シャープ「COCOROBO RX-V100」 ~非フローリングの猫屋敷でCOCOROBOは実用的か |
品名 | COCOROBO RX-V100 | |
購入価格 | 78,000円 | |
購入日 | 2012年08月31日 | |
使用期間 | 約1カ月 |
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。 |
読んで字のごとく、2台ある掃除機の片方が壊れた。元々が、中古というかMoving Sale(引越し業者が処分扱いで引き取ったものを安く分けてもらった)で入手したもので、10年以上前なので、たぶん発売から軽く15年は超えているだろうという代物だ。ということで、残りの掃除機で、居間と仕事場の両方を往復させていたわけだが、さすがに面倒というか、「もう1台買ったほうが良くね?」という話になった。
ご存知の通り、筆者の仕事場は猫の巣窟と化しているので、この点ではサイクロン式が一番適当なのだが、結構高価な上に騒音がかなり激しいのが問題。そう悩んでいた時に神原サリー氏のロボット掃除機「COCOROBO RX-V100」のレビュー(その1、その2、その3)を読んで、「ひょっとしてこれならウチの仕事場でもいけるのでは?」という気になった。
少々の段差は気にしないで乗り越えること、細かい毛(特に猫の毛)をかき集める能力が高いこと、あと購入前に家電量販店で動作を確認したところ、意外に動作音が静かだったことから、これなら実用に耐えるのではという印象を持ったからだ。ただ、筆者の畳の上にカーペット敷いた部屋では実力が出ない可能性もあり、これは賭けであった。結論から言えば賭けには勝ったと思うが、これは後述する。また、スマートフォンとの連携機能も、意外に実用的だった。
ネックなのは価格である。Amazonで購入した価格は78,000円。同じCOCOROBOでも下位のRX-V80は6万円を切っているし、東芝の競合製品である「スマーボVC-RB100」は5万円を切り、上位機種の「VC-RB8000」でも7万円を切っている。iRobotの「ルンバ」は上位機種でもやはり6万円を切り、初期の「ルンバ530」なら3万円を切る。もっといえば1万円を切っている製品もある中で、8万円弱はいかにも高価である。ただ家電の場合、こういう場所でケチると碌なことがないというのも身にしみており、この際だしということで最上位機種を選んだ(この原稿である程度元が取れるだろう、という打算もあったのはここだけの話である)。
●掃除能力さて、まずとりあえず充電と初期設定を行なってから、オートで走らせて見た。COCOROBOを購入直前の部屋の中は概ねこんな感じである(写真01)。汚いというのは承知している。抜け毛、食い散らかした猫草、トイレ砂、などが満遍なく散らばっているわけだが、部屋を綺麗に掃除しても大体3~4日でこの状態に逆戻りである。そして毎日掃除をするほどマメでもないので、COCOROBOにご活躍いただこう、というわけだ。
最初はこんな具合にそこらじゅうでぶつかって止まりまくっており(写真02)、連続稼動は10分と続かず、人手の介入が必要だった。だが、部屋を完璧に整頓しておくのは無理なので、とりあえず走らせておいて、どこかで止まったらら、その原因を排除するという形で対応したところ、最初の1日でほぼ障害は排除され、60分のノンストップ動作も可能になった。逆に言えば最初の1日はあきらめてCOCOROBOについて廻って片付けや対処をするのは必須と言えよう。
肝心の清掃能力はというと、掃除前(写真03)と掃除後(写真04)でお分かりの通り、もう大満足のレベルに達している。先に、元々掃除機が2台あったと書いたが、壊れてない方もMoving Sale品で、もうだいぶくたびれていることもあって、これで1回掃除した程度ではここまで綺麗にはならないのだ。
【写真03】茶色っぽいのはほとんどが猫の抜け毛。長いのは人間の髪の毛 | 【写真04】写真03とほぼ同じ場所を、COCOROBOで掃除後に。さすがにシミまではどうにもならないものの、毛に関しては恐ろしくよく取れる。 |
