森山和道の「ヒトと機械の境界面」

災害対応ロボットと、人と一緒に働くロボットの共通性

〜日米災害対応ロボット共同研究カンファレンス・レポート

DARPA ロボティクス・チャレンジ

 2014年4月23日〜25日の日程でアメリカ大統領 バラク・フセイン・オバマ氏が国賓として来日した。4月24日にはお台場の日本科学未来館に立ち寄り、Googleに買収されて一気に知名度を上げたロボットベンチャー・株式会社SCHAFTの青い鳥脚型の2足2腕ロボット「S-ONE」と同社の創業者2人に対面。また、ホンダ「ASIMO」の挨拶とシュートを受けて、高校生や大学生たちと交流し、スピーチを行なった。

 スピーチはUstreamで中継され、アーカイブも閲覧できる。なおニュースで広く報じられた、ASIMOが蹴ったボールを受けとめるというのは、東工大の学生がその場で提案したものだったそうだ

【動画】ASIMOに対面するオバマ米国大統領

 その時東京都内の別の場所では、経済産業省の主催で「日米災害対応ロボット共同研究カンファレンス」が行なわれていた。アメリカ国防総省国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)で進められている、懸賞金付きロボコン形式の災害ロボット開発プロジェクト「DARPA Robotics Challenge(DRC)」。上述のSCHAFTのロボットが予選を1位通過したコンテストだ。これに日本が本格的に参画することを受けて日米の関係者を集めて開催されたもので、経済産業省 産業機械課は、集まった国内各社に研究支援内容を説明し、DRCへの参加を呼びかけた。

 カンファレンスでは、災害対応ロボットの研究開発が、広くロボット産業全体へもたらす波及効果についてもパネルディスカッションで議論された。つまり災害対応ロボットの技術には普遍性があり、生産現場での活用が注目を集めはじめている「人と一緒に働くロボット」の研究開発にも影響を与えるものだということだ。その後、5月6日にはOECD閣僚理事会で安倍内閣総理大臣が基調演説で「ロボットによる『新たな産業革命』を起こす」と講演を行なった。生産性を劇的に上げられるロボット活用のマスタープランを早急に作り、成長戦略に盛り込むという。

 5月21日には、NEDOを通じて公募を開始した。どうやら日本は、生まれつつある新たなロボット技術の重要性とアメリカに追い上げられていることに遅ればせながら本当に気がついたようだ。節目の1つだったカンファレンスの様子をレポートしておきたい。

【動画】オバマ米国大統領のスピーチ(2014年4月24日)

DARPAとは「技術的驚き」の防止を目的とした組織

 まず本題の前に、DRCを開催している「DARPA」という組織について説明しておきたい。DARPA=軍事研究だけを行なうところという短絡的な理解が広がっているように見えるからだ。DARPAの前身はARPAであり、後のインターネットの基盤となった「ARPAnet」を生んだ場所であるということはおそらく少なからぬ読者が御存知だと思うが、DARPAが生んだのはそれだけではない。カーナビそのほかで今や誰でもお世話になっている「GPS」や、アップルの「Siri」、そして軍事技術である「ステルス」技術などもDARPA発の技術である。

 「スプートニク・ショック」という言葉がある。1957年、ソ連による世界に先駆けた人工衛星の打ち上げ成功によってアメリカが受けたショックを指す言葉だ。DARPAが誕生したのは1958年で、DARPA自身による「Bridging The Gap Powered By Ideas」という文書によれば、そのミッションは「スプートニク・ショック」のような「技術的驚き」を防止することだと述べられている。今日ではミッションは技術的驚きを防止するだけではなく「敵に対して技術的驚きを作り出すこと」にまで広がっている、と文章は続く。つまり、アメリカが技術的に「あっ」と言わされるようなことがないように、常に優位に立ち続けるための技術開発を行なうのがDARPAだというわけだ。

 DARPAが支援を行なう対象範囲は狭い意味での軍事技術はもちろんだが、ただし、他の軍直轄の研究所が支援しているような直近の課題に対応するような課題には投資しない。一方軍事に関わっていなくても、より広範囲に、実現すると社会的な影響が大きいかもしれない将来技術までが対象とされている。特に、他の研究所が直接支援しないような技術、将来必要になる可能性が高い、だがハイリスクな技術研究に投資を行なうとされている。とにかくアメリカが技術的にもナンバーワンであることを目的としているわけだ。より詳しく知りたい方にはDARPAのサイトを直接のぞくか、JST研究開発戦略センター海外動向ユニットがまとめている「米国DARPA(国防高等研究計画局)の概要」というPDFの閲覧をおすすめしておく。

