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ナナオ「FORIS FX2301TV」
~倍速パネルと地デジチューナを搭載



FORIS FX2301TV
液晶サイズ23型
パネル方式TN方式
表示解像度1,920×1,080ドット
アスペクト比16:9
画素ピッチ0.266mm×0.266mm
表面処理ノングレア
バックライト方式冷陰極管
応答速度3ms(GTG)
コントラスト比標準1,000:1、ダイナミックコントラスト 2,000:1
視野角水平160度/垂直160度
輝度300cd/平方m
表示色約10億6,433万色中約1,677万色
走査周波数デジタル 水平:31.5kHz~67.5kHz
垂直:59~61Hz
アナログ 水平:31~81kHz
垂直:55~76Hz
チルト角度下5度、上20度
高さ調節なし
スイベルなし
ピボット機能なし
入力端子DVI-D(HDCP対応)×1
ミニD-Sub15ピン×1
HDMI×2
D端子(D5)×1
D端子(D5)・コンポジットビデオ共用(D端子優先)×1
ステレオミニジャック×2
ステレオピンジャック×2
地上デジタルアンテナ入力×1
出力端子ライン出力(ステレオミニジャック)×1
ヘッドホン出力×1
スピーカー2W+2W
VESAマウント対応(100mm×100mm)
電源内蔵
消費電力標準75W
付属品DVI-Dケーブル
ミニD-Sub15ピンケーブル
電源ケーブル
アンテナケーブル
リモコン
単3形乾電池×2
B-CASカード
VESAマウント取付用ネジ
本体サイズ547×275×445mm(幅×奥行き×高さ)
重量約9.1kg(スタンド含む)

 ナナオは、液晶TVシリーズ「FORIS」に属する「FORIS FX2301TV」を発売した。地上デジタルTVチューナを内蔵し、シリーズ的には液晶TVシリーズではあるが、全体的な仕様は液晶ディスプレイにかなり近く、PCやAV機器、ゲーム機などを接続して利用することを前提とした製品となっている。価格は、EIZO Direct直販で99,800円だ。

●本体デザイン

 本体デザインは、TVに特化したFORISシリーズのデザインが踏襲されており、ナナオの液晶ディスプレイシリーズとはやや異なる、独特な雰囲気となっている。特に、液晶パネル下のスピーカー部に鮮やかな赤のパネルがはめ込まれている点などは、液晶ディスプレイシリーズにはない大きな特徴だ。

 ただ、本製品は液晶TVとしてではなく、PCやAV機器を接続して利用する液晶ディスプレイとしての位置づけが強いこともあり、高さを低く抑えるなど、デスク上に置いて利用する場合の使い勝手もしっかり考慮されている。本体サイズは、547×275×445mm(幅×奥行き×高さ)と、23型ワイド液晶パネルを採用する一般的な液晶ディスプレイとほぼ同等。液晶パネル面のチルト角は、下5度から上20度の範囲で調節可能だが、高さ調節やスイベル機構は用意されておらず、このあたりは液晶TVに近い仕様となっている。

 液晶パネル右下には、電源ボタンや音量調節ボタン、チャンネルボタン、入力切換ボタンなどがある。ただし、これら操作ボタンは緊急用に近い位置付けのもので、基本的な操作は付属のリモコンを利用して行なうことになる。また、OSD操作用のボタンは本体には用意されておらず、すべてリモコンでの操作となる。

 本体下部には、2W+2Wのステレオスピーカーを搭載。内蔵地上デジタルTVチューナの音声はもちろん、HDMI入力や音声入力の音声が再生可能だ。スピーカー部のカバーは、標準では「フィーバーレッド」または「ワンダーブラック」の2色が選択できるが、オプションで「アクティブブルー」、「ディライトイエロー」、「ディアブラウン」と3色のパネルが用意されており、自由に取り替えて利用できる。

●液晶パネル

 1,920×1,080ドット表示対応の、23型ワイド液晶を搭載。パネルの方式はTN方式を採用。応答速度は中間色で3msと十分に高速。加えて、倍速表示機能にも対応しているため、動画再生時などの映像の残像やブレなどはほとんど感じない。視野角は、水平・垂直とも160度。TNパネルを採用していることもあり、上下や左右に視野角がずれると、表示画像の色合いの変化が感じられる。輝度は300cd/平方m、コントラストは標準1,000:1。コントラスト拡張時には2,000:1となる。

●接続端子

 映像入力端子は、ミニD-Sub15ピン×1、DVI-D(HDCP対応)×1、HDMI×2、D5対応のD端子×2、コンポジットビデオ×1を用意。ただし、コンポジットビデオはD端子との排他利用となるため、入力系統は全6系統となる。また、音声入力端子は、PC入力用のステレオミニジャック×2と、D端子およびコンポジットビデオに対応するAV入力用のステレオピンジャック×2を用意。さらに、音声ライン出力用のステレオピンジャック×1とヘッドホン出力も備える。ヘッドホン出力は本体前面左下に、その他の端子は本体背面に配置されている。

