大原雄介の特別コラム

「ネコと共存する環境でも耐えるPC」を作る(後編)




●HDDの冷却強化

 猫対策PCの連載も今回で最後となる。ここまでの経緯については「前編」と「中編」をお読みいただきたい。

 さて、HDD冷却の仕組みである。これはもう簡単、シャドウベイにファンを搭載し、HDDは3.5インチベイに移動するだけである。ファンはちょっと悩んだが、結局70mm径のものを利用した(写真54)。取り付けだが、まずドライブベイの裏面に取り付け穴と、もともと空いていた穴を繋ぐような穴(写真55)を空け、後はドリルとハンドニブラ、ヤスリで穴を広げて吸気口を作成(写真56)、ファンを取り付けた(写真57、58)。

【写真54】もともとはLGA775のCPUクーラー向けらしい。22dBの低騒音に惹かれて決定。新宿のヨドバシカメラで1,780円 【写真55】上下左右の端にあるのがファンの取り付け穴。やはり不要な雑誌をドライブベイで挟み込む形で固定した 【写真56】穴の形がいびつなのはご愛嬌。80mm径ファンだとこれでは開口部が露骨に不足するので、もう少し全体に大きな穴をあける必要がある
【写真57】薄型ファンなので、かなりゆとりがある。最初はファンをドライブベイの下に配し、シャドウベイを使えるようにする案も考えたが、この場合ドライブベイとドライブの間隔が狭すぎ、下から風を当ててもそれを逃がす経路が確保できなそうなので、こういった形に落ち着いた 【写真58】ドライブベイ底面から。もう少し開口部を大きくとっても良かったかもしれない

●隙間塞ぎ

 最後がこちらである。テープを使って全部張ってもいいが、面積が広いともう少し効率的な方法が好ましい。そこでプラ板(写真59)を購入して加工することにした。まず間違って空けた右側面はこんな感じで紙両面テープを使って素直に張り付け(写真60)。底面のパンチングホールも、やはり同じサイズにプラ板を切って貼り付けた(写真61)。

【写真59】昔懐かしいタミヤのプラ板。いつの間にか立派なパッケージになっていた。0.4mm厚のB4サイズ4枚で630円(東急ハンズ新宿店)。もう少し厚いものもあったが、力が掛かるわけではないのでこのあたりが加工しやすそうだ 【写真60】本当はノイズを考えるとアルミ板でも貼り付けるほうがいいのだが、その場合貼り付けた板ともともとのケースシャーシの間を電気的に導通させないと意味が無い。ちょっと考えたが今回は見送り。いや穴を開けてネジ留めすれば済む話なのだが 【写真61】ここも両面テープではなく接着剤を使ったほうが確実だし、美観を考えるとこの裏側に張ったほうが好ましい。気になる方はチャレンジしていただきたい

 一方のフロントパネル(写真62)だが、こちらは先のすきまテープを活用する方向に切り替えた。底面の大きなスリットはプラ板を張ったが(写真63)、この状態でもフロントパネルとシャーシの間に細かな隙間がある。そこでフレーム側にすきまテープを張り巡らし、隙間を防ぐ形にした(写真64)。

 ドライブベイとのすきまも写真65のように完全にカバーすることで、こちらからの吸い込みも防止した。またフロントパネルのコネクタ部についても、カットテープ(写真66)を張り重ねる(写真67)事で埋めてある。ケースカバーについても、こんな具合に内側をすきまテープできちんと囲う事で隙間からの流入を防ぐようにした。

【写真62】ちなみにフロントパネルの取り外しにはトルクスドライバーが必要 【写真63】ここもプラ板+両面テープ 【写真64】これは実はまだ途中。この後、フロントコネクタ部の周囲に更にすきまテープを張った
【写真65】ただこれはさすがにスポンジの量が多すぎて、ケースに収まらない。最終的にカッターナイフでスポンジの高さを概ね半分程度に切り込んだらやっと収まるようになった 【写真66】上で使った緑のテープの白色版。別にこれでなくてもいいのだが、接着剤がべとつかないということで採用。DIYショップなどで普通に入手可能 【写真67】これでもマイク/イヤフォンジャックの中から多少は入るのだろうが、これを防ぐにはジャックそのものを塞ぐしかない。まぁそのうちカバーでも考えることにしようと思う