騒音は、手元で計測したところ、最大で71.2dBA(写真05、06)だが、平均的にはもう少し低めだ(動画01)。大雑把な体感で言えばファミレスや喫茶店内といったところで、普通の掃除機に比べるとかなり静かだ。ちなみに仕事部屋は4畳半の奥に6畳間があり、筆者は普段こちらで仕事をしているが、4畳半でCOCOROBOが動いてても「あ、動いてるな」という程度でほとんど気にならない。むしろ、何かしらで引っかかると「あ、止まった」とわかる程度で、便利な位だ。さすがに深夜の稼動はやや気が引けるが、昼間は全く騒音を気にせずに稼動させられる。
【写真05】COCOROBO稼動前の室内騒音は概ねこんなところ。ちなみに環境省による一般環境騒音の目安はこんな感じ | 【写真06】騒音計の至近にCOCOROBOがいた状態でピークがこの程度 |
【動画01】4畳半の部屋の端で騒音測定 |
ごみの管理も比較的容易だ。初回はティッシュなどを挟まずにそのまま稼動させた結果、約30分でダストボックスが満杯になった(写真07、08)。もちろんこんなになるのは仕事場が汚いからという理由に尽きるのだが、COCOROBOの吸収能力が高いことも寄与している。写真09は知人宅での様子で、毎日掃除をされているきれいな部屋にも関わらず、COCOROBOをかけるとがっつりゴミを収穫できる。
【写真07】この状態で、そろそろダストボックス満杯の警告が出始める | 【写真08】ダストボックスの中身。猫の毛がたっぷり収穫できている | 【写真09】ここに居る猫は雉虎+白柄ということもあり、ややグレーめいた色に |
と、メリットを並べた都合、デメリットも書いておこう。まず隅に関してはあまり掃除能力は高くない(写真10、11)。湿ってるものや、長いもの(写真12)も拾いにくいようだ(動画02)。また、壁などにはちゃんと超音波センサーが働くが、背の低いものや細いものには、かなり煩雑にぶつかり、その際の騒音も少なくない(動画03、04)。
【写真10】さすがにこういう隅までは掃除しきれないようだ | 【写真11】こういう草の吐き戻しも結構苦手。角すぎてうまく回転ブラシでキャッチできない事と、吐いた直後のぬれた状態では回転ブラシで巻き取りが難しいらしい | 【写真12】こちらは部屋の比較的中央の吐き戻し。簡単かと思いきや、意外にキャッチできない。10回ほど行き戻りつつ、やっと除去できた |
【動画02】ご覧の通り一発では取れない |
【動画03】PCには結構勢い良くぶつかる。ただ、そのあとドライフードと猫草の容器は綺麗によけているので、このあたりは相性なのかも |
【動画04】微妙にCOCOROBOより幅の狭いスチールメッシュの棚だと、さすがの超音波センサーでもお手上げのようだ |
それから、段差の踏破能力はそれなりにあるのだが、これが災いしてか「なだらかに傾斜しているもの」に引っかかると、ほぼ100%の確率でE300エラーを吐いて止まるのもちょっと面倒。ただ、これに関しては、適切なカバーをつけると回避できた(動画05、06)ので致命的とはいえない。
【動画05】扇風機の台座に乗り上げると、その直後になぜかE300エラー。誤解のないように言うと、何かを噛みこんだわけではない |
【動画06】扇風機の台座の周囲をダンボールで囲ってみた。こうすると乗り上げずにあきらめてくれる。ただ今ははめただけで、扇風機を移動すると外れてしまうので、このあたりはもう少し検討の余地あり |
ところで8月末にCOCOROBOが来たものの、9月9日から9月20日まで筆者はアメリカ出張が入っており、この間遊ばしておくのももったいないということで、筆者と同じようにロボット掃除機導入を考慮していた猫つながりの友人宅にCOCOROBOを預けてみた。こちらはご夫婦そろって声楽家というお宅で、居間はスタジオ兼用ということで結構広く、完璧なフローリングという構成である(写真13)。