ロボティクス・チャレンジ

 DARPAによる研究開発支援プログラムで面白いのが「DARPAチャレンジ」である。懸賞金付きのコンテスト形式で行なわれる研究支援だ。無人自動車を走行させる「グランドチャレンジ」(2004年)、市街地を走行させる「アーバンチャレンジ」(2007年)が、いまGoogleそのほかで盛んに取り組まれている成果へと繋がった。そのほか、切り刻まれた文字を復元する「シュレッダーチャレンジ」(2011年)なども話題を呼んだ。これらの特徴は、非常に難しいと思われていて、まだできてない、でも、もしかするとできるかもしれない、くらいの技術チャレンジだということである。力量のある人たちを巧みに刺激して知恵を一気に集約し、民生技術へと転回することができるくらいのところまで持っていく。そのくらいのブレイクスルーを一気に引き起こす。プロジェクトのインセンティブ設計がうまいのだ。

 その「DARPAチャレンジ」の1つとして企画されたのが「ロボティクス・チャレンジ」だ。深刻な災害が発生した時、人間の代わりに初期対応できるロボットを開発するというプロジェクトである。DRCのウェブサイトに福島第一原発の地図が掲載されていることからも分かるとおり、企画背景の1つには2011年の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故がある。あのときにすみやかにロボットを投入してバルブを開けることができていれば、事情は変わったのではないかというわけだ。

 それを想定してロボットはデコボコの不整地を踏破して乗り物を操縦したり、障害物を除去したり、階段を上がったり、道具を使って壁を破ったり、バルブを回したりといった8つのタスクをこなさなければならない。なお、開発対象のロボットはいわゆる完全自律ではなく、人間とロボットが共同して、つまり遠隔操作と自律動作を組み合わせたシステムとして想定されている。ただし遠隔操作といってもロボットと操縦システムとの間の通信環境は劣悪で変動するものとされている。

DRCの概要(福島・国際研究産業都市構想(イノベーション・コースト)研究会の資料1から抜粋)
DRC予選の参加者(災害対応ロボットをめぐる状況についてから抜粋)

 既に多くの記事が出ているので詳細は省くが、シミュレーション部門、実機部門などでそれぞれチャレンジが2012年から行なわれ、2013年12月20日にフロリダ州ホームステッドのレース場で行なわれた予選において、日本の「脱東大」ベンチャーSCHAFTを中心として東京大学情報システム工学研究室のOBなどから構成された「TEAM SCHAFT」が自社開発のロボット「S-one」を使って、32点満点中27点を獲得して予選1位を記録した。「TEAM SCHAFT」がぶっちぎりで勝ち抜けるのではないかというのは、一部の下馬評では予想されていた。SCHAFTは予選直前にGoogleに買収されたことで一気に知名度が上がったが、少なくともロボット業界界隈では、それ以前から高評価を受けていた。

 なお、SCHAFTについてはIEEE Spectrumが「Who Is SCHAFT, the Robot Company Bought by Google and Winner of the DRC?」という記事で、良いレビューを書いている。Googleに買収されたあとのSCHAFTは一切取材を受け付けなくなっているので、既に公開されている情報から推測するしかない。彼らのロボットはいきなりポンと出来上がったものではないので、それまでの研究の系譜から、ある程度は推定できる。筆者もDRCの前に1度だけ限定された形で取材をさせてもらったが、IEEE Spectrumの推測は妥当なものだ。

【動画】SCHAFTがYouTubeで公開している動画。DRCの8つのタスクをこなす様子を早送りで

 ほかにもDRCにはボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)が開発したプラットフォームの「Atlas」や多くのロボットが登場した。事前に発表されていたビデオや写真ではなかなか期待できるのかなとも思われたのだが、実際の中継映像などを通して競技の様子を見る限り、全体が良くも悪くもロボコンの域を出ておらず、実用云々とはまだまだ遠いように見えた。多くのロボットが外界センサーとしてレーザーレンジファインダーを使っていたが、安定した点群データを得るのに時間がかかるのか、あるいは幾何計算に時間がかかるのか、どれもかなりゆっくりとしており、ロボコン観戦に馴れない取材者たちはとまどったようだ。ただ、無人走行車による「グランドチャレンジ」も最初は完走するチームがなかったものの、その翌年のチャレンジでは続々完走してしまったことを振り返ると、2014年12月の本戦までにどこまで技術が進展するかは楽しみである。

 DRCについては国内でも多くの記事が掲載された。あくまで私見だが一番まとまっていたのは、日本経済新聞が元旦に掲載した「災害ロボット熱戦 「ウッドストック」に見た夢と現実」という記事だったように感じた。

【動画】DRC予選の1コマ。TEAM SCHAFTによる階段登り

カンファレンス・レポート、日米共同研究のキックオフイベント

 さてこの「ロボティクスチャレンジ」だが、アメリカ国防総省による研究プログラムということで、日本の企業等が参加するのには少々ハードルが高かった。そこに経済産業省から、いわば参加のお墨付きを与えて公式にバックアップしようというのが今回のカンファレンスの趣旨だったわけだ。

