●基本的な考え方 ネコと共存するためのPCを作る、という連載の2回目である。前回途中となった、埃(ホコリ)対策をどうするか、というところから始めよう。 最近のケースの場合、とにかく冷却能力を上げるべく、あちこちに開口部を設け、後は排気ファンでひたすら中の空気を引くというアプローチが目立つ。そのいい例がPentium 4/D向けに用意されたパッシブダクトであろう。CPUクーラーの真上に当たる位置に大きなダクトを設け、ここから外気を直接吸い込む事で冷却能力を上げようという話だが、当然これはCPUクーラーを素早く埃で目詰まりさせることにも役立つ事になる。
ではどうするか? 開口部に個別にフィルタを付ける、というのはそれなりに効果があるが、「それなり」の効果しかない。写真1はウチのファイルサーバである。5インチベイに3.5インチHDDを最大3台搭載できるというマウンタを2台使っているが、ここのカバーを外して試しに汎用のエアフィルタを取り付けたものだ。 ところがこの方式だと、開口部がほぼファンの直径に等しいので、あまり目の細かいフィルタを取り付けると空気流量が非常に減ってしまう。結果、それなりに通気性の良いフィルタを組み合わせる事になり、細かい埃はこれを通過してしまう。実際ファイルサーバー、これで「多少は」埃が減ったものの、完璧にはまだ遠い。 もう1つ問題なのは、掃除が必要なこと。仕事場の場合、フィルタ洗浄後1週間程度で写真1の状態になる。従って頻繁に掃除する……ということになるが、フロントパネル裏側とか側面、底面などのスリットにフィルタを取り付けると、そのたびにマシンを止めてケースの分解になってしまい、これはあまりに面倒である。もっと手軽にまとめて掃除できるほうが好ましい。 これに関して、ちょっと我が家のWebサーバーでトライアルをしてみた。今年(2007年)4月にWebサーバーの電源が死んでしまい、ケースごと交換したのだが、その際に開口部は1カ所を除いて全てテーピングで密閉し(写真2、3)、かつ開口部には簡単なフィルタを取り付けてみたのだ。結果はどうか? というと、写真2にわかるとおり埃が1カ所でまとめて取りきれるようになった。ただ、それでもフィルタの目はやや荒すぎるようで、中を見ると細かい埃は入ってきている(写真4)。しかし、4カ月連続運転してこの程度ならかなり状況は良いと言える。
もっともこの結果から、もう一段細かいフィルタが必要なのは明白だし、そうなるともう少しフィルタの面積を増やさないと今度は通気性に影響が出そうだ。また、1つのフィルタだけで対処するのは、やはりちょっと難しい感じを受ける。やはり荒いフィルタと細かいフィルタの2段構えとすることにした。 ・大きな埃は荒いフィルターで排除。こちらはフィルター前面を簡単に掃除できる事が望ましい 以上のような構想だ。 ●ベースマシン さて、ではベースマシンをどうするか、である。秋葉原のショップとかメーカーの通販などでケースを色々探してみたのだが、ウチの卓袱台の下に収まりそうなサイズで、加工に適したものは遂に見つからなかった。構想段階ではソルダムなどは結構いいかな? と思っていた。このシリーズに搭載されたR-I/Eシステムで、間にフィルタを挟めば問題が全部解決するかも……と考えたわけだ。が、調べてみると後側面吸気→前面導入の経路が非常に狭く、経路の中に後付でフィルタなどを取り付けるのは非常に困難(というか、日曜工作のレベルでは不可能)である。吸気口の外側にフィルタを付ける、というアイデアはあるが、これをやると寝かしてケースを設置できなくなる。ケース自体も横置きを考慮してないから、今回の用途には難しい。 で、困ったときにキューブに走るのは筆者の悪い癖なのかもしれないが、今回もまたもやShuttleのキューブベアボーンである。ただ、既に2機種AMDが続いているので、今回はIntelを使ってみる事にした(もっともこのレベルでAMDかIntelかは割とどうでもいい話なのだが)。選択したのは「SD30G2」である(写真5、6)。チップセットはIntel 945GC+ICH7というもので最新ではないし、Core 2 Quadには未対応である。このあたりが気になる人は同じShuttleの「SD39P」みたいなハイエンドもあるのだが、居間のマシンにCore 2 Quadは要らないし、何より値段が安かった(秋葉原のT-ZONEで23,800円。おまけにCPUを一緒に購入すると更に6%割引)ということで、素直にこちらを選んだ。CPUはPentium Dual-Core E2160(本当はE2140で良かったのだが品切れだった)が12,054円の3%割引であった(写真7)。
さてこのケースの場合、CPUクーラーはラジエータ形状になっており、排気ファンでまとめて冷却する方式である(写真8、9、10)。このためにCPUの上が比較的広く利用できる他、排気を1カ所でまとめて抜きやすいというメリットがある。加えてこの方式だと、吸気口の位置が割と自由に選びやすいのも非常にありがたい。
ただし、ドライブベイにはちょっと注意が必要だ(写真11)。一応3.5インチのシャドウベイの下側に通気口は用意されているが、どれほど効果があるものか。これはちょっと対策が必要な感じだ。
