■最新液晶ディスプレイ ピックアップ■
RDT232WM-Z | |
液晶サイズ | 23型 |
パネル方式 | TN方式 |
表示解像度 | 1,920×1,080ドット |
アスペクト比 | 16:9 |
画素ピッチ | 0.266mm×0.266mm |
表面処理 | グレア |
バックライト方式 | 冷陰極管 |
応答速度 | 3ms(中間色) |
コントラスト比 | 標準1,000:1/最大5,000:1 |
視野角 | 上下/左右とも160度 |
輝度 | 300cd/平方m |
表示色 | 1,677万色 |
走査周波数 | 水平:31.5kHz~82.3kHz 垂直:56~76Hz |
チルト角度 | 下5度/上20度 |
高さ調節 | ブロックネック3段(1段30mm) |
スイベル | なし |
ピボット機能 | なし |
入力端子 | DVI-D(HDCP対応)×1 ミニD-Sub15ピン×1 HDMI×2 D端子(D5)×1 ステレオミニジャック×1 ステレオピンジャック×1 |
出力端子 | ヘッドフォン出力×1 |
スピーカー | 3W+3W |
VESAマウント | 対応 |
電源 | 内蔵 |
消費電力 | 標準72W |
付属品 | DVI-Dケーブル ミニD-Sub15ピンケーブル サウンドケーブル 電源ケーブル ブロックネック×3 リモコン 単4形乾電池×2 ユーティリティディスク |
本体サイズ | 546×230×363~453mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約6.1kg(スタンド含む) |
三菱電機の「RDT232WM-Z」は、「Diamondcrysta Wide」シリーズの中で、マルチメディアモデルに属する最新製品。従来より搭載されている超解像技術「ギガクリア・エンジン」に加え、大型液晶TVで広く採用されている倍速補間技術「倍速クリアピクチャー」を、PC向け液晶ディスプレイとして始めて搭載。これにより、動画再生能力が大きく向上している。オープン価格で、実売価格は50,000円前後だ。
●本体デザイン本体デザインは、マルチメディアモデルに属するDiamondcrysta Wideシリーズの他のモデルとほぼ同じ。本体周囲は曲面が取り入れられており、親しみやすい印象を受ける。本体カラーはブラックで、前面のベゼル部のみ光沢処理が施され、背面やスタンドはつや消し処理となっている。前面から見ると、比較的高級感が感じられるが、スタンドや背面はボディ素材のプラスチックが強く感じられる点は従来モデル同様だ。
液晶面のチルト角は、下5度~上20度の範囲内で調節可能。高さ調節は、液晶本体と台座を接続するブロックネックの着脱によって行なう。ブロックネックは1個の高さが30mmで、3個付属しているので、最大90mmの高さまで4段階に調節可能。ただ、3個取り付けた場合には、少々ぐらつきが大きくなり不安を感じる。
スタンドには、スイベル機構やピボット機構は用意されていないが、後部を取り外すことで、本体背面を壁に密着させて利用できるようになっている。
電源やOSDの操作を行なうボタンは、本体下部中央に配置されている。正面から見えない位置にボタンが配置されており、ベゼル部にボタンの刻印があるものの基本的に手探りでの操作となるため、操作を行なうのはかなり面倒だ。とはいえ、電源のオン/オフやOSDの操作、入力切り替え、内蔵スピーカーの音量調節などは、全て付属のリモコンでできるため、本体のボタンは緊急用と考えていい。
●液晶パネル1,920×1,080ドット表示対応の、23型ワイド液晶を搭載。パネルはTN方式を採用。応答速度は、中間色で3msと十分に高速。視野角は上下/左右とも160度。TN方式パネルを採用していることもあり、画面を見る角度によって、色合いの変化が感じられる。ただ、安価な製品に比べると、色合いの変化は若干少ないようだ。バックライト輝度は300cd/平方m。パネル表面は光沢処理が施されている。
●接続端子映像入力端子は、ミニD-Sub15ピン×1系統、DVI-D(HDCP対応)×1系統、HDMI×2系統、D5対応のD端子×1系統、の計5系統を用意。また、音声入力端子は、PC入力用のステレオミニジャックと、D端子用のステレオピンジャックがそれぞれ1系統ずつ用意されている。音声出力端子はヘッドフォン出力のみで、ライン出力は用意されない。ミニD-Sub15ピンとDVI-D、PC用音声入力端子は本体背面に、HDMI入力とD端子、D端子用音声入力は左側面にそれぞれ配置されている。
入力は付属のリモコンを利用して直接切り替えられるため、複数のPCや映像機器を接続している場合でも、切り替えに手間はかからない。ピクチャーインピクチャー機能は、従来モデルではデジタル1系統とアナログ1系統の組み合わせでしか利用できなかったが、新たにDVI-DとHDMIの組み合わせでの表示にも対応した。例えば、PCをDVI-Dで接続し表示している場合でも、子画面にHDMIで接続した外部映像機器の映像を表示できるわけだ。もちろん、内蔵スピーカーの再生音を子画面に対応する音声入力の音に変更できるので、子画面でTVの映像を表示させておくといった活用法も問題なく行なえる。