 カンファレンスでは最初に「日米代表挨拶」として、日本側からは経済産業副大臣の赤羽一嘉氏が経緯を説明した。赤羽氏は、東日本大震災での「トモダチ作戦」を振り返り、日米連携の重要性と、災害対応ロボット研究の連携の必要性が高まり、経済産業省と米国防総省は日米災害対応ロボットの共同研究の実施に合意したと述べた。これは昨年(2013年)7月の両者による合意のことを指す(人道支援と災害復旧に関するロボットの日米共同研究実施に関する合意書に署名しました)。DRCへの日本参画は、この共同研究の第1歩として行なわれる。なお研究対象は汎用技術であり「武器輸出三原則」等に抵触するものではないとされている。また今回のカンファレンスは「日米共同研究のキックオフイベントである」と宣言された。

 赤羽氏は「東京電力福島第一原発廃炉作業は人類史上初の難事業。国内外の叡智と技術の結集が不可欠だ。廃炉を安全円滑に進めていくためにはロボット技術ほかの実証実験フィールドや研究開発を支える部材の試作そのほか、教育拠点などを整備していくことが必要だ」と続け、同時に福島第一原発廃炉は新産業の構築と雇用創出、地域再生、将来のロボット関連事業などにも繋がるものであり、関係省庁で6月を目処に提言をまとめると述べた。アメリカ・テキサスの災害ロボット開発フィールドであるディザスターシティの視察などを通して災害対応ロボットの標準化や研究関連モデルの構築の重要性を理解し、研究者と将来的な日米共同研究の可能性についても議論をしたという。

 さらに「日米災害対応ロボットの研究成果はひろく災害対応に寄与するだけではなく、医療、介護にも役立つものであり、社会をよい方向に一変させる可能性を持つ。ロボットは実証を重ねなければ完成させることはできない。DRCでは日本のロボットが予選一位通過したが米国ロボットも健闘した。お互いの切磋琢磨が重要。さらなる成果を生むことを期待している」と述べた。なお福島でのロボット開発拠点は「福島ロボットテストフィールド」と呼ばれている。詳細はこちらのPDF等に詳しい。

 続けてアメリカ合衆国 科学技術担当大統領補佐官 兼 ホワイトハウス科学技術政策局長 John Holdren氏が録画映像で登場した。Holdren氏は「日米は定期的に会合を持ち、日米科学技術協定のもとさまざまな取り組みを行なってきた。ロボット工学、自動化システムは大きな成果をあげてきている。ロボットの研究開発における協力がさらに進み画期的成果が出ることを期待している。DRCは各国のもっとも優秀な人を集めて、改善していこうという取り組みで日本の参加は不可欠。2015年の最終戦には日本のチームが参加する。さらに努力を傾注し、経済が強化されることを期待している」と述べた。

経済産業副大臣 赤羽一嘉氏
アメリカ合衆国 科学技術担当大統領補佐官 兼 ホワイトハウス科学技術政策局長 John Holdren氏

日本のロボット産業

経済産業省 製造産業局長 宮川正氏

 続けて基調講演が2本行なわれた。最初に「日本のロボット産業について」と題して日本のロボット産業と将来展望について基調講演を行なったのは経済産業省 製造産業局長の宮川正氏。日本のロボット技術の背景、現状、実際に使われている製造分野、サービス分野、日米共同研究への期待、先進国の共通課題である少子高齢化、若年労働者の不足といった背景について述べた。

 現在のロボット産業は製造業が中心だ。現在のところサービスロボット市場は小さく、導入には課題も少なくない。だが産業用ロボットにも次世代モデルが現れつつあり、人とロボットの協調による生産プロセスの革新がこれからの先進国での生産には重要になる。サービス分野では掃除ロボットや手術ロボットが登場している。日本でも海外製ロボットが高いシェアを占めている。手術ロボット「ダヴィンチ」は日本では40台導入されている。この分野では先行者利益が大きい。経済産業省でも力を入れている。日本が特に注力しているのは安全認証の確立で、つくばには安全認証のための検証施設「生活支援ロボット安全検証センター」が作られている(レポートは「ロボット介護機器の評価用設備等が公開」参照)。

 日本では特に介護施設の人手不足や負担軽減が課題になっており、そのためのロボット開発が進められている。特に移乗、移動、トイレ、見守り、入浴の各作業の支援技術が開発されている。介護用にマッスルスーツや、パナソニックによって車いすになるベッド「リショーネ」が開発されている。

 ロボットのもう1つの大きな分野はインフラ維持管理である。高度経済成長時に作られたインフラが寿命を迎えており、橋梁、ダム、高速道路などでロボットを使った効率的な維持管理が求められている。こちらは国土交通省が主に推進している。

 福島第一原発にも複数の災害対応ロボットが既に導入されている。iRobotのPackBot、千葉工大のクインス、コマツや日立建機による遠隔重機、東芝のロボットなどだ。このほか、三菱重工のマイスター、東芝のブラスト式除染ロボット、日立の配管検査ロボットなどが開発されて投入されつつある。宮川氏は最後に「今年中にモックアップ施設(模擬実証施設)を完成させる。適切な競争の機会としてDRC参加は非常に大きい。是非日本チームに参加してほしい」と語った。

