しており、大きな不満は感じない。
本体のボタンを利用したOSDの操作は、ボタンが横一列に並ぶこともあって、直感的な操作は難しいと感じる。ただEV2730Qは、Windows PC上からディスプレイを設定できる「ScreenManager Pro for LCD (DDC/CI)」に対応しており、そちらを利用すれば直感的な設定が可能となる。Windows PCを接続して利用するのであれば、必ずインストールしておきたいツールだ。ただし、ScreenManager Pro for LCD (DDC/CI)の利用は、PCとDVI-Dケーブルを利用して接続している場合に限る点には要注意だ。
画質
EV2730Qは、EIZOの液晶ディスプレイシリーズの中でスタンダードモニターシリーズに属する製品だ。広色域表示に対応する「ColorEdge」シリーズなどと比べると、発色はややおとなしいという印象で、あまり派手さは感じられない。それでも、赤は十分に鮮やかで、青や緑も深く、発色性能は十分に満足できるレベルだ。コントラストは1,000:1とIPSパネルとして標準的だが、黒はやや浮いているように見える。また、残像に関しては、TNパネル採用の液晶ディスプレイのようなクッキリさはないが、IPS液晶としては標準的で、大きな不満を感じないレベル。派手さはないものの、全体的には不満が少なく、幅広い用途に対応できる表示品質が実現されている。
EV2730Qでは、表示品質よりも、やはり正方形パネルを採用することによる利便性の高さの方が大きな注目点となる。例えば、DTP用途で利用する場合には、DTPソフトのメニューやツールを表示した状態でも、A4サイズの等倍表示が余裕で行なえる。また、動画編集では、上部にフルHD相当のプレビュー画面を表示した状態でも、下部に大きな空間が生まれ、タイムラインなどを表示して編集作業が行なえる。もちろん、複数のアプリを同時利用する場合でも、それぞれのアプリに大きな領域を確保でき、デュアルディスプレイ環境に匹敵する作業環境が構築可能だ。
ただし、画像や動画を表示する場合には、上下に大きな余白ができる。パネルの形状を考えると仕方のない部分だが、映像や画像を表示する場合の迫力という点では、ワイド液晶に劣ると言わざるを得ないだろう。
ところで、実際に使ってみると、一般的な液晶ディスプレイを利用する場合と比べて上下への視点移動が非常に大きく、使い始めはかなり違和感を感じた。眼球の上下移動だけでなく、頭をわずかに上下に動かしながら視点を移動するような感覚で、これまでの液晶ディスプレイでは感じられない感覚だ。また、同じデスクで一般的なワイド液晶を利用する場合と比べて、頭の位置を少し上にしないとなかなか上部が見にくいという印象で、椅子の高さを少し高くしたいとも感じる。PC Watchの某編集部員からは、背筋が伸びるので姿勢矯正に最適かも、という声もあったほどだ。
そして、もう1つ使い始めに強く感じたのが、正方形のパネルではあるが、縦長の長方形のように錯覚するという点。これは、横長の液晶を見慣れているからだと思うが、ちょっと面白い感覚だった。
ただし、これらは慣れてしまえばほぼ気にならなくなる。そればかりか、上下の表示領域の余裕による利便性の高さになれると、もはやワイド液晶には戻れないという印象が強くなっていく。もちろん、用途によって印象は変わると思うが、テキスト入力が中心の一般ビジネス用途、DTP用途、CAD用途などでは、非常に便利に活用できるはずだ。
実売価格は、129,000円前後と、かなり高価だ。広色域表示対応製品も購入できるレベルの価格なので、やや躊躇してしまう可能性もある。とは言え、用途によっては作業効率を大幅に高められ、非常に魅力的な存在となるだろう。画面サイズの大きさの割にデスク上の設置面積が少なく済む点も見逃せない部分。やや不得意な分野もあるため、万人にお勧めするのは難しい。まずはPC量販店など店頭の展示機を確認し、その上で選択するかどうかを判断してもらいたいが、文字入力が中心の作業であれば、間違いなく便利に活用できるはずだ。