●OSDOSDは、構成は従来モデルとほぼ同等で、プロのグラフィックス用途向け製品に比べると設定項目が簡略化されているが、一般ユーザーが利用する製品としては、十分に充実している。また、静止画モードと映像モードそれぞれにプリセットを備え、細かく設定を保存しておけるため、表示ソースに応じて簡単に表示設定を切り替えられる点も嬉しい。
OSDメニューの操作は、本体の操作ボタンを利用しても行なえるが、付属のリモコンによる操作が基本となっている。メニュー階層がやや深い部分もあるため、操作に戸惑う場面も少々あったが、リモコンのカーソルボタンを利用して操作できるため、基本的には操作はやりやすい。
●画質液晶パネルの表示品質は、TNパネルを採用している液晶ディスプレイとしてはかなり優れている。表面は光沢感の強いグレア処理となっており、発色は非常に鮮やかで、デジタルカメラで撮影した画像なども非常に美しく表示される。ただし、外光の映り込みは気になる。また、TNパネルの宿命である、見る角度による色合いの変化も感じられる。とはいえ、その割合いはそれほど大きくなく、TN液晶の中では実効的視野角は広い部類に入ると言っていいだろう。加えて、画面より下の位置から見上げるように画面を見た場合に、色合いの変化を抑えるように画質補正を行なう「ルックアップモード」も搭載。そのため、TNパネルであるということはそれほど気にする必要はない。
本製品の最大の特徴となるのが、走査周波数60Hzの入力信号を、内部で120Hzに増幅/補間することで、動画を表示させた場合の残像感を低減する「倍速クリアピクチャー」だ。この効果は、DVDやTV映像などの動画を表示させた場合に顕著に表れる。倍速クリアピクチャーをオンにすると、特に一定方向に動く映像で残像感が低減され、クリアに表示されるようになる。実際に動画を再生させてみると、ブレが消えて、細かな部分まではっきり見るようになり、流れる字幕や、カメラが高速に振られた場合でも残像をほとんど感じることがなくなる。
上に掲載している画像に、横に流れる文字を撮影したものがある。これは、左側が倍速クリアピクチャーがオン、右側が倍速クリアピクチャーがオフとなるデモモードを利用し、シャッタースピード1/60で撮影したものだ。この写真を見ると、倍速クリアピクチャーがオンの左側の方がぶれているように見えるが、これは120Hz表示の2フレーム分が写っているからで、実際の見え方は、倍速クリアピクチャーをオンにした方がくっきりと見える。
倍速クリアピクチャーの原理は、大型液晶TVと同じで、前後の映像フレーム情報から中間のフレーム映像を自動生成して追加し、入力画像の走査周波数を2倍に引きあげるというもの。これは、単純な横スクロールなどでは効果的なのだが、映像ソースによっては、自動生成画像が破綻し、映像が乱れてしまう場合もある。オフ、弱、強の3段階に設定できるので、実際に効果を確認しつつ利用した方がいいだろう。
なお、倍速クリアピクチャーを利用すると、表示遅延が非常に大きくなってしまう。家庭用ゲーム機を接続してゲームをプレイしてみたところ、オンにした状態では、ボタン入力がそれほどシビアではないゲームですら、快適なプレイは不可能であった。ただ、表示遅延を抑える「スルーモード」を利用すれば、超解像を含むギガクリア・エンジンを除いて、いくつかの機能がオフとなり、表示遅延が最小限に抑えられるため、ボタン入力がシビアなアクションゲームなども快適にプレイ可能だ。
【お詫びと訂正】初出時に、スルーモード有効時にすべての映像処理機能がオフになるとしておりましたが、ギガクリア・エンジンはオンのままです。お詫びして訂正させていただきます。
ちなみに、120Hzの映像信号の入力には対応していないため、NVIDIAの3D表示システム「3D Vision」も利用できない。この点は少々残念だ。
もう1つの特徴である、超解像技術の「ギガクリア・エンジン」は、基本的アルゴリズムは従来モデルと同じ。ただ、効果を10段階に調節できるよう設定面が強化されるとともに、Windowsのデスクトップ領域内の任意の場所にのみ超解像技術の効果をかけられる専用ソフト「ギガクリア・ウィンドウ」(Windows 7/Vistaのみ対応)が用意されたことで、より便利に活用できるようになった。特に、ギガクリア・ウィンドウを利用すれば、動画再生ウィンドウ内のみに超解像処理を施し、その他のテキスト表示ウィンドウなどは超解像処理を施さないという使い方ができるため、テキスト部分の表示が見づらくなるといったこともない。この機能強化は素直に歓迎できる。
RDT232WM-Zは、倍速クリアピクチャーの搭載によって、従来モデルと比較して動作再生品質が大幅に向上しており、現時点で動画再生用途の液晶ディスプレイとして、トップクラスの表示品質を備えた製品と言っていいだろう。静止画の表示品質は、TNパネルを採用していることもあり、IPSパネルなどを採用するモデルにはやや劣るものの、それでも十分に満足できるレベルであり、不満は少ない。ただ、液晶表面がグレア処理となっていることもあり、基本的には静止画や文字入力などの用途ではなく、動画再生を主目的とする用途に最適と言える。Web動画など、PCで動画を見る機会が多かったり、PCをTV代わりに利用する、家庭用ゲーム機など各種映像機器も同時に接続して利用したいと考えている人にオススメしたい。
(2010年 7月 7日)