新しい生産現場用ロボット
サービスロボット市場は先行者利益が大きい
日本は安全認証に力を入れている
インフラ・メンテナンス用ロボット
福島第一原発で使われているロボット

日米が共通問題に取り組むことで技術は前進する

リシンク・ロボティクス創業者 ロドニー・ブルックス氏

 次にリシンク・ロボティクス(Rethink Robotics)の創設者・CTOのロドニー・ブルックス(Rodney Brooks)氏が講演した。ブルックス氏は掃除ロボット「ルンバ」のアイロボット(iRobot)の創設者の1人で、元マサチューセッツ工科大学(MIT)コンピュータ科学・人工知能研究所所長。2012年にアイロボットを退社して、リシンクを創設。リシンクからは安価な双腕ロボット「バクスター(Baxter)」を販売している。バクスターは製造業向けの搬送ロボットだが、日本国内では今のところ日本バイナリーが研究者向けとして販売している

 ブルックス氏は、「災害対応ロボットはさまざまな面に影響を与える」と話を始めた。災害対応だけではなく原油掘削や海底資源探査などでも使えるからだ。また米国ではドローンのビジネス活用が話題になっており、空飛ぶロボットによる配達を行おうという会社も既に出て来ている。また「宇宙におけるロボットの役割は過小評価されている」と語り、スペースXの取り組みや国際宇宙ステーションでのロボット活用についても紹介した。

 人口動態の変化はすべての先進国経済に大きな影響を与える。製造物流の変化が起きようとしている。これまで先進国はいずれも安い人件費を求めてアジア各国を利用してきた。だがそれも行き着くところまでいった。だからより多くのロボットが製造において重要になるという。製造技術においてもデジタルツールが活用されており変化が起きつつある。それはあたかも蒸気機関を近くに置かなくてもよくなったときと似ているという。

 もう1つの大きなテーマは、人と協働するロボットだ。生産現場等で人とロボットが一緒に作業に取り込むケースが増えている。既にAmazonでは新しい物流センターでロボットと人が並んで作業をしている。ブルックス氏は現在のロボットに不足している技術として、1)手の器用さ、2)ロバストなコンピュータビジョン、3)移動技術の3つを挙げた。器用な手ができれば災害対応もより容易になる。人とロボットが隣あって作業するためには周囲の人が何をしているのか理解しないといけない。もちろん災害対応においても周囲で何が起きているのか理解するのは重要だ。どこに障害物があるのかないのか、対象物の位置方向の特定、分類を認識することも重要である。移動についてはアクチュエータをもっと改良していかなければならないという。

 そして「日米が協働でロボットに取り組むのは非常に重要」と続け、会場にいた井上博允 東大名誉教授による40年前のフォースコントロールに関する貢献を讃え、「日本とアメリカ、それぞれの強みを活かすことが重要だ」と述べた。強いていえば日本はメカニズムに強みがあり、インテリジェントな制御はアメリカに強みがあるとブルックス氏は見ているという。ただし、どちらについても「いずれの国も優れており、両国が共通の目標をもって取り組むことでさらに進展していくと思う」と続けた。

 今日のロボットは「ムーアの法則」に伴って計算能力は上昇し、多くのセンサーやパッケージが扱えるようになった。またロボットが自己の位置の推定と環境地図の作成を同時に行なう「SLAM」の問題を例に挙げて「多くの人が取り組んだ結果、ロボットは現実世界を理解できるようになった」と紹介。最近ではGoogleは「プロジェクトタンゴ」なる研究成果を発表し、スマートフォン1台でSLAMができるようになっている。「共通の問題」に取り組むことで、iRobot、Kiva、BlueFin、Roboticsなど、さまざまなサクセス・ストーリーが生まれていると見ているという。

 ブルックス氏自身のリシンクの双腕ロボット「バクスター」を使った取り組みも、SLAMのように、共通問題を研究プラットフォームとして提示したものだという。低コストのマニピュレーション・プラットフォームだ。これによって何千人もの研究者が取り組んでもらえるという。米国では高校ですら購入しているところがあり、安価なプラットフォームの普及によってロボットによる操作の研究が進展することが期待される、とブルックス氏は語った。

【動画】リシンクロボティクス「Baxter」

 また「日米両政府が強い信念を持っていることも重要だ」と続けた。今アメリカではロボットに注目が集まっている。GoogleやFacebookなどインターネット関連会社による買収が行なわれている。日本でもソフトバンクがアルデバランロボティクスに1億ドルを出資したと2012年にイギリスのフィナンシャル・タイムズから報じられており、他にもロボット企業への投資を続けているとされている。これらの動きから、既存の企業とは違う新しい展開が期待される。