ただ、ソファー下にはラグが敷いてある(写真14)し、居間と繋がる台所にもマットが敷いてある(写真15)。スタジオ兼用ということであまり家具の類はないのだが、食卓やその椅子、ピアノの足、柱、ソファーなどにCOCOROBOががんがんぶつかる(そのぶつかる音が結構響く)、お部屋がスタジオ構造なので騒音が響く、ラグが見事に絡みつく(写真16)といった状況から、結局COCOROBOを掛ける際にはこんな具合(写真17)に色々なものを上げてから、という対策が必要だったそうである。
掃除能力そのものは問題ないそうだが、この絡みつき防止はラグの材質をどうにかするしかない。またラグやマットは(フローリングゆえ)床にカーペット用ピンで留める訳にもいかないから、手でどけるしかない。もちろん普通の掃除機でも同じであるが、普通の掃除機ならどのみち人間が使うから、どけるのはそう手間ではない。しかし、ロボット掃除機に先回りしてラグやマットをどけて廻るのは、本末転倒な気がする。また筆者宅ではあまり問題にならないが、友人宅の場合家具や楽器などへの傷がちょっと気になる感じである。傷が付かないように、COCOROBOの周囲にゴムなどを張り付けるといった工夫をしたほうが良い感じだ。
●猫との親和性
【写真18】猫虐待写真(?)。全力で逃げる気満々。あと表面が滑りやすいのもあまりお気に召さなかった模様 |
個人的にはルンバに始まるロボット掃除機がはやった理由は、猫との親和性ではないかという気もする。実際YouTubeで「ルンバ猫」と検索すると、そういう動画が山ほど出てくる。ウチではどうだったかというと、ごらんの始末(写真18)。少なくとも、乗っかろうというやつは1人も居なかった(笑)。
ただ興味がないかといえばそういうわけでもなく。スタッフ1号は、それなりに興味はあるようで、最初だけ遠巻きに見物しに来た(動画07)。ビビリのスタッフ2号は、近づいてきた瞬間に逃亡(動画08)。スタッフ見習い1号(推定生後5カ月)は、びびりんぼうだが好奇心も旺盛とあって、接近してくると逃亡(動画09~11)するものの、適切な間合いがあるとか(動画12~14)、静かになった(動画15)りするとすかさず観察しにくる。もっと時間を掛けると慣れてくれる可能性は高そうだ。
こうした傾向はウチだけではなく、友人宅の猫でも同じようで(動画16)、特に近づいてきた際の反応はちょっと劇的であった(写真19~24)。
全体としては、概して猫の反応は悪くなかったと思う。以前の掃除機の場合、スイッチを入れた瞬間に、全員隣の部屋やエレクターの一番上の段とかに避難してしまい、ある程度の距離をもって見守るということはなかった。騒音の絶対値そのものがやや下がっているのと、動きは唐突といえば唐突だが、速度そのものは割りと遅めで、いきなり進路変更をするのではなく、移動→停止→回転→停止→移動というシーケンスを踏むので猫としても「いつでも逃げられる」と判断しているのかもしれない。とはいえ、1カ月位で「ルンバ猫」ならぬ「COCOROBO猫」を撮影するのは無理であった。
【動画16】友人宅の猫の様子 |
【写真19】 | 【写真20】 | 【写真21】 |
【写真22】 | 【写真23】 | 【写真24】 |
●スマートフォン連携
スマートフォン連携機能は神原氏のこちらの記事に詳しいので、詳細は割愛するが、スマートフォンでCOCOROBOを操作したり、内蔵カメラで写真を撮ることができる。我が家の場合、Wi-Fiとの接続はマニュアルで行なったのだが、こんな設定画面(写真25)で設定した値が、USBメモリにWiFiManualData.txtというファイル(写真26)で書き込まれる。これなら手作業でテキストを打ったほうが早い感じではある。
カメラの感度はそれほど高くないようで、それを補うために撮影中はフラッシュが点灯するのだが、それでも暗い場所では画像は真っ暗になる(写真27)。リモコン操作に関しては左右の動きの回転制御が恐ろしく難しかった。「ちょっと左」とか言って一瞬左ボタンを押してもほとんど動かず、「あれ?」と思って長押しすると180度近く回転してしまう。おまけに、映像と実際の回転動作が同期していない(タイムラグがあり、しばらくたってからいきなり画面が更新される)のも操作しにくい一因である。ただ筆者の使い方で言うと、自動モードで掃除させておき、その様子を画面で表示させて放置しておくのが一番便利だった。音以外に画面でちゃんと掃除してる様が映し出されるのはわかりやすいし、たまに写真28みたいな写真が取れるのも面白い。