さて、改造に先立って、まずは無改造の状態でのパフォーマンスをちょっと確認しておくことにした。もっともパフォーマンスといっても、CPU性能がどうこうという話ではなく、ケースの冷却能力である。我が家では最終的にはPentium Dual-Core E2160+そこそこのビデオカード(まだ決めていないが、現状Pentium M 1.6GHz+Radeon 9200 SEで、ゲームをするのに3D性能がちょっとだけプアーといったところなので、Radeon HD 2400クラスかGeForce 8400クラスで十分だろう)で行く事になるが、これだとそもそもの発熱が少ないから、冷却性能が十分かどうかわかりにくい。そこで、CPUに(手持ちで余ってた)Pentium4 670(TDP 115W)を、ビデオカードにはXFXのPV-T73K-UAL3(GeForce 7600 GS DDR2 256MB)を突っ込んで試してみることにした。ベンチマークは ・FrontWing TimeLeap Boot Benchを無限ループ(3D負荷用) を同時に動かすという環境で、システム温度をLavalys EVEREST Ultimate Editionを使って記録する事にした。なぜEVERESTを使ったかというと、ShuttleのWebサイトから入手できるXPCtoolsを使うと ・ログを取っていると30分以内に落ちる といった問題があったからだ。ただEVERESTのCPUの温度は、CPUそのものというよりはSystem Temperatureのようで(写真14)、なのでこの分は考慮に入れておかないとまずそうだ。 さて、室温を26度にした上で上の環境で24時間運転した結果の温度は CPU 46度/GPU 68度/HDD 48度 となった。まぁこんなにフル稼働させることはありえないとはいえ、ちょっと全般的に温度が高めである。特にHDDの温度はHDDLifeで警告しまくられる(写真15)ほどで、もう少しなんとかしたほうが良さそうだ。 ●改造編その1:フィルタの取り付け さて、それではまずフィルタの取り付けである。基本方針としては (1) 正面から見て左側面を大きく開けて、ここにフィルタを取り付ける というあたりだ。まず(1)だが、側面を見ると、左はこんな具合(写真16)にビデオカードがむき出しになるので、ここに外気を導入するのは重要だからだ。一方右側面はこんな具合であり(写真17)、通気口を塞いでしまってもそれほど大きな影響はなさそうだ。ただ、電源部の下に設けられたマザーボード上の電力供給用コンデンサに一切風が当たらなくなりそうなのは、ちょっと一考の余地がある(写真18)。 (2)については、上面/側面はシンプルだが、裏面にかなり多くの開口部が設けられている(写真19)。これは塞いでしまわないと、そこから埃が入り込みそうだ。フロントパネルの内側(写真20、21)はかなり開口部が多く、ここを全部塞ぐのは正直骨が折れそうである。これの対策は何かしら考える必要があるだろう。最後に(3)については、もう素直にHDD冷却用ファンを追加することにした。 そんなわけで方針も決まったので、加工である。
●ケース外板加工 まずはフィルタ穴の加工である。 まずマスキングをして、間に不要な雑誌を詰め込んで台を構成(写真22)。ついで穴あけ位置にポンチを打ち(写真23)、3mmφで穴あけ→6.5mmφで穴を広げる(写真24)→ニッパで穴と穴を切り取り、取り外し(写真25)→大雑把に仕上げ(写真26)という手順だ。筆者の場合、ここまでやってから実機に組み込み(写真27)、穴の位置が左右逆だった事に気が付いて30分程やさぐれてから、もう一度反対側に同じ作業を繰り返した(写真28)関係で、所要時間は2時間ほど要したが、間違えなければ1時間未満で終わる作業だ。
次はフィルタ取り付け部だ。材料は100円ショップで売ってたベーコン用保存パック(写真29)。これを薄く2枚に下ろす(写真30)。これを接着剤(写真31)を使い、先ほどの開口部に貼り付けた(写真32)。ただ後で見たら何カ所か接着剤がくっついていない部分があったので、シーラントを使い(写真33)、蓋の内側をコーキングした(写真34)。
一方蓋(写真35)であるが、邪魔な部分をカットし(写真36)、真ん中をくり貫いた(写真37)。以上で、内側のフィルタ取り付け部は完成である。
で、これに組み合わせるフィルタはこちら(写真38)。水切りネットのタイプより目が細かいので、手頃である。袋状になっているので、そのまま使っても2枚重ねになる。これで足りなければ、何枚か重ねれば十分そうだ。実際の取り付けはこんな具合(写真39)。要するに蓋でフィルタを挟み込むだけだが、強度的には十分だった。
●フィルタ2段目 ただこのフィルタは目の細かいものだから、このまま運用すると目詰まりしやすいので、外側にもう一段フィルタを挟むことにした。フィルタケースはこちら(写真40)。先のベーコンケースとぴったりサイズが合う、ということで採用である。これに組み合わせるフィルタは、80mm角のアルミファンフィルタ(写真42)だ。 加工は簡単。まず側面にアルミファンフィルターを貼り付けてネジ穴を決定(写真43)。ついでネジを使ってアルミファンフィルターを裏面から固定し、穴あけ位置を決定。その後、裏面からフィルターを貼り付けて通気口を決め(写真44)、カッターナイフで穴あけをする(写真45)。ただ取り付けてみると(写真46)、四方に隙間がかなりあって、ちょっとこのままでは上手くない感じだ。
そこですきまテープ(写真47)にご登場いただき、こんな具合(写真48)にカバーしてみた。実際取り付けてみると(写真49)、すきまが完全にふさがれており、問題ないようだ。
フィルタは完成したが、これをどう取り付けるか、だ。こちらはマジックテープを使い(写真50)、フィルタケースの上下はすきまテープ、両端のみマジックテープ止めとした(写真51)。ケース側にもマジックテープの反対側を貼り付け(写真52)て完成である。実際に設置するとこんな具合にマシンの横幅が110mmほど広がってしまったが ・前面フィルタなので埃のたまり具合が良くわかるし、すぐに掃除できる といったあたりは便利ではないか、と思う。欠点はやや貧乏くさいことで、これが気になる向きにはアルミシャーシを使うことをお勧めしたい。
次回でいよいよ完成だが、このPCの冷却についてもあわせて解説する。
□関連記事 (2007年9月3日) [Reported by 大原雄介]
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