 さて隙間はこれでいいとして、もう1つ作業が残っている。それは中編写真18のコンデンサの冷却。色々考えたのだが、こんなガイドを作り(写真69)、両面テープを使って電源の下にこんな具合に固定した(写真70)。さて、このコンデンサの冷却のために、40mmのファンを用意(写真71)、これを住友スリーエムの超強力両面テープで貼り付けた(写真72)。電源の底面、ケースカバー、マザーボードと今取り付けたガイドで簡単なエアトンネルが構成されるので、そこにこのファンで風を送り込む事でコンデンサへの冷却風を確保する、という仕組みだ。

【写真68】ここで重要なのは、ガイドレール部は直接フレームと接触する(間にスポンジを挟まない)ようにすること。これを怠るとケースカバーがシールドの役を果たさなくなり、ノイズがたっぷり出るようになってしまう 【写真69】プラ板の途中に切り込みを入れ、両側からビニールテープを貼って補強してある
【写真70】これは別に熱シールドというわけではなく、単なる風のトンネル作成。コンデンサ類は全部プラ板の向こうになる 【写真71】本体を除くと一番高価だった40mm径のファン。新宿のヨドバシカメラで3,980円。4,300rpmという回転数にちょっと恐怖したが、稼動音は本当に静かだった 【写真72】これを両面テープで留めているのが唯一気になる部分。ホットボンドあたりで固めてもよいのだが、今度はファンが劣化したときに取り外しが大変になる。もう少しうまいアイディアを考えているところだ

 さて、テストである。ここまでの構成で先ほど同様に耐久ベンチマークを掛けた結果は、やはり室温26度、稼働時間1日の時点で

CPU 52度/GPU 62度/HDD 45度

であった。グラフィックカードのすぐそばに大穴を空けたからGPU温度が多少下がったのは良いとして、ファンをつけてもさっぱりHDD温度が下がらないとか、CPU温度(正確にはSystem温度)が更に上がった事はちょっと問題であろう。

●改造編その2:冷却能力強化

 もっともこれは半ば予想された話ではある。開口部そのものの面積は同等程度に確保したとは言え、GPUで熱せられた空気を吹き込んでいるわけだから、どうしてもケース内温度は上がる方向に行く。で、対策も実は考え付いていて、それは排気能力の強化である。もうとにかく排気を抜くというのが大前提である。そのためには排気ファンを追加するのが得策なわけだが、ケース内部にはこれ以上ファンを入れる場所が無い。そこで当然外付けとなる。要するに中編写真6のラジエータ部の後ろに、更にファンを取り付けて強制的に排気しようというわけだ。

 実際、ケース裏面には手頃な位置におあつらえ向きの穴が用意されている(写真73)。

 そこで手頃なファン用の電源コードを用意し(写真74)、ホットボンドで取り付けた(写真75)。ファンは92mm径の2,000rpmのものを用意し(写真76)、これにファンガード(写真77)と防振ゴム(写真78)を組み合わせた(写真79)。もっとも防振ゴムに関しては、この時点では問題なさそうだったのだが、実際に取り付けると締め付けられてフィンと干渉してしまい、最終的には放棄することになった。

 さて、問題は取り付け方法だ。中編写真6でラジエータの周囲の4つのネジを外し、そこにファンをネジ留めすることになるわけだが、寸法はぴったり一致していたがネジが合わない。もともと使われていたのは(PCには多いのだが)インチネジ(UNIFY)のNo.6-32という奴である。直径が約3.5mm、ネジの山数が32山/インチという規格だが、これに対応していて、しかも長さが35mmなんてネジはどこにも無い。一番近いのは4mmのミリネジで、これはどんなDIYショップでも簡単に手に入る(写真80)が、これをねじり込むのは不可能だ。

【写真73】多分S/PDIF入出力か何かでの用途を想定したものではないかと思う。上の穴はLEDを埋め込むつもりだったのだろう 【写真74】この形だと穴より大きいので、一度電源ケーブルを切断してコネクタを通し、その後で切断したケーブルを半田付けしなおす手間がかかった。カバーなしのタイプを探したほうがよいだろう 【写真75】Inの方にしなかったのは、こちらだとその下の拡張スロットのネジと位置的に干渉するため
【写真76】これも悩んだのだが、25dbの割に42.29CFMと送風量が大きかったので決断。新宿のヨドバシカメラで2,580円 【写真77】これも実際に運用するといらないかもしれないが、とりあえず用意。新宿のヨドバシカメラで244円 【写真78】四隅はともかく、その途中が細すぎ、ネジを締めこんでゆくと簡単に変形してしまい、フィンとぶつかってしまうようだ。なので、内部を削ると逆効果であり、むしろ幅を太くする必要があるため、結局放棄。新宿のヨドバシカメラで260円
【写真79】この時点ではネジの頭が5mm程度しか出ていないが、実際は防振ゴムが圧縮されたりするため、もう少し締め込みができ、用途として十分だった 【写真80】東急ハンズ新宿店で確か100円だったが、同じものをケイヨーD2とか島忠でも見かけたから、多分普通に入手できると思う。素材がステンレスなのは単なる自己満足