 最後にブルックス氏は「共通の目標を設定することが重要だ」と再度強調した。ただし、研究者を実用的な領域へ誘導するといっても「研究者にああしろこうしろというのはうまくいかない」と言及した。「研究者にはエキサイティングな気持ちを失わないで取り組んでもらわなければならない」と語り「ロボットは非常に面白い時期にある。災害対応、高齢化問題などの課題がある。だが技術が前進すれば社会の問題を解決できるだろう」と述べて講演を締めくくった。

今後のロボットに必要な技術3つ
日米のロボット技術の特徴
今後に必要なもの

日米災害対応ロボット共同研究の概要

経済産業省 製造産業局 産業機械課 課長 須藤治氏

 次に「日米災害対応ロボット共同研究」の概要説明が経済産業省 製造産業局 産業機械課 課長の須藤治氏から行なわれた。前述のように日米は2013年7月に共同研究に合意。そのあと12月にDRCの予選が行なわれた。日本からもチームで視察に出向き、2014年に入ってからは2月に2回目のWGを行なったという。その結果、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じて公募を行なうことや、共同研究の中身としては、1)実際の開発支援、2)シミュレーション環境の開発、3)性能評価手法の開発の3つを行なっていくことになったと述べた。

 災害対応ロボットの開発においては、災害対応現場と研究開発の現場、それぞれにおいてニーズの特定やフィードバックを行なって実用化を計っていく。日本でも災害対応ロボットは開発されていたが、実証現場をもっと意識してつくってもよかったのではないかという反省があるという。そして開発において国際的競争を取り入れていく上で、DRCが適切だという判断のもと、DRCに参加することが可能なロボットに対して、開発費、輸送費、人件費のサポートを行なっていこうということになったと語った。

 指定された特定タスクにフォーカスした災害対応ロボットを開発した団体は、実際にDRCに参加したあと、競技参加をふまえた上でのフィードバックを行なっていくことになる。また須藤氏は、厳しい環境で開発された要素技術を他のロボット、すなわち生活支援、他の産業用ロボット等に横展開していくことも重要だと述べた。

 またこれまでのDRCの結果を見ると、実機での得点結果とバーチャルシミュレーションでの得点に相関があることから、シミュレーション上での開発を重視するとし、日本側で開発するシミュレーターと、米国で広く用いられている3次元ロボット・シミュレーターGazeboの互換性を向上させ、高精度のロボット開発を目指すという。また標準総合試験フィールドとDRCでの取り組みなどを総合的に勘案して、実際の災害対応に近いタスクを開発していくと述べた。日本側から提案しているのは山崩れ、土砂災害など急峻な地形での崩壊、木造家屋の倒壊などだという。起き得る災害の状況は日米で異なるが、タスクを共通化して、より幅広い地域で活用できるロボットが出来ることを期待するという。

 今後の予定としては、災害対応ロボットを開発してDRCに参加するだけでなく、国内でもシミュレーションの大会を行なうと述べた。ハードウェアとソフトウェアをひとまとめにして災害対応ロボットを作ることが重要で、災害対応ロボットを通じて開発された汎用技術が生活を変えることも期待しているという。5月21日には、NEDOを通じて公募を開始した

日米共同研究の経緯
DRC予選時の日本からの視察チーム
今後のスケジュール
ロボットの開発
シミュレーション環境
必要なタスク(性能評価手法)の見極め

「DARPAロボティクスチャレンジ」の今後

アメリカ国防総省DARPAマネージャー ギル・プラット氏。DRCプログラムマネージャー

 アメリカ国防総省DARPAマネージャーのギル・プラット(Gill Pratt)氏は、DARPAロボティクスチャレンジの概要説明を行なった。プラット氏はDRCのプログラムマネージャーである。プラット氏は日本のアニメ「鉄人28号」の米国版を子供の頃に見ていた、また、講演の途中で「私の上司の上司の上司の上司の上司、すなわち米国大統領」によるスピーチ中継が入るかもしれないとことわってから、講演を始めた。

 福島第一原発では最初にiRobotから送られたPackBotが今でも活躍しているが、最初の24時間に人が入って作業を行なって迅速にバルブを開けることができればせめて水素爆発は防げたのではないか、また同様のシチュエーションで速やかにロボットによる救助そのほかができれば被害を軽減することが期待される。そこでDARPAではそのような初期対応を行なえるロボットを開発しようということで、DRCを始めた。また軍事ロボットではないのかという疑問が上がっていることについて、アメリカでは国防総省は軍事的なものに限らずさまざまな研究をしているのだとも言及した。

 実際の災害対応ロボットは通信環境が良くないところで動かなければならない。そこでDRCでは敢えて通信環境を劣化させている(シミュレーションのVRCでもノイズをいれて劣化させている)。チームのなかには得意なタスクとそうでもないタスクがあるチームがあったが「実際の災害ではどういうタスクが必要になるか分からない。あらゆる課題に対応できなければならない」と語り、DRCは「災害対応ソリューションとしても重要だし、ロボットの啓蒙という面でも重要。イベントはライブでネットで中継したが4万人以上が視聴した」と述べた。当時の様子はYouTubeで公開されている