 映像入力端子数は多いが、付属のリモコンを利用して入力切り替えが行なえるため、入力切り替えの手間はかからない。

●OSD

 OSDは、ナナオの液晶ディスプレイシリーズでおなじみのアイコンを多用したものではなく、文字のみで構成されたメニューとなっている。ただ、見た目こそ大きく異なるものの、用意されている設定項目は十分に充実している。表示品質重視のプロ用途モデルには負けるが、一般の液晶ディスプレイシリーズとほぼ同等の調整が行なえると考えていい。

 OSDの操作は、本体に用意されている操作ボタンでは行なえず、付属のリモコンを利用して行なう。リモコンのカーソルボタンを利用して直感的に操作できるため、OSDの操作性はナナオの液晶ディスプレイシリーズよりも優れている。

●画質

 液晶パネルの表示品質は、TNパネルを採用している液晶ディスプレイとしては十分に優れている。上下や左右に視点を移動させると、やや色合いや明るさに変化が感じられるのは、TNパネルを採用していることもあり仕方ないが、発色は十分に鮮やかで、正面から見ている限りでは、十分に高品質だ。また、パネル表面がノングレア処理となっているため、外光の映り込みが全く気にならない点も嬉しい。ちなみに、液晶画面よりも低い位置から画面を見上げた場合でも、正常な色合いで見えるように画質を調節する「リラックスモード」も搭載。ごろ寝しながらTVを見る場合などに重宝するだろう。

 FX2301TVの最大の特徴となるのが、60Hzの入力映像を120Hzに増幅して表示する倍速表示機能だ。仕組みは、一般的な液晶TVなどに搭載されている倍速表示機能とほぼ同等で、前後のフレーム情報から中間のフレーム情報を自動生成し挿入することにより、フレーム数を2倍に引きあげるというもの。実際に倍速機能を利用した状態で動画を再生させてみると、残像感が大幅に低減されるとともに、横方向の動きなどが非常にスムーズとなり、動画表示品質が大きく向上することを確認した。特に、横に流れる字幕などは、非常にくっきりと見えるようになる。ただし、補完フレームを自動生成するという仕様のため、映像ソースによってはややぎこちなく感じる場合もある。特に、ゲーム映像やCGムービーなどは、倍速表示を切った方がいい場合が多いようだ。

 この倍速表示機能は、動作モードを細かく設定できる点も大きな特徴。映画など24フレームの映像に特化した「5-5/4-4」モードや、直前のフレームをそのまま表示することで残像感を低減する「遅延軽減」といったモードが用意されている。もちろん倍速表示機能を切ることも可能なので、映像によって使い分ければいいだろう。

 ところで、ゲームをプレイする場合には、さまざまな映像処理回路を通過することによる表示遅延が大きな問題となるが、FX2301TVには表示遅延を大幅に低減するスルーモードを搭載。ナナオは、既に表示遅延が1フレーム以下となる製品をいくつか発売済みだが、FX2301TVのスルーモードは表示遅延が0.5フレーム以下と、さらに低減されている。実際にゲーム機を接続して入力にシビアなゲームなどをプレイしてみたが、ボタン操作と映像の時間差をほとんど感じず、非常に快適なプレイが可能だった。ゲームプレイ向けの液晶ディスプレイとしてかなり魅力があると言っていいだろう。

 また、映像だけでなく音声にも特徴がある。それは、ドルビーデジタルおよびドルビープロロジックII対応のデコーダを搭載し、バーチャル5.1chサラウンド再生が標準で行なえるという点だ。HDMI端子に入力されたドルビーデジタル信号を5.1ch再生できるのはもちろん、2chステレオ入力音声も疑似サラウンド再生が可能。最近のゲームでは、多くが5.1chサラウンド再生に対応していることを考えると、この機能も非常に魅力的だ。ただし、バーチャル5.1Chサラウンド再生が行なえるのはヘッドホン出力のみとなっている点は少々残念。できれば、5.1chサウンド出力も用意してもらいたかった。

 FX2301TVは、液晶TVのFORISシリーズに属する製品ではあるが、倍速表示機能や表示遅延が0.5フレーム以下のスルーモード、バーチャル5.1Chサラウンド再生機能など、PCやAV機器、ゲーム機などを接続して利用する液晶ディスプレイとしても魅力的な機能が満載となっている。また、地上デジタルチューナを内蔵し7,000点のエコポイント対象となっている点も嬉しい部分だ。唯一の弱点と言えるのが、EIZO Direct直販で99,800円、市場価格でも約90,000円前後という価格だろう。また、デザイン面も独特で、この部分でもユーザーを選ぶと言ってもいいかもしれない。とはいえ、表示品質や機能面には申し分ないため、価格とデザインに納得できるなら、十分に買いの製品と言っていいだろう。

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(2010年 8月 5日)

[Text by 平澤 寿康]