 で、ネジを受ける部分(写真81)を見ると、割とちゃんと作ってある。これだけしっかりしていれば、タップでネジを切りなおせば簡単だ(写真82)。実際5分強で作業は終了し、特に問題もなく4mmネジが使えるようになった(写真83)。

【写真81】ラジエータカバー部の端が雌ネジになっており、ここで受ける形。安いケースだと、アルミ板に穴を開けてタップを切っただけ(この場合、直ぐにネジが嘗める)だったりするが、このあたりの作りははさすがにまともだ 【写真82】「どこのご家庭にもある」タップ。4mmのタップの刃とハンドル、あわせて2,000円位で入手できるとは思う。もっとも、どうせなら何種類かのタップの刃とハンドルがセットになったものが3,000円〜4,000円で売ってたりするので、これを選ぶのも一案だ。こうした安いタップで鉄を切ったりするとあっという間にダメになったりするが、普通のアルミを相手にしている分には大丈夫 【写真83】4つとも均等にタップが切れているか確認が必要

 そんなわけで、背面に排気ファンを追加した状態での性能は……ということで、再び実験してみた結果は

室温 26度/CPU 51度/GPU 59度/HDD 43度

といったところ。微妙に温度が下がっては居るが、効果があるとは言いにくい。

 次なるトライは、ファンの2段重ねである。タンデムファンという形式で、流速そのものは増えないのだが、トルクが増すために確実に排気を引き抜けるようになる。ネジを4mm径×35mmのものから、4mm径×60mmのもの(写真84)に替え、防振ゴムも自作し(写真85)、同じファンを2つ重ねて搭載してみた(写真86)。

【写真84】さら小ネジになってるのは、これしか60mmのものが在庫が無かったため。もっともファンガードの取り付けにはむしろさら小ネジの方が適当かもしれない。東急ハンズ新宿店で、これも確か100円 【写真85】1mm厚のゴムシート(東急ハンズ新宿店で315円)を適当な大きさに切っただけ。少し幅を広めに取った 【写真86】ファンの隙間から漏れないように、先の写真66のテープを細く切って3重に巻いてある。これにより、確実に排気を引き抜けるという次第

 この効果はかなり大きく、やはり耐久テストをしてみると

室温 26度/CPU 47度/GPU 48度/HDD 39度

まで温度が落ちた。ここまで落ちると、だいぶ許容範囲である。

 ただ、ここで気になるのは室温26度ですらこの結果なこと。ケースそのものも暖かいし、ファンの排気もさることながら、電源部の排気がかなり熱い。ケースを開けると、電源がかなり発熱している。そこで、ファンから一番遠いコンデンサと電源部に温度センサーを貼り付け、こちらの温度を確認すると共に、消費電力も測定してみた。結果は表1に示す通りである。

 意外にコンデンサは常時40度程度で安定しており、ファンをつけた威力があったということだ。しかしながら問題は電源で、特に200W近い消費電力の場合、電源がそのまま50度以上の発熱をしており、これが大きな問題であることが容易に想像される。道理で電源からの排気が熱いわけである。

【表1】テスト結果
 室温
(度)
消費電力
(W)
CPU
(度)
GPU
(度)
HDD
(度)
電源
(度)
コンデンサ
(度)
待機時28994249414040.7
TimeLeap Bench28140-17643624243.639.9
GoGoBench2620548454051.239.7
WMV再生26107-11238453736.237.2
全部26210-21747483955.938.6

 このまま常用するのはかなり危険な感じがするので、CPUを当初の想定どおりPentium Dual-Core E2160に変えたらどうなるか、を試したのが表2である。表2ではなぜかCPUが2項目あるが、これはEVERESTの仕様である(写真88)。待機時はともかく稼動時の消費電力が半減しており、いかにNetburstの消費電力が大きいかがわかるというものだが、それはともかく電源の温度が高くても41度で収まっており、結果内部の温度もぐんと下がっている。実際、排気温度も明らかに下がっており、長時間運用しても安心できるレベルだ。