DRCの8つのタスク
通信環境は敢えて劣化させている
各チームのタスク別の得点結果
DRC予選でのオペレーターの様子

 なおDRCのロボットは、完全な遠隔操作ではない。コンソールを人間が見ている様子があったが、あれはあくまでロボットの動きを監視しているのであって、1つ1つの動きを指示しているわけではない、と強調した。状況認識とプランニング、そして指令を出す作業は人間が行なうが、計画した動きを実行するのはロボットであって、いわば半自律だ。テキサス州ディザスターシティで行なわれるファイナルトライアルではロボットとの通信環境をさらに劣化させる予定なので、ロボットにはより高次の認識技術が必要になるし、また人がプランニングする頻度も下げさせるという。もっとも高次の指示だけを人間がロボットに与えるようにする予定だ。もともと、ヒューマノイドのような多自由度のロボットの動作を人間が1つ1つ指示できるわけもない。

 予選トライアルでは、ハードウェアが壊れることはなかった。課題はソフトウェアの性能をいかに上げるかにある。予選ではロボットのすぐ横に人がついていたが、ファイナルではロボットは電源を内蔵して60分間は自律動作でき、倒れても人が介入せずに立ち上がれるスペックが必要要件になるという。プラット氏が何度も繰り返したのは通信環境の問題で、ファイナルでは数十秒通信ができないような間欠的な通信状況を基本にすると述べた。

 一方、「ムーアの法則」があるので将来の計算能力はより強力になると考えられる。そのためロボットには演算能力は「未来のコンピュータを持っているかのように大量に提供したい」とした。なお予選では認識にとにかく時間がかかってロボットは非常にスローに動いていたが、ファイナルでは速く動かないとスコアが上がらないようにする。8つのタスクをまとめて1時間以内にすませないといけないようにする予定だという。なお予選終了後も世界各国から続々とDRCへの参加希望が上がっていることから、ファイナルの開催を半年程度遅らせて、より多くのチームが参加できるようにしたい、と述べた。

 プラット氏は最後に上野動物園の猿山の梯子をスライドで示し、「このようにサルは岩山に非常に機敏に登れる。だがロボットはだいぶ苦労している。道のりはまだまだ長い」と締めくくった。ちなみにスライドによればプラット氏は吉祥寺のジブリ美術館にも訪問したようだ。

 なおプラット氏の言葉どおり、彼の講演途中でオバマ氏によるスピーチ中継が間に入って、会場もその様子を見た。その内容は前述のとおりだ。オバマ氏のスピーチの内容がどの程度、このカンファレンスを意識したものだったかは分からないが、まったく無関係だったわけではないだろう。

今後はロボットの自律性や高速化へのインセンティブを与える
岩山を軽々と登るサルのようなロボットは実現できるのか
途中でオバマ大統領のスピーチ中継が入った

パネルディスカッション DRC以後、ロボットの今後

国土交通省総合政策局 公共事業企画調整課 課長 山内正彦氏

 このあと休憩を挟んで日米双方のパネリストが並んでディスカッションが行なわれた。テーマは「ロボットの研究開発と産業化の最近の傾向について」。司会は経済産業省製造産業局産業機械課 課長補佐の今里和之氏。各パネリストからの問題提起を簡単にまとめておく。

 国土交通省総合政策局 公共事業企画調整課 課長の山内正彦氏は、ロボットユーザーの立場からメンテナンスロボットの重要性と期待を強調した。日本は災害大国でもある。土砂の崩落、人工物の落下など、人間が入ると2次災害の恐れがある現場ではロボット活用が期待される。シーズとニーズのマッチングが重要だが、これに対して経済産業省と国土交通省が2014-2015年度から実証実験を行なうスキームを組み、現在公募中だ。今年の秋10月くらいからロボットによる点検がどのくらいうまくいくか検証する予定である。国土交通省が現地実証、経済産業省が機器開発を担当する。

 具体的には、近接目視点検や打音点検、変形のチェック、水中での堆積物のチェックなどをロボットで行なわせる。災害対策としては状況の把握として土砂のサンプルを入手したり崩落状況を見に行くといった用途を想定している。また緊急復旧時に無人機を使うことも想定されている。なお点検が必要な数だが、トンネルだけで1万あるという。

社会資本インフラの老朽化に伴ってメンテナンスの必要性が急増
緊急復旧時に使われる遠隔建機
メンテナンスロボットと災害対応ロボット
川崎重工業株式会社 精密機械カンパニーロボットビジネスセンター長 橋本康彦氏

 川崎重工業株式会社 精密機械カンパニーロボットビジネスセンター長の橋本康彦氏は、産業用ロボットのアップデートの歴史を最初に振り返った。油圧ロボットとして始まった産業用ロボットは80年代に電動化され、その後、さまざまな用途に展開されてきた。その成長は用途によって牽引されてきた。ロボットはシステム的に産業に貢献してきた。例えば昨年11月に実施された「国際ロボット展2013」での川崎重工業ブースでは溶接ロボットがデモ展示されて多くの人の耳目を集めたが、それはわずか2日間でセットアップして動かすことができたという。シミュレーションやオフライン・ティーチングの技術が進んできたからこそできたと橋本氏は語った。