【写真25】このソフトはシャープのCOCOROBOのWi-Fi設定方法ページでマニュアル接続を選べば入手できる。スマートフォン用アプリはCOCOROBO SQUAREで入手できる | 【写真26】PSKのパスワードが平文で記載されてるのはちょっとどうかと思う |
【写真27】フラッシュといってもLED光源のライトなので、やはり暗い部屋ではかなり難しい | 【写真28】操作がうまくできなくてもたもたしていると、興味をもったスタッフ2号がカメラのまん前に登場。うるさくしなければ、興味津々らしい |
難点としては、例えば紐などを巻き込んで止まってしまった場合、エラーをリセットするついでにWi-Fiとのペアリングまで切れてしまうことがあった。この場合、毎回設定ボタン長押し→設定で10番を選択→さらに設定でCを選択→ペアリング実施をしないと復活しない(なぜかこれをしなくてもペアリングが維持されてる場合もあって、原因は今のところ良く分からない)。また、おさんぽモードで自動モードを使って映像だけ飛ばしていると、不意にリンクが切れてもう一度おさんぽモードの選択からはじめないといけない場合もあった。このあたりはもう少し改善してほしいところだ。幸いCOCOROBOはファームウェアのアップデート機能があるので、今後の対応に期待したい。
●その他その他、気が付いたことを。神原氏のこちらの記事では「音声認識による会話でなごむ毎日」とあるが、COCOROBOが喋るのを聞いていると申し訳ないが個人的には殴りたくなった。筆者だけではなくうちの奥様や友人からも異口同音に同じような反応が返ってきた。正直言って、アニメ声というか、妙にあまったるい声は、そうしたものが嫌いな筆者にはかなり耐え難い。
ということで、速攻で音量を0にしたのだが、それでも設定の時には自動的に発声されるのがいかんともしがたい。筆者は猫と会話は普通にするが、猫は媚びない(飯を出せというときに媚びた声をだすこともあるが、通常は無視していると脅し声に切り替わり、ついで実力行使にでる)。そもそも家族や猫とのコミュニケーションが普通にあるのに、わざわざCOCOROBOとまでコミュニケーションしたいとは思わない。説明書を見ると、がんばって実装したのだろうなとは思うが、筆者宅ではココロエンジンをオフにさせていただいた。
また、構造的にクライアントはスマートフォンだけでなくPCも可能なはずなので、出来ればPC用も欲しい所だ。
最後にもう1つ懸念を。1カ月使ってみたところ、予想外にサイドブラシの磨耗が進んでいた。交換用サイドブラシが1組付いているが、磨耗品だけに予備も欲しい。ところが、Amazonを初めとする通販ショップ系ではさっぱり見かけない。家電量販店などでは注文できるのだと思うが、もう少し入手性を良くしてほしいところだ。ちなみに価格はマニュアルによれば1個1,050円(つまり1組で2,100円)で、そう安いものでもない。ランニングコストにはこのブラシの分も加味しないといけない。筆者はこんなもんかと納得できるが、このあたりは人によると思うので、もし購入を考えておられる方がいたらご注意のほどを。
ということで文句も書いたが、概ねCOCOROBOには満足している。もちろんCOCOROBO「だけ」で部屋の掃除が完璧というのはありえず、隅っことか奥まった場所などの掃除には従来型掃除機が必要だが、逆にそうした使い分けが可能という言い方も出来る。
掃除能力はかなり高く、この点での不満は無い。平均的に部屋を綺麗に保つためには、効果的な製品だと思う。また副次的な作用として、COCOROBOが引っかかるようなものを床に置かなくなり、結果として整理整頓に繋がるのも予想外のメリットと言える。
(2012年 10月 10日)
[Text by 大原 雄介]