森山和道の「ヒトと機械の境界面」
ソニーモバイル、ウェアラブルEXPOで「SmartWatch3」アプリを紹介
(2015/1/23 06:00)
2015年1月14日~16日の日程で、東京ビッグサイトにて「第一回ウェアラブルEXPO」が開催された。「ポスト・スマートフォン」と呼ばれて再注目されているウェアラブル業界だけあって、会場では小型のデバイスや素材などが出展されたブースがひしめきあい、そこに多くのメディアがカメラを抱えて押し寄せ、注目の的となっていた。
おなじみのメガネ型やリストバンド型、バッジ型のデバイス等のほかは、服に縫い込んだり、筐体全体をタッチセンサーにできる導電性の素材などが注目を浴びていたように感じた。「ウェアラブル」と言っても、そこで使われる技術には汎用性がある。着用以外のアプリケーションにも視野を広げておくべきだ。
その中でソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社(ソニーモバイル)は、発売中の「SmartWatch3」の対応アプリケーションを別室で報道関係者限定で公開していたので、レポートしておきたい。
SmartWatch3は、ウェラブル端末用のAndroidプラットフォーム「Android Wear」を搭載した腕時計型デバイスである。Android 4.3以上のスマートフォンと連携し、振動によるメールチェックや音声入力などが可能で、音楽再生やライフログ機能などがある。
今回出展されいてたアプリケーション例は6つ。ソニーモバイルが他社と連携して開発中のものだ。順番に紹介していこう。共通点は、加速度センサーによる腕の前後動作や手首回転情報を入力として使い、出力としてバイブレーションなどで返すといったところだ。
スマートフォンの鍵としてのスマートウォッチ
まず、ソニーモバイル自身によるアプリケーション例。「フリフリロックアプリ」は、SmartWatchを着用した腕をひねるだけでAndroidスマートフォンの画面ロックを外すというもの。ポイントはSmartWatchを着用している側でスマートフォンを持って腕を動かさないとロックが外れないというところ。端末同士をBluetoothでペアリングし、それぞれに内蔵された加速度センサー情報を両方使っているのだ。これによってスマートフォンの安全性を高めることができる。
スマートフォンの性能が高まるに連れて、できることもどんどん増えている。今後、必要性が高まりそうなアプリケーション例だ。
ゴルフスコア付けや親子の距離を縮めるのにも
ソニーコンピュータサイエンス研究所は、同所が主催しているオンライン算数大会「世界算数」と、SmartWatch3との連携例を作成していた。子供がタブレット等で算数の問題を解くと、その通知が親が着用しているAndoroid Wearに届くというもの。ボイスメッセージを送って励ましてあげることもできる。ちょっとした通知が来るだけでも、親子の距離が縮まるのではないかと考えているという。
楽天のゴルフ予約サイト「楽天GORA」と開発中なのは、ゴルフのスコアカウンターアプリ。スマートフォン版はすでにあるが、そのAndroid Wear対応版だ。腕時計型デバイスを使うことで、プレー中にもより簡単かつ気軽にスコアを入力できるという。どうせなら自動で入力できないものかと思ったが、まだまだそれは難しいそうだ。スコアデータは後でサイトで閲覧して振り返ることもできる。2月に提供開始する予定だという。
戦車ラジコンを音声や身振りで操作
ソニーモバイルとラジコンメーカーの京商が共同で開発しているのは、スマートフォンからBluetooth経由でコントロール可能な京商のラジコン戦車「ポケットアーマー i-driver」を、SmartWatchを使うことで身振りや音声でコントロールできるようにしようというもの。
SmartWatch3に搭載されている加速度センサーを使って、腕を振って戦車を前進後退、旋回、射撃といった動作を行なわせることができる。複数台の車両を同時に操ることもできる。
音声認識は英語にも対応している。中年世代が見ても、子供心がワクワクする、普通に楽しそうなアプリケーションだ。SmartWatchが十分に普及すれば、このようなアプリケーションはどんどん世の中に送り出されることになるのだろう。
ラジコンカーも実際の車データも
株式会社オフィスタンデムが開発中の「SmartWatch3用 RC Commander」は、京商が発売中の「iReceiver」を搭載したラジコンカーを、SmartWatch3を使って操作するアプリケーション。戦車のコントロールと同様に、腕の前後動作と手首回転動作を使って、ラジコンを操れる。
「iReceiver」は京商が2013年12月に発売した製品で、ラジコンレシーバーの代わりに搭載すれば、Wi-Fi(無線LAN)を使ってラジコンを操作できるようになる。これによってユーザーが持っているスマートフォンやタブレットからラジコンの操縦が可能になる。小型カメラユニットも接続可能で、オンボードカメラ映像をスマートフォンやタブレットにリアルタイムに送ることも可能だ。
Wi-Fiなので電波が届く範囲には限界があるが、ラジコン側にスマートフォンを搭載して携帯電話網を使うことで、遠隔地からも操作が可能になるという。
このほかオフィスタンデムはトヨタが提唱する「Vehicle Data Visualizer」に準拠した車両情報表示アプリ「SmartWatch3用 Vehicle Data Viewer」も開発している。「Vehicle Data Visualizer」を使えば、車のECUから「CAN-Gateway ECU」を経由して直接、車両情報をリアルタイムに取得して表示できる。これをSmartWatchと連携することで、例えばエンジンの回転数が設定した値を超えるとバイブレーションで伝えるといった用途が考えられるという。今後、「Vehicle Data Visualizer」で公開される車両の情報をさまざまな形で取得してカスタマイズ表示できるインターフェイスや機能を提案していくとしている。
ウェアラブルがどこまで向いているかどうかは別だが、車両走行データをリアルタイムに取得できるというのは実に面白い可能性を秘めていると思う。お茶の間にいながらにして、世界のトップドライバーによる走行データをそのまま得て、再生することもできるのだから。
全体を見て改めて、まだ腕時計型ならではのアプリケーションは本当に少ないと感じた。あくまで個人的意見だが、できればウェアラブル端末は、操作したくない。せっかく身に着けているのだから、自分自身の自然な動きから操作意図を読み取ってほしい。あるいは、従来のような積極的な意図の発露なしで、ユーザーに役に立つ何かをアウトプットしてくれるようなアプリケーションを開発してもらいたいのだ。高望みかもしれない。だが、新たなデバイスを身に着けるのであれば、これまでにはない利便性、あるいは楽しさを提供してくれるものであってもらいたい。