 同社は80年代には極限作業用ロボットや、原子力や「しんかい6500」のオペレーションシステムに関わり、その後、「HRP」ではヒューマノイドロボットをコントロールするシステムの開発に携わった。その技術は後に医療やバイオ研究にも転用されて使われている。細胞自動培養システムはiPS細胞の研究にも使われており、2013年4月には、シスメックスと一緒に医療用ロボットを扱うマーケティング会社「メディカロイド」という会社を設立している。そのマークはオレンジの球と葉っぱを組み合わせたものだが、人の命とロボットあるいは人の手を象徴しており、ロボットは命を扱う存在でなければならない、という思いが込められているという。

 安全性と信頼性も向上し続けており、信頼性の指標であるMTBF(平均故障間隔)は今は10万時間を超えている。サービスロボットを世に出すときにも重要な点だ。産業用ロボットの安全面については「ISO 10218-1」によって安全柵は不要になっているが、サービスロボットにおける人との共存・協調技術は「産業用ロボットをやってきた我々の使命でもある」と橋本氏は語った。そして「使われる場、評価される場とタッグを組んで、活かしていけるかたちで産業用ロボット、サービスロボットの進化に貢献していきたい」と述べた。

川崎重工業のロボット発展の歴史
新しいロボットはより高密度に配置できる
素早い設置が可能に
川崎重工業による極限環境ロボット
ヒューマノイドの操縦装置
株式会社メディカロイドを共同設立
東京大学名誉教授・カワダロボティクスCTO 井上博允氏

 東京大学名誉教授で現在は2013年4月に設立されたカワダロボティクス取締役技師長(CTO)も務める井上博允氏は、人と協業するロボット「Cobot(コボット)」という概念を紹介した。人と「co-roborateするロボット」という意味を込めた造語だ。これからのロボットにはコワーカーとしての役割とDRCのような二つの方向があるという。どちらもマニピュレーションの機能が重要だ。人口減少率などを考えるとこれからは人とロボットとのワークシェアが必要になる。これまで大量生産はオフショアの方向にあったが、遠からず厳しくなる。「雇用機会を守るためには人とロボットがワークシェアするシステムにチェンジしていかないといけない」と語った。

 ではなぜヒューマノイドなのか。ヒューマノイドは人と外見が単に似ているのではなく、人とジオメトリが似ていること、そしてファンクションが似ていること、全てが一体の中に入っていることが特徴だ。つまり現在は人が入って仕事しているところにそのまま入れれば仕事ができる。井上氏は川田の人と協業するロボット「NEXTAGE」がグローリー工場で働く様子を紹介して、将来の生産システムはこのように「ロボットとワークシェアする」方向へと変わっていくと述べた。

 DRCについては、井上氏はまず、DRC以前、2009年〜2010年頃に、2020年頃を目標とした「宇宙開発戦略本部 月探査懇談会」で構想があった「ヒト型ロボットによる月面探査」についてふれた。月面ヒューマノイド構想では通信遅れや、高放射線下での動作などに対応する必要がある。ロボット自体の耐性を上げるのではなくロボットに宇宙服のような装備を着用することで対応できるようにしたいと考えていたという。その後、2011年3月の東日本大震災を経て、ドイツ航空宇宙センター(DLR)で2011年11月22日にシンポジウム(Robotics Symposium 2011)があり、そこでシビアアクシデント状況でのロボット開発計画のプロポーザルを井上氏が提出した。それをベースにDAPRAのギル・プラット氏が現実の競技形式の研究プログラムに仕立てたという背景がある。

 福島第一原発事故を受けて開催されたDRCは「本来、日本がやらねばならなかった競技」だが、「非常にうまくプランされている」とコメント。「世界中でどこで何があっても24時間以内に駆けつける」ためには「アメリカ、ヨーロッパ、日本それぞれにベースがあれば、24時間以内にロボットを必要とされているサイトにまで運べる」と述べた。最後に「次のDRCは是非日本でやってほしい。その次はヨーロッパで」と締めくくった。

ヒューマノイド2つの方向性
ヒューマノイドは人間と同じジオメトリを持つ
グローリーの埼玉工場で人と並んで働くNEXTAGE
月面ヒューマノイド構想(2009年)
DLRで開催されたシンポジウムでの井上教授による提案(2011年)
その後、DRCとしてDARPAが実現(2012年)
【動画】Robotics Symposium 2011での井上氏の講演。直接関連する話は18分くらいから
ホワイトハウス科学技術政策局 技術・イノベーション部ロボット・サイバーフィジカルシステム担当次長 Richard Voyles氏