【表2】Pentium Dual-Core E2160換装後のテスト結果
 室温
(度)
消費電力
(W)
CPU
(度)
CPU
(度)
GPU
(度)
HDD
(度)
電源
(度)
コンデンサ
(度)
待機時28743729+33473836.737.7
TimeLeap Bench28106-1123942+44674039.539.0
GoGoBench281024047+48493941.038.9
WMV再生2875-893835+37483938.338.5
全部28102-1054047+48513941.039.0

【写真87】電源部へのセンサーは写真左上、コンデンサへのセンサーは手前のものである 【写真88】中編写真12の画面と比較してもらうと、表記が変わっているのがわかる。恐らく最初のCPUというのがSystem温度、コア#1/#2が、CPUコアの温度であろう

 ついでにビデオカードを抜いたらどうなるか、を試したのが表3だ。CPUコアこそ負荷に応じて多少上下するが、あとはきわめて安定している。さすがに3D性能がそれなりなので、ゲームをするのにやはりビデオカードを追加したほうが良さそうではあるが、それでも表2の結果を見る限り安心して使えそうだ。

【表3】ビデオカード取り外し時のテスト結果
 室温
(度)
消費電力
(W)
CPU
(度)
GPU
(度)
HDD
(度)
電源
(度)
コンデンサ
(度)
待機時28563625+31373538.3
TimeLeap Bench2871-843842+443838.438.6
GoGoBench28843843+453838.638.7
WMV再生2860-653728+323836.638.4
全部28883842+443838.738.7

●最後に

 「ところで温度はともかく、本当にこれで埃が取れるのか?」という疑問は当然ある。筆者宅でも1週間以上マシンを動かしているのだが、撮影やら改造やらで煩雑に開け閉めしてるのが悪いのか、たいして埃が付かない。

 そこで、他のマシンやら扇風機やらにこびり付いた埃をかき集めてフィルタ部になすりつけ(写真89)、この状態でエアを噴いて細かい埃を強制的にフィルタ内部に送り込んでみた。結果、中のフィルタは一瞬で茶色くなったが(写真90)、茶色いのは手前だけで、2枚重ねとなった裏側は白いままだった(写真91)。2段重ねのフィルタの効果は確かにあるようで、とりあえず一安心である。

 で、猫にはどうか? というと、天板のちょっとすべる感触があんまりお好みではないらしい(写真92)。もっとも騒音に関しては気にならないようであるが(写真93)。

【写真89】この状態でエアを2分ほど噴いてみたところ、細かい埃は全部マシン内に吸い込まれ、残った埃はガムテープなどで簡単に除去できた 【写真90】ちょっとわかりにくいが、一気に茶色くなっている。面白いのは手前(写真右側)よりも奥(写真右側)の方が濃い目になってることで、やはり排気口に近いほうで多く吸い込まれる事がわかる
【写真91】ほとんどの埃が1枚目で完全にシャットアウトされており、2枚目には一切汚れなしという結果だった。とはいえ、分離して再度使う気にはなれないが 【写真92】乗っけてみてもすぐ降りてしまう。座布団でも重ねれば座るかもしれないが、それはあまりに本末転倒 【写真93】このまま暫くなごんでいたところを見ると、スタッフ3号が気に入らないような騒音は出してないようだ。もっとも騒音だらけの筆者の仕事場に常駐してる奴だから、あんまり基準にはならないのだが

 今後はHDDをまともなものに交換して、長期利用を始める予定だ。そこでまた何か発見などあったらレポートしてみたいと思う。

 それにしても、このシステムはShuttleのXPCシリーズだから出来たというところで、タワーケース類に応用するためにはもう一捻り、二捻り必要な感じはする。最近のケースはフロントパネルの背後にドライブベイが並ぶから、フィルタを噛ますためにはフロントパネルを切断して、そこにフィルタを噛ますという作業になりそうだし、他にもあちこちから吸気するケースが多いから、こうしたところをどうやってカバーするかは熟考を要しそうだ。機会があったらやってみたい気はするが、まずこうした作業に適したケースが見つかるかどうか、が問題な気はする。いいケース、ないものだろうか?

□関連記事
【9月3日】【大原】「ネコと共存する環境でも耐えるPC」を作る(中編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0903/nekopc02.htm
【8月28日】【大原】「ネコと共存する環境でも耐えるPC」を作る(前編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0828/nekopc01.htm

(2007年9月5日)

[Reported by 大原雄介]


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