 ホワイトハウス科学技術政策局 技術・イノベーション部ロボット・サイバーフィジカルシステム担当次長のRichard Voyles氏は、アメリカではロボットにおいて非常に楽観的な状況で、さまざまなステイクホルダーが動いていると語った。ベンチャーキャピタルだけでなく議員や政府の指導者たちもロボットを支持しており、大きなチャンスが広がった革命的な状況にあるという。

 直前の井上氏による講演の「ロボットが人と一緒に働く(co-roborate)」概念についてはアメリカでも非常に重要だと考えているとコメント。支援ロボットは製造、農業、災害対応などさまざまな課題に対応できると考えているという。そのためには人の意図の理解やインテリジェントな材料、クラウドロボティクスとリアルタイムビッグデータなどが重要だと述べた。またこれからは全世界的に人口密度が都市で高まっているが、いかにローカルで生産してコストを減らすかが重要だと指摘。イノベーションコアというプログラムを推進し、ロボット開発を支援するという。

米国ではロボットにおいて大きなチャンスが拡大中
諸分野に応用が広がっている
ボイル氏によるロボット10の重要ポイント
バレットテクノロジー創設者・CEO Bill Townsend氏

 軽量だが可搬重量の大きいロボットハンドや、高速動作・低摩擦・低騒音のアームなどを製品化しているバレットテクノロジー(Barrett Technology)の創設者・CEOのBillTownsend氏は、現在のロボットは「まだ世界経済の0.01%しか占めてない」と指摘した。そして「企業はよくロボットの話をするが、それほどでもない」と続けた。つまり、ロボットの応用には、まだまだ開拓の余地があるということだ。

 ロボットがさまざまなアプリケーションで使われるようになれば、経済の5%程度を占めることができるのではないかと考えられるという。また毎年25%成長していくとすれば、5%に達するのには25年間かかることになる。つまりロボットは、これから劇的な成長を見込める分野だと語った。

バレットテクノロジーのロボット
現状のロボットは経済の0.01%しか占めてないが5%程までは成長できるのではないかという
MITコンピュータ科学・人工知能研究所 教授 Seth Teller氏

 画像認識技術の研究者であるMITコンピュータ科学・人工知能研究所 教授のSethTeller氏は、MITのDRCチームのリーダーとして、DARPAチャレンジで学んだことについて語った。テラー氏は「完璧を目指してはいけない」という。「人と一緒に動かすということになると完璧さはあきらめないといけない」。もう1つ重要なことは「しつこくやりぬく」ことだという。重要なのは自律性ではなく有用性であり、「人と機械が一緒に働く」ことだ。そのためには人がやる部分と機械がやる部分とを分割することが必要だ。そして問題を高次で理解する能力が必要になる。低次の判断はロボットがする、高次の判断は人間がする。

 またトレーニングも重要だと述べた。人とロボットの違いが大きいと多くのトレーニングが必要になる。例えば、タクシーに乗り込んで命令するだけなら訓練はいらない。戦闘機は大変だ。システムに人が多く関わると訓練がいる。シンプルなヒューマン・マシーン・インターフェースを作らなければならない。人がロボットを扱う場合は、ユーザーはロボットの目を通して世界を見ることになる。例えば、ユーザーがロボットに対して「蜂蜜を取って来てくれ」というシチュエーションを想定すると、ロボットは蜂蜜が何かは知らない。だからユーザーが助ける。ロボットが行き詰まってしまうと、人が「あれだ」と指図をする。これはモノだけでなく操作にも必要な考え方だという。そうすることで、ユーザーはロボットを家電と同じように扱えるようになるとテラー氏は述べた。

 さらにロボットに対しても他の家電をどう扱うか教えてやる必要があり、ロボットはユーザーに対して思考や習慣を学んでいき、ユーザーは徐々にロボットを信頼するようになると述べた。将来はユーザーはソファに寝そべっていて、ときどきユーザーに助けを求めてくる、そうしたら助けてやるといったかたちになるのではないかと語った。

テラー氏がDRCから学んだこと
ロボット実用化にはインターフェイスが重要

 この後、日米が協力してロボットを開発していくために何が重要か、どう進めていくべきか、課題などが議論された。パネリストからは日米はそれぞれ国土の事情が違うが何のためにやるのか、その哲学を共有することが重要だといった話や、解決するべき課題やインセンティブの設計が重要だといった話が出た。

 会場にはヒューマノイドの研究者たちはもちろんだが、それ以外のロボット研究者、企業関係者たちの姿が多数見られた。今後、日米で災害対応ロボットについて議論が行なわれ、それぞれ開発されることになるだろうが、一番の課題は運用面かもしれない。またあのような事故が起きないように、運用についても多くの議論が積み重ねられているようだが、どんなかたちをゴールにするのか、実際のところはコンセンサスを得るのも難しそうだ。しかしながら今後の日本のみならず世界において必要な技術である。期待しよう。

パネルディスカッションの様子
会場の様子。ロボット関係者たちで埋め尽くされていた